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亜由莉

ファミレスのバイトが終わり、家に帰ろうとしていたら声をかけられた。


「なあ、あんた邦南高校の生徒だよな?俺もそうなんだけど少しいいか?」


はぁ?こっちはバイト終わりで疲れてるからさっさと家に帰りたいんですけど?


「なんですか?なにか用ですか?急いでるんですけど」

「単刀直入に言う。あんたと同じファミレスでバイトしてる人の中に真島理香さんって人がいるはずなんだが、その人のシフトを教えてくれないか?」


は!?何コイツ!?


「言えるわけないでしょ!ストーカー?警察呼ぶよ!」

「ま、待て。俺と理香さんは知り合いだ。ていうかガキの頃からの付き合いだ」


…ん?よく見たらコイツ、修介君と一緒にいるとこ見たことあるような?名前は知らんけど。


「はぁ?だから?」

「俺2年2組なんだけど、同じクラスに真島禄斗ってやつがいるんだ。知らないか?あんたたしか2年3組だよな?俺と真島はけっこう頻繁に3組に出入りしてるんだが…」


真島!修介君と仲いいヤツじゃん!あいつは問題児だから私でも名前知ってる。…そうだ!真島と一緒に毎回昼休みに3組に来るのがコイツだ!…コイツ使えるかも。一応話だけでも聞いてみるか。


「…わかったわ、話だけなら聞いてあげる。でもここじゃなんだし、もっと違うとこで話したいんだけど」


こんなバイト先の近い場所で男子と一緒にいるところ見られて、変な噂流されたくない。


「あ、ああ、そうだな。そこにカラオケがあるからそこでいいか?もちろん金は俺が出すから」

「別にいいけど、変な素振り見せたらすぐ警察呼ぶから」

「大丈夫だ、そういう心配はしなくていい。こっちだ」


カラオケに案内されて店内に入った。ここのカラオケは初めて入ったけど、料金は後払いらしい。部屋に入って話を聞くことにする。


「何か注文するか?」

「いらない。今ダイエット中なの」

「そうか」

「…で、なんだっけ?」

「…ええと、3組に真島ってやつがいるの知ってるか?」

「知ってる」

「そいつと俺仲いいんだけど、そいつの姉が真島理香さんなんだよ」

「へぇ、そうなの。たしかに苗字は同じね」


理香先輩と真島、姉弟だったんだ。あんなふざけた弟がいるなんて理香先輩も大変そ〜。


「俺理香さんのこと好きでさ。だからバイトが終わる時間が知りたいんだよ」

「そんなん本人に直接聞けばいいじゃん。昔からの知り合いなんでしょ?」

「それが無理だからあんたにお願いしてるんだろ」

「あんたじゃなくて小牧!」

「悪い。名前がわからなかったんだ」


私もアンタの名前知らないけどな。別に知りたいと思わないけど。


「で、なんでそんなこと知りたいのよ」

「理香さんと会いたくてな」

「だから会いたいなら直接会えばいいじゃん!」

「だからそれが無理だから聞いてるんだろ」

「はぁ?マジで意味わかんないんだけど!?」

「とある事情で理香さんに会うのに真島家には行けないんだよ」


何なのコイツ?どういうこと?


