9 風雲急を告げる
2月27日、夕刻
久方ぶりのセロ村が──カインにとっては初めて訪れるセロ村が──姿を現した。
「お前ら……間に合ったか…!」
門の警備に立っているのはスマックだった。げっそりと窶れた様子で開口一番、彼はこう言った。ヴァイオラは何か不安げな空気をかぎ取った。
「何かあったの」
「ヴァイオラ、すぐに村長の家へ! 危篤なんだ!」
早すぎる。ヴァイオラは思った。だが、覚悟していたことではあった。
「わかった」
すぐに走り出そうとする後ろから、「私も行きます」とラクリマが声をかけた。
「行くよ」
ヴァイオラは振り返らずにラクリマに答えた。走って村長宅へ向かった。
村長宅で護衛の女戦士に案内され、一室に向かった。
そこにはベルモートとブリジッタ、キャスリーン、それから見たことのない男が一人いた。見たところ、ベルモートに少し似て、ベルモートをもっと崩したような顔をしているので、もしかして冒険者になって飛び出した長男かもしれないな、と、ヴァイオラは思った。
「お婆さん!」
「ラクリマ!」
キャスリーンはラクリマの姿を認めて、抱きついてきた。
「ごめんなさい、お婆さん。私、戻ってきました」
「ああ、いいんだよ。戻ってきてくれればそれで…」
ヴァイオラはラクリマに「あとにして!」と邪険に言い放つと、取るものも取り合えず、村長の寝台の前に進み出た。寝台に横たわるアズベクト=ローンウェルの青ざめた顔を見た。死期が迫っていることは、だれの目にも明らかだった。
後ろからラクリマもきて、彼の様子を診た。ヴァイオラを見上げ、そっと首を横に振った。二人は小声でやりとりした。
「…どのくらい?」
「……今夜を越せるかどうか」
後ろから声がかかった。
「なんだ、お前は」
顔の崩れた男らしい。ベルモートがそばで「兄さん、ほら、話したでしょう。例の冒険者の方々ですよ」ととりなすのが聞こえた。
(兄さん……やっぱり、長男か)
そのとき、村長が目を開いた。ヴァイオラを見て「戻ったか…」と弱々しく言った。
「ええ、ただいま戻りました。お話しして大丈夫ですか?」
村長が首を縦に振ったので、ヴァイオラは他の人間を追い出しにかかった。
「大事な話があるから出ていってください」
「何だと、お前…」
長男がいきり立ったが、ヴァイオラは「ほら、出た出た」と押し出した。ラクリマも素直に部屋の外へ追い出された。
(主導権は私にあるってことを知らせておかないと…)
ヴァイオラはキャスリーン以外を部屋の外に閉めだしてから、村長の枕元に戻った。
「スルフト村村長からの返書です」
そう言って、キャスリーンに書簡を渡した。キャスリーンは封を開け、アズベクト村長が読めるようにそれをかざしてみせた。
「………」
村長は書簡を読んだあと、ヴァイオラにもそれを読むように頼んだ。ヴァイオラはキャスリーンから封の開いた書簡を受け取り、読んだ。
コルツォネート=カークランド村長より
ご依頼の件、喜んでお手伝いさせて頂きます。若い未婚の猟師を4名ばかりそちらの村に移民させるよう手配を取りました。後日受け取りに来るよう願います。
礼については、お気になさらずに。移民する者は、性格面を含めて我らがスルフト村と貴セロ村の品位を落とさないであろう人物を選定いたしました。彼らが、貴セロ村に受け入れられ、以後セロ村の村民として生活していけることを切に願います。
「そなたたちにまた、人を迎えに行ってもらわなければならない」
ヴァイオラが書簡を読むのを見ながら、村長は言った。
「他に頼める者がいないのでな」
村長の目の合図で、キャスリーンが文箱を取り出した。
「中に契約書が入っておる。スルフト村との往復に関する契約だ。頼めるか」
ヴァイオラは契約書に目を通した。条件としては今までと同じ、低料金で、食費が含まれるのが利点といえば利点だったが、それ以外に何の旨味もなかった。だが、ヴァイオラは死にゆく者の願いを退ける気など、毛頭なかった。署名を待つばかりに用意された書面に、彼女はペンを走らせた。
