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1 振り返る彼女

 一番長い日が終わり、明けて1月24日になった。


 朝の5時前から、ラクリマはお祈りをあげに神殿へ向かった。神殿に入ると、昨日の朝と同じようにヴィセロがいて、同じようにそそくさと出ていこうとした。彼女のまなざしがあまりにはっきりと敵意を湛えていたので、ラクリマは思わず尋ねた。

「あの…私、あなたに何かしましたか…?」

 ヴィセロの答は、思ってもみなかったものだった。

「あなたがいけないのではありません。冒険者がいけないのです」

 そう言い捨てて、彼女は神殿から出ていってしまった。ラクリマは茫然と立ちつくした。彼女が何を言いたいのか、少しもわからなかった。

 だが気を取り直して祭壇へ向かい、跪いて祈りをあげ始めた。昨日同様、レスターの魂の安息と──「魂の祈り」により「消滅」した魂の安息を祈るのも妙だったが他に何もできなかったので──セロ村の平安とを祈念した。それから、やっと自らの懺悔に入った。


 6時になる少し前、宿ではGが起き出していた。ごそごそと離れの部屋を抜け出し、「森の女神」亭の屋根に登った。昨日と同じように、あるメロディを歌いだした。歌うといっても、彼女のそれは「歌」ではなかった。笛で奏でられる旋律を真似ようとして苦労していた。

 なぜそんなことをしているかといえば、彼女の「母さん」が友だちのロック鳥らを呼ぶときに、笛でこのメロディを吹いていたことを思い出したからだ。彼らを呼ぶことができれば、フィルシムへもあっという間に運んでもらえるはずだから。少しでも仲間の役に立ちたいから。笛の真似だなんて、無理だと笑われるかもしれない。それでもいい、自分にできることは今、これだけだから。

 しばらく歌ったあとで、Gはぺたりと屋根に座り込んだ。何も現れる気配はなかった。今日もだめみたいだ。また明日、がんばろう。


 朝食にはほど早い時刻に、ヴァイオラは起床した。隣の二人がもういないことは、夢うつつに物音を聞いて知っていた。二人とも勤勉なことだ。

 カーテンを挟んで向こう側の男性陣は、だれ一人起きる様子がなく、皆、安眠を貪っているようだった。そうだね。休めるときに休んでおいで。ヴァイオラは無言で部屋を出た。

 真新しい石の塚が、身の丈より長い影を河原の上に落としていた。ヴァイオラはこの「坊ちゃん塚」に近寄り、今日も一つ石を積んだ。束の間、厳しい目をそこに据えていたが、踵を返して宿へ戻る道を歩き出した。村はもう目覚めていた。


「あの……ちょっとだけ森に入っちゃいけないでしょうか。そんな奥に行くわけじゃなくて…薬草を採りに行きたいんですけど」

 朝食のときにラクリマがそう言ったので、セリフィアは険しい目を向けた。奥だろうが手前だろうが森は危険だ。

「行くなら護衛についていく」

 一緒に行くのを断られたら、危険だから森へは行くなと反対するつもりだった。

 ラクリマは断らなかった。ただ、申し訳なさそうにセリフィアに言った。

「…一日かかっちゃいますけど、いいですか?」

 セリフィアは頷いた。

「それはいいが、あくまでも安全第一だから」

「雨が降り出したみたいですよ」と、給仕に来たマルガリータが口を挟んだ。セリフィアはラクリマに「どうする?」という目を向けた。

「…雨があがったら出かけます」

 ラクリマはそう言って口をつぐんだ。


 午前中はずっと雨だった。ヴァイオラはセロ村村長アズベクト=ローンウェルに会いに、村長宅へ出向いた。今日は一人で行った。

 村長は、一ヶ月前からは考えられないような鄭重さでヴァイオラを迎え入れた。

 ヴァイオラは、まず、自分たちの今後の基本方針を述べた。ほぼ全員が活動を継続することを報告すると、村長の顔にほっとしたような表情が浮かんだ。彼女はまた、力量のある冒険者たちが現れたら、村の防衛を一時的に彼らに任せて、自分たちは一度フィルシムへ行きたい旨を伝えた。そのうえで村のスケジュールをどうするか尋ねた。猟師たちはともかく、木こりたちに全く森へ入るなというのは、木こりたちにとってもセロ村としても無理だと思ったからだ。今後どういう予定で護衛につけばいいのか、また、猟師は他所から補充するのか、などを確認した。

