藤澤
日曜日、学校地域周辺のゴミ拾い活動があるため、自転車に乗り制服で学校へ向かうと、校門では先生や生徒がすでに何人か集まっていた。
時間には間に合っているはずだが、急いで駐輪場に自転車を置き生徒会室に入ると、会長と常盤先輩が先にジャージに着替えて待っていた。
「おはようございます」
「おはよう藤澤」
「おーす」
「あれ? 他の人達はまだですか?」
「違うっての。お前が最後だよ藤澤。私達以外はもう始めてるっての」
「あ、そうですよね……。すみません、今すぐ着替えます」
「ああ、さっさと着替えろ」
「……あの常盤先輩」
「なんだ?」
「いや、その……」
「いやいや気にするな」
「すみません、気になります……」
「はいはいわかったよ。私先に校門とこ行ってるから」
「はい、すみません」
女子の常盤先輩の前で着替えるのは流石に抵抗がある。
着替えている最中、会長が説明してくれた。
「俺が最初に来て生徒会室の鍵を開けて待っていたんだが、菊池と千葉と菱川がすぐに来てな。その3人でグループを作って先に始めてもらったんだ」
「そうだったんですね」
「そのあとに常盤が来たから藤澤が来るのを待っていた」
「すみません、1年なのに最後で……」
「いや、予定時間にはギリギリ遅れていないから問題ない」
「あれ? 佐々木先輩はどうしたんですか?」
「佐々木は清掃部員の友人と一緒にやってるよ」
「そうなんですか」
自分もジャージに着替え終わり、持ってきた荷物を生徒会室に置いて廊下に出ると、会長が生徒会室の鍵を閉め「鍵を置いてくるから先に校門まで行っててくれ」と足早に職員室へ向かった。
先に校門に行くと常盤先輩が待っていた。
ゴミ拾いには清掃部員も何人か参加している。先に到着した人からグループを作ってごみ拾いを始めているようだった。
会長もすぐに合流し、学校側から支給されたゴミ袋とトングを先生から受け取った。軍手は各々持参した物を使う。
邦南高校は東側が林や畑が広がっていて、南側には田んぼ道があり小さい堀の様な物もある。北側と西側は道路になっており、西側をまっすぐ歩いていくと駅がある。
都会か田舎かと言われれば田舎寄りの学校だろう。
自分と会長と常盤先輩は学校の南側のゴミを探すことになった。
しばらくゴミ拾いを続けていると、常盤先輩と会長がゴミを探しながら話し始めた。
「夏実達ってどの辺やってんすかね?」
「わからん。佐々木はさっきチラッと見かけたから俺達と同じ南側だろうな」
「佐々木って今友達とごみ拾いしてんですよね?」
「ああ、そうだな」
「てことは真島だろうな。あいつ確か清掃部だったはず」
真島? 知らない人だ。2年の人だろうか?
「そうだ。真島ともう1人の友人と一緒にやっているはずだ」
会長も真島という人を知っているようだ。
「会長も真島知ってんすか?」
「ああ、知っている。とても愉快な生徒だ」
「あれは愉快ってレベルじゃないでしょ!」
そういえば校内放送の呼び出しで真島という名前の人を何回か聞いた気がする。その人だろうか?
「だが佐々木にはあれくらいのやつが近くにいた方がいいだろう」
「まぁそうかもですけど……」
「俺は来年にはいないからな。恐らくお前や藤澤では駄目だろう」
「私じゃそもそも論外ですよ。藤澤も学年違うし無理でしょ」
確かにそのとおりだ。
僕や常盤先輩では駄目だろう……。
「だから今の内に佐々木には友人達ともっと仲を深めて欲しくてな」
「それは私もそう思います」
「ちなみに佐々木はこのあとのゲームには参加しないからな」
「え? なんで?」
「その友人達と先に約束があったみたいでな。佐々木に相談されたがそちらを優先してもらったんだ」
「そっすか。でもあんなゲーム、佐々木は無理じゃないですか? どうせ副会長が考えたんでしょ」
「そうだ、菊池の発案だ。逆に佐々木はいなくてよかったかもしれないな」
あんなゲーム?
ただの早口言葉のようなゲームではなかっただろうか?
