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第53話 師屑

俺は黒間弾の代理という任を解かれ、かつてと同じく、4代目明王補佐という職に再任した。


久しぶりのその席が暇なんて事はなく、4代目が持ち込んでくる厄介ごとに目を通し、審議をし、計画表を作成し、提出しなければならない。


学業との両立をし、さらには己の鍛錬も加えられる。


正直、やりきれるもんではない。


けれど、盟友である黒間弾は、これ以上過酷な状況を強いられる。


ならやるしかない。


2枚の書類が、俺の目に留まる。


“桜庭美波、撃退ノ件”


“夢幻流道場、道場破ノ件”


概要に目を通す。


状況はどこまでも、黒間弾を悲惨に追い込む。











前にも言ったかもしれないが、俺はかつて夢幻流道場というところに通っていた。


そこでは力の法則を利用し、使いこなし、力流なる技で強くなることができる。


小規模な技から、大規模な技まで。


師範レベルになれば、暗殺に使えるような、繊細な技まで扱えるようになる。


俺たちは、当時最強5人衆なんて呼ばれていて、道場創立以来の天才だ、なんて言われていた。


しかし、師範レベルに到達する前に、5人全員がそれぞれの理由で道場を去った。


まぁそんな過去もあったのだが、恩師には感謝をしている。


技の事もあるが、俺に今の道を指南してくれて、どんな時でも味方でいてくれたのは、あの人だけだったかもしれない。


だからこそ、今回の事件が嘘であることなんて、すぐ分かった。


「…道場師範の海堂力、国家への謀反を企てた疑い…ねぇ。そんな訳ないでしょ、なぁ弾。」


鳳がそんな風にちゃけて言ってくる。


「…あぁ、あいつはそんな暇な事はしないし、あの道場があるのはちょっとした秘境だ。ある意味、この世界とは切り離されている。」


だから、5人全員が去ってしまった。


「…でもまぁ、依頼は依頼だ。国の命令を無視しようもんなら、俺の方がチョンボだ。」


それに…道場破りは、悪くない話だ。


どこかで俺は、あいつに認められたかったし、桜庭さんの一件に控え、俺は更に進化を必要としているから。


そんな時に、いつも力になったのは、いつも奴であったから。


「…眼を使わなくても、ある程度戦えるようにしておくためにも、今度の一件は受けるよ、鳳。ハンコ押して提出しといてくれ。」


鳳が本当に良いのか、みたいなとこをブツブツ言っていたが、俺は無視してさらなる書類に目を通す。


「……クソジジイを殺したとあっちゃ、あいつらぜってぇ黙ってねぇだろうなぁ…。」


聞こえないくらいの独り言を漏らす。


まぁ最強5人衆なんて呼ばれてはいたが、仲が良かったかなんてのはまた別の話だ。


恩師を殺されたと聞けば、俺を殺しに飛んで来るだろう。


良い。


とても良い。


あいつらを当て馬と呼ぶのは気がひけるが、今の俺は桜庭さん以外が見えない。


冷静に自己分析をしようと、誰がなんと指摘しようが、本当に、どうしようもなく俺は桜庭さんの為に生きているのだ。


普段は得意な計算もできない。


恋は盲目、とはよく言ったものだ。


実際、俺は殺す予定である想い人のために、過去の恩師や幼馴染を犠牲にしようとしているのだ。


そのあたりまできっと、国は気を回したのだろう。


国は多分、自分たちが桜庭さんが、召喚した悪魔に手がつけられなくなるのを防ごうとしているだけだろうが。


なんでも良い。


俺さえ良ければ。


桜庭さんさえ良ければ。


そう考えてしまう自分が、今まで生きてきた人生の中で。


1番嫌いだ。


大っ嫌いだ。

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