脅し
パンフレットか······。あのホテルのやつはあんまり信用出来ないけど商品確認出来たなら罠とかじゃないはず。
「白露そういえば、ここの建築物伝統様式保ってない?」
「そうですね。観光業に特化してるんじゃないですかね?日本も大体そんな感じですし」
「なるほどね·······」
お金を落としてもらおうという訳か。闇を感じる······。建築様式が入り混じってる感じは他国では出せないだろうから武器になるんだろう。
「そろそろ朝ごはん買ってきましょうか?」
「あぁ、頼む。俺達はここから離れられそうにもないから」
「希望あったりする?」
「「野菜サンド!」」
「オッケー分かった」
野菜サンド推しすぎじゃない?研究の片手間で食べてる内に野菜サンド信者になったんだろうな······。食生活やばいことになってそう。
「分かったら端末に連絡するから通知はオンにしてくれ」
「了解です」
俺達はそこら辺に繰り出した。朝6時だっていうのに結構な数の店が開いていた。
開いている店の大半は食べ歩きできるようにテイクアウト方式だった。
「サンドイッチが中々ありませんね」
「そうだね。さっきから焼きモロコーンばっかり」
「大量発生でもしたんですかね?」
モロコーン。トウモロコシのような見た目の魔物で脳味噌もなく知性も発達してない。
本能しかない食べられる魔物の代表格らしい(陛下情報)。食べられる魔物のパワーワード感が凄い。
「モロコーン美味しいですよ?美味しいですけど所詮モロコーンなんですよね······」
「野菜サンドな······あった!」
「ありましたね!急ぎましょう!」
俺達は野菜サンドの店に走った。もう見つからないかもしれない!これ以上二人を待たせるわけにはいかないしね!!
「「プレミアム野菜サンド4つぅぅぅ!!」」
「は、はい!」
「これでピッタリですよね!?」
「プレミアム野菜サンドです!!揺れに注意して持ち帰ってください!」
狐か何かの獣人の店員さんから野菜サンドを受け取って俺達はトーラー達の元に向かった。プレミアムって付いてるだけあって美味しそう。
「俺達が戻ってきたぁ!」
「お疲れ様。遠かったのかい?」
「遠かったですよ。どこもかしこもモロコーンばっかりで······」
「なんだそのラインナップ······」
プレミアム野菜サンドはおいしかった。流石プレミアム。野菜とハムとマスタードの親和性の高さにびっくりした。
「会議はこれからのようだ。7時半のようだね」
「外交、行政の重役居る?」
「······外れだね。財務の会議だ」
「また張り込みかぁ〜」
次に動きが有ったのは14時半。こちらも外れだった。時期的にもう外交と行政の会議は終わっちゃったか······?
「諦めて収穫祭楽しむ······?」
「主様、パンフレットに乗ってた楽しそうなイベントに現実逃避したくなる気持ちは分かりますけd」
「18時!18時だ!!この時間に各国との外交報告が始まるそうだ。運がいいぞ、君達!!明日には外交方針の中期計画が行われるそうだ」
「トーラーさんは本当に状況を組み立てるのが上手いですね」
「そうでもないさ。ボクは物理と数学以外はからっきしだしね」
明日の18時には収穫祭が開かれるそうだ。会議とかぶってるから18時と叫べばこれに来た風を装える。
ラッキー。もしかして収穫祭で目くらまししてるのかもしれない。
まぁ明日俺達が脅h······交渉するから意味ないんだけど。
「今日の寝場所は······」
「無い。野宿だね」
「「なん、だと!?」」
「主様とタナカさんがハモった!?」
まひとハモったのはびっくりした。まひは割と生活力ありそうなものなのに······。
それにハモるなんて本当に明日は何か起こるかもしれない······。
「どこで野宿するつもりなんですか?」
「王城を支える基礎があるだろう?後ろ側に少し出っ張った部分がある。そこに糸でぶら下がる」
「強引ですね······分かりました。やってみます」
白露が糸を用意して寝袋状に編んでいった。なんか培養カプセルみたいな見た目だな······。
「中は以外に快適······」
「へばりついているから気付かれ辛いし、奇襲もかけやすい。素晴らしいだろう?」
「悔しいけど言うとおりだわ」
俺達はカプセルの中でに入った。当然一人一つだ。白露は普通に巣を張って寝ている。こういうところ糸って便利だね······zzz。
「眩しい······溶ける」
「おはようございます。主様」
「うぅっ」
白露が逆さ向きで起こしてきた。眠い。もうちょっと寝たい。別に18時まであるしもうちょっと寝たって······
「早く起きたら舐めてあげようと思ったんですけどね〜」
「今起きようと思ってたんだよ(キリッ)」
「起きたようなので舐めません」
「そんな〜」
トーラーとまひは······城壁に張り付いている!?起きないと······。俺はカプセルから出て真っ逆さまになった。
「主様、寝ぼけてますね······」
「面目ない······」
「引き上げるのでなるべくじっとしててくださいね〜」
「ハイ」
白露に引き上げられるってどんなプレイだよ。きっとこんな状況経験するやつなんて······
結構いそうだな。バンジーとかバンジーとかバンジーとか。
「はい、終わりました」
「ありがとう。それで二人は何してるの?」
「変装です」
「ちょっとよく分からない」
白露が無言で草を差し出してきた。俺は白露の隣で草むらになった。······俺は考えるのをやめた。
「主様、そろそろです」
「分かった」
二人がこちらを向いている。指が4本立てられている。
指がなくなった瞬間、白露が城壁を金棒でぶん殴って侵入口を作った。
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
「なんだ!!何が起こっている!?」
一番上座に······居たっ!!周りのでっぷり太った豚共とはオーラが違う!!こいつだぁあぁぁああぁぁぁあ!