「ていうか会長、この前私いないときにあのスゴロクみたいなやつやったんすね」
「すまん、急にやることになってな」
確かにあのときは常盤先輩がいなかった。
「あれ私もやりたかったですよ。去年やったときけっこう面白かったんで。なんであの日急にやったんですか?」
「……あの日は元々生徒会の仕事がなかっただろう」
「ええ、だから私歯医者の予約入れたんで」
「それが当日急に教頭先生から用事というか依頼というか、そういうことを頼まれてな。それで藤澤達を呼び出したんだ」
「あれ、でもあの日って教頭倒れて運ばれたんじゃなかったですっけ?」
「そうなんだ。だから結局それがなくなってしまってな。だが呼び出してしまったからには何もしないというわけにはいかなくなってな」
「だからゲームしたんすね」
「そうだ。本当は今日あれをやるつもりだったんだがな」
「……あれ、ってことは会長は教頭が倒れたの当日から知ってたってことですか?」
「ああ、たまたま職員室にいたからな」
「へぇー。……で、その教頭から頼まれたってのはなんなんすか?」
「……うーーーん、これは言っていいものか……」
「教えてくださいよ。私あれ参加しなかったんですから、少し話聞くぐらいいいでしょ」
「……なら常盤も藤澤も他の人には絶対話すなよ」
「そんな秘密にしなきゃいけないことなんすか?」
「一応な」
「誰にも言わないんで聞かせてくださいよ。藤澤も絶対誰にも言うなよ」
「わかりました」
ゴミ拾いを一旦中断し、僕と常盤先輩は会長の話を聞くことにした。
「……わかった。まず簡単に言うと教頭先生がお孫さんを学校に連れてきてしまってな」
「え、なんで?」
「……悪い、話す順番を間違えたな。最初から話すから質問はあとからにしてくれるか」
「わかりましたよ」
「教頭先生の家は教頭先生と高齢の母親と息子さんと嫁さんとお孫さんの5人暮らしでな。それで息子さんが出張でいない間に嫁さんが怪我をして入院したらしい。なのであの日だけはお孫さんを高齢の母親が面倒を見ることにしたという。それで教頭先生が車で学校に着いたらお孫さんが後部座席にいてびっくりしたそうだ。恐らく後部座席に荷物を積んだときにお孫さんが潜り込んだんだろう。学校に着くまで静かで全く気付かなかったと言っていた。学校に着いてどうするか迷っていたところを養護教諭の丹羽先生が見てしまってな。学校から教頭先生の家までは結構距離があって、家に戻るのもなんだから1日だけ学校で預かればいい、と言われてそうすることにしたようだ。教頭先生の母親が来られれば良かったんだが、高齢で足が悪く、電話で連絡したら邦南高校の場所もわからないみたいでな。結局お孫さんは生徒に見つからないように校長室で面倒を見ていたんだが、放課後は校長室を使う予定で、生徒会室ならいいんじゃないかということで俺に頼んできたんだ。俺1人じゃ面倒を見るのは無理だろうから藤澤達を呼ぶことにした。しかし教頭先生が昼休みに倒れてな。救急車で病院に行くときに司馬先生が同行し、それとは別に梨田先生と丹羽先生がお孫さんを連れて病院へ向かったんだ。だから結局俺達は何もしなかったというわけだ。それと当日の夜に息子さんが主張先から急いで駆けつけてお孫さんは無事家に帰れたらしい。以上だ。何か質問あるか?」
あの日そんなことがあったのには驚いたけれど、自分はほとんど関わっていないので正直あまりピンとはこなかった。
というより、会長があまりにも詳しいので何故そこまで詳しいのかがむしろ気になる。
「……なんで会長はそんな詳しいんすか?」
常盤先輩も同じくそう思っていたようだ。
「俺は当日お孫さんと会っていたし、昨日教頭先生のお見舞いに行って話をいろいろ教頭先生本人から聞いたからな。それと丹羽先生にも話を聞いたからだ」
「え、会長教頭のお見舞い行ったんすか!?」
「ああ。心配だったからな」
「誰と?」
「1人でだ」
「……教頭お孫さん連れてすぐ帰ればよかったんじゃないすか?」
「あの日は午後から他校の教師と何か大事な仕事があったとか言っていたな。だから学校にいなくてはいけなかったようだ。教頭先生は結局倒れたからその仕事もできなくなったようだが……。だからあの日は職員室で教師達がてんやわんや状態だったらしい。俺達が何か力になれれば良かったんだが、いかんせん教師達の問題だったからな。部活も顧問がいないせいで休みになったところが多かっただろう」
「確かにあの日部活休みのとこ多かったな。……他校と大事な仕事って何すか?」
常盤先輩が次々質問していく。
「さすがに俺も教師の仕事内容までは知らん。だが俺達生徒会も他校と関わる活動があるだろう。おそらく教師同士でも横の繋がりのようなものがあるんじゃないか?」
