第009話 ニワトリ(?)
モフモフ要員登場です。
横の茂みの奥にある反応が18。
いくら中立の『黄』マークでも気にはなる。
しかもそのうち3つは魔物の反応だ。
そっと姿勢を低くして小銃を構え慎重に目標に近づく。
茂みの中から見えたものは…
“(アングリ…)”
ランが見たのはどこぞの漫画で見たような体勢のニワトリであった。
両方の翼をいっぱいに広げ仲間をその後ろにかくまって隠しながらも両足がガクガク震えまくっていた。
前の2羽はなんか1m近くもある大きなニワトリだが後ろの15羽ほどのニワトリはマリちゃんが教えてくれた『クアックルブ』とかいうニワトリモドキと大きさと特徴が一致する。
『探知』スキルに引っかかったのは18、あと1つの目標はいずこにに?なんて思っていると左の頬になんか柔らかいものがスリスリ…
思わず目だけ動かすとそこには白い…子猫??
思わず小銃を肩にかけて両手で子猫を持ち上げてみると。
白い体毛にうっすらと縞模様が…
“お前『猫』じゃなくて『虎』か?”
「ウニャ~ン♪」
どうやら肯定のようです。
『探知』スキルに標的を見たことで判明した『子虎』の種族名は『ホワイティー』。
大阪の梅田あたりで聞いたことあるような名前である。
そして今まで必死に仲間を守っていたでかいニワトリモドキともう一羽のニワトリモドキは『コケッコー』という種族らしい。
『探知』スキルレーダーに表示された種族名を見て俺は脱力したよ…
残りの15羽は間違いなく『クアックルブ』みたいだ。
欲しいのは『クアックルブ』だけなんだがどう見ても『コケッコー』のオスらしいのがこの群れのリーダーみたいだしな…
なんぞいいスキルかアイテムでもなかったかなとメニューを検索してみると『自動翻訳』の左横に四角に囲まれた『-』の表示が…
“(これって自動翻訳の中にまだ項目があるってことか?)”
取りあえずその『-』を押してみると…
大陸共通語のほかにズラズラ多数の言語が表示される。
“(そりゃ他国というか地方の言語もあるし当然か…)”
まぁ、大陸共通語以外は全部OFFになってはいたが。
そして下のほうの言語で思わずスクロールを止めた。
『動物・魔物語』…
まさかこれで通じるのか?
いやこいつらはどうもこちらの言葉普通に理解しているような反応だし…
いやいや、しかし普通動物でも種族違えば鳴き方(言葉)も違うじゃん…
まさかと思いつつ恐る恐るその『動物・魔物語』をONに切り替えてみた。
とたん聞こえる彼らの声。
『わ、私達どうなってしまうんでしょう?』
『あの人間に殺されてしまうんでしょうか?』
『あの魔熊に狙われたのが運の尽きでしたわ(泣)』
『あの人間、こちらに敵意は無いようだが逃げられないように注意深く見ている(クッ…』
『あの魔物騒動がなければ私達もマリちゃんといっしょにのんびり暮らせましたのに』
『あぁ、マリちゃんやアンナ様の元に帰りたい…』
『気持ちいいニャ~♪』
“(…もしかしてこいつら元々熊悟郎さん家のニワトリモドキ?)”
最後の虎っ子の言葉は別にしてどうもこのニワトリモドキ共はあの魔物の騒動時に逃げ出したニワトリモドキらしい。
なんでこんなところうろついているのかまでは知らないが。
とりあえず言葉が通じるというのは隠して…
“あ~…なんかこつちの言葉通じるようだから聞くがお前達エルシア村という名に心当たりは?”
『コケッコー』のオスが首を縦に振る。
“熊悟郎…もとい…カールド、アンナ、マリの名に聞き覚えは?”
その名前を聞いたとたんニワトリモドキ達は大きく眼を広げて高速で首を縦に振る。
それも全羽で…
“(まぁ、判ってて聞いたんだが…)”
“私はマリちゃんの依頼で『クアックルブ』探しに来てたんだけど君達があの家に帰りたいなら連れて行くけどどうする?”
『『『『『クワ~♪(帰る~♪)』』』』』
感激したニワトリモドキ達に押しつぶされかけました…
お、重い……
“そうなると君もついてくるか?”
そう白い虎の子に聞くと
『フニャ~♪(行く~♪)』
というご返事でしたので連れて行くことに。
内心では「モフモフゲットだせー!」とガッツポーズを取っていたのは内緒です。
“とりあえずこれどうにかしないとな…”
そう、熊公達の死体を見て考え込む。
四次元背嚢やポシェットのことはこちらの世界の人には知られないほうがいい。
となると…どこかでリヤカーでも作って運ぶか?
