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旅立ち


 キスフレア家は、ウェルスが受け継ぐことになった。全ての権限と、領地はウェルスが受け継いで管


理するとの事。それにともない、屋敷も大きく変わるかと思われたが、この屋敷の管理はセレスに委託


され、変わった事は特にない。

 一方で、リリードはと言うと、裁判にて、正式に刑が決まった。結局、最後まで正気を取り戻さなか


ったリリードに下された判決は、終身刑。ただ、精神に魔術的な干渉が見られる事から、同時に治療も


施されるとか。

 地下に囚われていたトンキ族達は、ナーヤが国へ、ウェルスの協力の下、連れて帰った。その中には


、レーニャも含まれる。レーニャは、リリードと違ってイカれた兆候は見せないが、心を閉ざしたまま


で、まるで魂の抜け殻のようだった。それを、助ける事ができたと判断していいのかどうかは分からな


いが、あとは自分の仕事だから、気にすることはないと、タニャに言われてしまった。

 そんなトンキ族に、セレスの国のお偉いさんまでもが謝罪に赴いたとか言っていたが、これを機に戦


争が始まらない事を祈るばかりだ。


「本当に、行くのか?」


 早朝の、屋敷の前。セレスに、ティアに、世話になったメイドさん達がずらりと並んでいる。目的は


、オレの見送り。


「傭兵部隊は、オレにとって家族みたいなもんだからな……どうなってるのかだけでも、確認しないと


気がすまないんだよ」


 オレの怪我は、ようやく治り、自由に動けるまでに至っている。動けるようになってからは、体力回


復のリハビリをこなし、やっとここまで来た。

 ずっと、気がかりだった。セレスやテレスは、この時代の自分になりかわっているが、オレはどうな


っているか分からない。まぁ、この時代の自分がいるとしてもいないとしても、もう、オレの居場所は


、そこにはないだろう。ちょっと寂しいけど、仕方がない。


「……すまない。私の我侭に巻き込んだせい、だな」


 別れ際だというのに、セレスはしみったれた表情になってしまった。オレは、そのセレスの頭に手を


乗せて、笑いかける。


「その代わり、新しい居場所ができた。将来、ナーヤ達とも戦わずに済みそうだ。後悔なんて、どこに


もねぇよ。だから、気にすんな」

「……」


 顔を上げるセレスだが、どうにも煮え切らないようで、その表情は複雑そう。


「じゃあな。その内帰ってくるから、そん時に、結果報告でも聞いてやってくれ」


 そういって、セレスの頭からどけた手を、セレスが両手で握ってきた。そして、じっとオレの顔を見


つめてくる。

 どうしよう。果てしなく、行きにくい。オレの心を揺れ動かすセレスの行動に、オレの足は、歩き出


す前に完全停車だよ。

 しかし、いつまでもそうしてはいられない。やがて、セレスがオレの手を握る力を緩め、離そうとす


る。

 その手を、強引に上からつなぎとめた、小さな手があった。


「まぁ待つのじゃ」

「お前、どこにいた……て、その荷物はなんだ?」


 そのテレスの姿は、あの日の冒険服に、大きなリュックを背負っているという、いかにもどこかへ冒


険に出かけるような格好だった。


「わしも、お兄ちゃんについていく」

「はぁ!?」

「お姉ちゃんも、元よりそのつもりじゃ」

「はあぁ!?」

「ふ。騙されたな、レイス!その通り。私も一緒に、行くぞ」

「あと、私もご一緒致しますので、そのつもりで」

「はああぁぁ!?」


 そこで更に、挙手したティアに、オレの驚きが止まらない。

 更には荷馬車まで用意されて、そこへ乗り込んで行く。オレより先に、3名は馬車に乗ってしまい、


オレよりも出かける気満々だ。


「どうした、レイス。早く乗れ」


 呆然とするオレに、声を掛けてくるセレス。オレは、頭を掻いて、考えるのをやめた。

 差し出されたセレスの手を握り、馬車へと乗り込むと、そこには深くフードを被った人物がいた。


「……お前、国に帰ったんじゃないのか」

「戻ってきた。レイスが、旅に出ると聞いて」


 そう答えたのは、ナーヤ。フードを外すと、耳がぴょこんと飛び出し、ニコリと笑い返いながら言っ


た。

 一人旅だと思ったら、セレスと、テレスに、ティアとナーヤとの、5人旅となってしまった。オレの


知らないうちに、結託していやがったな、コイツら。

 ま、別にいいけどな。こいつらが一緒なら、賑やかで楽しそうだし。


「では、出発だ!」


 セレスの合図に、馬車が走り出す。運転手は、ティア。

 ガタガタと揺れ出す馬車は、新たな冒険の旅への、道へと踏み出した。この道の先に待つのは、獣人達に攻められる未来ではない。


 全く新しい、未知なる未来への道だ。



これで、この物語は終わりです。

活動報告にて、簡単な反省会を開いておりますので、よければ見てやってください。

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