「へぇー。……校長もよく許可したなぁ」
「うちの校長先生と教頭先生は昔からの知り合いらしいぞ」
「え、そうなんすか!? そんなの初めて聞いたな」
「僕も初耳です」
「俺も昨日お見舞いに行ったとき教頭先生から聞いたばかりだ」
「で、教頭の家は大丈夫なんすか?あと教頭本人も」
「息子さんがしばらく休みを取ったらしくてな。なんとか大丈夫そうだ。そんなに心配なら常盤も教頭先生のお見舞い行ったらどうだ?」
「嫌ですよ。行くなら藤澤が1人で行け」
「さすがに1人は嫌ですよ。行くなら常盤先輩も一緒に行きましょうよ」
「嫌だよ、めんどくさい。会長が行ったんだからいいんじゃないすか?」
「無理強いはせん。行きたいなら行けばいいというだけだ」
「……こんなプライベートなこと言ってよかったんすか?」
「お前が聞いたんだろう」
「他知ってる人は?」
「生徒では俺達3人だけだろうな」
「じゃあもし他の生徒に漏れたら藤澤が犯人ってことだな」
「なんでそうなるんですか。僕は誰にも言いませんよ。それより常盤先輩の方が怪しいですよ」
「いやいや、私口は堅いからな」
「とりあえず聞かれたから話したが他の人には絶対黙っていろよ」
「はーい」
「わかりました」
会長の話が終わったのでゴミ拾いを再開した。……が、
「というのは冗談でだな」
え!?
「は!?」
「え!?」
思わず僕も常盤先輩も会長の方を振り向いた。
「いや会長! どこが冗談なんすか!?」
常盤先輩が会長に詰め寄った。
「どこだろうな。教頭先生が倒れて入院しているのは本当だ」
「それは知ってますよ!」
「気になるなら教頭先生のお見舞いに行って本人に直接聞けばいいんじゃないか?教師の何人かは教頭先生が入院している病院を知っているだろうからな。生徒会としてお見舞いに行きたいと言えば場所を教えてくれるだろう」
「いやいや……」
「言っておくが、教頭先生以外に聞いたり話したりするのは駄目だぞ。さっき他の人には絶対黙っていると約束したからな」
「……それって会長の話が本当かどうか確認したかったら教頭のお見舞いに行けってことですよね?」
「それはお前達の捉え方次第だろう。とりあえず俺はゴミ拾い再開するからな」
そう言うと会長はゴミを探し始めた。
すると常盤先輩が今度は僕の方に近づいてきた。
「どう思う藤澤?」
「……もしお見舞いに行って教頭先生に話を聞いても、もし会長の言っていたことが嘘だったら、教頭先生から変な生徒だと思われますよね?」
「だよな。なんだコイツって絶対思われるだろ。他の教師に聞くのは駄目か?」
「駄目でしょう。絶対って約束でしたから」
「……だよな。……生徒会で会長のお見舞い行くとかいう話は出てないよな」
「はい、そういう話は聞いてないですね」
「……てことは会長はお見舞いには行ってるっぽい様な気がするんだが」
「僕もそう思います。……でももし面会謝絶されるくらい重症だったら会長はお見舞い自体行ってないってことですよね?」
「他の教師に教頭の状態聞くのはありか?」
「聞いて重症だったら会長は嘘ついてるってことですか」
「逆に軽ければ、……いや、その場合結局お見舞い行ってこいとか言われそうだな……。お前1人で行ってくるってのは」
「だから嫌ですって!行くなら2人で行きましょうよ」
「めんどいな……」
「もうどっちでもいいんじゃないですか?」
「え?」
「もう終わったことですし、元々僕達にはほとんど関係ない話ですよね?」
「……確かにそうだな、私ら全然関係ないわこの話。それに復職してから聞くってのもありか」
「そろそろ再開しましょう」
「……ああ、そうだな」
話を切り上げてゴミ拾いを再開することにした。
ゴミを探している最中、もしかすると会長が言っていたことは全部本当のことで、僕達に説明したあとに話し過ぎたと思い、はぐらかすために『冗談だ』なんて言ったのかもしれない、なんてことを考えていた。
「あ、エロ本みっけ。おい藤澤、エロ本見るか?」
「見ませんよ」
「またまた〜。遠慮すんなって」
「見ませんってば」
「会長〜、エロ本いります?」
「ハハハ、いらん!」
その後もゴミ拾いを続け、終了時間になったので学校の校門まで戻ることになった。
校門で拾ったゴミを回収してもらいトングを学校側に返した後、手を洗ってから生徒会室に向かった。
生徒会室の前に着くと会長がドアをノックした。
コンコン
「入っていいか?」
「ゴメン、今着替えてるー」
中から菊池先輩の声が聞こえた。
「そうか。俺と藤澤は少し待っていよう」
「私着替えます。覗くなよ藤澤」
「覗きませんよ!」
常盤先輩が生徒会室へ入っていった。
