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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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32話 緑竜の過去話

今年も残り一ヶ月となりました、気温の変化が激しく風邪など体調等にはお気をつけて下さい。


私も体調不良で更新が出来なかったが無いように、健康面に気を付けながら頑張ります!。





森の奥でリストと僕は、フォレストヴァージャドラゴンの"グリューン"の話し相手をしていた。

綺麗な緑鱗の代わりと言って、何でも手伝うと言ったら話し相手をお願いされたが。

僕とリストはグリューンの話しに素直に楽しんでいた、気付けば警戒も緩め好意的に接していてもいた。


「じゃ、グリューンさんは龍に近い竜なんですか!」


『えぇそうよ、龍に成るには心の底から望まないと存在進化なれないのよ。わたくしにはそんな想いが無くなってしまった、だから古き友がくれた陽黄花ようこうかの場所でねむりたい』


そう言って寂しそうで悲しそうな眼差しで、日に当たってる陽黄花を見ていた。


「リク?、それって凄いの?」


ただ、リストだけは竜と龍の違いが分からず何が凄いのか分かっていなかった。


「まだリストには分からないだろうけど、冒険者に成るなら色々と知っていた方が良いよ」


「勉強は好きじゃないけど....、強く成る為なら頑張る!」


本当に好きじゃなく嫌そうな顔をするが、少し間を開けて意気込んだ。

だから、村に帰ったら徹底的に勉強させようと陸は密かに決定した。


「そうだね、強く成る為に頑張ろうね」


『少し宜しいですか、貴殿方は何の為に強くなろうとする。その先に一体何を求めるのですか』


グリューンの突然の質問、ただ、何かを見極めようする態度。

何の為に強くなるか、何を求めるのか。

この質問に陸の答えは決まっていた......。


「....今度こそ手の届く人達を守る為に、今以上の力を望みます。そして、皆で帰る為に....」


その言葉にどれ程の重みが有るのか、自分の知らない所で起きる悲劇を、「今度こそ」と何十回も何百回と唱えてきた。

二度と、あの日のような事を起こさないように、例え生きてる・・・・・・としても。


「俺はアンを守る!、その為には強く成る必要があるんだ!」


リストも陸の後を続いて、自身が強く成る根本的部分を答える。

常日頃近くにいて幼馴染みである少女、気付けば「好き」になっていた女の子。

何かあっても守り通せるようになりたい、悲しそうな表情、泣きそうな表情、苦しむ表情。

そんなのは見たくないしさせない、常に笑っていて欲しいから。

だけど、今日は大好きな子が涙を浮かばせて泣いてしまった。

自分の性で泣かした時、この世の終わりを見た気がしたし。

自分の考えを曲げようとも考えたが、それでも今だけは我慢して、都合の良い言い訳を自分に聞かせていた。


グリューンは二人の眼を見ながら言葉を聞いた、どのような感情が籠って言ってるのか。


(この子達は、真っ直ぐで純粋で似た者同士なのね。それ故に誰問わず人々に好かれるのでしょう、だけど同時に好しと思わない人も出てしまう.....)


『陸。リスト。貴殿方の答(想い)え聞かせてもらいました、そこでわたくしから一つ助言をします』


「助言ですか?」


『はい。永き刻を生きた者の助言、聴いておいて損は無いと思いますよ』


微笑を携えるグリューン、たった数十分ぐらい一緒にいて話して分かった事がある。

強面で凛々しく獰猛な牙を生やす竜なのに、コロコロと変わる表情が豊かであった。


陸は内心でそんな事を考えたが、グリューンの助言に耳を傾けた。

すぅーと息を吸い込みピタッと止まった時、突如耳に爆音が届いた。

陸もリストも両手で耳を急いで塞ぎ、音から逃れようと抵抗したが頭に直接届く声。

『念話』と言うスキルが、容赦なく本人達の意思も関係なく襲う。


『自惚れるな人の子が、守る為に強く成る。戯れ言を抜かすなよ、どんなに強大な力を持っても敵はけして減る事は無い。寧ろ敵は増え続ける、どんなに抗おうが敵は殺す為に躍起になり。どんなに卑怯な手段をよいてもだ、どんな時も寝る間も無く敵は襲い消耗させ、自分達よりも強大な力を持った相手でもだ。必ず息の根を止める為に』


