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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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63話 大浴場

更新永らく出来ず申し訳ございません。

携帯代を支払えず止まっていた為に、何も出来ませんでした。

Wi-Fiが有れば問題無かったのですが....。


なので、今話は2話分繋げたのを更新させて頂きました。


暖かくって柔らかいのに、そこに良い匂いがする。

こう上半身が包まれているみたいで本当に気持ち良い、それを邪魔するみたいに音がうるさい。

一度注意しないとな.....。


暗い意識の中でそんな風に思いながら、閉じていた瞼を上げる。

うっすらと見え始める視界が、青い空を映し出した。

そこに人の顔がスッと横から出てきた。


「お目覚めに成られましたかリク様?。まだ、何処か体調が優れなかったりは有りますか?」


目を覚ました陸に気遣うように言葉を掛けるが、その表情は人を安心させた。


「......頭が重いぐらいは、他に異常は無いと思います?」


上半身を起こすとやけに頭が重く感じた、其処で気付いたが、自分が感じていた柔らかくって暖かい正体に。


「この子、自分の治療が終わるとリク様の側に来て身体を寄せていたですよ」


「そうなんですか。ありがとうな、シロ。それにしても相変わらずのモフモフだな、舞花が羨ましいよ」


モフモフな白の毛並みを手に感じながら、シロの身体を擦り感謝を伝える。


「ガウッ」


一鳴きするとシロの顔が近付き僕の横頬を、ペロリと舐めだした。


「うわ、やめろよーシロ。くすぐったいだろ、たっ可愛い奴め~」


口調が砕けてしまう程にシロの行動が可愛く、頭が重い等の些細な事を忘れた。

「こいつめぇ~」と顎下や首筋を撫で回してると、その光景を見ていた医療班の人が微笑しながら声を掛けた。


「もう大丈夫そうですが、まだ、酒気が僅かに残ってますので休息を多めに御取りください。それでは私共は失礼致します」


陸を気遣う言葉ーーいや患者に対しての気遣いを最後まで全うする、医療班の彼は後方で治療が終えた同僚と合流しようとする。


「ありがとうございました」


去ろうとする彼にお礼を言う。


「いいえ、コレが仕事ですから。何時でも怪我されましたら治療致しますので、遠慮なさらず仰って下さいね」


人の良さそうで安心させる笑顔を見せる彼は、怪我人の治療をするのが当たり前なのように言う。

それだけに、僕は素直に感激してしまった。

ああいった職業柄の人達には、何時如何なる時でも立派なんだと思うし尊敬する。


「クゥン~!!」


陸の顔を舐めていたシロは、何かに怯えた声を鳴きながら距離を取り出した。


「どうしたんだシロ?、此方にお出で?」


突然距離を取ったシロに僕は呼び掛ける。

今まで触っていたふわふわな毛並みが恋しく、両腕広げて迎え入れるポーズを取ったのだが。

シロは頑なに頭を左右に振り拒否り、器用に前足で自身の眼を隠して附せる。

その様子は叱られた子犬にも感じられた。


そして、その原因とも言える正体に僕自身は分かっていた。

だからこそ、必死にシロに呼び掛けた。

背後に立つ人物に気付いてはいるが、自分は気付いてないよアピール続けた。


「ガウッ!」


前足で眼を隠して附せながらシロが鳴く、舞花では無い為に何を言ってるが分からないけど。

今のは、何となくで通じた「ごめんなさい」と言ったのだと、そう信じる事にした。


それにしても....頭が冷やされて気持ち良いな~。


ちょっとした現実逃避に走りながらも、ジョボジョボと音と共に。

.....僕の頭に冷たい物が流れていく。


「ねぇ....りっくんさぁー。舞...スッゴく怒ってるだけど、その理由分かるかな?」


