唐川 2
6時間目の授業も終わり、帰りのホームルームも終わった。
その直後、奥井と風間先生が教壇のところで話し始めた。
僕の席は教壇の目の前なので2人の会話が聞こえてしまう。
どうやら4時間目の授業中に奥井のスマホが鳴ったのは真島のいたずらのせいだったようだ。奥井はそれを説明し、風間先生から自分のスマホを返してもらっていた。
掃除当番なので班の人達と廊下の掃除を始める。
奥井と越後の班は掃除がないようだ。
掃除を終わらせ帰ろうと思い下駄箱に行くと越後と宮本がいた。
「唐川、コンビニ行くぞ〜」
越後に誘われた。
邦南高校は校門を出てすぐの場所にコンビニがあり、利用する生徒はとても多い。
この後の予定は特にないので一緒に付いていくことにした。
「僕はいいけど、今日は軽音部は休みなの?」
奥井·越後·宮本の3人は軽音部に所属している。
ちなみに僕と真島は清掃部で、佐々木は生徒会所属兼清掃部だ。
「今日は休みだよ」
越後が答えた。
「今日も、だろ。ていうか今日は他の部活も休みのところ多いみたいだぞ。2組のサッカー部とかの連中がそう言ってた」
「俺たちのクラスでも野球部がそんなこと話してたな」
「そうなの?」
僕はそんなことは聞いていなかった。
救急車が来たのと何か関係があるのだろうか?
「とりあえずコンビニ行こうぜ。真島が本当に唐揚げ弁当買ってるか確かめてくる」越後はそう言うと走ってコンビニに向かっていった。
「なんで唐揚げ弁当?」
「ああそっか、あのときまだ唐川いなかったよな。奥井のスマホが4時間目鳴っただろ? あれが真島のいたずらのせいなのは知ってるか?」
「うん、知ってる」
本人から聞いたわけではないけれど知ってはいる。
「その詫びとして真島が唐揚げ弁当奢るって言ったんだよ」
「なんで唐揚げ弁当?」
「それは真島だから考えても意味ないだろ」
「そうだね」
確かにその通りだ。
「今頃買って食ってるんじゃないか?」
「ふふふ、それは見たいね」
宮本と話しているとコンビニに着いた。
駐車場の隅でしゃがみ込みながら、本当に弁当らしき物を奥井と真島が食べているのが見える。
越後の笑い声も聞こえる。
「見ろ2人とも、こいつら本当に食ってるよ。ハハハハハ」
越後は僕と宮本が来たのに気付きつつ、奥井と真島を指差しながら笑い続けた。
奥井も真島も1人1つずつ唐揚げ弁当を食べていたのだ。
「いや、違うんだよ。真島がこれ以外は奢らないって言うから仕方なく食べてるんだよ。持って帰るわけにもいかないし。そしたら真島も唐揚げ弁当買って食べ始めてさ」
「俺もお腹減っちゃってさぁ〜。やっぱりサンドイッチだけじゃ足りなかったんだよなぁ」
「ハハハ。見てたら俺も何か食いたくなってきたな。何か買ってくるわ」
「俺も」
越後と宮本も何か買って食べるようだ。
「唐川は何か買わないの〜?」
「うん。僕はいいかな」
まだお腹は空いていない。
2人が弁当を食べ続けていると、越後と宮本がコンビニから出てきた。2人ともアイスを買ったようだ。そして越後が半分にできるタイプのアイスの片方を僕に渡してきた。
「ほら、唐川」
「え?」
「いいからみんなで食べようぜ」
「うん、ありがとう」
断るのも申し訳無いので貰うことにした。
「なんだよ、2人とも弁当じゃないじゃん……。みんなで弁当食べようよ……」
「ハハハ、弁当なわけないだろ。宮本が弁当買えばよかっただろ」
「なんでだよ!」
「いいなぁ。俺もアイスがよかった……」
「唐揚げ弁当の方が高いよ?」
「そういう問題じゃないよ!」
「奥井、俺のアイスが当たったらやるよ」
「いいの?」
「当たったらな」
先に僕と越後と宮本が食べ終わった。
でも結局宮本のアイスは当たらなかった。
「残念ハズレだ」
「……自分で買って食べることにするよ」
「俺バッセン行くわ。お前らも食い終わったら来いよ」
越後がゴミを捨て、バッティングセンターの方へ向かった。
コンビニから1分ほど西に歩いた場所にバッティングセンターがあり、こちらも邦南生の下校中の溜まり場になっている。
「俺も先行くわ。唐川は?」
「僕はあとから行くよ」
宮本は越後についていき、僕は奥井と真島を待つことにした。
奥井が先に食べ終わりゴミを捨てると「先にあっちに行ってるから」と、僕と真島に声をかけた。真島が「アイスは〜?」と聞くと奥井は「あっちで食べる」バッティングセンターの方を指差しそちらに歩いて行った。バッティングセンターにはアイスの自動販売機があるのでそちらで食べるようだ。
真島が唐揚げ弁当をようやく食べ終わりゴミを片付ける。
バッティングセンターに向かう最中、真島から1つ提案をされた。
「日曜さぁ、ゴミ拾いあるよね?」
「あるね」
僕と真島は清掃部だ。そして来週の日曜日に学校周辺のゴミ拾いに参加しなくてはいけない。
「そのとき佐々木も参加するから一緒に3人でやろうよ」
「僕はいいけど、佐々木は生徒会の人達と一緒じゃないの? それに佐々木の体調も回復してるかわからないよね?」
「大丈夫〜。許可は取ってあるし、佐々木も多分日曜までには復活するだろうから」
「誰の許可?」
「会長〜」
「生徒会長?」
「そう〜」
そんなことのためにわざわざ生徒会長から許可をもらうのも、真島らしいといえば真島らしいのかもしれない。
「あとそれが終わったら予定どおり、午後から6人でカラオケ行ったりして遊ぶからね〜」
今週の日曜日に6人で遊んだときに来週も遊ぼうと真島に誘われていた。カラオケなのは歌うのが好きな真島と佐々木の発案だ。
「わかってるよ。でも佐々木は大丈夫かな?」
「大丈夫だって〜」
「……そう」
「何か変更とかあったら宮本がスマホで連絡するように頼んでおくから〜」
「うん、わかった。今真島スマホ持ってないもんね」
「そうなんだよね〜」
バッティングセンターに着くと真島はストラックアウトをやり始めた。それを見ていると越後もこちらに来て見始めた。
野球部の人もちらほらいるみたいだ。
他の2人は何処だろう?
