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小春

「小春も高校生になったら生徒会に入ってみなよ。いい経験になるかもよ」

高校入学前に、私と同じ高校を卒業した3歳年上のお姉ちゃんに提案された。お姉ちゃんは友達に誘われて生徒会に入ったのだけれど「思っていたより楽しめた」と語っていた。私は高校生になっても特にやりたいことはなかったので、思いきって入ってみることにした。


実際入ってみると、会長も副会長もとても親しみやすい先輩達で、あっという間に溶け込むことができた。


生徒会長の元木先輩は、運動部に所属していないのに体が大きい。皆「会長」と呼ぶので、私もそう呼んでいる。


生徒会は今のところ仕事内容も特に難しいこともなく、周りのサポートもあり楽しい高校生生活が続いている。



いつもどおり休み時間に携帯を確認すると「放課後に生徒会室に集合」と連絡が入っていた。今日は生徒会の仕事は何もないはずだったので、急な作業などが必要になったのかと思い、放課後生徒会室へ向かった。


生徒会室のドアをノックし「失礼します」と一声添えて中に入ると、3年生の会長と副会長が先に来ていた。


「コハルン3位ー」

「よう、菱川。藤澤はまだ来てないんだが、登校はしてるよな?」

「あ、はい、いました。多分掃除してて遅くなってるんだと思います。あの、今日はどうして呼ばれたんですか?」

「まだ秘密だよん、コハルン」

「え?」

「まぁまぁ、座って待ってなよ」


茜先輩に言われた通り椅子に座り、他の人が来るのを待つことにした。


茜先輩というのは副会長のことだ。「名前で呼んでよ〜」と言われたので私は「茜先輩」と呼んでいる。

茜先輩は必ず皆にあだ名をつけるらしい。


私→コハルン  藤澤君→リョー  

会長→コーイチ  常盤先輩→トッキー

千葉先輩→なっちゃん  佐々木先輩→ササッキー


生徒会の6人のことをこんなふうに呼んでいる。ちなみに千葉先輩と佐々木先輩の担任の風間先生のことを最初に「フーセン」と呼び始めたのも茜先輩らしい。


少し待っているとドアがノックされる。  コンコン

誰だろう?


「失礼します」


2年生の千葉先輩だ。


「なっちゃん4位ー」

「千葉、今日佐々木は登校してるか?」

「欠席です」

「えー、今日ササッキー休みなのー?」

「理由は聞いてるか千葉?」

「体調不良です」


千葉先輩と佐々木先輩は2年3組で同じクラスだ。どうやら千葉先輩だけが佐々木先輩が休みなのを知っていたみたいだ。


千葉先輩と目が合ったので軽く会釈をすると、同じように返してくれた。私はまだ千葉先輩とは少し距離がある。もう少し仲良くなりたいのだけれど、千葉先輩は物静かでおとなしい性格なので、コミュニケーションを積極的に取ってくれる他の先輩達とは違い、どうすればいいのか少し迷っている。


「ササッキーいないのか…どうするコーイチ?」

「5人でも問題無いだろう。1年の2人に楽しんでもらえればいいわけだしな」

「そだね〜」

「常盤先輩もいませんけど…」


2年生の常盤先輩もまだ来ていない。


「トッキーは歯医者予約してたみたいで帰っちゃった」

「だから全員で5人だな」

「そうなんですか。それで何をするんですか?」

「簡単に言えば生徒会の仲を深めるためにゲームをする」

「ちょっと、なんで先に言っちゃうの!リョーまだ来てないのに!」

「どうせ後でわかるんだから別にいいだろ。先に用意しておくか。机と椅子を隅に移動させてくれ」

「私も手伝います」

「ダメダメ、コハルンは座ってて。1年生のためのイベントなんだから。なっちゃん手伝って」

「…はい」


先輩達3人が準備をしているのに、自分1人だけが椅子に座って待っているので少し居心地が悪い。藤澤君がいてくれればもう少し気が楽だったかもしれない。会長と茜先輩が机を移動させ、千葉先輩が椅子を隅へ運んでいる。



私達が通う邦南高校は基本全生徒がどこかの部活動に所属しなくてはいけない。そして帰宅部が存在しない代わりに清掃部という部活がある。清掃部に所属すると、毎月に1〜2回放課後に清掃活動をする。全員が同じ日にするのではなく、この日はこのクラスの清掃部員がこの場所を、という感じだ。休日に学校周辺のゴミ拾い活動に参加しなければならない場合もある。清掃部があるおかげで、各クラスに振り分けられている掃除の負担分が軽減される、という仕組みになっているのだ。多分藤澤君だけが掃除当番で遅くなっているのだろう。ちなみに清掃部の部長は生徒会長が務めることになっている。


「失礼します。すいません、遅くなりました」


クラスの掃除が終わった藤澤君が慌ただしく生徒会室に入ってきた。藤澤諒太君は私と同じ1年1組で、私が密かに想いを寄せている男子でもある。


「リョー最下位ー」

「僕も手伝います。机運べばいいんですか?」

「ダメダメ、リョーは手伝わなくていいから。コハルン説明してあげて」

「はい、わかりました」

「?」


隅の椅子に座りながら藤澤君に事情を説明していると、会長が生徒会室に隣接している物置部屋から、何かが入った段ボールを持ってきた。それを隅に寄せた机の上に置き、中の物を確認し始めた。