少し待つ必要がありそうだ。ドアの横の壁に背を向けて立っていると会長が話しかけてきた。
「藤澤、お前さっき生徒会室入るときノックしなかったよな?」
「あ……」
していなかったかもしれない……。
急いでいたからだろうか……。
「一応礼儀という意味もあるが、中で女子が着替えている場合があるからな。ノックはしておいた方がいいぞ」
「わかりました、次から気を付けます……」
「それともわざとか?」
「い、いえ違います!」
「そうだよな。……昔、『覗いてはいけないなら堂々と見ればいい』などと言って突撃したやつがいてな」
「え?」
「結局怒られていたんだがな」
「……」
「誰がやったと思う?」
「誰ですか?」
「菊池だ」
「……なんか納得です」
「だろう」
男子ではなく女子だったので意表を突かれてしまった……。
恐らく自分が頭の中で考えていたシチュエーションとは違う状況だったのだろう。
女子3人が着替え終わり生徒会室から出てきた。
「おはようリョー」
「おはよう藤澤君」
「……おはよう」
「おはようございます」
挨拶を交わし中に入って着替えようとすると、常盤先輩は着替え終わっているのにまだ椅子に座っていた。
「あの、常盤先輩……」
「気にするな」
「いや、あの、だから……」
「なんだ常盤、藤澤が着替えるところがそんなに見たいのか?」
「そんなわけないじゃないですか。どっちかといったら会長の筋肉の方が見たいっすね」
「なんだ、見るか?」
「いや、どっちかといったらってだけなんで別に見たくはないです。変な誤解されたくないんで出ますよ」
常盤先輩はあっさり出ていった。流石会長だ。
会長と着替え始めるが、また会長と2人きりだ。
そういえば佐々木先輩がいない。
「会長、佐々木先輩は?」
「佐々木ならもう帰ったんじゃないか? 荷物もないし、あいつはこのあと予定もあるしな」
「そうですか」
結局佐々木先輩とは会わなかった。
着替え終わると会長が皆を生徒会室に集めた。
「俺と菊池は今日のことをレポートや生徒会活動日記にまとめる。その間各々好きに過ごしてくれ。先にお昼を済ませても構わないし、暇なら図書室も空いているはずだ」
「えー、お昼はここでみんなで食べようよー」
「私もみんなと食べたいです」
「ならそうするか」
菊池先輩と菱川さんの提案でお昼ご飯は生徒会室で皆で食べることになった。
特にやることもなかったので図書室で短編小説を読んで時間を潰すことにした。切りの良いところまで読み、そろそろお昼ご飯を食べ始める時間かと思ったので、トイレに行ったあと生徒会室へ戻った。
「リョー遅いよ」
「お前また最後だぞ」
「ごめん藤澤君、先に食べ始めちゃった」
「え?」
「常盤が腹が減って先に食べ始めたから、他の女子達も食べ始めたんだ。藤澤何やってたんだ?」
「すみません、図書室で小説読んでました……」
「よし、俺達も食べるか」
「はい」
急いで荷物から弁当を取り出し食べる準備をする。会長だけは待っていてくれたようだ。
自分の弁当箱は2段になっていて、上段にはおかずが、下段にはご飯が入っている。
隣に座っていた会長もそのタイプの弁当箱で、会長の弁当の中身が気になったのでチラッと横目で見てみると、上段下段共にご飯しか入っていなかった。
「か、会長、なんですかそれ……」
「ああ、少し事情があってな……」
「なになに〜?」
菊池先輩が席を立ち、こちらに近づいて会長の弁当を見た。
「アハハハハハ、何それ〜。どうやって食べるの〜?」
気になったのか他の女子達も席を立ち、会長の弁当を見にきた。
「ふふふふふ、どうしたんですかそれ」
「真っ白」
「あっはっはっは、会長、母親と喧嘩でもしたんすか!」
「そういうわけではないんだがな」
「コーイチ、それ食べられるの?」
「大丈夫だ。これを持ってきた」
会長が荷物の中から缶詰を2つ取り出した。鯖の缶詰と焼き鳥の缶詰で、どちらも手で簡単に開けられるタイプだ。
「アハハハハ、初めて見たー。そんな組み合わせー」
「いいから早く食べろ」
会長が缶詰を開けてご飯と一緒に食べ始めた。
「もしかしてこの前のと何か関係あります? あのときは逆に弘和も会長もお弁当の中身おかずだけでしたよね?」
「ああ、逆に妹と弟はご飯だけだったからな。それで妹に嫌がらせをされたようだ」
「少しおかず交換します?」
「藤澤が良ければいいぞ」
「あたしも焼き鳥食べるー」
「交換だ交換。あげるとは言っていない」
「夏実先輩、私と交換しませんか?」
「いいよコハルン」
「あれ、いつの間に、夏実、コハルン呼びになってんだ?」
「この前のゲームからそう呼び合ってるんです。常盤先輩のことも詩音先輩って呼んでいいですか?」