まぁ、とりあえず森を出るまでは背嚢に格納しておこう。
そんな訳で『探知』スキルレーダーの下にマップを表示させ山から下りることに。
とりあえず山というか森から出るのは西に下るのが早いみたいだ。
そして南に進めば村まで1時間もかからないだろう。
森を出た時点でリヤカー作るか。
村に帰るまでの間だけでいいのだから全木製でも大丈夫だろう。
帰ったらばらして薪の一部にでもしたらいいし。
そんなわけで四次元背嚢に6頭の熊公と1頭の青熊公をほうりこみニワトリモドキ15羽とニワトリオヤブン2羽をひきつれ子虎はどこぞの小説みたいに私の頭の上に載せて下山開始。
本当は両手で抱えておきたかったが山道で両手がふさがっているのは不味いので頭に載せるだけでガマンガマン。
…頭の上でもモフモフ感がたまんねぇ…
“そういや、君の名前どうにかしないといけないね…”
子虎に対してそう言う。
ちなみにニワトリモドキ達はマリちゃんの管轄であるから俺が勝手に名前を決めるわけには行かぬだろう。
それに多分だが飼われていた頃に名前つけられているような気がするし…
そんなことを考えながら山を1時間かけて降りた。
途中地球の猪そのまんまんの『ブラウン・ボアー』1匹とまたもや灰色狼『フォレストウルフ』の群れ8匹と遭遇。
いずれも肩にかついてたM4カービンで仕留めた。
ますます荷物が増えてしまった。
ところで熊の時慣れたのかニワトリモドキも子虎も銃声程度ではびくともしなかった。
そういやあの時音と光りだけならもっと大きなスタングレネート使用したっけ…。
あれが基準なら銃声なんか小さいか…。
山を出て一旦草原に出た後少し皆には待っててもらった。
というのもここでリヤカー製造するつもりなのだ。
でだ、俺のリヤカーの記憶というのは自衛隊のどの駐屯地でも見られるあれだ…
あのリヤカーって自己製作のため正規の備品ではないのな。
でも大体皆同じ大きさで構造的にも同じだから多分図面でも存在するのではないかと思う。
リヤカーの図面なんて見たこと無いけど。
そんなわけでさすがに四次元背嚢の中の装備一覧の中にもリヤカーは存在してなかった。
大型トラックや軽装甲車・偵察車、さらには偵察オートバイ、トドメに対戦車ヘリまで一覧に入っていて思わず引きつったがそんな過剰装備出したら村の人間がひっくり返るよ。
あっ、でも王都に行くときは近くまで車かバイクもいいかもしれない。
あれら使ったら1時間もしないで王都につきそうだ。
とまぁ、あんなオーバースペック品は大量にあるのにリヤカーらしきものは一覧にはなかった。
1万9千5百トンもある新鋭護衛艦『いずも』なんて一人でどう動かせというのかさっぱり判らん。
それよりリヤカー1台のほうがよっぽど役立つのに…。
まぁ、愚痴をいってても始まらないわけで…
とりあえず手ごろな大きさの木を1本風魔法ランク2『ウィンドウカッター(風の刃)』で切り倒す。
さらに20cmほどの厚さに横に切り真円に『ウィンドウカッター』に加工。
後残りの部分は棒状や板状に加工。
あとは継ぎ手加工し止め具も木材で製造。
風魔法便利だな…
なんかこの世界の他の人は出来そうも無いし他人の前では自粛しよう…
車輪部分は加工が面倒なので単に輪切りにし真円に加工して真ん中に穴を開けた木材をはめ込んだだけ。
まぁ、そっちの方が丈夫だし…
組み立てたものを一度手に持って引いてみると…
お、重い…
いや、重量無視して組み立てたからこうなることは判ってはいたよ。
なにしろ車輪もそうだが…軽量化一切考えずに作ったんだから…
まぁ、自分で動かせないなら動かせるものに動かせさせたら言い訳で…
土魔法ランク7『ゴーレムメーカー』…
地面からニョキニョキと土が盛り上がりごつい体型の人型になると素材が岩に変わる。
そう自分で引けないなら力持ちに引かせれば言いと。
まぁ、この世界中級魔法が1つでも唱えられたら大天才らしいから…
中級魔法ってランク4~ランク6なんだよね…
ランク7の魔法も自粛対象だな…
なんかアイテムでも作ってそれでしてますと言い訳でもするか?
で、たまたまこの時ニワトリモドキの方を見たんだが…
全匹ビックリして固まっていた…
“あはははは…このことはナイショでお願い…”
全匹に高速で頷かれてしまった。
荷台に本日の狩の成果を全部四次元背嚢から出して積み上げ準備完了。
ついでにニワトリモドキ達にも楽だから乗るように言ったら全羽熊の上に乗ったよ。
思いっきり熊に蹴り入れてたけど(笑)
“さておうちに帰りましょう!”
「「「「「コケーー!」」」」」
「ウニャ~ン♪」
夕日の中を村目指して歩く。
30分も歩けば村に着くはずだ。
さてゴーレムのいい訳どうしようか…
作者耐え切れなくなってモフモフ要員投入しました!! (笑)
おかしいな…本来なら王都でモフモフ要員登場の予定だったのに…
しかも…予定してたものと違うモフモフ要員だし…
予定してた赤熊猫どこにいった?
サブ候補は九尾の狐だったのだが…
…あれ???