小春 1
生徒会メンバーのはなしになります。
それとep小春2·3、亜由莉2、唐川2、藤澤2·3、これらが5月3日に投稿されたことになっていますが、元々長かったepを分割して割り込み投稿しただけなので後から追加したepではありません。紛らわしくてすみません。
「小春も高校生になったら生徒会に入ってみなよ。いい経験になるかもよ」
高校入学前に、私と同じ高校を卒業した3歳年上のお姉ちゃんに提案された。
お姉ちゃんは友達に誘われて生徒会に入ったのだけれど「思っていたより楽しめた」と語っていた。
私は高校生になっても特にやりたいことはなかったので、思いきって入ってみることにした。
実際入ってみると会長も副会長もとても親しみやすい先輩達で、あっという間に溶け込むことができた。
生徒会は今のところ仕事内容も特に難しいこともなく、周りのサポートもあり楽しい高校生生活が続いている。
いつもどおり休み時間に携帯を確認すると『放課後に生徒会室に集合』と連絡が入っていた。
今日は生徒会の仕事は何もないはずだったので、急な作業などが必要になったのかと思い放課後生徒会室へ向かった。
生徒会室のドアをノックし「失礼します」と一声添えて中に入ると3年生の会長と茜先輩が先に来ていた。
生徒会長の元木先輩のことを皆「会長」と呼ぶので私もそう呼んでいる。会長は運動部に所属していないのにとても体が大きく、生徒の中でもとても目立つ存在だ。
「コハルン3位ー」
「よう、菱川。藤澤はまだ来てないんだが登校はしてるよな?」
「あ、はい、いました。多分掃除してて遅くなってるんだと思います。あの、今日はどうして呼ばれたんですか?」
「まだ秘密だよんコハルン」
「え?」
「まぁまぁ、座って待ってなよ」
茜先輩に言われたとおり、椅子に座り他の人が来るのを待つことにした。
茜先輩というのは副会長のことだ。
「名前で呼んでよ〜」と言われたので私は「茜先輩」と呼んでいる。
茜先輩は必ず皆にあだ名を付けるらしい。
私→コハルン 藤澤君→リョー
会長→コーイチ 佐々木先輩→ササッキー
千葉先輩→なっちゃん 常盤先輩→トッキー
生徒会の6人のことをこんなふうに呼んでいる。
ちなみに千葉先輩と佐々木先輩の担任の風間先生のことを最初に「フーセン」と呼び始めたのも茜先輩らしい。
少し待っているとドアがノックされ誰かが入ってきた。
「失礼します」
2年生の千葉先輩だ。
「なっちゃん4位ー」
「千葉、今日佐々木は登校してるか?」
「欠席です」
「えー、今日ササッキー休みなのー?」
「理由は聞いてるか千葉」
「体調不良です」
千葉先輩と佐々木先輩は2年3組で同じクラスだ。
どうやら千葉先輩だけが佐々木先輩が休みなのを知っていたみたいだ。
千葉先輩と目が合ったので軽く会釈をすると、同じように返してくれた。
千葉先輩は背が小さくとても可愛らしい見た目の女子の先輩だ。それに物静かでおとなしい。なのでコミュニケーションを積極的に取ってくれる他の先輩達とは違い、まだ私と千葉先輩の間には少し距離がある。
本当は千葉先輩ともっと仲良くなりたいのだけれど……。
「ササッキーいないのか……どうするコーイチ?」
「5人でも問題ないだろう。1年の2人に楽しんでもらえればいいわけだしな」
「そだね〜」
「常盤先輩もいませんけど……」
2年生の常盤先輩もまだ来ていない。
「トッキーは歯医者予約してたみたいで帰っちゃった」
「だから全員で5人だな」
「そうなんですか。それで何をするんですか?」
「簡単に言えば生徒会の仲を深めるためにゲームをする」
「ちょっと、なんで先に言っちゃうの! リョーまだ来てないのに!」
「どうせ後でわかるんだから別にいいだろ。先に用意しておくか。机と椅子を隅に移動させてくれ」
「私も手伝います」
「ダメダメ、コハルンは座ってて。1年生のためのイベントなんだから。なっちゃん手伝って」
「……はい」
会長と茜先輩が机を移動させ、千葉先輩が椅子を隅へ運ぶ。
先輩達3人が準備をしているのに、自分1人だけが椅子に座って待っているので少し居心地が悪い。
藤澤君がいてくれればもう少し気が楽だったかもしれない……。