「サイコロが無いな」

「え?なんで?去年はあったよね?」

「参ったな…うーん…クジでも作るか?」

「サイコロならあります」


千葉先輩がスカートのポケットの中からサイコロを取り出した。


「それ、ここのサイコロじゃないよな?なんでサイコロなんか持ってるんだ?」

「…隣の席の人に貰いました」

「よくわからんが借りてもいいってことだよな?」

「はい」

「よし、始めるか」


どうやらゲームが始まるみたいだ。会長が段ボールから畳まれた紙の様な物を取り出し、生徒会室の中央に並べられた机の上にそれを置いて広げた。全員が中央の机に集まる。


          茜先輩

      千葉先輩 机机 会長

         藤澤君 私


スゴロクだ。全てのマスに何か書いてあるみたいだけれど、逆さまなので読めない。


「1年が読みやすいようにしないとな。順番もこのまま菱川から時計回りでいいだろう」


私と藤澤君が読めるように、会長が紙を回転させてくれた。それぞれのマスにお題のようなことと、それをこなしたときにもらえる点数が書いてあるみたいだ。女子が書いた文字のように見えたので聞いてみた。


「これ誰が作ったんですか?文字が女子っぽいような気がするから会長じゃないですよね?茜先輩ですか?」

「私達じゃないんだよね〜」

「ああ、俺でも菊池でもないんだ。誰が作ったのかは知らないが、おそらく何世代か上の女子の先輩が作ったんだろう」

「へぇー、そうなんですか」

「ルールを説明するぞ。スゴロクと同じようにサイコロが出た目の数だけ駒を進める。その時止まったマスのお題をこなして、点数を増やしていく。誰かがゴールした時点で点数が1番多かった者が勝ち、1番少なかった者が負けなんだが、今日は最下位に何か罰ゲームでもしてもらおう。2人ともわかったか?」

「はい、わかりました」

「はい。でも会長、駒はどうするんですか?」


藤澤君が会長に確認した。確かに駒が無いみたいだ。


「駒を用意しておくのをすっかり忘れていたな。去年と同じように小銭で代用するか。少し待っててくれ」

「い、いえ、自分達ので良いですよ。僕小銭持ってるんで」

「いいからいいからリョー、コーイチの使いなよ。コーイチは必ず小銭で999円持ち歩いてるんだから」


会長が自分のサイフから小銭を取り出しスタート地点に置いた。


「順番通りのほうがわかりやすいだろう。菱川は1円玉、藤澤は5円玉、千葉は10円玉、菊池は50円玉、俺は500円玉だ」

「なんでコーイチが500円玉なのよ。100円玉でいいじゃん」

「俺は会長なんだから500円玉だろう」

「なら副会長なんだからあたしは100円玉でしょ!」

「100円玉は佐々木だから駄目だ」

「えー、なんでー?じゃあトッキーはどうなのよー」

「いいからさっさと始めるぞ。千葉、点数計算頼む」

「…わかりました」


茜先輩が不満そうなままゲームが始まった。


「えっと、私からですよね」


私がサイコロを振ると6が出た。1円玉を6マス移動させる。


『左隣の人と

 あっち向いてホイをして

 勝った人が+1』


「えっと…」

「最初はグー」私が戸惑っていると、藤澤君が何の前置きもなく始めたので焦りながらついていく。

「ジャンケンポイ」私がグーで藤澤君はパーだ。

「あっち向いてホイ」私は左を向くと、藤澤君も同じ方向を指差していた。


「アハハハ、コハルン一発で負けてるー」

「藤澤に+1だな」

「ごめん菱川さん。僕が勝っちゃって…」

「ううん、気にしないで」


1回で負けたのは少し恥ずかしかったのだけれど、藤澤君とあっち向いてホイができたので少し嬉しかった。


「次僕ですよね」


藤澤君は5が出たので5マス進めた。


『なんでもいいので

 ものまねをしろ 

 上手ければ+1』


「えぇ、ものまねかぁ…上手ければって誰が判定するんですか?」

「全員だ。今日は5人だから自分以外の4人中2人が◯を出せば+1だな。点数をやりたくないからわざと✕を出すのは駄目だからな」

「わかりました。…じゃあカラスのものまねします

………カァー、カァーカァー、カァー?カァー!」

「アハハ、カラスだ〜、あたしはまる〜」


茜先輩が両手で◯を作ったのを見て「じゃあ私も◯で」と賛同すると千葉先輩も「私も」と3人が◯になった。でも会長は両腕を胸の前で交差させ✕を出した。


「駄目だな、カラスはもっと大声で鳴くだろう。それにまだ少し羞恥心があるな」

「会長厳し過ぎますよ。上手くできたと思うんだけどなぁ…」

「コーイチはものまね得意だからね〜」

「藤澤がまた+1だな」


ものまねをする藤澤君のイメージがなかったので、少し驚いてしまった。このゲームを通じて藤澤君のことをいろいろ知ることができるかもしれないと思い、少しワクワクしてきた。3人が話している間に千葉先輩はすでに3マス進めていた。


