第14話
目覚めたとき、エリーザは真っ白なマットレスの上に寝ていた。
天蓋付きのベッドの上には窓から日光が射している。
エリーザは上体を起こし、うーん、と伸びをしてみる。
壁も天井も木でできていて、ただ伸びをするだけでベッドは軋んだ音を立てた。
エリーザは部屋の中を見渡してみる。
小さな部屋は綺麗に整頓されていて、派手さはないが上品な家具が揃えられている。
窓は嵌め殺しで開けられないようになっている。窓の外には田園風景が広がっている。
どうやら、ベッドの位置とは反対側に設置された扉が外に出る唯一の手段のようだ。
ベッドから慎重に降りて、なるべく足音を立てないようにエリーザは扉へと近づいた。
耳をそっと押し当てると、向こう側からは誰かの話し声が聞こえてくる。
しかし、その音はあまりにも小さくて誰の話し声かは分からない。
どのみち、この扉を開けるより他にできることなどないようだった。
エリーザはドアノブに手をかけてゆっくりと扉を開けてみる。
扉の向こうには、吹き抜けの天井が気持ち良い印象を与える広々とした居間があった。
中央部には据え付けのテーブルがあり、背もたれのない丸椅子にはヨハン王子が座っている。ヨハン王子はペンを手に持ち集中した面持ちで紙に何かを書きつけていた。
「殿下、おはようございます」
エリーザが呼びかけると、ヨハン王子は顔を上げる。
ヨハン王子のそばには三人の侍女と二人の召使いが控えていて、興味津々という視線をエリーザに向けていた。
「おはようなんて時間じゃないけどな」
王子はいつもの柔和な微笑みを見せて、それから、
「じゃあ、エリーザを頼んだ」
と、三人の侍女に語りかけた。
三人の侍女はそれぞれ恭しく返事をすると、「お嬢様、こちらに」と言いながら移動していく。彼女たちの向かう先には開けっ放しにされている扉があって、まだ別室があるようだった。思ったより広い建物らしい。
ヨハン王子の前だからと、楚々とした足取りを意識して歩き、エリーザも別室に入っていく。
エリーザが部屋に入ると、侍女の一人によって扉が閉じられた。
そして、残りの二人がエリーザを着替えさせ始める。
確かに、馬上で夜風に晒され、しかもそのまま寝てしまったので、エリーザの寝間着はひどく皺が寄ってくしゃくしゃになっていた。
着替えが終わると、今度は化粧台の前に座るよう促される。
侍女が道具箱を化粧台の上に置き、エリーザの化粧を直していく。
粗末な状態の服や崩れた化粧でヨハン王子の前に出ていたと思うと、エリーザは顔から火が出るほど恥ずかしい気持になる。
とはいえ、いまエリーザが感じていることはその恥ずかしさだけだった。