「ダメだ、常盤にしてくれ。私詩音って感じじゃないだろ」
「えー、でもなっちゃんは詩音って呼んでるじゃん。それにトッキーもカワイイよ」
「うるせぇキチク」
「ちょ、先輩に対する態度じゃないんですけどーー!」
「投げキッスしたんだってな」
「だ……誰だーー、教えたやつはーーーー!!」
「ハハハ、俺と千葉だ」
そんな感じで皆で楽しくお昼ご飯を食べた。
そして少しの休憩を挟み、ゲームが始まった。
「よし、まずは各々考えてきたお題を、渡した紙に書いて折ったあと、この箱に入れてくれ」
箱は四角く外から見えない作りになっていて、手だけを入れるタイプの物だ。文化祭などで使う備品だろうか。
いくつかお題は考えてきた。他の人はどんなお題を考えてきたのだろう?
会長に言われたとおり、考えてきたお題を紙に書き、折ってから箱に入れた。
菊池先輩が箱に紙をどんどん入れていく。かなり多くお題を考えてきたようだ。
「最初はコハルンからね〜」
「はい」
「菱川がお題を1枚引いたら、自分で見ずに誰かに渡してくれ。渡したら菱川はドアの方を向く。他の人達が確認をしてホワイトボードにお題を大きく書いておくので、合図をしたら菱川が振り向いてお題を確認。その4文字のお題の言葉を2回言ったあと、上2文字を2回、下2文字を2回言う。そしてそれをもう一度繰り返す。ただし、お題を確認したらすぐに言い始めること。それと大きな声で早くはっきりと言うこと。ゆっくり言うのは駄目だからな。よし、始めるか。菱川1枚引いてくれ」
「はい」
菱川さんがお題の書かれた紙を1枚箱の中から引き、それを会長に渡した。
菱川さんがホワイトボードから少し離れドアの方を向いたので、お題を菱川さん以外で確認する。
え!?
このお題は……。
他の人達の顔色を伺うと菊池先輩は口元に人差し指を立て、「シー」とやっていた。常盤先輩は笑うのを堪えている。千葉先輩は無表情でそっぽを向き、会長は何事もなかったような顔をしていた。
止めようかとも思ったが、菊池先輩と常盤先輩が無言で詰め寄ってきたので、心の中で菱川さんに謝りつつ、諦めることにした。
会長がお題をホワイトボードに書き、お題が見えるように僕と会長はホワイトボードの右側に、他の3人は左側に移動した。
そして会長がカウントダウンする。
「3,2,1,ドン!」
会長の「ドン」と同時に菱川さんが振り向き、ホワイトボードに書いてあるお題を確認するとルールに則り言い始めた。
『ワクチン』
「ワクチンワクチン
ワクワクチンチン
ワクチンワクチン
ワクワクチンチって
なんなんですかこのお題!!!!!」
「アハハハハ、コハルン最後まで言わないと〜〜」
「あっはっはっは、どうした菱川」
菊池先輩と常盤先輩は笑っているが、千葉先輩と会長は相変わらず反応がない。
「ううーーー…………」
菱川さんがその場でしゃがみ込み、顔を両手で隠している。やはり恥ずかしかったようだ。
ごめん菱川さん……。
「会長、いいんですかこれ止めなくて……」
「菊池の我儘だ。俺は知らん」
「もしかして最初からこういうお題があるってわかってたんですか?」
「ああ」
おそらくあのお題は菊池先輩が書いたものだろう。
そういえば菊池先輩は紙を多く箱に入れていた。嫌な予感しかしない……。
「アハハハハハ」
「あっはっはっは」
菊池先輩と常盤先輩が笑い続けている。
「……これ僕と千葉先輩もやるんですか?」
「たぶん千葉はやらんだろ。というより常盤がやらせないだろうな」
「僕はやるんですね……」
「ああ」
「はい次リョーの番ねー」
「……これ僕もやらなきゃだめですか?」
「当たり前だ藤澤。菱川もやったんだからなお前もやれ。先輩命令だ」常盤先輩がそう言いながら僕の肩を両手で掴んできた。
「……わかりました」
菱川さんは部屋の隅で壁向きにしゃがみ込み、顔を両手で覆っている。
よほど恥ずかしかったのだろう……。
常盤先輩に催促され、菱川さんと同じように箱の中から紙を1枚引き会長に渡し、ホワイトボードから少し離れ、ドアの方を向いた。
正直やりたくないが、菱川さんがやった以上、日和るのも男子としてどうなのだろうか…。しかしやりたくない……。
ただお題はそういったもの以外にもあるはずなので、とりあえずお題を見た瞬間の自分に身を任せることにした。
「3、2、1、ハイ!」
会長の合図で振り向いた。どうか変なお題じゃありませんように……。
『テリーヌ』 よかった、普通のお題だ。
「テリーヌテリーヌ
テリテリヌーヌー
テリーヌテリーヌ
テリテリヌーヌー」
よし。
「はいダメーー、リョー失敗ー」
え!? 言えていなかっただろうか?
