一つの転機
『ここに何用だ人間』
全てが枯れ、寂れた空間に一匹のドラゴンがいた。
一人の少年がゆっくりとドラゴンの前に現れ、眺めていた。
少年は竜の鱗などが所々使われている外套を身につけて立っていた。
首にはマフラーをつけており、顔の半分を隠していた。
そのマフラーにも竜や他の魔物の上質な素材が使われており、一種の魔法道具だとドラゴンは見抜く。
「あんたがここらにいた竜の親玉?」
少年が呟くと同時にドラゴンは悪寒が走った。
ドラゴンは自分の眷属がここ一ヶ月で大量に殺されたことを知っていた。
知っていて、自分の眷属を見捨てたのだ。
しかし、それには理由があり相手が災厄であるからと考え、自分じゃ助けにならない故にゆっくり滅びを待つ運命に従った。
けれど、目の前にいる相手はどうだ。
方には二本の剣を持っており、それには竜の素材がふんだんに使われた魔剣がある。
おまけにそれに使われた素材の一つ一つが自分の眷属である竜の素材なのだ。
ドラゴンは直感的に悟る。
眷属の仇はこの人間だと…。
『その通り、次は我といったところか…』
ドラゴンは見透かすような目で少年を見る。
その奥にはこのドラゴンの持つスキル『真実の魔眼』を使用していた。
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名前 斎藤 優希
職業
レベル32
HP:1750/1750
MP:680/680
筋力:983
防:635
速:756
体力:956
魔力:468
魔法防:359
体技:756
器用さ:653
運:200
スキル
『剣技LV39』
『限界突破LV12』
『魔力操作LV98』
『身体能力強化LV128』
称号
無し
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スキルが特化しただけの道化だと思った。
大方、これらの装備は災厄が倒したところを横取りしただけだろう。
ドラゴンはそう思い余裕を持つ。
ステータスはともかく、このスキルなら何とか生き残れるレベルである。
そうして改めて見ると少年は笑った。
その瞬間、ドラゴンは自らの失敗に気づいた。
そう、嵌められたのだ。
このステータスは偽の情報という可能性を考え逃した。
そして、少年は自分の『真実の魔眼』を通して何かをした。
それだけはわかった。
しかし、何をしたのかドラゴンには分からなかった。
それを知ってか知らずか、少年は呟く。
「一つ質問する前に問題です。
俺は何をしたのでしょうか?」
訳が分からなかった。
何のためにこの少年はその言葉を言ったのかが分からない。
この少年は何をしたいのかドラゴンには分からない。
「答えを教えて欲しい?
教えて欲しかったら質問に答えて。」
あまつさえ少年はそんな返しをしてきた。
ドラゴンは自然と口が開く。
『何だ?言ってみるがいい。』
プライド高く、取り繕っているがもう既に屈していることにドラゴン気付いていない。
自分は動揺していることさえも気付いていなかった。
「あんたは眷属の持つスキルを全て持ってるの?」
当たり前のことを聞いてきた。
当然だ。
眷属は自分から出来た竜である。
眷属達が持つ能力は全て自分の手で取得している。
故にドラゴンは頷く。
すると少年は笑う。
「答え、教えてあげる。」
直後、ドラゴンは感じ取った。
自分に対して『鑑定』では無く『真実の魔眼』が使われるのを…。
『貴様‼︎』
「分かった?
そう、あんたの能力だよ。
にしても、この能力は鑑定の上位だから上書きされるのか…。」
少年は意味分からない言葉呟く。
しかし、ドラゴンはそれどころでは無かった。
自分が使えるか確かめる。
大昔にスキルを奪う能力を持った者がいた故の行動だった。
それは杞憂に終わり、奪われていなかった。
なら、何故少年がそのスキルを持っていた?
あの一瞬で取得したという答えしか導けなかった。
不可能な話だ。
それが出来るのは異常な適正を必要とする。
しかし、それしか答えが出ない。
「そういえば、さっき偽の情報をあんたに見せたんだっけ?
