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『親から子へ ~シャンテの宇宙創世記~』  作者: ひややっこ万次郎
第二章:星を駆けるオーロラ、二つの軌道
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第五話:星を駆けるオーロラ、前世の残響1

最高意思決定機関「テトラグラマトン」の広大な神域から、それぞれの担当惑星へ向けて、二つの全く異なる光が宇宙空間へと放たれた。

第三惑星・地球(アース)を目指すシャンテとティアンの二人が駆る舟は、陽光を凝縮したかのような神聖な黄金の輝きと、生まれたての生命を思わせる瑞々しい青い光をまとった、星を駆けるオーロラの船「オリゾン(Horizon)」であった。

アポロン(太陽)系に流れる聖なる周波数の光の帯(オーロラの河)を捉えた瞬間、二人の足元に虹色に輝く星屑の雲が集まり、まるで有機的な雲の舟のように滑らかに宇宙の海を滑り出した。

宇宙の自然なエネルギーにアンテナを合わせ、命の温もりを肌で感じながら進む、アミティエ(愛・友情)とブークリエ(盾・守護)の神殿にふさわしい美しい旅路。

しかし、その旅立ちの直後、空間を切り裂くような凄まじい駆動音とともに、もう一つの硬質な光が猛烈な速度で並走し、彼らを一瞬で捉えた。

第四惑星・火星(マーズ)を目指すエリート女神オルタンスの乗る銀河鉄道「ヴィトス(Vitesse)」である。

テトラグラマトンが敷設した、寸分の狂いもないクリスタルのような光のレール。

その上を、冷徹なまでに完璧な幾何学形状をした結晶の列車が、一切の無駄なく滑走していく。

自然の波に左右されず、鉄の規律で空間を固定して突き進むその姿は、オーディル神殿(規律・秩序)の圧倒的な力と機能美を象徴していた。

二つの乗り物が宇宙の闇の中で並びかけたその瞬間、「ヴィトス」の強固なクリスタルガラスの窓が静かに開き、オルタンスが冷ややかな、しかし揺るぎない誇りを持った瞳でシャンテたちを見下ろした。


「相変わらず生ぬるい速度ですこと、シャンテ。

そのようなおがくずの雲の舟で、オルテリウスの凄まじい残響の嵐を超えられると思って?

せいぜい、その盾持ちの少年に泣きつくのがオチですわ」


その傲慢な言葉に、ブークリエ神殿の少年神ティアンがとっさに「オリゾン」の舳先に立ち、自らの守護の神力を小さく放ってシャンテをかばうように立ちはだかった。


「黙れ、オルタンス! 僕のブークリエの盾を侮るなよ! 僕たちが進むオーロラの波は、お前の鉄のレールなんかよりもずっと深く、命の底と繋がっているんだ!」


シャンテもまた、アミティエの澄んだ瞳で、窓越しのライバルをまっすぐに見つめ返した。

その声には、ゼウスの天裁を受けた一人の女神としての確かな覚悟が宿っていた。


「私は逃げないわ、オルタンス。あなたが火星から見届けるというのなら、見ていなさい。私はお母様のように、愛と友情の調律で、地球を本当の平穏へ導いてみせる!」


「ふん、その未熟な青いお花畑が、いつまで持つかしら。火星の地であなたの破滅のノイズを待っていますわ」


オルタンスは冷徹な気品に満ちた不敵な笑みを浮かべると、ドレスの裾を翻して窓を閉じた。次の瞬間、「ヴィトス」は空間を射抜く光の矢となって加速し、シャンテたちの「オリゾン」を置き去りにして、第四惑星・火星(マーズ)の軌道へと猛烈な速度で突き進んでいった。

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