『けん玉世界一周 

 大皿まで成功+1 

 小皿まで成功+2 

 中皿まで成功+3 

 全部成功+4』


「けん玉だな。あの中にあるはずだ」


会長が先程の段ボールからけん玉を取り出し千葉先輩に手渡すと、千葉先輩はあっという間に玉を大皿、小皿、中皿に乗せ、けん先にも通してしまった。


「えー!なっちゃんけん玉上手過ぎ!」

「凄いですね…」

「おー、お見事」


誉め言葉をひと通り言われてしまい、なんて声をかけようか一瞬迷ってしまった瞬間に会長が拍手をし始めたので、私も拍手をすることにした。なんでもいいから声をかければよかったとちょっと後悔した。


「…けん玉得意なので」

「千葉は一気に+4だな」


千葉先輩の意外な一面を知ることができた。今度これをきっかけに話しかけてみよう。


「あたしの番だね〜。ほいっ…4だ。いちにさんしっと」


『生麦生米生卵を

 3回連続で言えたら+1

 途中で噛んでも

 最後まで言い切ること』


「なまむぎなまごめにゃまたまご、

 なまむぎなまごめにゃまたまご

 なまむぎにゃまごめにゃまたまご!」

「ハハハ、全部にゃまたまごになってるぞ」

「あはははは」

「ふふふふ」


面白くて笑ってしまった。会長と藤澤君も笑っている。千葉先輩のリアクションが気になったので、左を見てみると顔を少し伏せ「フフ、フフフ」と笑っていた。よかった、千葉先輩も楽しそうだ。


「うー、言えると思ったんだけどなぁ。はい、じゃあ次コーイチの番」

「ああ」


会長がサイコロを転がすと1が出た。


『たけのこ、たけのこ、

 ニョッキッキ

 ミスした人は−1、1回勝負』


たけのこニョッキはいつも皆で生徒会室でやっているゲームだ。


「よし、全員で掛け声するぞ。せーのっ」

「「「「「たけのこ、たけのこ、ニョッキッキ!」」」」」

「「1ニョッキ!」」

「ちょっとコーイチ、被らないでよ!」

「それはこっちの台詞だ!」

「あはははは」

「ふふふふ」

「フフ、フフフ」


会長と茜先輩が1ニョッキで被った。まるで漫才みたいだ。この2人が付き合っているのかはわからないけれど、それにしても仲が良い。


「くっそう、俺と菊池がそれぞれ−1ずつだ。次は菱川だな」

「はい。…2かぁ。いちにっ、と」






『好きな人がいる+1

 学年も言う+2

 クラスも言う+3

 フルネーム言っちゃう+4』





え!?




「ほらほらどうしたのコハルン〜。好きな人がいない場合はどうなんですか?って聞かないってことは、好きな人いるってことだよね〜。しかも好きな人が学生じゃない場合はどうなんですかって聞いてもこないってことはうちの学生の可能性大でしょ〜。だれだれ〜?多分1年でしょ〜?」


茜先輩にグイグイ詰め寄られる。


「ちょ、な、なんでそんなに鋭いんですか!」

「あ、自分から白状しちゃったね〜」

「う…」

「ほらほら〜、もうフルネーム言っちゃえ」


『藤澤諒太』なんて口が裂けても言えない。でもすでに1年生に好きな人がいるということはバレているし、私はまだ点数が0だ。クラスまで言ってしまうと「え!もしかしてリョー?」なんて言われかねないので、「1年生に好きな人がいます…」と渋渋答えた。とても恥ずかしい。私に好きな人がいると知って藤澤君はどう思っているだろう…。


「えー、クラスも言っちゃおうよー」

「もういいだろ。菱川は+2だな。次は藤澤」

「はい。…4ですね。いち、に、さん、しー」


藤澤君が私の踏んだマスを1つ追い越した。藤澤君があのマスを踏んでいたら、どう答えていただろう…。


『たけのこ、たけのこ、

 ニョッキッキ

 ミスした人は−1、1回勝負』


「たけのこ、たけのこ」


会長が速攻で掛け声をし始めた。


「ニョッキッキ」

「「1ニョッキ!」」

「コーイチー!」

「またかよ!」

「あはははは」

「ふふふふふ」

「フフフ」

「コーイチのせいであたし−2なんだけど!」

「俺だってお前のせいで−2だぞ!」


2人がやり取りしている間に千葉先輩が4マス進めた。


『好きなポーズで

 ウインクする

 可愛いかったら+1』


千葉先輩がウインク!?見たい!


「………私ウインクできないので次いって下さい」


残念!それとも、もしかしてやりたくなくて嘘をついたのだろうか?