「ありがとう」
村長の顔にほっとした表情が浮かんだ。
「さて、わし亡き後の村長のことだが…」
アズベクトはいきなり核心に切り込んだ。
「3年間の猶予期間を作ることにした。それについては手配済みだ。すでにフィルシムから執政官も招いてある」
村長の説明によると、次のようなことだった。
3年の猶予期間中、村の運営は合議制によって決める。合議を行うのは、村長候補のガルモート、ブリジッタ、ベルモートと、猟師ギルド長のベアード=ギルシェ、二頭制を取っている木こりギルドの長であるガットとヘイズ、村の重鎮キャスリーンの7名である。このほかに外部から執政官を置くが、執政官は村の経理を司る者であり、他の面には基本的にタッチしない。要するに金庫番である。
さらに、村にはアドバイザリー制度を敷く。アドバイザーはヘルモークと、ヴァイオラである。ちなみに、先ほど言った執政官には毎月500gpが、アドバイザーの二人には毎月100gpの給与が支払われる。
「よくヘルモークさんが承知しましたね」
ヴァイオラが驚いて尋ねると、村長はちょっと笑ったようだった。
「なんのかんのと言っておったが、最後は引き受けてくれた。…そなたにも頼めるか。契約書は用意してある。これがあれば、ガルモートらもそなたに無体なことはせんだろう」
ヴァイオラは契約書を渡され、署名した。
「つかぬ事をお伺いしますが、大丈夫なのですか、執政官に毎月500gpも支払ったうえ、私とヘルモークさんにまで100gpもの給与を…?」
「すでにその分はわしの財産を切り崩して作ってある。そなたが案ずることはない。もっとも…」村長はまた笑みを浮かべた。「ヘルモークは頑として受け取りたくないといって、給与のほうは辞退されてしまった」
ヘルモークさんらしい、と、思いながら、ヴァイオラはふとあることに気づいた。
「合議制のメンバーの中にスピットが入っていませんが……なぜ彼は…?」
スピットとは、この村の神殿の司祭の名だ。もとはヨソモノだが、人好きのする性格から村にとけ込み、村娘のブレンダと結婚して子どもももうけている。かたちだけでも彼が村の運営に関わってこないのは、妙な感じがした。
「村長、ちょっとおやすみになられたほうがいい」
キャスリーンはそう言って、ヴァイオラを部屋の隅に呼んだ。そして彼女たちが留守にしていた間に起こった事件──ヴィセロ事件の顛末を語ってきかせた。
「いやあ、吃驚したぜ、とにかく」
スマックは村の入り口で、あれからずっとGたちと立ち話をしていた。
それは一同も驚くような話だった。先月来、村に滞在していた巡礼女のヴィセロが、実はドッペルゲンガーだったというのだ。神殿でエリリアを食べているところを見つかり、退治されたという。
「エリリアが…」
セリフィアは愕然とした。エリリアというのは、ジェイ=リードの恋人だった。彼がフィルシムに出奔したあと、その心の隙を狙われて捕まってしまったらしい。そういえば村を出る前、よく二人で一緒にいるのを見かけたな、と、彼は思い返した。
「スマックさんたちが退治したんですか?」
アルトがそう尋ねると、スマックはちょっと情けない顔つきになって言った。
「いや、俺じゃない。ちょうどそのとき、村長の長男のガルモートっていうのが冒険者パーティをひきつれて戻ってきててな、そいつらが倒してくれたんだ」
ガルモートという名前は、セリフィアやGも聞いたことがあった。確か冒険者になると言って村を出奔した村長の息子だ。
「とにかくそれで大変だったんだ。ガルモートたちはそのあとアンデッドもやっつけたし…」
「アンデッド!?」
Gが声を上げるのに、スマックは疲れた様子で答えた。
「ああ、それはつい一昨日のことなんだが、夜、墓地からゾンビが大量発生したんだ」
「大量って、どのくらい?」
「6体だ」
