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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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12 情報収集(前)

 リンネが案内してくれた部屋は六畳くらいの広さで、ベッドが二つ置いてあるだけの粗末な造りだった。

 実際には一日ぶりだが、ずいぶんと久しぶりな気がするベッドに横たわると、温かい太陽の匂いがする。

 建物こそ古いが、掃除もシーツの洗濯もしっかりしてあって快適だ。リンネの仕事の丁寧さがうかがえる。


 妹は早速買ってきた布を取り出して裁縫を始めたが、しばらくしてポツリとつぶやくように言葉を発する。


「ねえお兄ちゃん、リンネさんかわいそう……」


「……そうだな。助けてもらった恩もあるし、できるならなんとかしてあげたいけど、今はそれ以前に俺達が危うい状況だからなぁ」


 俺の返事に、妹は悲しそうにうなだれてしまう。自分の無力さが悔しい。

 エルフの奴隷がいくら位するのかわからないが、手段としてはリンネを買い取るなりなんなりあると思う。だが、全ては生活が安定した上での話だ。あくまで優先するのは妹でなければならない。


 いずれにしても安定した定収の確保が最優先な訳だが、どうしたものだろうか?

 あれこれ考えていると、リンネが夕食ができたと呼びに来てくれた。


 まだ明るいのに早いなと思ったが、よく考えたらこの世界では照明が貴重なのだ。今日売っているのを見たロウソクは、一本2000アストルもした。

 原則明るくなったら起きて、暗くなったら寝るのだろう。早めに帰ってきたつもりだったが、ちょうど良かったのかもしれない。


 夕食は宿の受付と同じ空間にある、食堂で摂るらしい。20人ほど座れそうなスペースがあったが、今は俺と妹の二人しか座っていない。


「どうぞ。パンとイノシシのお肉、ミルクスープです」


 リンネが運んできてくれたのは黒パンと手の平くらいのステーキ、白いスープだった。食器はナイフとフォークにスプーンだ。

 肉が焼ける香ばしい匂いが食欲をそそる。さっそくいただいてみよう。


「……ぐっ」


 お肉硬い……。噛みちぎるのが大変なレベルだ。思わずこの世界でゴム発見かと思ってしまった。

 ミルクスープの方も、まずくはないがクリームシチューをお湯で三倍に薄めたような味がする。


 これはリンネの腕の問題なのか、この世界の食材や調味料事情の問題なのかわからないが、妹は早くも涙目になってこちらを見ている。

 結局肉の大半は俺のところへ来て、スープは妹の所へ行った。そういえばリンネ、料理のスキルなかったな……。


 俺のアゴが肉と死闘を演じていると、リンネが水のお代わりを持ってきてくれる。


「ねえリンネ、他にお客さんもいないみたいだし、よかったら一緒に食べない?」


「え? い、いえ、そんな訳には」


「あのお婆ちゃんに見つかったら怒られる?」


「いえ、ご主人様は夕方になるとお酒を召し上がって眠ってしまわれますから、大丈夫だと思いますが……」


「だったらいいじゃない。もちろんリンネが嫌なら無理にとは言わないけど、俺達この国に来たばかりでわからない事だらけだからさ、ついでに教えてくれるととてもありがたいな」


 リンネは恐る恐るといった感じで俺を見、次いで妹を見る。妹が笑顔を浮かべると、リンネは安心したように頷(うなづ)いた。


「わかりました。では……」


 そう言って自分の食事を持ってくる。三人分の料金を払ったはずだが、リンネの分は肉も小さく、スープも少なめだった。俺達に気を使って多くしてくれたのだろうか? それとも……


「リンネ、ご飯それだけなの?」


 地雷覚悟であえて訊いてみる。


「はい。私に与えられる食事は一日一食ですから、残りは明日の朝いただこうかと」


 ……悲しい方の結末だった。

 という事は昨日、俺はリンネの一日分の食事を貰ってしまった訳で、申し訳なさが留まる所を知らない。

 思わず妹から回されたお肉をそのまま献上してしまった。妹も俺の分だったスープをリンネに回す。


 遠慮するのを昨日のお礼だからと説得すると、すごく恐縮しながら受け取ってくれた。

 痩せた手で硬い肉とスープを口に運び、幸せそうに長い耳をピクピクさせて、いかにも美味しそうに食べるリンネを見ると、なごむ一方でとても悲しくなってくる。


 食事の邪魔をするのは悪い気がしたので、情報収集はリンネが食事を終えるまで待つ事にした。



 リンネが大半の食事を食べ終えるのを待って、色々と情報を聞き出しにかかる。

 さすが100年以上も生きているだけあって、リンネの知識はかなり豊富だった。

 聞いた話を大まかにまとめると、


・この大陸には六つの国があって、ここは西端にあるマーカム王国の首都マーカム……の街壁外に広がる貧民地区。


・貧民地区といっても壁の内側が手狭になった結果地価が上昇し、貧しい人から順に外に出る破目(はめ)になった結果なので、今ではそこそこ中流に近い人もいたりする。人口は内外あわせて五万人ほど。


・王国だけに貴族なども存在し、身分制度は相当に厳しい。貴族は平民を殺しても罪に問われないレベルとの事。怖い。


・この世界には人族とエルフ族が存在するが、異種族間では子を成せないのでハーフエルフに相当する存在はいない。魔族と呼ばれる存在がいるという話もあるが、おとぎ話レベル。


・エルフ族は三種いて、大陸西部から北部の山岳地帯の森に住む通称山エルフ、大陸東部の密林地帯に住む森エルフ、南部の湿原地帯に住む沼エルフに分かれる。特徴は山エルフが金髪で長身、森エルフが緑髪で小柄、沼エルフは褐色の肌に水色の髪で身長は中間くらい。三種の間で交流はほとんどないそうだ。ちなみにリンネは山エルフ。


・人族とエルフ族は耳以外に髪の色でも見分けられる。人族にエルフ族と同じ髪色をした者はおらず、逆もしかり。そしてエルフ族に男はおらず、女性だけで子供を作り、女性しか産まれない。……なんか地球にもそんな生物いたな、オガサワラヤモリだったかな?


・この世界でも一年は365日で12ヶ月、一日は24時間。ただし一ヶ月は30日で、年末に五日間のお祭り期間がある。ちなみに今年は大陸暦418年。


・スキルとは特技のようなもの。修行次第で取得できる。特殊スキルというのは聞いた事がない。


・魔法は一応存在するが、魔法石といわれる非常に貴重な物を必要とするので、まずお目にかかる事はない。魔族は魔法石なしで魔法を使えるそうだが、やっぱりおとぎ話レベルの話。


 って言うか魔法あるんだ。一度見てみたいが難しそうかな?

 あと身分制度が厳しいというのは良くない情報だ。貴族に目をつけられたら人生終了とか、勘弁して欲しい。



 あとは……ちょっと訊きにくい事も訊いてみようかな……。




大陸暦418年11月2日

現時点での大陸統一進捗度 0%

資産 所持金 45万2300アストル

配下 なし

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