「えー、そうなの?なっちゃんのウインク見たかったなぁ」

「僕もできないんですよね」

「藤澤君もできないんだ」


藤澤君がウインクするところもちょっと見てみたい。


「できないものは仕方が無いな」

「じゃああたしだね〜。ほいっ…いちにさんしっ」


『好きな人がいる+1

 学年も言う+2

 クラスも言う+3

 フルネーム言っちゃう+4』


「あたしの好きな人は渡辺イヅマ君です!」

「誰だ?そんなやつ知らんぞ?」

「茜先輩、それってもしかしてジャカドーラの渡辺君ですか?」

「そうそう、ジャカドーラの渡辺イヅマ君!コハルンもジャカドーラの曲聴くの?」

「はい。大好きです。いろんな曲聴いてます!」


私はジャカドーラのメンバー全員の名前を言えるくらいジャカドーラのファンなのだ!


「ジャカドーラってなんだ?」

「男性アイドルグループですよ会長!藤澤君と千葉先輩は知ってますか?」

「すいません、僕は知らないです」

「…私も」


うーん、残念…。


「えー、3人とも知らないのー?遅れてるなー。じゃあワムリグシャとかデャバロームは知ってる?」

「ダバ?なんだって?」

「デャバロームだってば」

「聞いたことないぞ」

「僕も全然わからないです」

「…私も」

「私はワムリグシャもデャバロームも知ってます。どっちも良いバンドですよね」


ワムリグシャもデャバロームも今勢いのあるバンドグループで、私はこの2グループの曲もよく聴いている。


「おお〜、コハルンとは音楽の趣味が合いそうだね〜」

「待て待て、話が脱線し過ぎだ。続きは後でやってくれ」

「結局菊池先輩が言ったのは男性アイドルグループの人ってことですよね?」


藤澤君が改めて確認した。


「そんなの駄目に決まっているだろう。✕だ✕」

「茜先輩、ジャカドーラは好きですけど当然ダメです」

「そうですね、さすがに駄目です」

「0点」

「えー、なんでよー。ぶーぶー」


ジャカドーラのことを語り合える相手が見つかって嬉しかったけど、そういう人を除いて好きな人がいるのか知りたかった。会長のことはどう思っているのだろう…。


ブーイングする茜先輩を無視し、会長がサイコロを転がすと1が出た。


「コーイチまた1じゃん。おっそー」

「早く進めば良いというわけではないだろう」


『変顔

 面白ければ+1』


「変顔か」


会長が後ろを向いて顔を隠し、こちらを振り向いた。


「あははははは、会長、その顔どうなってるんですか」

「フフフフフフ」

「ふふふふふ、会長もういいですって」

「けっこう受けたな。これは+1だろう」

「あたしは何回も見てるからなぁ…」


次は私の番なのでサイコロを振ると6が出た。

1円玉を6マス進める。


『全員から

 デコピンをくらう+1』


「よっしゃー、あたしが最初にやってやるぜぇーー!

そこの椅子に座れやぁーー!」


茜先輩が気合いを入れ近づいてきたので、言われた通り隅に寄せてある椅子に座り両手で前髪を上げて目を瞑った。


「くらえぇーー!」


タンッ


!!


「いったーーい!」


思っていた以上に痛かったので、手でおでこを押さえて顔を伏せてしまった。


「え、ごめーん、そんなに痛かった?」

「ううう、痛いですよ!」

「大丈夫か菱川?」会長が声をかけながら寄り添ってきてくれた。「でこ出せ」と言われたので仕方なく顔を上げおでこを出すと、指でチョンと軽く弾かれた。「じゃあ僕も」と藤澤君にも同じく軽くしてもらい、千葉先輩も無言のまま全然痛くないデコピンにしてくれた。