「奥井と宮本は?」
「宮本が打ってるのを奥井がアイス食いながら見てたな。てか真島左で投げてんのかよ」
「最初の何球かは右で投げてたよ」
真島は右利きだ。
「当たってねーじゃん」
「うん、右でも当たってない」
「なのに左なのかよ」
「真島だからね」
「ハハハ、そうだな。そういえばボウリングもあいつ左で投げてたな。あれは面白かった」
「確かにあれは面白かったね」
以前6人でボウリングに行ったときの話だ。
真島は最初右で投げていた。スコアは散々で運動音痴の僕よりも酷かった。なのにもかかわらず何故か途中から左で投げ始めた。1投目はガーターに終わった。当然だろう。そして2投目を振りかぶって投げる際ボールが左足のふくらはぎに直撃したのだ。あまりの痛さに真島はその場で転げ回り悶えだし、僕たちはそれを見て大笑いした。
「あいつ結局最後まで左で投げてたよな」
「そうだったね」
「で、佐々木が最後試しに左で投げたらストライク取ってたからな」
「多分僕や奥井が利き手の右で投げるよりも佐々木の左の方が上手いよね」
「佐々木の運動センスはちょっとおかしいからな。いつもバッセン来てもあいつが1番ガンガン打つしな」
「そうだね」
「結局真島1回も当たってねぇじゃねえか。おい真島代われ。次俺がやる」
越後がストラックアウトを始めると、奥井がアイスを食べながらこちらに近づいてきた。
奥井は越後がプレイするところを見ると言うので、僕と真島は宮本がいる打席を探した。
打席をいくつか見て回ると宮本は100km/hの打席でバッティングをしていた。当たりはまずまずのようだ。
カキン
「うわー、宮本100でやってるよ。俺100じゃ打てないよ」
「お前は80でも打てないだろうが」
「テニスラケットだったら打てると思うんだけどなぁ」
「テニスラケットぉ!?」
ブンッ
「ふふふ、確かにテニスラケットだったら打ちやすいだろうね」
「そんなんでやったら網のとこぶっ壊れるだろ」
宮本が打席から出てきた。どうやら全球終わったみたいだ。
「だからテニスボールを投げてもらうんだよ」
「……それ誰に需要あんだ?」
「少なくとも俺はやってみたいなぁ。唐川はどう?」
「うーん、どうだろうね。僕は普通にバッティングもできないし、テニスもやったことないからなぁ」
「絶対面白いと思うけどなぁ〜」
「とりあえずあいつらと1回合流するか」
ストラックアウトの場所に戻ると、今度は奥井がプレイしていてそれを越後が見ていた。
「宮本どんぐらい打てた?」
「普通。最後真島のせいで空振りしたわ」
「なんで?」
「こいつがテニスラケットで打ちたいとか言い出したから」
「ハハハ、テニスラケットか。確かにそれなら打ちやすいだろうな」
「卓球のピンポン玉でも面白そうじゃないかなぁ〜」
「どんな競技だよ!」
「ふふふ」
「ハハハ、それピンポン玉ブレブレになって絶対打てないだろ」
「でも当たっても痛くないだろうしさぁ〜」
「そういう問題じゃねぇよ。……なんか野球部の連中増えてきてないか?」
周りを見てみると宮本のいうとおり野球部の人達がさっきよりも増えてきた。
野球部が休みだからだろうか?
「どうする? そろそろ切り上げるか?」
「ああ」
越後が提案し宮本が賛同した。
どうやら今日はこれで終わりのようだ。
「俺まだやってるんだけど!」
「ハハハ」
奥井のストラックアウトも終わり解散することになった。
僕と奥井は自転車通学なので一度自転車を取りに学校へ戻り、奥井とは家の方向が違うので校門で別れた。
他の3人は電車で通っているため駅までは一緒のはずだ。楽しく喋りながら歩いているだろう。