僕の頭上から聴こえる聞き慣れた人の冷やかな声が、声音から分かる程にお怒りだと感じられた。

正直、逃げられるのだったらきっと逃げていたと思う。

それに上から流れていた液体も無くなったけど、毛先から水が滴り落ちてくる。


「えっ~と...只今帰りました。先程二人のて、手合わせ拝見しまして勝利おめでとうございます...」


反射的に敬語で話しながら、そのまま、ごく自然に立ち上がろとしたが。

肩を掴まれ上から押さえられ、立つ事を止められた事が更に僕の身を震い上がられせられた。


「うん、お帰り。...それで何故なのか?分かったかな?。りっくん?。あっ、慎重に答えてね、それ次第じゃ金輪際口聞かないから?」


その言葉だけで、寄り一層僕は恐怖に落とされた。

怒られるならまだしも、いや、怒られるのも嫌だけど。

舞花と金輪際口を聞いて貰えないのは、今後を生きる意味が無くなるぐらい辛い。


「未成年が飲酒したからですか?....」


慎重に考え舞花が怒った理由を必死に探した。

普段ならそんじょそこらの事では怒らない舞花が、凄くお怒りに成る程の訳を。

だから僕の過去での舞花が、何に怒っていたのかを共通点的な何かを探した結果がこれだった。

僕が悪い事をすれば、それを舞花が怒り真摯に叱っていた想い出が多く思い出した。


「そんな事はどうでも良いの!、どうでも良くないけど。でも、違うの!。舞は.....何て言ったら良いか分かんないけど......ううん~もう!!」


言葉を詰まらせながらも、どう言葉にしようかとしたが上手く言えない事に憤慨する。


後ろで舞花の腕が上下にブンブン振る音と、その行動が用意に想像つき、「可愛い」と思い表情が緩んでしまった。


「あの~、舞花さん。全面的に僕が悪いのは分かりました、何をしたら許してくれますかね?」


いまだに憤慨する舞花に、嫌われないように伺い立てるように聞く。

正直に言えば何が原因で怒らせてしまったのかは、僕は良く分かってはいない。


「本当にそう思ってる?」


「本当に心の底から思っております!」


だからこそ、この言葉には自分が分かっていない事も含めての謝罪を込めてる。


「ふーん~。じゃ、 ベノムさんと模擬試合して欲しいなー?」


「え?!」


舞花の可愛らしい声から発された言葉に、僕は勢い良く立ち上がり舞花に向き直った。


「何でもしてくれるだよね?。なら、ベノムさんに勝つりっくんが見たいなぁー?」


潤んだ瞳での上目遣いは天使のように思えた。

それだけ今の舞花は可愛いく、抱き締めて頬ずりしたいまである。

けど、実際は死神だったかも知れない。

ベノムと模擬試合なんてしたら、確実に身体が幾つあっても足りない。

そもそも、あの人がまだ国にいる理由も僕と戦いたい為に残ってるって本人が言っていた。

ペナルティーが未だに継続してる僕には興味は無いらしいけど、それが終わっても僕は戦いたくは無い....切実に。


「あの、舞花さん?。それは、遠回しに半分死んでこいって言ってませんか?。」


「うん。....りっくんは、何でもしてくれるって言ってたよね?」


やだ、すっごい笑顔!。


「も、勿論だとも。舞花の為ならベノムに、死に物狂いで...いや死んででも勝ってみせる!」


いや、本当に。

自分でもバカな事言ってんなぁ~って心底そう思った。

それに舞花を、此処まで怒らせてしまった自分を恨んでしまう。


「わーい!、それでこそりっくんだよ!」


万歳してその場を跳ねる子供じみた舞花に、陸は身体の一つや二つぐらい我慢しようと思えてしまった。


「何二人してバカな事してるのよ?、それを見せられる此方の身にもなりなさい」


後方で陸と舞花のやり取りを聞き見していた葵は、端から見ればイチャイチャするバカップルにしか見えなかった。


「え~舞はバカな事してないよ?」


「よく言うわよ。陸が私が勝つって言われた事にムキになったから、あんな無茶な事を仕出かしてこのおバカ!。本当に刃が潰されてなかったら、あんたは今頃死んでいたんだからね!」