「ちょっと、これじゃあたしが悪者見たいじゃん!」

「お前のがかなり痛そうだったから1回で十分だと思ってな。それに俺と藤澤は男子だしな」

「なっちゃんは女子じゃん!」

「千葉はあれが全力だろ」

「そんなわけないでしょ。ね、なっちゃん?」

「………次、藤澤君」

「あ、はい」

「ちょっと、なっちゃん無視しないでよー」

「………」

「菱川+1だな」

「えっと、2マス進みますね」


『赤巻紙青巻紙黄巻紙

 3回連続で言えたら+1

 途中で噛んでも

 最後まで言い切ること』


「あかまきがみあおまきかまみきまきかまみ、

 あかまけがみあおまきがみきがきがみ、

 あかまきががめあおまきがみきがきがみ」


「はい、ダメーーーー」

「ハハハ、けっこう噛んでたな」

「フフ、失敗」

「僕早口言葉苦手です…」

「ふふふ、藤澤君ドンマイ」


藤澤君は早口言葉が苦手みたいだ。


千葉先輩は4を出し4マス進む。


『赤巻紙青巻紙黄巻紙

 3回連続で言えたら+1

 途中で噛んでも

 最後まで言い切ること』


「あかまきがみあおまきがみきまきがみ

 あかまきがみあおまきがみきまきがみ

 あかまきがみあおまきがみきまきがみ」


「ええー、ノーミスじゃん!」

「千葉先輩凄いです」

「おー、またしてもお見事。千葉+1だな」

「千葉先輩さすがです。早口言葉も得意なんですね」


今度は声をかけられた。少し変だっただろうか…。


「別に得意じゃない…。たまたま…」

「あ、そうなんですね…」


かける言葉を間違えたかもしれない…。

なんとかもっと仲良くなりたいのだけれど…。


「次あたしだね。ほいっ…また4だ。いちにさんしっ」


『サイコロが出た目の数だけ

 左隣の人から、点数を1奪う

 自分の場合は−1』


「やったー、かなりラッキーなマスじゃん」

「1だと俺だな。2だと藤澤、3だと菱川、4だと千葉からで、5だと菊池が−1。6でも俺だから、俺だけ確率2倍じゃないか!」

「よっしゃー、1か6出ろ〜。とりゃっ……3だからコハルンからだ」

「酷いですよ茜先輩!」

「お前さっきから菱川ばかり虐めてないか?」

「いやいやこれはたまたまでしょ!」

「キクチじゃなくてキチクだな」

「キチク先輩」


茜先輩に少し腹が立ったので、試しに言ってみた。


「キチク先輩」

「…キチク先輩」


まさかの藤澤君と千葉先輩も悪ノリしてくれた。


「ちょっと、なっちゃんまで。キチクって呼ばないでよー。茜先輩だから。あ·か·ね·せ·ん·ぱ·い」

「コハルン虐めたからキチク先輩」


コハルン!!

千葉先輩が私のことをコハルンと呼んでくれた!!


「私も千葉先輩のこと夏実先輩って呼んでいいですか!?」

「…いいよコハルン」

「コハルン!!」


すごく嬉しい!夏実先輩との距離がゲームを通して縮まっているのかもしれない。


「ちょっとなっちゃん!私は?」

「………」

「お前はキチク先輩だとさ」

「菊池だから菊池。あたし小学生の時にそうやって男子にいじられてから自分の苗字好きじゃないんだよねー。それにあたしがキチクならコーイチはもどきじゃん!や〜い会長もどき〜。高3なのにコーイチ〜、コーイチもどき〜」

「お前だってそのイジり何回もしてるだろう。『元木光一』は画数少ないから楽でいいんだぞ。テストの時なんか名前を早く書き終わるからな。たった15画だ!」

「確かに『元木光一』って画数少ないですよね。僕の場合『藤澤』だから書くのけっこう面倒なんですよ」

「澤を簡単な沢にしたらどうだ?」

「どうなんでしょう?勝手にそっちを書いてもいいんですかね?でも、もしそっちの沢を書いて認められなかった場合、大惨事になるかもしれないですよね?きちんと名前書いてないから0点とか…。それに僕から言い出しましたけど数秒ですし」

「『菊池茜』、『千葉夏実』、『藤澤諒太』、『菱川小春』。

………確かに『元木光一』って画数少ないですね。すみません、呼び捨てで…」


言った後に、初めて藤澤君を呼び捨てしてしまったことに気付いた。変じゃなかっただろうか…。


「俺の15画が3年では1番画数が少ないんだよ」

「わざわざ調べたんですか!?」

「そうなんだよリョー。生徒会長も案外暇だよねー」

「生徒の名前と顔を把握しておくのは生徒会長として当然だろう」

「いやいや、普通いちいち覚えないから」

「また脱線してしまったな」

「えっと、菱川さんが−1で菊池先輩が+1ですよね?」

「藤澤君もあたしのこと茜先輩って呼んでよ〜」

「絶対嫌です」

「え〜、なんで〜?」

「絶対に絶対に絶対に嫌です!」

「なんでよ〜?」

「ほらほら戻るぞ。次は俺だな」


千葉先輩とかなり打ち解けられて良かった。次からは夏実先輩と呼べるので、もっと仲良くなっていけそう。そんなことを考えていたら会長が3マス進めていた。


『なんでもいいので

 ものまねをしろ 

 上手ければ+1』


「ものまねだな、まかせろ。ゴリラをやる」

「コーイチのものまね、2人には初披露だね」


会長がゴリラのものまねをするみたいだ。先程得意だと言っていたけれど、どんな感じなんだろうか?


「ウホウホ、ウホ?…ウホウホ、ウホ、ウホホホホッ!ウホー、ウホウホウホホホホ、ウホッウホーー。ウホウホッ!ウホホホホホホホッ!!ウホーー?ウホッウホッホホホ!!」


全身を使い動きながら鳴き声も交え「ドスドス」とドラミングをしたり、上を向いて叫んだりしながらゴリラのものまねを会長がし続ける。おまけに途中からは変顔でやりだした。