「…で、バイトのシフト知ったらどうすんの?」

「理香さんのバイトが終わる少し前に店に行く」

「は?なんでそんなタイミングなのよ?」

「だって働いてる最中に行ったら邪魔になるだろ?」

「だったら来なきゃいいじゃん」

「いや、働いてるとこ少し店内で見たいんだよ。それにバイト終わったあと、一緒に話したい」

「だったらスマホ使って話せばいいじゃん!」

「理香さんの連絡先知らないんだよ…」

「はぁ!?知り合いじゃないの!?」

「教えてもらえなくてな。知りたいんだけど、聞いても教えてくれないんだ…」


マジでわけわかんないんだけど……


「アンタと理香さんの関係性が全然見えてこないんだけど」

「関係性は俺が理香さんを大好きってことだ。あとわかりやすく言うと、理香さんの休日のバイト終わりしか俺は理香さんと会って話すタイミングがないって感じだな」

「…ふーん、なるほどね」


説明されてもわかんないし、もうどうでもいいや。それより多分コイツ使えるわ。


「教えてあげてもいいけど条件がある」

「なんだ?」

「アンタ修介君と仲良いわよね?」

「修介君?……ああ、越後のことか」

「そう、越後修介君」

「越後がどうかしたのか?」

「私、修介君のこといろいろ知りたいんだよね。だから修介君の血液型とか誕生日とか、アンタ探ってきて」

「はぁ?なんでそんなこと知りたいんだよ?」

「…そんなんアンタみたいなヤツならすぐわかるでしょ」

「……ああ、そういうことか」


私は修介君が好き。大好き。修介君のことをもっと知りたい。


「それが交換条件。ただしそっちが先に教えること。じゃなきゃ理香先輩のシフト教えてあげない」

「…よし、わかった。具体的に何が知りたいんだ?」

「まずは血液型かな。それと誕生日も絶対知りたい。あとは体重とか趣味とか家族構成とか、好きな食べ物とか好きな音楽とか好きなテレビ番組とか。あとは好きな女の子のタイプも絶対かな」

「ま、待て待て、多過ぎる。一気に全部聞き出すのはさすがに無理だ…」

「…じゃあ情報1つにつき一週間分のシフト教えてあげる。でもまずは血液型は絶対聞き出して。それが絶対条件」

「なんで血液型が最優先なんだ?」

「そんなの修介君の血が神聖なものだからに決まってるでしょ。それに万が一修介君が輸血必要になったときに私が輸血できるか知りたいからよ。あとその逆も」

「お、お前、けっこうやばいな…」

「アンタに言われたくないんですけど。それとアンタが今知ってる修介君のこと今すぐ吐いて」

「えーと、身長は俺と同じくらいだから…」

「身長はもう知ってる。ていうか見れば大体わかるでしょ」

「そ、そうか。あと、あいつ俺と俺じ軽音部で、俺とバンド組んでてドラム担当なんだけど…」

「それももう知ってる」


アンタが修介君のバンドにいるのは初耳だけどな。


「え、えっと、あとは一緒にカラオケ行ったときにワムリグシャの曲をよく歌ってたな」

「へぇー、ワムリグシャね」


ワムリグシャ!!私も良く聴いてる!修介君と同じだ!ふふ、修介君と私、音楽の好み一緒かも。


「…すまん、あんまり越後のこと知らないわ…。あいつ自分のことあんまり話さないし、あいつの家とか行ったこともないし…」

「アンタそれでも修介君の友達なの?」

「いや、友達だって知らないこと多いだろ。あいつとは高校からの付き合いだし、同じ軽音部ったってあんまり活動してないし。ていうか小牧が直接越後に聞けばいいんじゃ…」

「そんなことできるわけないでしょ!」

「なんでだよ」

「そんなの聞いたら好きだってバレるじゃない!」

「バレちゃ駄目なのか?」

「ダメに決まってるでしょ!遠くから見てるのがいいんじゃない!」

「そうなのか?」

「そうよ」


コイツ、私と正反対だわ。


「友達になって聞き出すのが一番手っ取り早いと思うんだが」

「もし修介君と友達になったら佐々木とも話さなくちゃいけないじゃない」

「…たしかに小牧って佐々木嫌いそうだよな」

「あんなヤツ嫌いに決まってるでしょ!よくあんなヤツと仲良くできるわね」

「越後も仲良いだろ」

「修介君はそれだけ懐が深くて器が大きいってことよ!」

「そういう解釈なのかよ」

「言っておくけど修介君含めアンタ達くらいだからね、佐々木なんかと仲良いの。他の人はあんなヤツと話したくもないから」

「生徒会の人達とも仲良いって言ってたぞ」

「生徒会の連中は人間できてるんだから当たり前でしょ」

「…お前佐々木虐めたり悪口とか言ってないよな?」

「してないわよ!そんなことして修介君に知られたらどうするの!悪口言ってるのは他のヤツらでしょ!それに佐々木の悪口しょっちゅう言ってたのは1年のときに同じクラスだった連中だから。今はアンタらが佐々木とつるんでるから悪口言う人もあんまいないけど、心の中で嫌ってるヤツ多いからね。それと私、佐々木とは1年のときクラス違うから、1年の頃から私は佐々木とは無関係!」

「…それならいいけどさ。別に、佐々木と仲良くしてくれ、なんて言わねぇよ。俺達は他のやつらと佐々木がもっと仲良くなって欲しいとは思ってないし、おそらく佐々木だって俺達や生徒会の人達がいればそれで十分だと思ってるだろうからな」

「ていうか佐々木のことなんかどうでもいいんだけど。修介君のこと、アンタこれからいろいろ聞き出しなさいよ」

「…わかったよ。…あ、そうだ。もしかしたら今年の文化祭で俺達のバンド、演奏するかもしれない」

「それって修介君も演奏するってこと!?」


そんなの絶対見たい!!