なら、もう一度見てみな。」
ドラゴンは不安を背負いながら渋々と再び『真実の魔眼』を使用する。
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不可能
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返ってきたその情報は自分に恐怖しか与えなかった。
何一つ見ることが出来ないということは、要するに次元が違う証拠である。
それはこのドラゴンと少年の力にはそれだけの隔たりがあることを意味した。
しかし、ドラゴンはそれを許したくなかった。
『ふざけるな‼︎』
ドラゴンは何の前触れも無く【エンシェントドラゴンブレス】を放つ。
その技は【エンシェントブレス】に竜魔法を追加して更に強力にしたものである。
これは弱い災厄程度なら一撃で殺せる程の威力を持つ。
しかし、その認識が間違いだった。
直後、【エンシェントドラゴンブレス】が消え失せる。
「悪手だ。
忠告してやる。
んなもん意味ないって【エンシェントドラゴンブレス】」
少年は不敵な笑みを浮かべながらありえないことを行った。
人の身にして竜魔法を使用したことだ。
ドラゴンは何とか避けて、少年を観察しようとする。
しかし、そこには少年はいなかった。
『どこに行った?』
ドラゴンは全力で探すが見つからない。
その瞬間、首をコンコンと叩かれた。
それは弱く気づかせるために行った行動なのだろう。
しかし、余計意味が分からない。
何故、少年は攻撃しなかったのか…。
「おりゃっ!」
その掛け声と共に思いっきり首を蹴られる。
ズドンッ!
ドラゴンはその力に屈した。
地面にへたり込み、気絶したのだ。
「エンシェントドラゴンですらやろうと思えば一撃で殺さそうだな、これは…」
気絶したドラゴンを見て少年いや、優希は呟く。
優希はマフラーで隠していた顔の部分を出してドラゴンの前に立つ。
そして、優希はすまなそうな表情をする。
「悪いな、けどあんたの力糧にさせて貰う。
そして、あんたの身体を素材として使わせて貰う。
ーーー。」
最後に何らかのスキルを唱えると、優希に鎖が巻きつく。
そして、優希は剣を抜いて全力の一撃でドラゴンの首を斬る。
そして、死体を『イベントリ』を使用してしまう。
「帰って武器の強化をしますかね相棒。」
『全く、少しは休むという言葉を覚えてください』
優希のその言葉に優希にしか聞こえない声で返事がくる。
「そうだ、お前に名前を付けよう。
あと、主っていう呼び方辞めてください。」
『わかりました。
それでいいんですか?
名前なんて恐れ多い。』
「別にいいだろ、名前くらい。」
『有難き幸せです。
優希様』
「その呼び方…まぁ、いいか。」
そうして、優希はその場から去っていくのだった。
************
俺はライド。
俺はAランク冒険者をやっている。
俺はパーティーのリーダーで俺合わせて6人いる。
「ライドさん、この依頼を受けてよかったんでしょうか?」
「知るかよ、んなもん。」
俺はパーティーの一人で斥候役を引き受けてくれる気の利く男のアーグに言い返す。
因みに、容姿は俺の方は良いとはいえないが黒髪のボサボサでガタイが良く、少し荒くれ者感半端ない顔をしている。