「アハハハハハハハハハ、コーイチのゴリラ最高!」

「あははははははは、会長その変顔はずるいですよ」

「ふふふふふふふ、もういですよ会長、ふふふ」

「フフフッ、フフフフフ」

「どうだ、これがゴリラのものまねだ」

「あははは、会長は羞恥心なさ過ぎですって」

「藤澤もこれくらいやれるだろう」

「無理ですよ」

「アハハハ、コーイチだけだから、こんなことできるの」

「フフフ、会長+1」

「ふふ、次は私ですね」


サイコロを振ると6が出た。駒の1円玉を移動中、4が出なくて良かったとほっとした。


『誰かにデコピンを

 くらわせる

 くらわせた人から

 点数を1奪う』


「当然茜先輩です!」

「なんでよー。今1番点数持ってるのなっちゃんじゃん!」

「たしか最下位になった人が罰ゲームでしたよね?だったら1位の夏実先輩狙っても意味ないですよね?というより茜先輩に対してやり返したいだけです」

「今あたし最下位でしかも−1なのに!?」

「関係ないです!」

「やれ菱川」

「思いっ切りやり返そう」

「自業自得」

「ちょ、なんかみんな酷くない?あたし最下位なのに…」

「いきますよ!」

「こいやぁーー!」


茜先輩が隅の椅子に座っておでこを差し出し目を瞑った。すると会長が無言で、自分と変われ、と合図をしてきたので会長に任せることにした。そして会長が思いっ切りデコピンをくらわせた。


タンッッッ


!!!!!


「いっったーーーい!!コハルンのデコピン痛すぎるんだけどーー!女子とは思えないくらい強かったんですけどー!」


私と同じように茜先輩もおでこを手で押さえて顔を伏せた。痛みでかなり悶えている。


「ふふふふふ」

「あはははは」

「フフフフフ」

「もしかしてコハルンゴリラか?」

「そんなわけないじゃないですか!」

「あはは」

「フフフ」

「ハハハ、菱川+1で菊池が−1だな」


藤澤君は4を出し、4マス進む。


『次の自分の番が終わるまで

 語尾にニャンを付ける 

 成功で+1

 喋らないのはNG』


「…わかりましたニャン」

「アハハハ、リョーカワイイよ〜」

「早く次行って下さいニャン」

「ふふふ」


藤澤君が照れくさそうに催促する。次の夏実先輩も4を出し、また藤澤君と同じマスを踏んだ。


『次の自分の番が終わるまで

 語尾にニャンを付ける 

 成功で+1

 喋らないのはNG』


「…了解ニャン」

「アハハハ、もう一匹増えた〜」


夏実先輩が可愛い!


「次あたし〜。…いちにっと。お!」


『次の自分の番が終わるまで

 語尾にニャンを付ける 

 成功で+1

 喋らないのはNG』


「あたしも仲間だニャン〜」

「ニャン」

「…ニャン」

「お前ら同じマス踏みすぎだ」

「ニャン〜」

「ニャン」

「…ニャン」


正直私も仲間に入りたかった…。


「次は俺だな。…3だ」


『好きな人がいる+1

 学年も言う+2

 クラスも言う+3

 フルネーム言っちゃう+4』


会長がそのマスを踏んでくれた!


「俺は今のところ好きな人はいないんだよなぁ」


気になってしょうがないので、直接聞いてみることにした。


「あの、会長と茜先輩って付き合ってないんですか?」

「俺と菊池か?」

「はい!」

「俺と菊池は従兄妹だよ」

「え、そうなんですか!?」


まさかの従兄妹だった…。


「そうだニャン。あたしとコーイチの母親同士が姉妹なんだニャン。だから子供の頃からの付き合いなんだニャン」

「へぇ、そうなんですかニャン」

「…初耳ニャン」

「あたし、こんなゴリラみたいなやつタイプじゃないニャン」

「俺だってお前みたいなやつはタイプじゃないが」

「そうだったんですか…」


でも従兄妹同士は確か…。


「俺は+は無しだな。次は菱川」

「はい」


私がサイコロを振るとまた6が出た。


「コハルン6ばっかりだニャン」

「そうですね。3回連続6です」


何故か6が多く出る。


『右隣の人とサイコロ勝負

 出目が大きい人が+1

 引き分けは2人とも−1』


会長が先にサイコロを振ると6が出た。

私がサイコロを転がすと1が出た。


「コハルンの負けだニャン〜」

「…コハルン弱いニャン」

「うう、また負けた…」

「悪いな菱川。俺が+1だな」

「次、僕ですニャン…2だニャン」


『全員から

 バーカバーカ

 言われる−1』


「アハハハ、バーカバーカニャン。

リョーのバーカバーカニャン」

「バーカバーカ」

「バーカバーカ」

「バーカバーカニャン」

「なんなんですかこのマスニャン…」

「…藤澤君−1ニャン。次私ニャン。…4ニャン」

「僕ニャン終わりなんで+1です」

「そこは終わりニャンでって言わなきゃダメニャン」


『自己紹介タイム

 好きな食べ物、嫌いな食べ物

 趣味、好きな異性のタイプ

 全部言えたら+1』


「…好きな食べ物はアイスニャン。嫌いな食べ物はワサビニャン。趣味は読書ニャン。好きな異性のタイプは……優しい人ニャン…」


恥ずかしそうに自己紹介をする夏実先輩が最高に可愛い!


