ep.8 こいつ、動くか?
やってはいけないことは、やってはいけない。
そうなのだ。
日ごろから、この機械を動かそうとしてはいけないと、村ぐるみで口酸っぱく言われてきた。
この機械…アニメで見るようなロボットだ。
操縦桿、腕、ビーム銃——これでわくわくするなという方がどうかしている。
遙か昔からあるものらしい。
しかし古びていない。
ただ、そこにある。
一点、普通ではない。
地面に埋まっている。
これが人型なのだとしたら、腰から下が地面の下だ。
乗ってみたい、触ってみたい。
機械の目は、自分を見ている気がした。
村では何をやっても怒られる。
しかし、このロボは自分を何も言わずに受け入れてくれそうだ。
ある日、不謹慎な祈りが通じてしまったのだろうか。
『敵』が襲来した。
謎の飛行物体が大挙して押し寄せてきたのだ。
特撮に出てくる戦闘機のようだった。
このままでは村が滅ぼされる!
座してそれを待つくらいなら、今こそ自分の眠れる力にかけるときだ。
絶対動かしてはいけないロボット。
それに乗り込んだ。
違う。
決して、決して自分が認められたいからじゃない。
英雄になりたいからじゃない。
守りたいんだ。
この思いに答えてくれ。
するとなんと…
動いた、ような気がした。
座席から伝わってくる外の感触が変わった。
が、静かだった。
何も起きない。
次の瞬間…。
地球が割れた。
地面の下には想像通り脚が埋まっていた。
しかしそれは、とても、とても長く、地球の反対側までのびていた。
脚はうごき、そしてまるで卵を割るかのように、するっと地球を真っ二つにしてしまった。
敵の襲来を、どこかで待ち望んでいた。
「やってはいけない」
動かしたら地球が割れる。
言ってくれたって、信じなかっただろう。
やってはいけないことを、やってはいけない。
それだけだ。