「いや、まだ微妙なんだよな」

「なんでよ!」

「俺達のバンド、今ボーカルがいないんだよ。でも歌めっちゃ上手いやつがいて、文化祭で歌ってくれないか交渉中なんだよ」

「そんなの絶対口説き落としなさいよ!」

「ああ、そんなこと小牧に言われなくてもそうするつもりだよ。ていうか越後あんまり上手くないけど、それでもいいのか?」

「上手い下手なんかどうでもいいの。修介君が一生懸命やってるのが見られればそれでいいのよ」

「あー、その気持ちはわかるわ」

「あら、そう」


そういう気持ちは私もコイツも同じなのね。


「そういえば、越後のことを知れたらどうやって小牧に伝えればいいんだ?」

「…スマホが一番安全ね」

「…確かにな。……小牧、今更だけどお前、俺の名前知ってるよな?

「…ごめん、なんだっけ?」

「おい!知らねぇのかよ!宮本だよ宮本!」

「はいはい、宮本ね宮本」


私としてはこんなヤツの連絡先なんてスマホに入れたくないけど、修介君のためにお互いの連絡先を交換した。それと連絡手段は主にラインを使うことにした。


「理香さんの連絡先知りたいのに、他の女子の連絡先を先に入れてしまった…」

「私だってそうだから!ていうか修介君の連絡先教えなさいよ!ラインとかでやり取りとかしてるでしょ。それも見せなさいよ!」

「そ、それはさすがにプライバシーの侵害だろ!」

「だからアンタにそれ言う資格ないでしょうが!」

「ま、まて、わかった、ラインのやり取りはさすがに見せられないが、電話番号とメールアドレスは教える」


やった!!


「さっさと教えなさいよ」

「わかったからそう急かすな。そのかわり俺が教えたってことは誰にも言うなよ」

「わかってるってば」

「もちろん越後に電話かけたりメールするのもNGだからな」

「当たり前でしょ。知ってるだけで十分だっての」


こんなヤツから修介君の電話番号とメールアドレスをゲットできるなんて思わなかったわ。コイツの話聞いて正解だった。


「あいつSNSやってないからな。今出せる情報はこんなもんか…」


修介君がSNSやってないのも知ってる。散々調べたけど結局見つからなかったもの。


「ま、明日からいろいろ聞き出してちょうだいね」

「わかったよ。そのかわり絶対理香さんのシフト教えろよ」

「それは血液型がわかってからね」

「ああ」

「じゃ、私帰るから、アンタ払ってね」

「わかってる。じゃあ出るか」



料金を払わせて店の外に出たあと、すぐに別れて家に帰った。修介君のスマホの電話番号にメールアドレスもゲットしたし、思いがけない一日になった。




数日後、修介君の血液型がAだとラインがきた。最高の結果だ!私もAだ!納豆が嫌いとも書いてあった。なので私は納豆を食べないことにする。報酬として理香先輩のシフトをバイト先で調べ、アイツに流した。ま、知り合い同士らしいし問題ないでしょ。







それからしばらくして夏休みに入るとアイツが店に来た。たまたま理香先輩が対応してるけど、なんか怒ってるみたい。理香先輩が私の方へ向かって来ると、私にアイツの対応を押し付けてきた。


「小牧、お前があそこにいる客の対応をしろ」

「なんでですか?」

「いいからお前がやってくれ」

「別にいいですけど…」

「注文はチョコパ1だけだ。お前が作って持ってってくれ。頼んだぞ」

「は〜い」


夕方で客が少なかったので、言われた通りチョコレートパフェを作ってすぐにアイツのところに持っていった。


「お待たせしました〜、こちらご注文のチョコレートパフェになります。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」