それは確かに大量だ、と、一同は思った。
「ちょうどレイビルの夜勤日だったんだが、これもガルモートたちが退治した。おかげでレイビルのやつの株が下がっちまって……俺も管理不行き届きだって怒られるし……」
スマックは大きな溜息をついた。
「本当は今の時間もレイビルの当番なんだ。でも出てこないから俺がやってるの。レイビル、昨日の日勤は出てきてたのになぁ……」
彼の窶れた様子はそれでか、と、一同は納得が行った。
「バーナードたちはどうしてたんだ?」
セリフィアが尋ねると、スマックは、
「バーナードたちは、どっちの事件のときも護衛で森に入ってたんだよ」
と、答えた。それから付け加えて言った。
「バーナードは兄ちゃん以上に無口だが」──兄ちゃんというのはセリフィアを指したらしかった──「村での評価は高いぜ。実力も実行力もあるし、なんといってもブリジッタの夫だからな」
「他には? あのエリオットたちはどうしたんだ? もういないのか?」
今度はGが尋ねた。
「いや、まだいるぜ。ああ、そうだ、エリオットたちはエイトナイトカーニバルとかいう迷宮をアタックして、そのあと無事に帰ってきてたな。それからハイブコアにもアタックをかけてた。だが、空っぽだったって話だ」
「……移動したんですね」
アルトが静かに言った。スマックは肯いた。
「そうだろうって話だ。ああ、嫌になるぜ。村長は危篤だし、最近暗くて…」
溜息混じりにスマックが話しているところへ、背後から鎧と靴の音が響いてきた。一同が振り返ると、ちょうどエリオットの一味が村に帰ってきたところだった。
「なんだ、お前らか」
開口一番、エリオットは言った。Gはつとエリオットの前に歩み寄り、出し抜けに膝を折って言った。
「この間は申し訳なかった」
後ろで見ていたセリフィアやアルトは驚いた。Gの口からそんな謝罪が出るとは思ってもみなかったのだ。
Gの謝罪を受けたエリオットは、嬉々として言った。
「いやいや、もう済んだことだ。まぁ、俺はそんな心の狭い男じゃないしな」
単純で根に持たないのは、このバカ殿の長所らしかった。彼は上機嫌で後ろの面々を振り返り、
「な、俺が言ったとおりだろ?」
と、同意を求めた。
何をどう言われていたのかあまり考えたくなかったが、ギルティが入村税をスマックに支払う脇を、エリオットはるんるんと村に入っていこうとした。一同はその彼が、金ぴかの鎧には不釣り合いなみすぼらしいマントを羽織っているのに気がつき、視線を集中させた。
「あ? あ、これか?」
エリオットは皆の視線に気づき、少しばかり恥ずかしそうにマントを広げて見せた。
「いやまぁ、こんなみすぼらしいマントは俺としては着けたくないんだが、あいつらがどうしても着けろといってきかないんでなぁ…」
照れながら、彼はそう話した。どうやら魔法のマントらしかった。
「…村が騒然としていますが、何かあったのですか」
もう一人の戦士アルバンが口を開いた。スマックは「村長の具合が悪いんだ」とだけ答えた。エリオット組の面々は──エリオット以外──顔を見合わせた。
「今回も大変だったぞ。そなたもその場にいれば私の活躍ぶりを見られただろうに…」
エリオットが楽しく話しかけてくるのを、Gは軽くあしらった。
「あなた方もお疲れだろう。まずは宿に入られてはいかがか。あなたの活躍は折を見てゆっくりお聞かせ願いたい」
そう言って彼女はにっこり微笑んでみせた。エリオットは「そうかそうか」とさらに鼻を高くして、「森の女神」亭の方へ歩いていった。
「………お前、なんだか変わったなぁ」
スマックがGに話しかけた。Gはちょっと笑ってみせた。
「今のは?」
「今のはエリオットさんと言って、ガラナークの騎士の嫡子です。ボクたちがセロ村を出る直前に来た冒険者たちのリーダーで…」
アルトはカインに説明した。スマックはそれを見ていたが、説明が終わると、
「新顔かい?」