「藤澤、正しくは
テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ
テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ、
こうだ」
「テ、テリテリーヌーヌ……?」
そうか、確かに言えていなかった。それでも正しく言えなかったことはどうでもよく、変なお題ではなかったのでホッとした。
「そうだ。テリテリーヌーヌだ」
「フフ、テリテリーヌーヌ……。フフフ」
千葉先輩が小さな声で笑い始めた。
「普通のお題で失敗してんじゃん藤澤。じゃ、次私やるわ」
常盤先輩が箱から紙を引き会長に渡した。自分も確認する。これは……。
「3、2、1、ゴー!」
『チンピラ』
「チンピラチンピラ
チンチンピラピラ
チンピラチンピラ
チンチンピラピラ。余裕だわ」
常盤先輩は堂々と簡単に言い切った。恥ずかしくはないのだろうか……。
「アハハハ、トッキー成功〜」
「常盤先輩、よく簡単に言えますね…」
「こういうのは恥ずかしがったら負けだ。ていうかお前男子のくせに回避しやがって」
「クジはたまたまでしょう!」
「フフフフフ……」
千葉先輩が笑っている。菱川さんのときには笑っていなかったのに何故だろうか?
「夏実、テリテリーヌーヌがそんなに面白いのか?」常盤先輩が千葉先輩に聞くと「や、やめて、フフフフフ……」と口元を押さえ笑っている。どうやら『テリテリーヌーヌ』が千葉先輩のツボにはまってしまったようだ。そんなに面白かっただろうか?
「次の千葉は……」
「フフフフフ……」
「ずっと笑っているな」
「テリテリーヌーヌ」菊池先輩が千葉先輩の耳元で囁いた。
「フフフフフフ、や、やめて……。フフフフフ……」
「……これは駄目だな」
「いやいや会長、元々夏実にはさせませんよ。こんなゲームこの子には無理でしょ」
「えー、なっちゃんがやってるとこ見たいなー」
「どっちにしろ笑ってるから無理じゃないか?」
「えー」
「ほら、次副会長。さっさとやってください」
「はーい」
常盤先輩が催促し千葉先輩を飛ばして菊池先輩の番になった。
菱川さんはまだ隅で丸くなっていて、千葉先輩は端の椅子に座り何故か笑い続けている。
なんなのだろうかこのゲームは……。
菊池先輩のお題を確認する。
…………。
「自業自得でしょ」
「だな」
常盤先輩と会長が小声で話す。そのとおりだと思ったので自分はもう放っておくことにした。
「3、2、1、0!」
『ちんちん』
「ちんちんちんちん
ちんちんちんちん
ちんちんちんちん
ちんちんちんちんって、
これあたしのやないかーい!!」
「………………」
「………………」
「……さすがっす菊池副会長殿。尊敬しますわ」
「こんなんで尊敬されても嬉しくないんですけどー!」
「次は俺だな」
ゲームが進む。
本当になんなんだろうかこのゲームは……。
会長が紙を引き副会長に渡したので自分も確認する。
…………絶対これも菊池先輩が書いたお題だ。
菊池先輩と常盤先輩がクスクス笑い出した。もう放置するしかない……。
「3、2、1、いいよー」
菊池先輩の合図で会長が振り向く。
『賃金』
「ちんぎんちんぎん
ちんちんぎんぎん
ちんぎんちんぎん
ちんちんぎんぎん」
「アハハハハハハハハハハハハ」
「あっはっはっはっはっはっは」
この人達の頭は男子小学生なのだろうか……。
「次は菱川だが……」