「いひゃいよ!!、かひゃひっしゃらないれ~!」


舞花の両頬を思いっきりつねりながら引っ張る葵は、先程の模擬試合での舞花の無茶な行動を叱っていた。


僕は葵が満足するまで何もせず、終わるまで待つ事にした。

二人の間を仲裁しようものなら、今度は葵の矛先が此方に向くのを恐れて。

まぁ、葵のお陰で舞花が何に怒っていたのか理由が知れた事は嬉しかった。


舞花が天恵ギフトを使用中の際に、僕がギースに話した誰が勝つのかを聴かれていたのだろう。

あの時は客観的に見れば葵が優勢に思えて、あぁは答えたけど。

舞花が勝つってベノムもギースも言い当てた訳で、いや、もうしかしたら聴かれていると分かっていて答えたのだろうか?。

実践経験も視る眼がある二人なら可笑しくはない、寧ろそう思えた方が合っている。


それに粋先生が言っていた。

『人は単純な生き物でな。大切な人程...その人の言葉だけで、自分が大きく変わるだよ...馬鹿みたいにな』って、クラスの複数の男子に恋愛アドバイスしていた。

その中に僕が居たのは言うまでもないけど。


「ったく、良いわね次からは気を付けなさいよ。ほら行くわよ、汗かいてベタベタなんだから流しに行くわよ」


長々と舞花の行動の説教が終わると、体に纏わり付く汗を洗い流したい為に風呂行こうとする。


「うぅ~痛いよ~。それに、りっくんに聞かれたくなかったよ....」


引っ張られ赤くなった両頬を優しく触りながら、自分じゃ言えなかった事を葵が言った事に。

舞花は涙声で恥ずかしくそう言っては、そそくさと葵と行ってしまった。

気付けば訓練場には、陸と白妖のシロ一人と一匹しか居なかった。


「シロ、僕達も風呂に行こうか?」


距離を取っていたシロが、僕の足に顔を擦りながら一鳴きする。


「それは?、OKって事なのかな?」


「ガウッ」


可愛らしい表情で縦に頷くのを見て、僕らは先の二人と同じく風呂に向かった。


............


.......


...