アーグに関しては金髪碧眼でヒョロくて頼りなく見えるけど、こう見えてハーフエルフらしく優秀だ。
ハーフってだけで嫌な目で見られるが俺としてはハーフとか関係ない。
「にしても、海での護衛ねぇ…。」
「海って美味し物あるの?」
最初に呟いたのは黒髪黒目の前衛職である男のクドーである。
この男はシマゲという島国出身で独特な武器と名前が一番の特徴である。
そして、もう一人は赤髪長髪の赤目の少女であるアリユリである。
少し可愛めで小さくかなりマスコット的存在だが、後衛職の魔法特化でかなりエグい魔法使い方を見た目と反してしてくるから怖い。
「アリユリはそんなことばっか言ってないでしっかりと目的を考えなさい。」
「…確か、商人の海の護衛…だから…かなりめんどい…ふわぁ…」
アリユリを叱っているのは緑色の珍しい髪で金とエメラルドのオッドアイを持つ女性でコーネである。
彼女はアリユリとは違い、補助中心で回復、結界、付与を得意としている。
最後に眠そうにしているのは青髪紅眼の女のイカリアである。
彼女は吸血鬼であり陽には弱いが別に死ぬほどでは無い。
寧ろ日向ぼっこ大好きと言って向かうほどだ。
まぁ、異界の勇者とやらのせいで間違った吸血鬼像が出来上がったのだが…。
「にしても、何でそんな面倒そうな依頼を、リーダー?」
コーネは少しむすっとしながら呟く。
「しゃあないだろ。
めぼしい依頼も無くなってきたし、場所を移すなら依頼のついでにって思ったんだよ。」
そう、ここのめぼしい依頼は全てなくなったのだ。
それならここに留まる必要も無く、依頼のついでに場所を移そうと考えていたのだ。
「にしても、よりにもよってあの異界の勇者を召喚したと噂のある大陸だろ?」
クドーが呆れたように呟く。
そう、俺達が護衛する場所は異界の勇者が召喚された噂のある大陸である。
そこに行くということは、そのうちめぼしい依頼が全て勇者の名声の為に掻っ攫われることになる。
しかし、そこに行く意味はある。
迷宮である。
あの大陸の他にも迷宮はあるが、稼げる迷宮が多くて冒険者内では噂の場所である。
「迷宮目的だから何とかなる予定だ。」
「また目的なしに…」
アリユリがジト目でこちらを見てくる。
いや、迷宮が目的だって…。
俺は心の中で呟く。
「どうせ、迷宮潜れば稼げると思ってるんでしょ?」
アリユリは溜息を吐きながら言ってくる。
その通りである。
俺は図星を突かれて何も言えなくなる。
「…迷宮なら…そこら辺にもある…だから…行きたくない…ふわぁ」
イカリア半分寝ながら要求してくる。
確かにその通りではあるが、どれもが小さな迷宮であり、めぼしいものは何一つない。
この大陸にも大きな迷宮は多数存在しているが、絶対踏破不可能と言われたものか、俺達のパーティーと相性の悪い迷宮なのだ。
『まぁ、いいか…』
全員は溜息を吐きながら、呆れる。
失礼な奴らとは言いたいが、妥協してくれたので何も言えなかったのだった。
************
「ふわぁ…風が気持ちいい…なのでおやすみ。」
少し時間が経ち、俺達は護衛対象の船に乗り甲板にてくつろいでいた。
一番くつろいでいるのはイカリアだが…。
そうして、何時間も過ごした時だった。
突然、海が荒れ始めた。
俺達は魔物を警戒するが、数時間すると元の静かな海に戻っていた。
「なんだ?