「動くな。動けばこの剣がお前の首を掻き切る」
「ぐっ······!衛兵!衛兵〜!!」
「今この場の指揮権は私達にあります。黙っていてください。国王。私達は交渉をしにきたんです。大人しく従っていただければ黙って帰りましょう」
「······要件を聞こう」
「私達は南大陸から派遣されてきた使節です。単刀直入に言いましょう。我々に降伏し改宗した上で陛下に忠誠を誓いなさい。そうすればこの土地世襲的な行政職長官としての権限をあなた方に保証しましょう。上級魔物並びに魔人からの非攻撃、さらには民生の安定をお約束します」
「······断る」
ま、断るよね······。こんな状況ではい分かりましたって言う人間が王になれるわけがない。
しばらくするとトーラーとまひが王妃とその子供達を連行してやってきた。
「断るのですか·····そうですか。なら仕方ないですね」
「待て、何をするつもりだ」
「まぁ、見ていてください。面白いのことが始まりますから」
王を窓のそばに連れていき白露が指を鳴らした。そしてそれと同時に街に隕石が接近し始めた。王の顔が青ざめた。
「この都市の消滅か、我々への恭順か選んでください」
「今すぐ破壊しないことが我々を全滅させられないことを物語っている。故に······」
「そうですか······。これだけ優しく説明してもご自分の立場というものを分かっていらっしゃらないのですね」
白露が一番身長の高い王の子供の頭を鷲掴みにして壁の前に移動した。
「······ことわ」
「ぎゃぁああぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあ!」
「まずは一人目。さて······」
「待てっ!やめろっ!!」
「受け入れるんですか?」
「······」
白露が二人目の頭を壁に押し付けて王に質問した。同情は無かった。南に連合軍を派遣した人間に与える慈悲などありはしない。
随分肩入れしてるな······。白露と一緒に作ったあの景色を無意識下で子供のように思ってるのかもしれない。
「そうですか······では残念ですが」
「分かった!受け入れる!!受け入れればいいんだろう!!」
「最初っからそういえばいいんですよ」
今、この時をもって偽神ヴィクトリアからこの国は開放された······。
俺達のように生物の違いを乗り越えた関係が、誰も苦しまない生活が、ここから始まる。
「白露」
「なんですか?主様」
「始まるね······新しい時代が。二人の望んだ世界が······」
丁度その時、隕石に四方から矢が放たれ塵となって降り注いだ。美しい······。まるで祝福されているかのようだ。
「そうですね······。私達が苦しまない時代が始まりますね」
白露らしい答えだ。でもなんだかんだ言って国の為に行動するツンデレっぽいところかわいいと思う。
「二人共、良くない知らせがある」
「なに?野菜サンドが当たった?」
「違う。聖女が首都に派遣されたそうだ」
「「何っ!?」」
くそっ!このタイミングで!!今から王に宣言させたり色々やることが残ってるっていうのに!行くか?いやでも今行ったらこの国を諦めr
「ここはボク達に任せて戻ってくれ」
「あなた方二人でこの国を抑えられる訳ないでしょう!?」
「だが、これしかない。高速移動できるのは君達だけなんだ。頼む」
「······分かった。行くよ白露」
ふふふふふ、どうですか?凄く楽しいですよね?私は書いてる間凄い楽しかったです。とくに最後の方の王子の頭がゴリゴリ削られるシーン。