「ふぅー綺麗なったぞシロ」


シロの身体を泡の付いた柔らかい毛先のブラシで洗ったのを、綺麗にお湯で流してそう言った。


「クゥン~♪」


気持ちの良さそうな声を上げ、濡れた左右に身体を振らす。


「うわ!、こらシロ!」


シロの頭から尻尾の先まで白い毛が、左右に振った事で遠心力により水が飛び散っては。

直ぐ近くで洗ってあげていた陸に、水が襲い掛かかっていた。


「ガウッ♪」


「コイツめ~、スッキリしたみたいな顔をして全く可愛いだから」


お座りの状態で舌を出しながら、つぶらな瞳で僕を見るシロは何時と同じく可愛いのだが。

水気が無くなった白毛がブワっと逆立ち、ふわふわ感と気持ちよさが更に可愛さを増していた。

内心で文句を言っても、この可愛さの前では無意味なのかも知れない。

主人に似て可愛いのであれば、舞花は飛びっきり可愛いのは当たり前だな。


「っし、終わったぞシロ。何時に増して輝いてるぞ」


ブワっと逆立ちした毛を、綺麗に撫でるように硬い毛先のブラシでとかして上げると。

シロのスマートな身体を表し、風呂場の光で照らされた白毛が爛々と輝いていた。

シロ自身も自分の毛並みを見て満足したのか、陸に向けて頭を下げては、風呂場の戸を前足で器用に開けて出ていってしまった。

それに対して陸は特に思う事もなく、お湯を頭から被ってから大浴場に足を入れた。

30人位平気で入りそうな湯船は、先客で一名と僕の二人しか居なかった。


「なんだ、シロの奴もう上がったのか?」


湯船の淵に背を付け寛ぐと、横から声が掛かる。


「そうみたいだよ。毛皮が有るからね直ぐに熱くなって、長くは入れないみたいだよ忍?」


以前舞花から聴かされた事を、横で同じく寛ぐ忍に言う。


「そうなのか、ペット飼った事ねぇから分からんな?」


さほど興味なさそうに言うが、どちらかと言えば僕が寛ぎ過ぎてそう聞こえてしまった。

身体には少しだけ残ってる酒気の性かも知れないけど、やはり湯船に体を預けると大抵の事はどうでも良くなってしまうのかも?。


「それにしても、忍が長風呂してるなんて以外だったよ?。一時間ぐらいは入ってるでしょう?」


僕は別れてからの時間を逆算する。

食堂で一也、佑樹、成行の三人を見送りまでがだいたいが40分もしないと考え。

その後訓練場では20分も居なかった筈.....、酒で倒れた時間は分からないけど。

そう経たずに医療班の彼のお陰で、直ぐには目が覚めたと考えれば。


やっぱり一時間弱は、忍と別れたから経っていると考え付いた。


「いやいや、一時間も入ってねぇよ。まだ、入ってから30分しか経ってねぇから」


「あっ、そうなんだ....。入る前は何してたの?、あんなに直ぐに風呂に入りたがってたのに?」


陸は馬車内での出来事から、忍もローズリアも直ぐ様風呂に入るんだと思っていた。

何故なら忍がローズリアの手を引いて、案内を買って出ていたのを目の前で視ていたのだから。


「いや、あの後よ。リアを風呂場まで案内してたんだがよ、彼奴さ大事な話が有るって言うから、取り敢えず俺の部屋で話を聞こうと思った訳だ」


忍が其処で話を一旦区切る。


「まぁ、大事な話って言っても結局何も話さずに終わったけどな」


フッと息を溢して忍が苦笑いした。


「えっ?、何?。じゃ忍もリアさんと30分何も話さずに終わったの?!、大事な話しをしてから入るのが遅くなった訳じゃないだね....」


ある意味で陸は驚嘆した。

意外と強引で漢らしく、言う時は物事をハッキリとするのが忍だから。


「まぁーな。その内にリアからもう一度話すだろうから、それまでは辛抱強く待つつもりだな。....にしても向こうは急に騒がしくなったな」


待つと言った忍の表情は、リアさんと話せる事を楽しみに待つ子供に感じた。


「....ん、多分舞花と葵が入ってる筈かな?」


「成る程、じゃ向こうは今は四人か。男の方は二人しか居ないのにな」


「だね~」


大浴場の中央にある男女を隔てる壁、上の方だけ空いてる隙間から熱気や空気を逃がしている。

その隙間から女性大浴場の方から、男とは違うの賑やかな音がうっすらと聴こえるが。


ほとんどが水の音で消されてるが、そんな事は気にもせず疲れた身体を湯船に沈め暖まる。


......


...


..


大浴場女性側は男浴場とは違い、大いに会話で賑わっていた。


「え~!。じゃ、忍が話していた商人の人なんだ!!」


舞花は大声を出してまでも驚いてしまった、それは声を出さないが表情で葵も同様であった。


「えぇまぁ。お恥ずかしい話ですが、その節はシノブ様のご厚意に凄く助かりました」


ローズリアは忍に出会いの切欠を羞恥で頬を染めるが、それのお陰で優しい彼に会える切欠にもなった事に、深く神に感謝していた。


「えっと?、話を整理すると。困っていたリアさんを助けたのが、忍さんだったって事で良いですか?」


ローズリア、舞花、葵の三名しか分からない話に。

忍さんと呼ぶ記憶が欠落した彼女が、三名にそう問う。


「そうですね、本当にお恥ずかしいですけど。サクネ様の言う通りに、私がシノブ様の救われたました」


本当にやり直せられるのならと心底思うほどに、ローズリアは言う。

出来れば失敗や泣いてる姿を見られず、彼に出来る所を見られたかったと嘆いた日もあった。


「そっか咲音ちゃん、眠ってたから知らないだよね?。忍って言う....ほら、頭が筋肉で出来てるみたいな男の人が居たでしょう?」


「マイちゃん、それは忍さんが可哀想だよ」


「いいのよ気にしなくって、忍は本当に考えて言動しないから」


忍を気遣う咲音に、葵が素っ気なく忍に辛辣に言う。


「それは違います!、シノブ様は御自身で良く考えて行動しています!。確かに他の方から見ればそんな風に見えるのかも知れませんが、あの人は最後まで自分の行動に責任を持ち、相手の事を考えております!。....だから馬車で....その....あぁ言ってくれましたし.....」