「私こんなのやりません! 続けるなら帰ります!!」
それはそうだ。
「まぁ待て菱川。次から変なお題はなしにしよう」
「えーー、このまま続けようよー」
「僕も嫌ですよ!」
「さすがにこれ以上はもういいだろう」
「……わかったよぉ。ごめんよコハルン」
菊池先輩が菱川さんを慰める。
千葉先輩はまだクスクスと笑っているようだ。ちょっとよくわからないが相当面白かったらしい。
「お題を確認して変なお題だったら引きなおすということで再開しないか? 普通のお題で言い難いものもあるはずだ。俺はそういうお題を書いたからな」
「僕もです」
「私も」
「私もでーす」
「あたしはー……」
やはり菊池先輩だけのようだ……。
「菱川それでいいか?」
「……それなら、はい……」
菱川さんが箱から紙を引き会長に渡した。自分も確認する。
『運賃』
「菱川、引き直しだ」
会長が菱川さんに引き直させる。
『賃上げ』
「もう一度だ」
菱川さんがまた引き直す。
『賃貸』
「菱川、そんなに言いたいのか……!」
「なんでですか! 会長今のセクハラです!!」
「す、すまん菱川、悪かった……」
「菊池先輩、どんだけ書いてるんですか……」
「この人変態だからな」
「コハルンあたしのこと好き過ぎでしょ」
「嫌いです!!」
「イヤーー、嫌わないでーー!」
「いいから引き直せ菱川」
「……」
菱川さんがまた引き直しお題を確認する。自分が書いたお題だ。
「よし、大丈夫だな」
菱川さんが少し離れ準備をする。
「3、2、1、いいぞ!」
『矢沢屋』
「やざわややざわや
やざやざわやわゎや
やざやわやざわやわ
やざやざわゎやわや」
「ダメーーー、コハルン失敗ーー!」
「ハハハ」
「これ普通に難しいですよ。それに矢沢屋って何ですか?」
「矢沢屋を知らないってことはコハルンは自転車通学だなーーー!」
「どういうことですか?」
「リョーは矢沢屋知ってる?」
「僕は知ってます。というよりこれ書いたの僕です」
「ってことはリョーは電車通学だなーーー!」
「いえ、僕も自転車通学です」
「……そっか」
「さすがっす副会長。ぷぷぷ……」
「何がさすがなんだトッキーーー!」
菊池先輩が常盤先輩とじゃれ合い始めた。
「結局矢沢屋ってなんなんですか?」
菱川さんが会長にもう一度尋ねる。
「矢沢屋は学校と駅の間にある店でな。電車通学している生徒は皆見たことぐらいはあるはずだ」
「へぇー、そうなんですね。どんなお店なんですか?」
自分も店の名前しか知らない。どんな店なのだろう?
「定食屋だよ。邦南生もあそこで食べたりしている。ただしメニューの名前が変わっていてな。ボルケーノ丼とかリヴァイアサン定食とかエクスカリバーセットとかがある」
「……それはどういう」
「普通の料理だよ。名前が変わっているだけのな」
「ちょっとよくわからないんですけど……」
菱川さんは全然ピンときていないようだ。おそらくそういったゲームをしないのだろう。
多分ボルケーノ丼は辛い系の丼ぶりでリヴァイアサン定食は海鮮定食じゃないだろうか。エクスカリバーセットはなんだろう?
「次僕ですね」
自分の番なので箱から1枚紙を引き会長に渡した。
引き直しと言われなかったのでホワイトボードから少し離れ準備をする。
「3、2、1、ダン!」
『ガジェット』
「ガジェットガジェット
ガジェガジェトットッ
ガジェットガジェット
ガジェガジェトットッ」
よし。
「はいダメーー、リョー失敗ーー」
え、また!?