私達が通う邦南高校は基本、全生徒がどこかの部活動に所属する必要がある。
そして帰宅部がない代わりに清掃部という部活が存在する。
清掃部に所属すると毎月に1〜2回放課後に清掃活動をする。全員が同じ日にするのではなく、この日はこのクラスの清掃部員がこの場所を、という感じだ。休日に学校周辺のゴミ拾い活動に参加しなければならない場合もある。
清掃部があるおかげで各クラスに振り分けられている掃除の負担分が軽減される、という仕組みになっているのだ。
そして私の班は今週は掃除がない。おそらく会長も茜先輩も千葉先輩もなかったけれど、藤澤君のみ掃除当番のため遅れているのだろう。
ちなみに清掃部の部長は生徒会長が務めることになっている。
「失礼します。すいません、遅くなりました」
藤澤君が慌ただしく生徒会室に入ってきた。
藤澤諒太君は私と同じ1年1組で、私が密かに想いを寄せている男子でもある。
「リョー最下位ー」
「僕も手伝います。机運べばいいんですか?」
「ダメダメ、リョーは手伝わなくていいから。コハルン説明してあげて」
「はい、わかりました」
「?」
隅の椅子に座りながら藤澤君に事情を説明していると、会長が生徒会室に隣接している物置部屋から何かが入ったダンボールを持ってきた。それを隅に寄せた机の上に置き、中の物を確認し始めた。
「……サイコロが無いな」
「え、なんで? 去年はあったよね?」
「参ったな。……クジでも作るか」
「サイコロならあります」
千葉先輩がスカートのポケットの中からサイコロを取り出した。
「それ、ここのサイコロじゃないよな? なんでサイコロなんか持ってるんだ?」
「……隣の席の人に貰いました」
「よくわからんが借りてもいいってことだよな?」
「はい」
「よし、始めるか」
どうやらゲームが始まるみたいだ。
会長がダンボールから畳まれた紙の様な物を取り出し生徒会室の中央に並べられた机の上にそれを置いて広げた。
全員が中央の机に集まる。
茜先輩
千葉先輩 机机 会長
藤澤君 私
スゴロクだ。全てのマスに何か書いてあるみたいだけれど、逆さまなので読めない。
「1年が読みやすいようにしないとな。順番もこのまま菱川から時計回りでいいだろう」
私と藤澤君が読めるように会長が紙を回転させてくれた。
それぞれのマスにお題のようなことと、それをこなしたときにもらえる点数が書いてあるみたいだ。
女子が書いた文字のように見えたので聞いてみる。
「これ誰が作ったんですか? 字が女子っぽいから会長じゃないですよね? 茜先輩ですか?」
「アタシ達じゃないんだよね〜」
「ああ、俺でも菊池でもないんだ。俺達が1年のときの生徒会長が俺達の4学年上の先輩が作ったと言っていた」
「へぇー、そうなんですか」
「ルールを説明するぞ。スゴロクと同じようにサイコロが出た目の数だけ駒を進める。その時止まったマスのお題をこなして点数を増やしていく。誰かがゴールした時点で点数が1番多かった者が勝ち、1番少なかった者が負けなんだが、今日は最下位に何か罰ゲームでもしてもらおう。2人ともわかったか?」
「はい、わかりました」
「はい。でも会長、駒はどうするんですか?」
藤澤君が会長に確認した。
確かに駒が無いみたいだ。
「駒を用意しておくのをすっかり忘れていたな。去年と同じように小銭で代用するか。少し待っててくれ」
「い、いえ、自分達ので良いですよ。僕小銭持ってるんで」
「いいからいいからリョー、コーイチの使いなよ。コーイチは必ず小銭で999円持ち歩いてるんだから」
会長が自分のサイフから小銭を取り出しスタート地点に置いた。
「順番どおりの方がわかりやすいだろう。菱川は1円玉、藤澤は5円玉、千葉は10円玉、菊池は50円玉、俺は500円玉だ」
「なんでコーイチが500円玉なのよ。100円玉でいいじゃん」
「俺は会長なんだから500円玉だろう」
「ならアタシは副会長なんだから100円玉でしょ!」
「100円玉は佐々木だから駄目だ」
「えー、なんでー? じゃあトッキーはどうなのよー」
「いいからさっさと始めるぞ。千葉、点数計算頼む」
「……わかりました」
茜先輩が不満そうなままゲームが始まった。




