26 金曜日と近距離
おさらい。綾香が胸の奥が熱いと言いだした。
「最近胸の奥が熱いの...」
「...むご」
突然の行動に、俺は目を丸くして固まった。お互いの呼吸が顔に当たってしまうほど、顔が近かった。
「分かんないけど...分かんないけど!!たっつと再会してから胸の奥が熱く...!!」
綾香は両手をパッと離した。
「なっ...いや...それって――」
口に出しかけて飲み込んだ。
「と、とりあえず...戻ろう。制服だとバレるから...」
話題を変えるように、慌てて踵を返した。周りを見渡し、サボっていることが誰にもバレていないかを確認した。一歩二歩進み、あのルームシェアに向かうように歩いた。その時だった。
「っ...ちゅっ...」
「...え?」
突然、左頬に柔らかい感触、それと同時に足が止まる。そして、頭が真っ白になった。
「な、な...急...なん...」
呂律が回らず、しどろもどろになってしまう。振り向こうにも、まだ柔らかい感触が残っている。
「っぱ...」
綾香がようやく離れた後、足の力が抜けてしまい、俺は地面に尻餅をついた。よく見ると、綾香の頬が赤い。
「ご、ごめん!!衝動が抑えられなくて...!!ルームシェアの...さ、先に行ってくるね...!」
綾香は背を向けて走り出した。俺は左頬を触りながら、それを見る事しか出来なかった。
「...え?」
ようやく我を戻した俺は立ち上がり、制服についた砂を払って放心状態で立ち尽くした。
「キス...されたのか?」
綾香の突然の行動、その後の発言、それらを要するに俺の事が――
「いや...ないだろ...ない...」
自信がない、引っ込み思案だし、困った時には逃げてしまうし、うつ病を抱えてる。こんな俺を...あり得ない。
「綾香を、追いかけないと...」
逃げる癖を無くしたい。理由も言わずに先に行ってしまった綾香を追いかけるように、急いでルームシェアハウスに向かった。
「私なんであんな事しちゃったんだろ...!!」
綾香は走りながら、自らしてしまった行動に悶えていた。
「やっぱ私たっつの事好きなのかも...!!」
そして、綾香は口角が上がったままルームシェアハウスに向かった事を、誰も知らない。
数分が経ち、俺はその家の前まで来ていた。おそらく、綾香は自分の部屋にいるはず。
コンコン...
ノックをしたが、反応が無い。
「あ、綾香ー...?」
また、反応が無かった。俺は玄関のドアの前で息をつき、ドアを引いてみる事にした。
「開いてる...」
鍵を閉めるのを忘れるほど、急いで部屋に駆け込んだのかは分からないが。俺は中に入って、綾香の部屋に向かった。
主な登場人物
住田竜司:主人公。紫陽花高校1年1組。
福留結希:紫陽花高校1年2組。
水月心寧:紫陽花高校1年2組。
一ノ瀬綾香:紫陽花高校1年2組。
桃瀬詩織:紫陽花高校1年2組。
Ry77「高校生だぜーい。友達が出来るか怖いです」