ローズリアの言葉に、その場の三人は目をパチクリしては唖然としてしまった。

ローズリア本人は最後の部分は、三人に言うのではなく自分に言い聞かせてるのかゴニョゴニョと、小さく聞こえずらかった。


「その...ごめんなさいねリアさん。忍の事を悪く言ってしまって、でも、これだけは分かって欲しいの。決して悪気があって言った事じゃ無いってことを...」


葵はローズリアの態度と言葉に、自分が彼女の前で失言した事を深く謝罪する。


「ごめんなさいリアさん。舞も、少し言い過ぎました....」


同じく自分も失言だった事に気付いた舞花は、ローズリアに深く謝罪する。

二人から謝られたローズリアは、ハッとするように息を飲み両手を前に突き出して慌てる。


「い、いいえ。御二人が悪気ないのはわ、分かってました。身内だから許せるアレみたいな奴ですよね?!、それなのに私が割って入ってしまったのがイケないのであって!。謝るのなら自分なのに本当にすみません!!」


こうして三人が謝る構図を見ていた咲音は、あまり話が分かっていない為に一人和に入れず、外から見守るだけであった。


「取り敢えず三人とも悪いのは分かったから、謝るのは一旦止めて。違う話をしようよ?」


数分間の三人の謝罪の売り言葉に買い言葉を、咲音は一言で切り捨て話題を変える事を要求する。


「「「.......」」」


咲音の言いに三人は互いに目を交わしては苦笑し、これで終わりにする事を無言で決め付けた。


「あっ、リアさんって忍さんにホの字なんですよね?。何処に惚れたですか?」


先程のローズリアの忍に対しての言葉を聞いて、咲音が聞くと。

ローズリアは自身の心の有り様を言い当てられ、暖かいお湯の性とは言えずに。

耳までもが赤くなっていき、口元までお湯に沈んではブクブクと水の中で喋りだした。


「咲....ホの字ってなんと言うか古い言い方を...。普通に好きで良いでしょうに」


思わずそう嘆息付きながら葵は咲音に言う。


「え~そうかな?。ホの字良くない?、こう~からかってるって分かるから?」


舞花はホの字という言葉を、個人的に気に入っていた。


「だよね舞ちゃん、ホの字は古くないよね!」


「このおバカ達はホの字で盛り上がるな、オッサンぽいっだから止めなさい」


葵は二人がホの字で盛り上がる事を、一声で止めては咲音までもがと悩まされる。

舞花ならまだしもいった感じなのだが、咲音まで賛同するとは考えていなかった。


「今時のおじさんでも、あんまり言わないと思うよ?。寧ろストレートに「なんだ、あの、兄ちゃんに惚れてんのか?。若いねぇー!」って感じするな?」


舞花は口真似で今時のおじさんの真似をする。

果たしてそれが今時のおじさんなのかと、この場の三人が知る訳もなく終わった。

寧ろ舞花の中に有るおじさん像に、興味が引かれもした。


「もし、それがおじさんの真似なら良く分からなかったけど?。今はなんとなく分かったから、もうこの話は止めましょう。そうしないとリアさんが、茹で上がるわ」


三人の会話は聞こえていたが、未だにお湯の中でブクブクと喋るローズリアは。

葵が指摘した通りに、真っ赤になっていた。


「うわ!、本当だ此処まで赤い人は初めて見たよ!。リアさんが湯当たりする前に上がろっか?、もう結構入った感じがするしね」


逆上のぼせる一歩手前まで来てそうなローズリアを見ては、舞花は立ち上がり風呂から出ようとする。

実質舞花と葵が風呂に入った時間は20分もしないだろう、本来の目的である汗を流す。

これが果たされているのであれば、直ぐ様に上がっていただろうが。

先の先客である、咲音が見知らぬ女性の人と話してるのを目撃し。

いざ、話をしてみれば陸と忍の知り合いであり。

忍が助けた商団の人だと分ければ、話が盛り上がり過ぎたのだった。


「リアさん?、少し失礼しますね。あ~ちゃん反対側お願い?」


ローズリアの側まで近寄ると咲音は一言断りを入れてから、湯船に沈めるローズリアの肩を掴み支え立たせる。


「分かったわ咲。此処までされて無反応は、どんだけ忍に惚れてるのかしらね?」


咲音にお願いされ、空いてる反対側に回っては脇下に腕を回して出口まで歩き出す。

お湯に足を取られ滑らないように慎重に進む。

ぢゃぷん、ぢゃぷんとお湯に水面が波立ちながらも、其処で葵は支えるローズリアの裸体を見て女としての何かが負けた気がした。


(なんて、体をしてるのよ。胸は...D~E...いやEね、それにお腹回りにも無駄が無いとか。スラ~と伸びた脚とか。....凄いのに惚れられたわね忍も)