「猟師を送って欲しいと、スルフト村への手紙はしたためておいた」

 村長は書簡を取り出した。宛先はスルフト村村長、コルツォネート=カークランドとなっている。

「そなたたちはいずれフィルシムへ行くのであろう。その折りにこの手紙をフィルシムまで持っていってほしい」

 フィルシムから先はどうするのかを尋ねると、村長は答えた。

「フィルシムとスルフトの間はほぼ毎日隊商が往き来している。フィルシムの隊商ギルドへ持っていってくれれば、あとはどうにでもなるはずだ」

 同じ北方の村でもずいぶんと差があるらしい。この村には月に2度しか隊商が来ないというのに。

「それと、護衛のローテーションのことだが」

 村長はヴァイオラが書簡をしまい込むのを見ながら続けた。

「再考しよう。明日は無理なので、おそらく明後日からまた護衛をしてもらうことになるだろう」

「わかりました」

「………信頼できる冒険者たちが村に来たら、すぐに出かけるつもりか?」

 ヴァイオラはすかさず、「バーナードたちが戻ったらすぐに出かけます」と、答えた。

 バーナードたちというのは、先だってこの村にやってきた一団で、リーダーのバーナード=ロジャスの妻は村長の下の娘、ブリジッタだった。駆け落ち同然で村を出ていったため、村長は今でもバーナードをよく思っていない。だが、ヴァイオラの見るところ、彼らが一番安心して村を任せられそうだった。

 村長がどう反応するか見守っていると、彼は遠い目をして「そなたたちも忙しいであろう。ご苦労であった」と会見をうち切った。バーナードのことは考えたくないらしかった。

 去り際、ヴァイオラは懸念を表明した。村長も高齢なら、村の重鎮であるキャスリーンもかなりの高齢である。二人に万が一のことがあったら、その後はどうするのか、と。

「本来、わしやキャスリーンがこんな年齢になる前に、後継者を決めねばならなかったのだが……」

 村長は渋い顔でそれだけ言った。あとは続かなかった。ヴァイオラは彼の前を辞した。



 午後になって雨があがったので、ラクリマとセリフィアは森へ出かけていった。

 ヴァイオラは先日、ラストン消滅の報をもたらした伝書鳩を利用して、ガラナークの神殿に宛てて手紙を出した。手紙には、レスタトが受けた神託の正確な内容と、神殿におけるその解釈を知りたいこと、また、元はガラナーク神殿の依頼で始めたこの調査を続けるつもりか、その場合はレスタトの後任が来るのかといった今後の指揮権の所在確認を記した。そのあとで彼女は久しぶりに刺繍をすることにした。精神集中するのにちょうどいいからだ。

 すぐ隣で何やらがさがさしていたアルトが、縫い針を貸して欲しいというので貸してやった。アルトは縫い針に糸を通したあと、パチンと指を鳴らした。途端に縫い針はひとりでに動いて、穴をかがりツギをあて、彼のローブを繕った。小魔法キャントリップを使ったらしい。

 アルトはローブの修繕が終わると、読書に耽った。部屋には彼とヴァイオラしかおらず、静かな午後だった。


 Gは、トムの店に出かけていた。羊皮紙を5枚買い求め、トムJrに「ペンとインクを貸してくれませんか? あとでちゃんと返しますから」と頼み込んだ。本当は仲間のだれかに借りればいいのだろうが、Gはそうしたくなかった。「何を書くのか」と訊かれれば答えてしまうし、どんなところから自分のせいで仲間に迷惑をかけてしまうか、想像がつかないからだ。杞憂と笑われようとも、今は慎重に、不確実なことは一切口外しないに限る、そう心に決めたのだった。