と、カインに話しかけた。カインは「よろしく」と言って肯いた。
「彼はカインさんっていうんです」
アルトがカインをスマックに紹介した。
「俺はスマックだ。よろしくな」
スマックがそう言うそばからGが割って入った。
「こいつ、レスタトにそっくりだから」
「え?」
スマックは一寸、カインを注視した。が、夕方でもあり、下半分が覆面で隠されていることから、それほどよくはわからないようだった。
「お前らもそろそろ宿に入ったほうがいいんじゃないか? ヴァイオラが帰ってきちまうぞ」
「あ、そうですね。あの大部屋、空いてるんでしょうか。ボク、先に行って聞いてきます」
急いで歩いていくアルトの背後から、スマックが声をかけた。
「慌てなくてもだれも使ってねえぞ~」
「俺たちも行くか」
セリフィアのかけ声で、Gとカインもアルトのあとを追った。
「ヴィセロがドッペルゲンガー…」
この話はヴァイオラをも少なからず驚かせた。そして……かわいそうなエリリア……彼女の境遇には心から同情を禁じ得なかった。
「それでスピットを非難する声が高まっての」
キャスリーンは暗い顔をして話を続けた。
ヴィセロは神殿に起居していた。そのため、「神殿を危険なモンスターの温床にした」として、司祭のスピットがやり玉にあげられることになったというのだ。もちろん、これにはガルモートが絡んでいるらしく、彼のグループの神官が司祭の後釜になることを狙って、ガルモートはヴィセロ退治の功労者として先頭に立ち、とりわけ厳しく糾弾しているとのことだった。
「スピットはいずれこの村にはいられまいよ」
彼は家族を連れてフィルシムに移り住むことになるだろう、と、キャスリーンは告げた。それまでの口ぶりから、彼女がガルモートの仲間の神官を毛嫌いしている様子が見て取れた。
「ヴァイオラ、ちょっと」
寝台の方から村長の声がした。続いて彼は、
「キャスリーン、悪いが席を外してくれぬか」
と、言った。キャスリーンは軽く一礼して、部屋を出ていった。
「お呼びですか」
ヴァイオラは村長の枕元に寄った。
「3人の候補について、そなたにだけは私見を述べておきたい」
村長はそう言って、子どもたちについての評を述べ始めた。
まずブリジッタ。3番目の子どもで、次女である。
「以前にも言ったが、わしの子どもたちの中で一番優秀だ。だがわしは…」
どうしてもバーナードのことを好きになれない、と、村長は再び断言した。娘を奪われた親心を差し引いても、彼には何か胡散臭いところが、油断のならない何かがある、と。
「この村に真に何があるか、それはわしにもわからぬし、それにそれだけの価値があるとも思えんが、それを狙っているのかもしれないという思いが頭から消えてくれぬ。バーナードは村や自分の父親と喧嘩別れしたというきな臭い噂もあって、わしはどうしてもあの男は信用できないのだ」
(…村長がそこまで言うのなら、バーナードにも何か裏があるのかもしれない)
ヴァイオラはバーナードに対する不信感を新たにした。
次にベルモート。4番目の子どもで、次男。
「ベルモートがもう少し…もう少し成長してくれれば……」
村長は「死にきれない」というように呟いた。
ベルモートは器の大きい人間ではない。発展型の人間ではない。だから村の発展を望むことはできない。だが、彼が村長になれば村は安定するはずだ。思慮に欠けるわけではないので、あとは配慮に欠けないでさえくれれば、村長として危なげなくやっていけるだろう。
「よいパートナーでも見つけてくれればなぁ……よくなるかもしれないのだが」
村長はそう言って目を泳がせた。ヴァイオラは、自分にベルモートのサポートを求められているのだろうかと考えてみた。そこで少し奇妙なことに思い当たった。村長は決してベルモートの「結婚」については触れようとしなかった。「パートナーが見つかれば」とは言ったが、「身を固めてくれれば」とは言わなかった。何かあるのだろうか?
