第23話 完了
失った理性は取り戻すことなく、だんだんと壊れていく。
そう演じれているだろうか。
真中を殺し、暴走した俺は誰かの攻撃を受けたのち、再び倒れて死亡。
色々あったが、何とかシナリオ通りにいきそうだ。
あとは……そうだな、真希たちに死ぬ程嫌われてから死ななくちゃ、また泣いてしまうな、あいつ。
「そうだな、奇眼とでも名付けるか…。」
兄はそう言った後、真中に向かって飛びかかった。
しかし大柄の護衛が3人がかりで兄を取り押さえにかかる。
ただでさえもう兄はボロボロなのに…。
勝てっこないよ、お兄ちゃん…もうやめてよ…。
そんな願いも届くことのない兄は、狂ったような表情をしている。
黒い眼の中にある金の輪の瞳は、不気味な綺麗さだった。
まさに今の兄に相応しいような。
さっきまでの禍々しいオーラはもう無くなっているのに、それでもさっきとよりも比べのにならない程強そうだ。
3人の大男の首元から、血飛沫が飛ぶ。
目にも留まらぬ速さで、兄が首を裂いたのだ。
「アハハハハハッ!!!」
不気味に笑いながら、兄は真中に襲いかかる。
真中も咄嗟に応戦しようとするが、敵うはずもない。
兄は真中の背後に回り込むと、真中が振り返る前に頭を鷲掴みした。
掴む手の力はだんだんと強くなっているのだろう、真中の表情が険しくなり、うめきごえもあげ始める。
残酷。
そうとしか言いようがなかった。
「ちょっとは反省したか?」
小さな兄の声が聞こえる。
ゴニョゴニョと真中も応答したが、そこまでは聞き取れなかった。
ふっ、と兄が穏やかな表情になったので、もう大丈夫かと思った。
その瞬間、真中の頭部が破裂した。
遠い目をして真中の頭部が無い死体をみる兄は、私でも寒気がする程怖かった。
兄に対して、自衛隊が集中砲火する。
兄はそれらをするりと交わし、打ち続ける自衛隊に次々と襲い掛かった。
自衛隊が三分の一ほどの数になった時、その考えはふと頭に浮かんだ。
「お兄ちゃんを止めなくちゃ!!」
思わず口に出ていた。
「えっ!?」
一果さんがそう言った瞬間、私は規制されているロープをくぐり抜け、目の前にあった日本刀のようなものを握って、兄に向けて構えた。
「もうやめて!お兄ちゃんっ!!」
兄に向かって叫んだ。
兄がこちらを見てギロリと睨む。
それだけで倒れそうだった。
怖かった。
「お前が俺を殺すのか…。」
普段の優しい兄とは大違いだった。
「そんな事はしたく無い!だからもうやめて…ね?お兄ちゃん……。」
「殺せると思っているのか?」
「そんな事はっ」
「いつも俺のお陰で生きられているお前が俺をか?俺が居ないと、チンピラにすらビビって外も歩けないお前がか?」
「っ…」
戸惑っていた時、兄が物凄い速さでこちらに向かって飛んできた。
私は目を瞑り、日本刀を握る手にぎゅっと力を入れた。
ドンっと、にぶい衝撃がした。
恐る恐る目を開けると、いつもの目をした兄が、虚ろな目をして私を見ていた。
口からは血を流し、身体中が傷だらけだった。
そんな兄の腹部を、日本刀が貫いていた。
「その気持ちで…いつまでも頑張れよ…。」
「ひゃっ!」
そう言って私は手を離してしまった。
兄は腹部に刀を刺したまま、その場にうつむけに倒れた。
何が起きたのか、全く分からなかった。
頼りにしている鳳さんも、気を失っている。
一果ちゃんも、こっちを見て怯えた表情をしている。
最後の兄の声が、頭の中を何度と繰り返した。
「その気持ちで、いつまで頑張れよ。」
お兄ちゃんがいないと…何もできないよ…。
戦場だった場所は、静まり返っていた。
直後、私を讃える歓声が聞こえた。




