9話 『力』
午後、武器と防具の店にて
「お前は体が大きくないから、動きやすい軽装にした方がいい。全部回避すりゃいいんだよ」
「それは分かりますけど、さすがに多少は鎧ないと不安ですよ」
「重くなったら動けねぇだろ」
それもそうなんですけどねー
「でしたら重要な場所だけ守る軽鎧が一番ですかねぇ。こちらなんかいかがでしょうか?」
今まで黙ってた店員さんがオススメを出してくれた。
試着してみたが、重要な場所だけ厚くなっているのか、軽めで、なにより動きやすい。
「いいんじゃねぇか?んじゃ次は武器だな」
片手剣、両手剣、レイピアから湾曲した剣や槍、斧、ハルバードまで様々な物を試したが、今までと同じ感覚で戦えそうな、片手剣にした。グラディウスと呼ばれるタイプだ。
「あ、防御とか受け流しがしやすいような盾ってありますか??」
これは前から欲しかった。回避主体としてもやはりもらうこともあるし、咄嗟に受けに出したり、受け流しに使えるような小さめな物が欲しい。
「魔法が使いにくくならないように、小振りで腕に付けれるタイプにしとけ」
と、師匠。確かに。
魔法の熟練者ならうまくやれるんだろうけど、まだ日が浅いので手を向けないとうまくいかない事があるのだ。
「でしたら、こちらはいかがでしょう?盾ではありませんが。籠手、ガントレット等の類いです。これは左籠手の装甲だけを大きく頑強にしたものです。防御もそれなりにできますし、なにより手が塞がりません。打撃にも使えますよ」
なるほど、左側だけ防御用に大きめになってると。
あ、でも大きさ違うってことは…
「バランスとか悪くないですかね?」
「盾装備してもバランス違うだろ」
すぐさま師匠から的確な指摘を頂いた。正論すぎる。
◇◇
と言うことで一式購入した。
そのあと、「もう一軒行くぞ。必要なもんだ」
と師匠に言われて次の店に向かっている。
「着いたぞ」
ここは…魔道具のお店??
「この前言ってた、とっておきってやつだ。とりあえず入れ。説明はゆっくり聞けばいい」
◇◇
「よぉダルじいさん。こいつに一通り説明した上で、見繕ってくれるか??」
師匠は陽気に話しかけた。常連なのかな??
「なんじゃアルか。久しぶりじゃのう」
カウンターから頭を出したおじいさんは懐かしそうに師匠に答えた。
師匠は店の奥に行ってしまった。
「どれ、顔を見せてごらん。名前は??」
「ハルです。宜しくお願いします」
しっかりとした目で、だが優しい顔でこちらを見ている。
「ふむ、珍しい魔石を持っておるな?見せてくれるかの??」
魔石?俺が持ってる石なら…これだよな。
頷き、ブレスレットのある右手を差し出す。
「ふむ。魔石のようだが見たことないタイプじゃの…あいつならわかるかもしれんが。世の中まだまだ知らん事が多いのぉ」
フォッフォッフォッ、と口ひげをさすりながら笑う。
「さて、では説明するぞ。しっかり聞くんじゃ。」
◇◇
この世界には魔素が満ちており、どんなものにもその影響がある。
魔素を使って魔法を起こしたりするわけだが、残念ながら人間は魔法を使うとロスが大きい。
魔素を魔法に変換して体外で扱うのが下手だ。
だから大きな魔法は使えない。精々、花火程度だったり、多少の水を操るのが限界だ。
既にある物、地面の土等を利用したりする場合は多少マシになるが。
ロスなく扱えるエルフや、獣人や魔物、果てはさらに強力な魔獣と争い、戦うにはあまりに非力すぎる。
そこで必死になった人間達が考えたのが、魔法の発動式を何かに刻み、それに魔素を込めて使う、という方法。
これは半分成功し、半分失敗だった。
刻んだ式に応じた魔法の発動はできた。
これは画期的な発明だった。
魔素が扱えて、式を刻んだ魔法銀があれば、誰でも基本四属性の魔法を発動させることができる。誰でも明かりを灯したり、水を出したりできるのだ。一気に生活は便利になったし、冒険もしやすくなった。
が、残念ながら威力は変わらなかった。
普通に魔法を使うのと同じく、他種族の数分の一の威力しか出せなかった。
また、魔法銀が安くはない事と、式を刻むには特殊な技術が必要なこともあった。
しかし人間は諦めなかった。
幾度も失敗を繰り返しようやく見つけた一つの魔法。
大昔の固有魔法持ちの協力によって発見、再現された。
それは、 「召還魔法」
召還するのは 「自分の心」
召還式を刻んだ魔法銀を介して自分の心を具現化し、召還する。
なぜこの魔法だけがまともに使えるのかは、解っていない。
エルフやドワーフのような、人間の種族特性なのかもしれない。
人間以外には扱うことはできなかった。
これでようやく人間は、今まで抗うことさえできなかった魔獣に対抗することができるようになった。
そして現在、Cランク以上の冒険者から持つことが許されている。
逆に言えば、これがなければ人間は大型の魔物や魔獣に対抗することができないのだ。
これが人間のとっておきの魔法だ。
「つまりハル君はこれから強力な力を手にすることになる。それはわかったの?」
「…はい。」
「では問おう。君は何のために戦う」
「守るため…と言うのは傲慢な気もしますが…」
それは、妹や友達を助けるためだ。俺には背負ってるものがある。覚悟もある。
「よろしい。ならばこれを君に。召還式の刻まれた魔法銀『機心』じゃ」
そう言って渡され、触った瞬間にブレスレットが眩しいくらいに光り、目を開けるとブレスレットと機心が1つになっていた。
なんと…
「合体しちゃいましたけど、大丈夫ですかね…」
ダルおじいさんも目を見開いて驚いていた、
「合体したのう!すごいのう!まぁ大丈夫じゃろう。奥で寝てるアルを連れて帰って見てもらうといい。フォッフォッフォッ…また、いつでもおいで」
「ありがとうございます!お世話になります!」
大きく礼を言ってダルおじいさんと別れた。
◇◇
長くなりましたので2部にわけます。