自分の観点でローズリアを大きく評価する。

Eと断言する程の胸から、程好く引き締まったお腹回りには無駄な肉などの皆無であり。

腰から伸びる綺麗な脚は、葵の女としての部分が羨ましく思う程にあった。


ローズリアの裸体を見た後、葵は自分の体を見て重い溜息を吐き出すと。

前からニヤニヤとした憎たらしい笑みを浮かべた奴が、此方を見て口を動かす。


『ど・ん・ま・い』


「舞花...貴女後で覚えてなさい」


口の形からそう読み取ると、葵は睨み付けながら低い声で言う。


「うわー湯冷めするぐらい恐っ!、そもそも葵が見比べたりするのがイケないのに!」


葵の声音からお怒りだと分かると、颯爽と脱衣場に逃げ込むと顔だけ出しては軽口を叩く。


「あのチビ。どうやって凝らしめてやろうかしら?」


言葉の端々から伝わる、舞花のお仕置きえの熱意。

葵の表情を見た咲音が思わず声を上げたく成る程、心身共に頭った筈の熱が引いていき寒気すら感じた。



「あ~ちゃん?」


「...何かしら?」


そんな葵に声を掛ける咲音に、冷たい笑みを浮かべたまま振り向く。


「あ~ちゃんは魅力的だよ!。こんな(・・・)私に優しくって、私じゃ考えられないような事を思い付くし。私よりも強くって、どんな時でも堂々してる姿は格好いいよ!!」


桜の花弁が辺りに舞ってるかのような、優しく視る者を魅力させる笑顔には。

さしも葵も舞花えの怒りなんぞ、何処かに行ってしまった。


「ふふっ、知ってるわよ咲。私わ魅力的なのよ、でも、咲にそう言われて更に自信が付いたわ。ありがとう咲」


咲音の褒言に謙遜はしない、彼女が言ったように堂々と当たり前なのだと自負しなければならない。

誰かに言われるよりも、好きな()に言われるよりも。

親友の咲音の言葉が、自分の心に響くのだから。


「うん、やっぱりあ~ちゃんは格好いいよ!」


咲音にもう一度お礼を告げては、ローズリアを脱衣場まで運ぼうとした中で不可解な音と振動を感じた。


「今のは何かしから?」


「男湯の方からだね?」


音と振動が感じた方向を見ると確かに、壁の向こう側から今も聴こえる。


「あれ?、私何で御二人に支えられてるですか?」


真っ赤だった顔は幾分熱が引いたのか、心此処に非ずだったローズリアが。

咲音と葵に支えられて歩いてる事に、今頃気付きそう疑問を抱いた。


「リアさん、大丈夫なんですか?」


「えっ?、何が大丈夫なんでしょうか?」


咲音の質問の意味が分からず、ローズリアは問い返す。


「忍にホの字っ言われて、茹で上がったみたいに真っ赤になった後。リアさん、ずっと湯船で呟いてたんですよ?」


葵が簡潔に状況を伝えると。

そうだったと思い出し二人にご迷惑掛けた事を謝ると、「一人で歩けますから?大丈夫ですよ」と言って二人に離れて貰った。


「本当に、お恥ずかしい所を見られてしまいました。シノブ様には内密に御願いしますね...」


申し訳なさそうな表情で、自分の恥ずかしい姿を黙っていて欲しいと懇願する。


「大丈夫です、絶対に誰にも言いません!」


ローズリアの手を握っては、秘密にすると咲音が断言した。


「そうね、秘密にする代わりに。忍の何処に惚れたのか、根掘り葉掘り聞かせて貰おうかしら?」


ふふっと微笑む葵は、ローズリアが忍と同じくカラかいが有ると思い直す。