「なっちゃんカワイイニャン。妹にしたいニャン」

「…次早くニャン」


夏実先輩が恥ずかしそうにしながら茜先輩にサイコロを押し付けた。茜先輩がサイコロを転がすと1が出た。


「私もニャン終わりなので+1です」

「そうだったな」


『異性を1人選び

 愛してるゲームをする』

 勝った人+1』


「リョーと勝負ニャン!」

「えぇ、僕ですか」

「ゴリラと愛してるゲームなんてやりたくないニャン」

「誰がゴリラだ!」


茜先輩が藤澤君に近づき、愛してるゲームが始まった。正直あまり見たくはないけどしょうがない。


「愛してるニャン」

「愛してる」


茜先輩は可愛く言ったけど、藤澤君は棒読みだ。


「リョー、愛してるニャン」

「愛してる」

「リョー、愛してるニャン」

「……ギブアップします」

「え〜、『茜先輩愛してる』って言って欲しかったニャン」

「だから絶対言いませんって!」

「なんでそんなに頑ななんだニャン」

「とりあえず菊池が+1だな。次は俺で、菊池のニャンも終わりだから菊池はさらに+1」

「もっと続けたいニャン」

「勝手にしろ。進めるぞ。…4だな」


藤澤君はなんであんなに茜先輩と呼びたくないんだろう?


『次の自分の番が終わるまで

 空気イス

 成功で+1』


「余裕だな。次菱川」


会長が空気イスを始めた。私がサイコロを振るとまた6が出た。


「え〜、またコハルン6なの!速すぎるよ〜」

「思ったより早くゲームが終わりそうだな」


『自分以外の誰かを

 1人選び+1』


「今点数どうなってますか?」


点数計算係の夏実先輩に確認した。


「…コハルン+3、藤澤君+2、私+7、副会長0、会長+1」

「…会長は空気イス成功させられますよね?」

「ああ菱川、もちろん大丈夫だ」

「…なら藤澤君+1で」

「え、僕でいいの?ありがとう菱川さん」

「いえいえ」

「えぇ、コハルン酷いよー。あたし最下位なんだから点数欲しいよー」

「茜先輩を最下位にします!」

「ええー!やだーー!」

「ハハハ、藤澤+1だな。次藤澤」


藤澤君は4を出し、4マス進む。


『4マス戻る』


ということは…。


『全員から

 バーカバーカ

 言われる−1』


「バーカバーカ」

「バーカバーカ」

「バーカバーカ」

「バーカバーカ」

「だからなんなんですかこのマス…」

「藤澤災難だな。せっかく菱川から+1もらったのに。次千葉」


千葉先輩は5を出したので、5マス進む。


『たけのこ、たけのこ、

 ニョッキッキ

 ミスした人は−1、1回勝負』


「せーの」


空気イスの状態の会長の掛け声でスタートした。私は誰かが2ニョッキ!した直後に3ニョッキ!を狙うことにした。


「「「「「たけのこ、たけのこ、ニョッキッキ!」」」」」

「1ニョッキ!」  まさかの夏美先輩が1抜け!直後、

「2ニョッキ!」  会長が空気イスのまま抜けた。次だ。

「「3ニョッキ!」」

「ちょっとコハルンーー!」

「私だって茜先輩のせいですよ!」

「あはは、会長が空気イスのまま抜けたの見て

笑いそうになりましたよ」

「藤澤、お前1回もニョッキしてないだろう。

あと菊池は普通にスリーアウトだな」

「…副会長弱過ぎです」

「菊池と菱川が−1ずつだな。次菊池」


茜先輩は2を出し、2マス進む。


『投げキッスをする

 上手ければ+1』


私が絶対に踏みたくなかったマスを茜先輩が踏んだ。

『上手ければ』ずいぶんと曖昧な表現…。


「んー、こうかな、……チュッ」


茜先輩が可愛いポーズで投げキッスをしたけれど、

正直リアクションに困る……。


「………」

「………」

「………」

「………」

「ちょっと、誰か何か反応してよ!逆に恥ずかしいじゃん!」

「どう思う、菱川…」

「まぁ、いいんじゃないですかね…」

「僕も、まぁ…」

「…うん」

「…ギリ+1だな」

「ギリってなによーーー!」

「俺の番だな」


会長がサイコロを振ると6が出た。


『投げキッスをする

 上手ければ+1』


まさかの会長も踏んだ!


「これ、俺がやっても絶対駄目だろう…」

「いいからやれーーーーー!!」

「………チュッ」


空気イスをしたまま会長が投げキッスをした………。


「アハハハハハハハハハハハハハハ、ダメーーーーーーー!

