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唯一の天使となる者

 あちこちに張り巡らされたパイプ、中央に鎮座する培養管。その中にはガリガリに痩せこけた人間のようなモノがある。


「みn」

「分かりました。今行きます」


 白露が言い終わる前に俺の側に来た。早いな!?もう糸人形終わったの!?白露が居れば十分だし戻ろう。


「ここはなにかの研究施······これですね?」

「そう。放置してるわけにはいかないから」


 白露がボタンを押していた。めちゃくちゃ怪しいボタンを押していた。ゴゴゴゴという音と共に培養管が開いていく。

 無理無理無理無理無理ぃ!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!即死攻撃撃たれて死ぬぅぅぅぅぅ!!


「······」


 痩せこけた人間のような物が段々健全な体型に変わっていく。そして背中から3対6枚の真っ黒い翼が生えてきた。

 水色の髪がどんどんと伸びていき、臀部を越して足まで届くほどになった。

 そしてゆっくりと立ち上がった。見た目は小学校低学年くらいだろうか?開いたまぶた

から水色の瞳が覗いていた。


「まま〜」

「え······そうなの?」

「私知りm」

「ぱぱ〜」


 パパ?誰のことだろう?まさか白露の呼び方を間違えた?こんな短い期間で忘れる?この子大丈夫?

(主様、現実逃避しないでください)


「お名前は?」

「さまえる」

「そうですか······」


 どうするか······処分するか?羽があるってことは教会関係者だ。でもなぁ······。黒いから堕天使っぽいし、この幼い見た目の子を処分するのもなぁ······。

(トーラーさんに決めてもらいましょう)

 そうだね······。俺達だけだと持ってる情報に限りがあるからね。


「はい·······。サマエル、行きますよ」

「行くー」


 白露がサマエルに服を着せた。服というよりひだのついたただの白い布って言った方が正しいかもしれない。


「君達、その子はどこから引っ掛けてきたんだい?」

「地下からです」

「そうか······。ふむ、堕天使だね。封印用の特殊な液体の反応が地下から感じられる。そこから引っ掛けてきたんだね?」

「そうです」


 何でこんな場所に封印されてたんだろう?そもそもどうして墜とされたんだ?戦闘力的な物はもちろん悪意すら感じられないんだけど。


「知恵の実上手く使ってくれてて嬉しい」

「あなたは······まさか()()サマエルなのですか?」

「そう」

「なぜこの二人を両親と······」

「運命」


 会話の内容が全く理解できない。そもそもあのサマエルってどのサマエルだよ。白露も分かってなさそうだし誰か説明して欲しい。


「トーラーさん、あのサマエルとは?」

「人をそそのかし知恵を与えた死の天使、サマエルだよ」

「人聞きが悪い。美味しいよって言っただけなのに······ままもそう思うよね?」

「そうですね。そそのかすのは悪いことじゃ無いですよ」


 白露ーーーー!!情操教育的にその回答はどうなの!?サマエルも満足げに頷いてるし!!てか何で親と認識したのか分からんのですが?


「運命」

「ん?」

「なにものにも干渉できない運命」


 やっぱり何言ってるのか分からない。白露もポカンとしてるし。子供を授かれたと幸運に感謝しとくか(ヤケクソ)


「まぁ、それはさて置き何でここの地下にサマエルが?」

「それはこんな辺鄙な土地にという意味かい?」

「イエス」

「こんな辺鄙な土地だからこそだよ。教会付近は神エネルギーが他の土地より多い。そんな場所に置いておいたら封印が解かれるかもしれないだろう?ここは南の大陸と近いからそういうエネルギーを受けないのもあるだろうね」

「なるほどね」


 そんな厳重に封印されてたのか······。それ些だけ知恵をつけられたくなかったわけか。蒙昧で居てくれたほうが助かるもんね。


「眠い。······zzz」

「寝ちゃいましたね」

「そうだね」


 白露にもたれかかってぐーふかぴーすか寝ている。脳天気な顔をしてる······信頼しきりやがってかわいいな畜生!!


「はぅっ·····」

「君達、もういいかな?」

「あ、はい。いいですよ」

「時間も時間だ。もうそろそろ寝ることになる。しかし全員寝るのは危険だ。申し訳無いが······」

「分かりました。いいですよ」

「済まない」


 トーラーとまひが潜入の時に用意した寝袋にくるまって寝始めた。なんやかんや気に入ってるんかいw


「主様、サマエルかわいいですね」

「そうだね〜」


 ほっぺをつついている。起きないかな?というかそもそも封印されてる間寝てなかったの······?

(寝られないんじゃないですか?)

 マジか······。過酷すぎる。何で真に人間に味方してる人達ばっかりこんな酷い目に遭わなくちゃいけないんだ······。

(偽神、許せませんね)

 あぁ。いつか絶対に滅亡させてくれる。俺達の代では無理でもいつか誰か意志を継いだ者に必ず······!!


「主様、ちょっとだけ預かってくれますか?そうそう。上手です」

「ほんと?ありがと」


 ハンモックが編み上げられた。にしてもサマエルかわいい。白露とは別ベクトル。犬とか猫とかに向ける感覚に近い。


「主様」

「はい」

「ありがとうございます」


 サマエルを丁寧にハンモックに乗せた。他人をこんなに丁寧に扱う白露は珍しい。かわいいから仕方ないよねぇ〜。


「私、今すごく幸せです」

「俺もだよ。守らないとね」

「そうですね」


 諦めてはいたけどやっぱり白露も子供欲しかったんだろう。咎めるつもりはない。俺も欲しかったし。


「うぅっ、ぬじざま〜。ひっぐっ、ぐすっ」

「よしよし······」


 俺達は服がお互いの涙でぐちゃぐちゃになるまで泣き続けた。自分がこんなふうに泣ける人間だなんて思ってなかったから驚いている。


「ぐすっ、うぅっ、そろそろっ、時間ですねっ、ひぐっ」

「そうだね、ぐずっ、起こさないとね」

「ぐすんっ、起こしてきますねっ」


 俺達はトーラー達の寝ていた寝袋にくるまった。凄いあったかくてすぐに寝れ······zzz。


「交代の時間だぞー」

「後十分の三分·····」

「単位が分かりづらいわ!」

「ふぎゃっ」


 テーブルクロス引きしないでぇ······。起こし方が乱雑過ぎる。そういえば白露は······?


「5、4、3、2、1、時間だ。起きたまえ」

「ん、んん〜おはようございます」


 寝起きの白露かわいい〜。サマエルはぐーすか寝てる。良かった······寝てる時間を邪魔なんてしたらかわいそうだからね。


「日の出を拝めそうですね」

「そうだね」

「元気ないですね。どうしたんですか?」

「ちょっと嫌な想像をしちゃって」


 日の出と共に中性子搭載ミサイルが降ってくるっていう最悪な想像。口に出したら本当になりそうで怖い。

 最近の飛行物体は燃料を使わないというから余計に怖い。


「大丈夫ですよ。何が有っても私がなんとかしますから」

「ありがと、元気出たよ」

「どういたしまして」


 美しい······。地平線からゆっくりと登ってくるオレンジ色の極光。徐々に色を取り戻してゆく建物達。素晴らしい。


「主様!!(ボソッ)

どうでしたか?新しい風を吹かせられてたらよいのですが

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