「ああ」

「アンタけっこう来るの遅かったわね」

「こっちにもいろいろあるんだよ。ていうか話しかけるなよ。怪しまれるだろ」

「別に大丈夫でしょ」

「いいからさっさと戻れよ」

「はいはい。ごゆっくりどうぞ〜」


スタスタ


「おい、あいつと何か話してなかったか?」


あらら、見られてたか。


「あの客、私の隣のクラスのヤツだから少し話しただけですよ」

「そうなのか?」

「はい。宮本ってヤツです。そういえば、あの宮本と同じクラスで仲のいいヤツに問題児の真島ってやつがいるんですけど、そいつ理香先輩の弟なんでしょ?」

「お、お前、なんでそんなこと知ってるんだよ」

「少し小耳に挟んだんですよ。あんなヤツが弟なんて理香先輩も大変ですね。あれ、もしかして理香先輩、宮本と知り合いですか?」

「ああ、ち、ちょっとした知り合いなんだ。知り合いにバイトしてるとこ見られるのは、恥ずかしいからな。…だからお前に任せたんだ」


理香先輩嘘吐くの下手過ぎ。ふふ。


「そうですか」

「ほら、あそこの客席立ったぞ。私がレジやるからお前はテーブル片して来い」

「は〜い」


言われた通りテーブルの食器などを片付けていると、横の席から会話が聞こえてきた。4人いるけど、多分全員私と同じ高校のヤツらだ。1人同じクラスのヤツがいる。名前は確か曽我だったような…。


「手塚ー、文化祭の劇って午前と午後に一回ずつだよな?」

「ああ、その予定だ」

「ならその間に俺武道場でマジックショーやりたいんだけどいいよな?」

「そういうのは俺じゃなくて堀江先生に許可取れよ」

「部長のお前にも一応聞いておこうと思ってな」

「んー、演劇部の方に支障が出なければ別に大丈夫だろ」

「手塚部長、沼下先輩の手品はとても素晴らしいですよ」

「高橋、手品じゃなくてマジックな」

「どっちも同じじゃないんですか?」

「曽我、お前も手品とマジックを同じだと思ってる人間か」


手品もマジックも同じでしょう。何言ってるのコイツ?


「どう違うのでしょうか?自分にはわかりません」

「ストーリー性があるのがマジックでないのが手品だ!」


さっぱりわかんないんだけど…。


「なるほど!ストーリー性ですか。納得です」


なんで今の説明でわかるのよ…。


「曽我はわかったか?」

「すみません、わからないです」

「大丈夫だ曽我、俺も全くわからん」

「えー、なんでだよ。高橋はわかったってのに。ま、とりあえず文化祭でマジックやるからよろしくな」

「よろしくって何をだ?」

「そりゃ助手とかだよ」

「は?お前1人でやるんだろ?」

「やるのは俺1人だけど準備とかいろいろあるだろ。お前さっき大丈夫って言ったから許可下りたら手伝えよ」

「マジかよ…」

「なるほど、これがマジックですか」

「曽我、これはただのペテンだ…」


コイツらは演劇部の連中みたいね。ま、私は修介君のバンド観るから演劇もマジックも興味ないけどね。





テーブルの片付けを終わらせ少しすると、宮本がチョコレートパフェを食べ終わった。レジで会計を済ませるために席を立ち上がったので私がレジに向かった。理香先輩のバイトもそろそろ上がりの時間だ。


「このあと理香先輩と話すんでしょ?」

「ああ、そうだ。そのために来たからな。…小牧、お前ってなんでこのファミレスでバイトしてんだ?」

「修介君がたまに来るからよ」

「そうか、なるほどな。そんな小牧に1つ大事なことを伝える」

「何よ?」

「実はさっきまで越後達と遊んでて、そのときたまたま聞いたんだが、越後は髪があまり長くない女子の方が好みらしい」

「………へぇ、そうなんだ」

「ああ。さっきラインでも送っておいたんだが、バイト中で確認できなかっただろうから今伝えた。じゃあな。また何かわかったら知らせる」

「……ええ」





バイトが終わった直後、私はすぐに近くの美容院で長く伸ばしていた髪の毛を短くカットしてもらった。


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