現実味を帯びた話し方には、実際に体験したような生々しい物があった。

頭の中でジンジンと響き渡り、再び動き出すのに数分の時間をよいた。

リストは.....再起不能だった。


「それは、一体どう言う意味になるですか」


思わず睨んだままグリューンにそう聞いた。


『陸よ....誰もが不器用だ、「手の届く皆を守る」と言ったな。誰よりも強大な力を持った竜族でも、たった一人の友すら守る事は出来なかった。それが、力が強大となれば多くの敵を産み、新たな戦火ともなる。そうなれば大切な人等は、守ることなど夢の中の夢となる....。だから、より多くの良き仲間(友)に手を差し伸ばしなさい』


....正論だった、グリューンは正論を言った。

手の届く皆を守ると言ったが、一人じゃ限界が来てしまう、そうなれば後は崩れ落ちて行く。

だからこその仲間(友)、一人よりも二人と二人もりも三人とそれならば守る事が出来る皆を。

何故、何時から一人だけで強くなろうとしたんだ、僕には頼りになる仲間が居たのに。

この事に気付かせてくれたグリューンに感謝しないとな。


「ありがとうグリューン、一人だけじゃ何時挫けてたよ。この事に気づかせてくれて、本当にありがとう」


感謝の念をグリューンに向けて陸は頭を深く下げた、グリューンもそれを素直受け取った。


『いいのですよ、過ちになる前に変われたのであれば、きっと良い運命(方向)に向かう筈ですから。貴方はわたくしとは違うのだから....』


微笑してるが、何処か後悔してるような声音でそう言った。


「....あの、グリューンの過去の事を聞いても良いですか?。あ、ダメだったら大丈夫なので?」


僕は気になってしまった、グリューンが後悔するような過去の事を。

不謹慎で失礼なのかも知れない、それで怒らせる事になるのかも知れない。

それでも良かった、助けられたんだと自分だけがそう感じたのだから。

グリューンにはその気は無かったのかも知れないけど、甘言な事を言う人の子に現実を見せただけなのかも知れない。


だから僕のやってる事は、ただのお節介で我が儘なのだから。

それで少しでもグリューンの気持ちが晴れるのなら、怪我の一つや二つ受けるつもりだった。


グリューンはフッと息を吐き出し、数秒間眼を閉じてからゆっくり開き話してくれた。


『....その当時世界に"災厄を齎す者"と呼ばれる忌神子姫タブシビルセスがいました、その者は数多の魔物を引き寄せ道中の村、街、国を幾つも滅ぼした、その中に幼竜であったわたくしもいました。ちょうどその時でしたね古き友に出会ったのも、彼は忌神子姫を倒す為に多くの屈強な兵を率いていた』


災厄を齎す者....忌神子姫?。


グリューンの話しを聞く中で、自分が知らない単語が出てきたが。

今は質問する事を止め聞く事に徹した。


『引き寄せられた魔物は神殿を守るように囲んでる中、彼が率いる『希望の僥倖』は滅ぼされた村や街に国その中で生き残った人間達だった。彼等は内に溜まっていた憎悪を剥き出して、魔物達に斬り掛かり屠っていた。家族、隣人、友人、愛する者の仇を取る為にその身を傷つけ、多くの命が散っていき。それが一日も続いた時、『災厄を齎す者』が撃ち取られ永かった戦いに終止符を打ち。残った魔物の残党を排除し、戦場と成った神殿は見る影もなく廃墟と化し。希望の行幸を率いていた彼は、その地に国を作り"希望の国"として今も繁栄しているのだった.....』