 トムJrに借りた筆記具を持ったまま、Gはヘルモークの家へ訪ねていった。だがヘルモークはまだ帰っていないようだった。午前中いっぱい待ってみたが、やはりだめだった。Gは先ほどの羊皮紙を1枚取り出すと、こう書き付けて扉に挟んだ。


『ヘルモークさんへ

 私の事で知ってる事 全部教えてください。

 帰ってきたら 来てください。

                   G』


 一つ振り返ったあとで、彼女は宿へ帰っていった。



 夕食は相変わらず、ヴァイオラ以外は「森の木こり」亭へ食べに行き、ヴァイオラは「森の女神」亭で過ごした。

 「女神」亭の戸が開いて、ヘルモークが姿を現した。彼はカウンターに座っていたヴァイオラのところまでやってくると、「あんただけかぁ」と言った。

 ヴァイオラは厳しい目で彼を見返した。ヘルモークはさして気圧された風もなく、「そんな怖い顔するなよ」と、隣に座った。

「何かあったのかい?」

「いろいろと。ありすぎました」

「そっか。まぁ、また無事に会えて嬉しいよ」

「私たちもあなたを待っていました」

「そうかぁ、そんなに俺に会いたかったかぁ」

「『私たち』って言いましたよね」

「ちぇ」

 そんなやりとりのあとで、ヘルモークは「Gちゃんはいないのかい?」と尋ねてきた。

「ジーさんは『木こり』亭でご飯を食べてますよ。何かあったんですか?」

 今度はヴァイオラが尋ねる番だった。

「いやぁ、Gちゃんから手紙をもらってさ」

「手紙? どんな?」

 ヘルモークは昼間Gが彼の家の扉に差し込んだ紙をひらひらさせた。ヴァイオラは文面を読んで、Gが本気で自分自身と向き合う覚悟なのだと知った。ヴァイオラはヘルモークに酒を注ぎながら言った。

「もう少ししたらみんな部屋に戻ると思います。私もいろいろ話を聞かせてほしいですね」

「じゃあ、先にメシを済ませるか」

 ヘルモークはマルガリータに食事を注文すると、嬉しそうに一杯飲み干した。

 後方のテーブルでは常連のガットとヘイズが、あけっぴろげに話をしていた。猟師ギルドの話題が、カウンターにまで聞こえてきた。

「猟師ギルドの長が決まったぞ」「だれだ?」「ベアード=ギルシェだ」「おやっさんが!? あのひとは公職にはつかない主義じゃなかったか?」「この状態じゃあ、受けざるを得ないだろう。それにたぶん、ツナギ役だろうしな」「それもそうだな。ダグよりも年上だもんなぁ。…下の息子はハイブになっちゃうし、あのひとも大変だよ」

「…ベアード=ギルシェ」

 ヴァイオラはその名前を口にしてみた。初めて聞く名だった。それを聞きつけてヘルモークが、さりげなく、合いの手を入れた。

「ああ、ブレンダの親父さんかぁ」

「ブレンダ?」

「知らないか。神官のスピットの奥さんだよ」

 ダグより年上だと言っていたが、本当に若手の人材に乏しい村だこと……。ヴァイオラは胸の中でそっと溜息をついた。


 ヘルモークとヴァイオラが酒瓶を手にしたまま離れへ行くと、ちょうど皆そろっていた。二人が入るなり、部屋に酒気が漂い、アルコールの匂いのだめなセリフィアは開け放った窓際に避難した。

