9 異世界の街
資金の確保ができたところで、まずは必要なものを買い揃える。最初は服屋だ。
この世界では布が高いが、昨日外見で人品を量られて散々苦労させられた経験から、少し高めの服を妹と二着ずつ。あとは靴下と荷物入れの大きな袋を買う。
高めの服と言っても硬くごわごわした繊維で、お世辞にも着心地がいい物ではなかったが、それは仕方ないだろう。
下着も欲しかったが良い物が売っていなかったので、『わたしが作るよ』と言う妹に任せる事にして、柔らかい高級布とハサミ、針と糸とゴムがないのでヒモを買う。
妹はのんびり屋で要領も良くないが、料理や裁縫などは器用にこなすので、家庭科の成績だけはいつも満点だった。俺も昔、手作りの人形を貰った事がある。あれ、どこにしまったっけな……。
服屋での買物でご機嫌になった妹を連れ、いよいよ念願の靴屋へ向かう。妹のスリッパも歩きにくそうなので、二人で新しい靴を買う。念願の靴に俺はホクホクだ。
ちなみにここまでで40万アストルほど使った。一応値切ってこれなのだ、高い……。
ともあれこれでようやくこの世界の住民っぽくなったので、落ち着いて市場なども回ってみる。
朝ごはんを食べていなかったので、黒パンと串焼きの肉、一杯200アストルのオレンジジュースのようなものを買って二人で食べる。
パンも肉も固くて薄い塩味しかついておらず、お世辞にもおいしいとは言えなかったが、特に妹はこの世界に来て初めての食事なので、おいしそうに笑顔で食べていた。
ちなみのこの世界の通貨は、100円玉くらいの大きさの一万アストル銀貨と100アストル銅貨がよく使われているらしい。
両方とも真ん中に穴が開いていて、ヒモを通して10枚束ねたものが便利に使われている。
その下には小さな銅粒に10と打刻されたものが10アストルとして補助通貨の扱いらしい。
昔は1アストルもあったらしいけど、今は使われていないそうだ。インフレでも起きたのかな?
上には100万アストル金貨という物もあるらしいが、いつかお目にかかってみたいものだ。
街を探索しながら文明レベルも探ってみるが、薪が普通に売っていて、照明はロウソクにランプ。ガラスはあるけど高級品、馬車が走っていて、武器は剣と槍と弓に、斧や棍棒。材質は一応鉄のようだ。
見る限りでは少なくとも近代以前、中世レベルかもしれない。
そして時々、首輪をつけられ、鎖で繋がれたエルフの奴隷を見かける。
みんなやつれ、ボロボロの服に裸足で、重そうな荷物などを持たされていた。
道を歩く人達が汚い物でも見るように、侮蔑の視線を向けている。
妹には見せたくない光景だったが、隠しようもない。
昨日泥だらけの服に裸足だった俺も、あんなふうに映っていたのだろうか?
買物で少し元気になった妹が、また脅えたように俺にくっつき、陰に隠れる。
それとは別に、人間の奴隷や浮浪者、孤児のような人達も見た。
街壁の外の、多分貧民区のような場所だろうとは言え、どうもあまり優しくない世界のようだ。人権? なにそれ食べられるのの匂いがする。
この世界で妹を護って生きていくのはかなり大変そうだ、俺は決意を新たにするのだった……。
現時点での大陸統一進捗度 0%
資産 所持金 45万8700アストル(-41万6300)
配下 なし




