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海を渡る。

「さて、そろそろ着替えましょうか」

「······そうだね」


 現在7時。たっぷり4時間以上搾られた計算になる白露からは逃げられなかった。

 体調は悪いけど気分は最高なのめちゃくちゃ悔しい。

 俺達は朝ごはんを食べて地下鉄に乗る。朝早かったからかほぼ貸し切りだった。


「さて、海に出ますよ!」

「おー!」

「朝から元気だな······」

「この岩盤、我々の知ってるものとは全く違う!凄い!!」

「こっちも元気だった······」


 まひから気力が全く感じられない。昨日なにかあったな。搾られたか······。だから気力がなさげなんだ。まひも大変だったんだな。


「視線が生暖かい気がするんだが?」

「気のせい気のせい」

「本当にそうか······?」

「主様、着きましたよ!」


 白露ありがとう!タイミング最高!!まひももう諦めて地下鉄から降りた。

 一日ニ日だし船しか無いんだろうな······。それでも楽しみだけど。


「な、なっ······」

「やるじゃないですか」


 港町はなんとか形になっていた。まだ建設中の建物はたくさんある。それでも街としての形を取り戻しつつあった。

 珊瑚のような素材で建物が作られている。色とりどりの光が目に飛び込んできて飽きない。そして目の前には巨大な船がある。


「来たか······」

「えーっとあなたは······誰でしたっけ?」

「この間私をスカウトに来ただろう!?」

「あぁ、あの時の······それでなんの用ですか?」

「私が操舵士だ」

「「「「は?」」」」


 ······は?この女騎士が操舵すると?マジ?このショタコン残念女騎士が?いやでも性癖で判断するのは良くないか······。


「私はマルチなアンデットなのだ!操舵など慣れている!!」

「ほぉ、そうなのかい?」

「や、やめろ。来るな。なんか嫌な予感がする!止めてくれぇぇぇぇ!!」


 こいつ、やっぱ残念女騎士だわ。操舵士が居なくなると困るしトーラーにはもうちょっと待ってもらおう。


「さて、乗れ。これが今回の船だ。どうだ?凄いだろう?」

「別にそっちが用意した訳ではなくない?」

「くっ、殺せ!」

「くっ殺を安易に使うな」

「女騎士界隈ではこれが最近のトレンドだと聞いていたのだが······」


 なにその界隈。めちゃくちゃ気になる。オークに強○されない方法とかビキニアーマーについてでも話してるのかな?

 最近のトレンドってなんだよ。逆にくっ殺じゃなかった時代が有ったのか!?クッッッソ気になる。すぐ聞く必要は皆無だけど。


「トーラー、後でいくらでも実験していいから今は待って······」

「仕方ないね」

「実験されるのは確定なのか!?まぁいい。乗れ。そろそろ出港だ。人魚達がいい感じの水流を作り終わったようだ」

「わかりましたよ」


 俺達は目の前の船に乗った。白露が入口から入れずに拗ねながら壁を登っていった。白露と俺が違う種だと改めて認識した。


「思ったより柵が低い」

「私の近くなら大丈夫ですよ」

「ありがとう」

「潮風って結構ベタつきますね······」


 白露が髪を触って少し顔をしかめている。確かに長髪だとベタつきもより多いよね。

 風で靡いている長髪はかっこいいけどそういうところ大変そう。


「白露は長いからより大変だよね」

「そうですね。まぁ楽しいからいいんですけどね。二人は?」

「動力室に飛んでいったよ」

「あの二人らしいですね」


 多分あっちでも同じような会話と場面が繰り広げられてるんだろう······苦笑いが見える。さっきから水面をじっと見てどうしたんだろう?


「ていっ!」

「魚っ!?」


 白露が糸で魚を釣り上げていた。さっきから水面をじっと見つめてたのはそういうことだったのか······。


「主様もやります?」

「やってみる」


 しばらく待ってみたけど全然釣れない。白露は俺が苦戦している間に何匹も釣っていく。掛かった!!


「こ、これは······エビフライ!?」

「主様、すごいですねw」

「笑った!?」


 くっ、手を口元に持っていって上品に笑ってるのかわいいなぁ!!なんでエビフライこんなところで釣れるんだよ······。


「長いですね······地図上だとすぐだったので油断してました」

「ね。段々海にも飽きてきたしね」

「そうですね······。カモメでも撃ち落としますか」

「カモメぇぇぇぇぇえ!!」

「ふふっ、冗談ですよ」


 冗談が上手すぎる······。やっぱかわいいなぁ!!白露にからかわれるの楽しいと思ってる自分が居る。俺はMだったのか······。


「主様主様、そういえばあっちでは魔物使いの変装をするんですよね?」

「そうそう。······あんまり良くは思われないだろうけど」

「人間側にも魔物にもよく思われないって中々難しい立場ですね」

「まぁね。結構無理やり従わせてるイメージが強いんだろうね。本当は契約の元に絆を結ぶ素晴らしい才能なのに·······」

「そうですね······悲しいです。本来あり得ないはずの繋がりを得られるのはこの才だけなのに·······」


 白露は悲しそうに海を見ている。その姿が何よりも美しく見えた。白露に出会えて良かった。出会えたのが白露で良かった。


「ありがとう······」

「お礼を言うのは私の方ですよ。見捨てずに付き合ってくれてありがとうございます」


 白露が三日月型に口を開いて笑っている。今まで見ていたのはきっと作り笑顔だったんだろう。

 今思えばいつもの笑顔はなんか美し過ぎた。きっと見せないように頑張られてたんだろうなぁ。でも今見せてくれた。


「白露大好き愛してる!」

「急にどうしたんですか///」

「急に白露を愛でたい気持ちが······」

「まだ時間掛かりそうですし、船室に行きましょうか///」

「そうだね」


〜〜〜〜〜〜貪り食い合った〜〜〜〜〜〜


「そろそろですかね?」

「そうじゃない?」


 おかしい。俺はカッスカスに干乾びているのに白露は潤っている。いや、よく考えたらおかしくないか······。

 賢者になる度に全力疾走並に疲れるんだったら白露の方が元気に決まってる。俺の半分くらいだったからね。


「白露、いつもちゃんと満足出来てる?」

「出来ているにきまっているでしょう?逆の立場で考えてみてください。主様が私の半分くらいだったとして、主様は満足していないでしょうか?そんなわけないですよね?」

「ぐぅの根も出んわ」


 白露の言う通りだわ。今までそんな事全く考えもしなかった。

 確かに俺がそんなに搾られなくても満足しないなんて事ないわ。

 むしろ今までそんな風に考えていた俺を殴りたい。俺が頑張らないと白露が満足しないとかおこがまし過ぎる。

 ·······これが分かったところで頑張らない理由にはならないけど。


「相変わらず潮風がベタつきますね」

「そうだね······この分だと日を跨ぐかもね」

「それでは厄介な事になるのでは?」

「なるんだけど······どうしょうもないし」


 距離は地道に移動するしか縮めようがない。じれったいけど初めての場所にはそんな風にしか行けない。

 白露なら水面を走っていけるかもしれないけど海は何が起こるか分からないから白露に頼むわけにもいかないし。


『そろそろ目的地に付く。準備しておけ』

「日は跨がずに済みそうですね。口調は苛立ちますけど」

海中には災害指定級種がいるのでかなり早く航海しないと危険なのです

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