「よう、来たぜ」

 ヘルモークは軽くGに手を振った。それから、「新顔が増えてるな」と言った。そういえばアルトとロッツは初顔合わせになるのだった。

「こちら、虎族のヘルモークさん」

 ヴァイオラはアルトとロッツにヘルモークを紹介した。

「あ、あの、はじめまして、アルテッツァ・シリル・ノイマン=ステップワゴンと申します。よろしくお願いします」

「アル…?」

 他の例に漏れず、ヘルモークもアルトのフルネームを繰り返せなかった。

「アルトで結構です」

「ふぅん……」

 ヘルモークはアルトを頭の天辺から足のつま先まで、じろじろと睨め回した。そのあとで「俺はヘルモークだ。よろしくな」と手を差し出した。

「手前生国発します……」

 ロッツが仁義を切り始めた。この間は往来で少し遠慮していたのか、今日の仁義はやたらと長かった。ヘルモークは特に何もさしはさまず、じっと聞いていたが、長かったそれが終わると一言、「ヘルモークだ」と言って終わらせた。

「私のこと、教えてください」

 Gは真っ直ぐヘルモークに言った。

「皆の前で言っていいのか?」

「やばかったらそこだけあとでこっそり教えてくれればいいじゃないですか」

 ヘルモークはGに目を据え、ほんの少し黙りこんだ。

「しゃべってください〜」

「本当に聞きたい?」

 からかっているのか、真面目にその決意を確かめようとしているのかわからない口調で、ヘルモークはGに訊いた。

「聞きたいから手紙を書いたんじゃないですか〜」

「…そうか。わかった」

 ヘルモークはGの顔から目を離さずに語り出した。

「君は鷹族だ」

 予想通りの言葉が飛び出した。Gは食い入るようにヘルモークを見、次の言葉を待った。

「鷹族は、獣人のなかでも特殊だ。大昔にあった獣人と人間との戦いからあと、彼らは自分たちの領域に引っ込んで、人間のやることには全く干渉してこなくなった。彼らがそうすることを決めたのには理由がある。鷹族には特殊な能力があった。それで、こっち側には一切関わらないと決めたんだ」

「その特殊能力とは、御神託にあった『真実を見極める眼』のことですか?」

 ヴァイオラが尋ねた。

 「そうだ。それは『神の目』と呼ばれている。もっとも」と、ヘルモークは言った。「獣人族にはそれぞれに『能力』が授けられてんだけどね。ちなみに虎族は戦士としての能力を持ってるよ」

