第7話
「いい曲だね。誰から教えてもらったんだ?」
「自分でつくりました」
「聞いたことがない曲だと思ったら、やっぱりそうか。曲名は?」
「『王国勇壮曲』とわたしは呼んでおります」
「いい名前だ」
王子は薄く笑って、それから、指揮者を務めていた男の名前を呼んだ。
「『王国勇壮曲』を次の演奏会までに練習しておけ」
「はっ」
「エリーザ嬢の言うことをよく聞いて教わるんだぞ」
「仰せのままに」
「じゃあ、頼んだよ」
王子は指揮者とエリーザの二人に視線を配りながらそう言って、二人に退室を促した。
使用人に案内されながら退室すると、エリーザは指揮者と一緒に講堂へと導かれる。そこには王宮に仕える音楽隊が整列していて、それから、アネットがいた。
「殿下から呼び出されたんだって?」
「はい」
「昨日の曲を音楽隊に教えろって言われたんでしょ」
「仰る通りです」
「あなた、自分がどういう立場か分かってるわね?」
「勿論です。殿下から与えられた役割、身に余る光栄と受け止め、全力で邁進いたします」
「違うわ。あなたなんてすぐ解任されるから、覚悟しておきなさいって言うこと。田舎の小領主ごときを自分からダンスに誘ったり王宮に呼び出したりなんて、そんな殿下の気まぐれがいつまでも続くとは思わないで頂戴」
エリーザは何と答えてよいか分からなかった。別に悔しくもなんともない。全てアネットの言う通りだ。ただ、どういう言い方をすれば王子にもアネットにも失礼にならないような謙遜ができるのか咄嗟に浮かばなかった。
エリーザの返事を待たず、アネットは自らの使用人を引き連れて講堂を去っていく。
音楽隊の面々は感じている気まずさを隠しきれていない。
そして、エリーザだって、こんなにも多くの演奏家たちに自分のつくった曲の演奏方法を教える術など持っていなかった。恥ずかしくて顔から火が出そうなくらいしどろもどろな説明を繰り返し、音楽隊をしばしば混乱させながら、惨めなままでこの日の指導は終わった。
それでも、ヨハン王子はエリーザを王宮に呼び続けた。
ただ音楽隊の指導者としてではなく、まるで重用されている高級貴族の人物のようにエリーザは扱われた。
お茶会や晩餐会にも招待され、オペラ鑑賞にも同行した。
そして、演奏会では「王国勇壮曲」をエリーザに歌わせ、エリーザがいかに音楽的才能に溢れた人物かを晩餐会で熱弁していた。
もちろん、エリーザに対する破格の扱いに社交界は大騒ぎだった。
北西部の小領主に過ぎないサヴァツキ家から王子の寵愛を受ける人物が彗星のように現れた。ある者は嫉妬を隠さず、ある者は露骨に媚びて関係性を築こうと




