表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/61

秘密の隠匿

(リアムに見せなきゃ……。この肖像画に、彼はなんて答えるかしら)


私は懐に隠した肖像画の破片を握りしめ、雪のドームを飛び出した。けれど、廊下に出たところで、壁に掛かった大きな鏡……ミレーヌが、鋭く光を反射させた。


「あら、セシリア。そんなに血相を変えてどこへ? 公爵様が、あなたをお探しよ」


「ミレーヌ……。ええ、今すぐ向かうわ」


心臓が早鐘を打つ。アルカード様が私を探している? まさか、この探索がバレてしまったの?

冷や汗が背中を伝う。私は咄嗟に判断した。この「証拠」を持ったまま彼に会うのは、あまりに危険すぎる。


「ピピン! さっきの秘密基地に戻りましょう! 忘れ物をしてしまったの!」


「わぁーい! かけっこですねぇ! 負けませんよぅ!」


状況を理解していないピピンは、楽しそうに先を走っていく。


「ピピン、お願いがあるの。この巨大なシダの葉の前で待っていてくれる? 私、奥まで探し物をしてくるから。アルカード様には……内緒よ?」


「秘密のミッションですねっ! 了解ですぅ! ピピン、ここを一歩も動きませんよぅ!」


ピピンは短い手をビシッと挙げて、見張り役を買って出てくれた。彼女が自分の秘密基地を大切に思っているのが、今は幸いだった。


私は秘密基地まで急いで戻り、ゴミの山の中、マダムの靴やリアムの剣が埋もれていた場所へ、さらに深く肖像画の破片を押し込んだ。汚れた布きれやガラクタを被せ、一見しただけでは分からないように隠す。


私は一息つき、汚れを払ってシダの葉を掻き分けた。

――その、目の前に。


「こんなところで、何をしているんだい? セシリア」


「……っ!!」


すぐそこに、アルカード様が立っていた。

いつものように完璧な微笑を浮かべ、けれどその瞳は、私の背後にある「秘密」を透かし見ようとしているかのように、深くて暗い。


「アルカード様……。ええ、その、ピピンと探検ごっこをしていたのですわ。少し、道に迷ってしまって」


私は精一杯の笑顔を作った。心臓の音が、彼に聞こえてしまうのではないかと思うほど激しい。

背後でピピンが「シダの葉に隠れてアルカード様を驚かせる作戦」だと思い込み、気配を殺してくれているのが、今はただただ有り難かった。


「そうか。あまり奥まで行くと、埃でその美しいドレスが汚れてしまうよ」


アルカード様は私の頬にそっと手を添えた。その指先は、雪のドームよりも冷たく感じられた。


「自由にしていいと言ったけれど……。少し、君に頼みたいことがあってね。私の書斎まで、付いてきてくれるかな?」


「頼みたいこと……?」


「ああ。君にしかできない、とても重要な『お仕事』だよ。……さあ、行こうか」


拒絶を許さない優雅な手つきで、彼は私の手を取った。

私は一度だけ後ろを振り返ったけれど、シダの葉は静かに揺れているだけだった。


アルカード様の歩調に合わせて歩きながら、私は確信していた。

あの肖像画のリアム……あの傲慢な瞳。

もし、リアムがかつての「城主」だったのだとしたら。

アルカード様が私に頼もうとしている「仕事」とは、一体何なのか――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