27 金曜日とほっぺにキス
おさらい。ほっぺにキスされた。
「あ、綾香...?」
『あやか』と書かれたドアの前に立ち、声を掛けた。気まずいが、あの意図を知りたかったし、綾香本人からそれを――
「...なに」
「え」
ドアが開き、反射的に一歩後ずさった。綾香が出てきた。が、目を合わせようとしない。そして、うっすら頬が赤い気がする。
「...入ってきて」
「う...うん...」
綾香の許可に俺は息を呑んで、小声で『お邪魔します』と言いながら、部屋に入った。綾香と同じく、目を合わせずに。
「「...」」
気まずい空気が流れた。お互いに視線をどこかに向け、ひたすらに無言。そして、限界を迎えたのか綾香が口を開いた。
「...何する?」
気まずさに、キョロキョロと辺りを見渡す。本棚、勉強机などが目に入った。本棚には、この前の『ハーレム主人公は辛すぎる!!!』や、いろんな作品の漫画が並んでいる。
「たっつ...?」
「あ、わ...悪い...」
視線を感じるが、合わせられない。でも、目を合わせず話そうとするのもアレなので、片手を前に突き出し、盾のようにして横から覗き込んでみる。
「何やってんの...」
まだ顔全体は見れてないが、綾香の顔が赤い気がする。
「あ、いや...」
「さっきはごめん」
突然の謝罪に、少し動揺してしまった。言葉が詰まる。さっき謝られたはずなのに。
「謝ってただろ」
「でも、もう一度謝りたかったし...」
不意に、綾香が俺の服を引っ張った。軽いような強いような曖昧な力で。そして、次は強く引っ張られ、盾にしていた手が退かされた。
「嫌、だった?」
「...え?」
綾香と向かい合う形になった。綾香の頬が赤く帯びている。後ずさろうとするにも、体が言う事を聞かず固まってしまう。
「だから、嫌だったの?」
「あー...それは、その、あの...」
自分からしたら難しい質問に、また言葉が詰まった。答え方が分からない。否定をすれば、綾香が悲しむ。肯定すれば、またやりかねない気がする。俺は額を掻きながら、最善な答えを出そうと頭の回転を速めた。
「びっくりは、したかな...」
「じゃあ、嫌じゃなかったってこと?」
もうダメだこれ。RPGゲームのはいを押さない限り、進まない選択肢のやつだ。あと、さっきのは答えになってない気がした。
「...嫌じゃなかったよ」
諦めたようにそう言った。
「よ、良かった...」
綾香はホッと息をつき、肩を降ろした。すると、綾香はニヤッと笑みを浮かべて俺の顔を覗き込み、一言放った。
「またするね?」
「...」
何も言えず、数回瞬きをした。
「今からでも――」
綾香が言いかけた瞬間に、玄関から音がした。
「えっ?」
綾香の笑みが崩れた。
「ただいまー」
主な登場人物
住田竜司:主人公。紫陽花高校1年1組。
福留結希:紫陽花高校1年2組。
水月心寧:紫陽花高校1年2組。
一ノ瀬綾香:紫陽花高校1年2組。
桃瀬詩織:紫陽花高校1年2組。
Ry77「高校大変助けて」