そう考えているうちに、話は次に移っていた。
ガルモート。2番目の子どもで、長男である。
「はっきり言って、駄目じゃ」
村長はにべもなく言い切った。
「思慮なく、野心がありすぎる。それに仲間たちも胡散臭すぎる。特にあの僧侶は曲者だ」
村長の言葉は、先ほどのキャスリーンの態度を裏付けるものだった。ヴァイオラはまだその僧侶には会っていなかったが、ガルモートを見ればどういった徒党を組んでいるか、予想はついた。
「しかし3人のうちで一番強硬で強引なところがある。下手に動けば話がこじれること必定だ。それに困ったことだが、村に対しての第一印象も良かった。バーナードたちの不在時に、本当に危なかったところを救われたからの。しばらくはガルモートを中心に動いていく恐れがある。それを監視せねばならないだろう」
村長はそれだけ喋ると、ぐったりとなった。ヴァイオラはそろそろお暇せねばと思いながら、最後に質問した。
「巻物の意義はどうすれば村の人たちにわかってもらえるでしょうか? たとえば、巻物を持っている私とキャスリーンがともに反対している人間が村長になってしまったら…?」
村長は再びうっすらと目を開けた。
「それは致し方あるまい。もともと合議制であるし、わしにはその巻物の有効性がわからぬのだ。わからぬ以上は、そういうことになっても仕方ないと思う」
「わかりました…」
外からノックの音がした。キャスリーンが心配して様子をうかがおうとしているのだろう。ちょうどいいから、と、ヴァイオラは村長に暇を告げた。
先ほどから部屋の外では、村長の子どもたちが小声で喋るとはなしに喋っていた。ラクリマは少し離れたところからそれらの会話を大人しく聞いていた。
「俺が帰ってきたからには、お前はもう村長になるつもりはないだろ」
ガルモートが──あれが村長の長男でガルモートだというのは、途中から部屋を出てきたキャスリーンが教えてくれた──ベルモートに向かって高飛車に言うのが聞こえた。
「ブリジッタもどうすんだ?」
ガルモートはベルモートの答えも待たずに、今度はブリジッタに向き直った。
「お前、冒険者と駆け落ちしたんだってな。それならこの村にも留まる気はないんだろ」
「今はそんなことを言っているときじゃないでしょう」
ブリジッタはやんわりと、だがやや冷たい空気を含んだ声でガルモートに答えた。
「お父さんが心配じゃないの?」
「心配だ! 心配だとも!」ガルモートは喚いた。「だが同じくらい、領主の息子としてこの村が心配なんだ!」
不思議なことに、ガルモートのその言葉は、どうやら本心から出ているらしいとラクリマは思った。すぐ隣でキャスリーンが舌打ちするのが聞こえた。
「全く……村長がこんなときに兄弟であんなことを……あの中から領主を選ぶなんて、嘆かわしいことだよ」
ずいぶん時間が経ったようだった。キャスリーンは控えめに村長の部屋の扉をノックした。
ヴァイオラがドアから現れた。彼女は他の人間が中に入らないように後ろ手に扉を閉め、「村長はおやすみだ」と子どもたちを睨め付けながら言った。
「村長はおやすみだそうだ。お前たち、もう戻りな」
キャスリーンは3人の子どもたちに言い放った。ガルモートが何か言おうとするのを遮り、
「うるさくするんじゃないよ」
と、静かに一喝した。ガルモートは舌打ちしてから出ていった。ブリジッタやベルモートも後に続いた。
「おばあさん、大丈夫ですか。もしお疲れなら、私、しばらく代わりに見てましょうか」
キャスリーンが村長のもとに戻ろうとするのを見て、ラクリマは申し出た。
「大丈夫だよ」
キャスリーンは少し微笑んで言った。
「それよりお前さんも来たばかりで疲れているだろう。まずは自分がゆっくりおやすみ。明日から手伝ってもらうかもしれないからね」
「はい。何かあったらすぐに来ますから、いつでも呼んでくださいね」
ラクリマはキャスリーンにそう言って、ヴァイオラとともに村長の家を辞した。