依頼主に少し聞いてくるからお前達は警戒続けてくれ。」
『わかりました。』
流石のイカリアも起きており、警戒しているので安心して依頼主の所に行く。
「少し話がある。」
「何でしょうか、何か異常でも?」
依頼主である、商人は小太りだが決して傲慢な人間では無い。
この人は生まれつきこの体質なのだ。
それは俺が個人的りこの人に何度か関わっているから知っていることなので、仲間でも知っている人は少ない。
「少し海が荒れたが、あれくらいならよくあるのか?」
「はい、まぁ、魔物が来た時はよくああなりますが、魔物が来たのでは?」
俺はその言葉に首を振る。
それだけで、魔物では無いと分かったのか彼は首をひねる。
「おかしいですね。
何かの前触れかもしれないので中に入ってください。」
「ありがとう。」
「いえいえ、護衛をしていただいてるので必要な時に出てきて下されば結構ですので。」
俺はその言葉に礼を再び礼を言い、甲板の方へ戻る。
「ライドさん、どうでした?」
アーグがいち早く反応して俺に聞いてくる。
俺は一度頷いた後に言葉を発する。
「異常事態の可能性が高いから一度中に入れだそうだ。」
『わかりました』
俺達は中に入り、いつでも戦えるようそして、出られるようにスタンバイする。
そして、陽が沈んで少し経った時にそれは起きた。
大きな光が起きたのだ。
それは何も無い場所から発していた。
その瞬間、大きな波が起き、嵐が到来した。
大きな風に揺られており、俺達は何も出来なかった。
俺達はハッとして依頼主の所に行く。
「一体、どうなってるんですか?」
俺が依頼主に聞くと、彼は俺達気付いたのか慌てた様子でこちらに来た。
「それが分からないんです。
いきなり、嵐が向こうの方から来ていたことを知り備えていたことまではよかったんですが、光が発すると同時に嵐の圏内に入ってしまって、嵐の真ん中の方まで流されてしまったのですが、いきなり、嵐の進路が変わり、光が起きた方に向かい出したんですよ。」
俺にはサッパリ理解出来ない内容だった。
そして、俺達パーティーは嵐が過ぎるのを待つのだった 。
依頼主達は頑張って嵐を抜けようと尽力を尽くしてくれている。
冒険者である俺達が祈ることしか出来ないなんて情けない話であった。
************
それもそうである。
世界が歪んだせいで船の位置が少しだけズレだことなど一体何京分の一の確率を誰がわかるだろうか?
更にはこの嵐の正体が世界を脅かす災厄なんて誰が分かろうか?
そして、災厄がこれまでにない力に引き寄せられたと誰がわかるだろうか?
そう、それは偶然が重なり出来た現状である。
*****優希*******
俺は目を覚ます。
今日、この日を俺は待ち望んでいた。
今日は俺が災厄に挑む。
勝算は無い。
しかし、俺には昔には無かった力が今はある。
そして、頼れる相棒がいる。
『優希様、嬉しい限りでございます。』
そういえば、思考にも答えてくれるんだっけ?
最近、独り言で話しかけていたからな〜。
まぁ、いい。
昨日はエンシェントドラゴンを倒して得た物は多い。
その中の一つがこれである。
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竜鱗の大剣
伝説級+
特殊スキル
『覚醒』
備考
伝説で出てくる竜達から作られし大剣。
その力は絶大で竜の力が込められている。
『覚醒』により、竜の力を解放が可能。
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竜鱗の学生服
伝説級+
特殊スキル
『覚醒』『結界』
備考
伝説で出てくる竜達の素材をふんだんに使われて改造された学生服。
その力は絶大で竜の力が込められている。
『覚醒』により『結界』の使用と竜の力の解放が可能。
ちょっと外套っぽいけどしっかりと学生服
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古竜のマフラー
伝説級+
特殊スキル
『覚醒』『韋駄天』『神隠し』
備考
伝説で出てくる竜の素材を利用して作られたマフラー。
大きな力を宿しており、隠密性、速さなどに優れている。
『覚醒』により竜の力を解放が可能。
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何とまぁ、チートに近い装備だこと。
でも、これじゃあ災厄にはおそらく届かないと思わせるから怖いよな。
けど、これしか俺には無いからこれで戦うしか無いんだがな…。
俺は立ち上がり、洞穴を出る。
決戦のために…。
これから、災厄との決戦ですね。
これからまた更新が遅くなります。
ですので今のうちに沢山出した次第です。
とんでもないミスがあったので修正しました。
第14部 野営にて… より
「イリア、もうやめなさい。
さすがに私が死ぬわ。」
→「エイナ、もうやめなさい。
さすがに私が死ぬわ。」
に直しました。
これは話にかなり関係するのにこんな重要なミスを誠に申し訳ありません。
これからは無いようにします。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたなら幸いです。