ボンっと湯気が出そうな程に、熱気が引いた筈の顔が瞬間で強張り真っ赤に変わる。

それだけを見れれば葵は満足して、「冗談よ」と伝える。

「うぅ~アオイ様は意地悪です」と、泣き言を呟き俯くローズリア。


「まぁまぁ二人とも、こんな所で話し込まないで着替えないと湯冷めしちゃうよ?」


折角入って暖まった意味が無くなってしまう事を、咲音が二人に言うと。

葵もローズリアも「「そうね(そうですね)」」と返事し、脱衣場に今度こそ向かう。

前から咲音、葵、ローズリアと言った順に脱衣場の扉を開けて入って行こうとした所を。

最後のローズリアが入る前に、大好きな彼の声が聴こ足を止めたのと同時に。

ハッキリと両耳に彼の怒声を捉えると、ズドーン轟音と振動がローズリアを襲う。


『今度ばかしは死に晒せ~ー!』


『ちょ、それは洒落になら..い..ら...!』


男湯の方から聞こえた会話が最後に、振動によって体制を崩しひんやりした硬い床にお尻を強打した。

のだが、そんな事を気にするよりも自分の目の前に映る人物と目が合う。

其処にあった筈の男女を隔てる壁が、瓦解し下に残骸を残し。

彼方からも此方の姿を見付けたようで、その表情はローズリアと同じであった。

葵にカラかわれた時よりも、赤くなった表情は強張り徐々に目尻に涙が溜まりだす。

そして腹から喉えと来る物を、容赦なく叫びだすと。

思考停止してしまった脳が、自分じゃ対象出来ない事案にアラームがなる。


「まっ、待ってくれリア?!。これには深い理由が有るんだ!、だから一回落ち着こう..なぁ?..」


「キャー~ーーーー!!」


忍の静止等お構い無く、ローズリアの悲鳴が男女両方の大浴場に響く。

当然ローズリアは隠す物等無く、自身の細い両腕で胸と下半身を隠す。

隠しきれる場は少なく、忍の方からは色々とアウトでありその事に脳が追い付かなくなり。


鼻血を吹き出し、咄嗟に鼻を抑え止血させる。


そして脱衣場からドタバタと駆け付ける複数の音が、閉まっていた扉を開けて浴場の様子を見て茫然となった後。

直ぐ様鬼の形相で男湯の方を睨み付け、男湯にいる二人に向けて葵が天恵まで使って。

水剣と火剣が男二人の首元に突き立て、低い声で名前を呼ぶ。


「陸?.....、忍?.....。これは一体どういう事かしら?」


「「.......」」


三人の威圧に何も言えず、無言のまま。

陸と忍は視線を下に落とし床に固定しては、絶対に顔を上げてはイケないと覚悟する。

裸体のローズリア、タオル1枚巻いただけの咲音、葵。

先に脱衣場で着替えに入っていた舞花は下着姿であった、非常に目のやり場に困りながら。

男二人はこの後の未来に予想突き、気付いた時に医務室のベットで目覚めた後。

医療班の彼から話を聞いた時は、耳を疑う程に酷い状態だったと後に知らされる。


「そう、何も答えないのなら。判決は決まってるわ、死刑よ.....」


「悲しいなぁー、りっくんがこんな事するなんて....」


「二人とも、どんな理由が有るかは知らないけど。覚悟はしてよね怪我なら直ぐ治してあげるからね.....」


三人の恐ろしい声音を聞きながら、今日という1日が終わりを告げた。


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