「『神の目』…」

 ヘルモークはGに向き直った。

「ということで、君はとっても珍しいんだ。俺だって鷹族なんか見たのは初めてだ。だから素性は隠しておいたほうがいいよ」

「…それだけ!?」

 そのくらい知ってるよ、と、言いたげにGは聞き返した。

「他に何が聞きたいんだい」

「何って…何でも」

「変身はできるのか?」

 珍しく横からセリフィアが割って入った。

「できるはずだけどね。したくないんだろうなぁ、嬢ちゃんの場合」

「それは、ジーさんが記憶を無くしていることと関係があるんですね」

「そうさなぁ」

 ヘルモークはヴァイオラに答えた。それからもう一度Gを見た。

「自分を見つめ直したければ、『記憶』を取り戻すことだな。それが一番早い。だいたい、自分で羽根をむしるなんて、なんて愚かな…」

 「だって」と、Gは反論した。「自分の体にフジツボがついてたら取りませんか!? 取るでしょう!?」

 フジツボと翼を一緒にされて、一同は呆れ返って声も出なかった。セリフィアが気を取り直して、また尋ねた。

「鷹族って、他の人たちはどこにいるんだ?」

 ヘルモークは無言で天を指さした。それから小声で「声の代わりに記憶を失ったか……」と呟いた。

「ま、とにかく『記憶』を取り戻すんだな」

 Gは不満そうな目をヘルモークに向けたが、彼は全く動じなかった。


「話は変わるが、知り合いに10フィートソードを持っているひとはいないだろうか?」

 セリフィアはGの話題が切れたものと見て、ヘルモークに質問した。彼はどこかで自分が専門としている巨大な剣──10フィートソードの修行をしたいと考えていた。

「さあなぁ…その武器は見たことがあるが…ひとは知らないなぁ」

「そうか……」

 やはりショーテスかスカルシ村まで行かなければいけないのだろうか……セリフィアはそう思って少し気落ちした。

「ところでお願いがあるんですが」と、今度はヴァイオラが別の話を切りだした。

「近々フィルシムに行こうと思っているんです。そのときに、この間のように虎に乗せてもらえないでしょうか?」

 ヘルモークは渋い顔をした。

「事情が変わったので難しいなぁ」

 ヴァイオラはなおも食い下がった。

「先日、ハイブと戦ったときに坊ちゃんの魂が消滅しました。私たちの力が弱かったからです。だから、二度と同じことを繰り返さないために強くなりたい。強くなるためにフィルシムへ行きたい。ですがそれには時間がかかります。村長には常駐を頼まれているので、代理を頼むにしてもできるだけ村は明けたくない」

 「へー、村長がねぇ」ヘルモークは感心したように言った。「村長もずいぶん丸くなったもんだ。トシかな」

「何とかなりませんか」

 ヴァイオラに言われてヘルモークは考え込んだ。

「村の周りを警戒させることはできるが、村から離れさせるわけには行かないなぁ」

「では1日分の距離なら?」

 虎にとっては1日分でも、人間の自分たちが歩けば2日分の距離だ。1日の行程が縮まるだけでもありがたい。

 ヘルモークは、それなら、と請け負った。

「1日分でよけりゃあ話をつけてやるよ」

「ありがとう」

「あとは? 話がなけりゃヴァーさんを借りてくよ?」

 ヘルモークは部屋から出ていこうとした。

 「あの…」と、先ほどから黙って聞いていたラクリマが後ろから声をかけた。「『声の代わりに記憶を』って、どういう意味ですか?」

 ヘルモークは振り返った。

「なんだ、聞こえちまったか。なら仕方ない。あんたも知ってるだろ、有名なお話のことさ。人間になって声を失った獣人の」

 その話は皆知っていた。ラクリマも、小さかったころに院長に読んでもらったことを思い出した。確か『人魚姫』というお話だった。だがそれとGがどうつながるのか、よくわからなかった。

「ま、せいぜい泡にならないように気をつけてあげるんだな」

 不穏な台詞を残して、ヘルモークはヴァイオラと一緒に部屋を出ていった。


「ヘルモークさん」

 部屋を出たところでヴァイオラは声を低めて彼に話しかけた。

「『巻物』のことをご存じですか? 実は私が引き継ぎました」

「ああ、ダーガイムの分か。あいつも頑なだからなぁ」

 ヘルモークは感慨なく口にした。『巻物』とは、セロ村に伝わる重要な品らしく、昨日の会見でヴァイオラが村長から託されたものだった。二巻あって、片割れはこの村で薬剤師をしているキャスリーン婆さんが預かっている。本来、ヴァイオラの持っている巻物は、この村に住んでいた虎族の長が持つべきものだったが、獣人たちは一年前にここを去ってしまった。ヘルモークが口にした「ダーガイム」とは、虎族の長の名前だった。

「私に何かあったときには、あとをお願いします」

「ええ〜っ。イヤだよ」

 ヘルモークは言下に拒んだ。

「そんなこと言わないでください。もう他にお願いできるひとがいないんですから」

「捨てちゃったら?」

 それは一つの手だな、と、ヴァイオラは思った。だが非現実的な案だ。

「丸めて捨てちゃえ」

 ヘルモークは無責任な発言を繰り返しながら、「女神」亭に入っていった。「しかしまぁ、あんたもよくそう次から次へとお荷物を背負い込むね」と言われて、ヴァイオラは苦笑した。そうやって厄介ごとを避けるようにしながら、村との関わりは断とうとしないヘルモークも、同じように貧乏籤を引いているように見えた。

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