集まった魔物が神殿の中にいる忌神子姫を守り、それを希望の僥倖が倒していき。

ボロボロに成った神殿の跡地に国を作り、今も続いてる...と。

此処までの話を整理すると、代々的にこんな感じだね。


『ただ、戦場のお陰で多くの魔物を倒したわたくしは竜まで進化し。希望の国と呼ばれた国で彼との人生(時間)を過ごした中で、彼の最後を看取りました、後悔に表情を歪ませ眠るように逝ってしまった姿....眼を閉じた今でも鮮明に浮かびます。




わたくしは彼から貰った陽黄花ようこうかの種を此処に植え、永い刻を此処で過ごし彼が築いた国の行く末を見守っていたのです。だけど、それも終わりです、永かった寿命が尽き欠けようとするのです.....。心残りが有るすれば、それは彼の表情の意味が知りたかった....』


グリューンは最後まで国を築いた彼と過ごし、彼の最後を看取った後も彼から貰った花の種を植え。

この場所で永い刻を過ごしながら、彼の国を見守り最後を迎えようとしていた。


「そんな過去がグリューンにはあったですね、グリューンの友達は快く逝けなかったですね....」


僕はグリューンの話を聞いて悲しくなっていた、語っているグリューンは本当に辛そうだった。


『そう想ってくれるだけでも、古き友も喜んでくれてるさ.......』


翡翠の双眸に大粒の涙を浮かばせたグリューンは、微笑みながら陸の優しさに嬉しく思った。


「うっ......お゛ぉ.....グリューンにそんな辛くって悲しい事があったのか」


「『.......』」


再起不能だったリストがいつの間にか復活し、グリューンの話を聞いて泣いていた。

陸もグリューンも声に出さなかったが、リストを本気で良い奴だなと暖かく見ていた。


『フフっ、陸もリストも清い心の持ち主です、最後に貴殿方に会えたのは良き想い出となりましたが。話し相手はもう充分なので、これ以上は遅くなる前に帰りなさい』


グリューンの言う通りで、まだ日は出てるがこれ以上此処に居れば森の中で夜が来てしまう。

僕一人なら問題無いが、今回はリストもいる為に夜の森での活動は危険すぎた。

その事を踏まえてリストに説明し了承した。


「じゃ、グリューン元気でな!! 」


「今日は良い経験になりました、グリューンの話しを聞けて良かったです。本当ならまだ聞きたい事が有るのですが、それは自分で調べる事にします。それじゃグリューン、また会える日を楽しみにしてます......」


『えぇ、陸もリストも元気で。また会える日を楽しみにしてます』


陸はリストともにオゲタ村に帰る為に、来た道を引き返して行こう歩き出した時に。

グリューンの『念話』が届き、後ろにいる緑竜の方えと振り向いた。


『陸....また明日来なさい、疑問だらけは気持ち悪いでしょうから。それに、異世界の勇者・・・・・・・は知らなければならない事がある』


それを聞いて今すぐにでも聞き返そうと、グリューン元まで戻ろうしたが。

グリューンは今日はもう話す事は無いと言わんばかりに、最初に見た時と同じに態勢に入り眼を閉じて眠りについた。


なんでグリューンは、僕が異世界から来た勇者・・・だって知ってるんだ?!。


「リク?!、速く帰らないと夜になちゃうよ!」


「あぁ...今行くよ....」


先に歩きだしていたリストが、立ち止まった陸に声を掛け先を促す。

陸も生返事を返し、リストの元まで再び歩き出した。

ただ、心情は荒れていたグリューンが何故陸の事を勇者だと知っているのか。

リストは陸としか読んでなく、グリューンの前じゃ勇者だと一言も呼んでないのを覚えていた。

オゲタ村に帰るまで陸はグリューンの言葉を考えていた。


明日になれば答えが分かる.....。



Twitterとかで他の作者様が、〇〇PV達成で絵を描きました!。

ってを見て、自分もやれば良かった~!って後悔しましたが。

あいにく絵心が無かったのを思い出しては、一人悲しくなりました(´・c_・`)。


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