全然ダメーーーーーーー!!アハハハハハハハハハハハハ」

「…………」

「…………」

「…………」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


茜先輩だけがお腹を抱えて笑い続けている。

私達も笑ったほうが良かっただろうか…。


「もういいだろ…。次菱川。それと俺の空気イスも終わりだから+1してくれ千葉」

「…はい」

「コハルン大きい目出さないでくれーー!」

「嫌です。あがります。」


私が4以上を出せばあがりで、現時点で茜先輩が最下位なのだ。最後は私が5を出しゴールした。


『ゴール

 +1』


「それぞれ点数はいくつだ千葉?」

「…コハルン+3、藤澤君+2、私+7、副会長0、会長+2です」

「結局あたしが最下位かー」

「罰ゲームはどうします?」

「1番点数が多かった夏実先輩が決めるのはどうですか?」

「そうだな、千葉が決めてくれ」

「………全員がデコピンで」

「デコピンかー。さっきのコハルンのデコピンむちゃんこ痛かったからなー…。…よっしゃーー、こいやぁーー!!」


再び茜先輩が椅子に座り目を瞑った。デコピンをされる覚悟を決めたみたいだ。


まず藤澤君がデコピンをした。


「まだまだーー!!」


茜先輩は目を瞑ったままだ。

次に夏実先輩がデコピンをした。


「全然痛くないぞーー!!」


まだ茜先輩は目を瞑っている。今度は私が自分の番だと宣言してからデコピンをした。


「ん?あれ?」


目を開けられる前に立て続けに会長がデコピンをくらわせた。


!!!!!


「ぐわーーーーー!!!さっきのゴリラデコピンじゃねーかーーーー!!さっきのもコーイチゴリラだろーーー!!」

「あははははははははは」

「フフフフ、フフフフフ」

「ふふふふふふふふふふ」

「ハハハハハハ、正解だ」

「くそったれがぁーー!!」



こうしてゲームは終了した。



全員で机や椅子などを元に戻した後、会長から今後の生徒会の大まかな予定を知らされた。


「大体こんなもんだな。それと先程、来週の日曜日に10時から地域のゴミ拾いがあると説明したが、それぞれ昼食も用意してきてくれ。ゴミ拾いは午前中で終わるんだが、そのあとそのまま学校に戻り昼食を済ませたら、生徒会室で今日のようにゲームをする」

「え、またやるんですか?」

「そうだよ〜コハルン。そしてみんなにはお題を考えてきてもらいます」

「菊池、まずゲーム内容を説明しないと駄目だろう」

「そうだね。コーイチよろしくぅ」

「まず答える者とお題を決める。そしてお題の4文字の言葉をルールに則り言えることが出来れば成功だ。ルールというのは、最初にその言葉を2回言ったあと、上2文字を2回言って下2文字を2回言う。そしてそれをもう1回繰り返す。例えばお題が『太陽』だとする。この場合、

『たいようたいよう

 たいたいようよう

 たいようたいよう

 たいたいようよう』

 こう言えたら成功だ」

「たいようたいよう

 たいたいようよう

 たいようたいよう

 たいたいようよう。

これで成功ですか?早口言葉みたいですね。僕早口言葉苦手だから大丈夫ですかね…」

「リョー理解が早いなぁ。そしてそのお題を各自来週日曜まで考えてきてね〜」

「言い難いのだと面白いかもな。思いつかなければ別に適当な4文字でも構わないからな」

「菊池先輩、小さい『ょ』とかはどうするんですか?」

「あくまで口に出した時の4文字だからねー。『会長』はいいけど、『諒太』はダメって感じかな。『コーイチ』も『なっちゃん』も大丈夫だよ」

「わかりました」

「なんで名前ばかりなんだ」

「なんとなく。てことでみんなよろしくね〜」

「今日はこれで解散だ。皆お疲れ」



先輩達より先に生徒会室を退室し、藤澤君と下駄箱へ向かう。2人きりなので毎回少し緊張してしまう。


「僕達のためって言ってたけどみんな楽しんでて良かったね」

「うん。夏実先輩とも仲良くなれたし」

「菊池先輩が1番はしゃいでたね」

「ふふふ、そうだったね。藤澤君は茜先輩のこと『菊池先輩』って呼ぶけど、『茜先輩』って呼ばないの?」

「あー、それは………他の人に内緒にしてくれる?」

「う、うん」

「実はさ、母親の名前が『茜』なんだよね…」

「あー、なるほどね!たしかにそれは嫌かも」

「でしょ!これ言ったら菊池先輩に絶対からかわれるから言いたくないんだよね」

「『ほらー、リョー、お母さんですよー』とか言ってきそう」

「あはは、今の菊池先輩の真似?」

「う、うん、そう…」

「けっこう似てたよ」

「そう?」

「うん。今度本人の前でやってみたら?」

「ふふふ、どんな反応するかな?」

「どうだろうね。佐々木先輩も常盤先輩も笑ってくれそう」

「だね」

「次は佐々木先輩や常盤先輩とも一緒にやりたいよね」

「そうだね。私も佐々木先輩ともっと仲良くなりたい

な」


藤澤君と下駄箱で靴を履き替え駐輪場の方へ向かった。私も藤澤君も自転車通学なのだけれど、藤澤君とは家の方向が違うので校門までしか一緒にいられない。でもこの短い時間が私にとってはとても幸せな時間なのだ。


「じゃあ、またね菱川さん」

「うん、またね藤澤君」




その日の夜、晩御飯を家族と一緒に食べていると、テレビでは動物関連の番組をやっていた


「キツツキが嘴で木を突く時、実は人間にとっては脳震盪を起こすくらいの衝撃が脳に伝わっているんですよねぇ」

「えぇ、そうなんですか!?そんな衝撃があるのにキツツキは大丈夫なんですか?」

「それはですねぇ…」



『キツツキ』


いいかもしれない。


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