「正しくは
ガジェガジェットット
だな」
「ガジェガジェットット…」
確かに言えていなかった……。
「藤澤またかよ。お前下手くそだな。次私」
「これ慣れないと結構難しいですよ」
常盤先輩が紙を引き準備する。
「3、2、1、セイ!」
『生米』
「なまごめなまごめ
なまなまごめごめ
なまごめなまごめ
ななまなまごめごめ」
「はいダメーー、トッキーも失敗ーー」
「……ちっ」
「なんで少し恥ずかしそうなんですか常盤先輩……」
「うるせぇ藤澤!」
何故常盤先輩は僕と菊池先輩に対して当たりが強いのだろう……。
さっきは堂々としていたのに少し噛んだだけで恥ずかしらしい。普通逆ではないだろうか……。
「次あたしー」
菊池先輩が紙を引き会長に渡したので自分も確認してみる。……引き直しだ。
しかし常盤先輩がクスクス笑いながらそのままホワイトボードにお題を書き始めた。会長は止めずに菱川さんもスルーのようだ。
ふと千葉先輩が気になったので見てみると、まだ口元を押さえて笑っている。
「3、2、1、ヘイ!」
『沈殿』
「ちんでんちんでん
ちんちんでんでん
ちんでんちんでん
ちんちんでんでんって
これもあたしのやないかーい!! ってなんで引き直しじゃないんだよーー!」
「あっはっはっはっは」
「ハハハハハ」
「自分が書いたお題なんだから責任持ってください!」
「コハルンまだ怒ってるのー?」
「当たり前です!」
会長と常盤先輩は笑っていて菱川さんは怒っている。千葉先輩もずっとクスクス笑っているし、自分だけよくわからない感情でゲームが進んでいる気がする……。
「次コーイチー」
「ああ」
会長が引いた紙を菊池先輩な渡して準備をする。
「3、2、1、いいよー」
『生麦』
「なまむぎなまむぎ
なまなまむぎむぎ
なまむぎなまむぎ
なまなまむぎむぎ」
ようやく普通のお題で成功者が出た。
「はい次ー。コハルンね」
「おい、なんかリアクションないのかよ」
「会長、私最初からこういうふうにゲームやりたかったです」
「すまん菱川……。全部菊池のせいだ」
「えー、あたしだけー!? コーイチもトッキーも笑ってたじゃん!」
「お題は全部お前のせいだろ」
「えー、あたし以外の人も書いたかもじゃん!」
「書いたかお前ら?」
「私書いてません!」
「僕も書いてません」
「私も書いてないっすよ」
「ホントかー?」
「とりあえず次は菱川」
「はい」
菱川さんが箱から紙を1枚引き会長に渡した。自分もそれを確認する。……ん? 菱川さんは前の番『矢沢屋』だったような……。
「3、2、1、ボン!」
会長の合図は何故毎回違うのだろうか?
『和沢屋』
「わざわやわざわや
わざわざわやわや
わざわやわざわや
わざわざやわやわ」
「はい、ダメーーーコハルン失敗ーー!」
「これさっきもですよね? 難しいですよ」
「菱川さん、さっきは『矢沢屋』で今回は『和沢屋』です」
「あ、あれ?」
菱川さんが混乱している。確かにややこしい。
矢沢屋は知っているけど和沢屋は知らない。
誰が書いたのだろうか?
「和沢屋は俺の家の近くにある青果店だ」
「そうなんですね」
「僕も知らなかったです。お題見たとき一瞬混乱しました」
「あたしは知ってるよー。トッキーは知らないでしょー」
「ぷぷぷ、残念、私も知ってますよ。さすが副会長」
「だからなんなんださっきからそれはーー!!」
また菊池先輩と常盤先輩がじゃれ合い始めた。
「次藤澤」
「はい」
箱から紙を引き会長に渡した。次は言えるだろうか?
「3、2、1、ソイ!」
『矢沢屋』
「やざわややざやわ
やざやざわやわや
やざわややざわや
やざやざやゃわやわ」
「はい、ダメーー! リョー三連敗ーー!」
自分が書いたお題と同じだ。自分で言うのが難しかったから書いたのに、誰か他の人も書いていたようだ。
……絶対菊池先輩ではないだろうが。
「矢沢屋は2回目だな」
「まー、そういうこともあるでしょ〜」
「千葉はどうする?やれるか?」
どうやら千葉先輩が復活したようだ。
「……はい」
「よし、千葉引いてくれ」
千葉先輩が箱から紙を引き会長に渡した。お題は『リリース』だったのに、常盤先輩がホワイトボードに違うお題を書き出した。
他の人がスルーしたので自分もスルーすることにした。果たしてどうなるのか……。
「3、2、1、デン!」
『テリーヌ』
「テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ、フフフ
テ、テリテリ、ヌーヌ、フフフフフ」
どうやら駄目だったようだ。
「テリテリーヌーヌってそんなに面白いか?」
「いえ、私はそこまでは……」
「僕も良くわからないです……」
「なんでか夏実にはハマってるんだよな」
「なっちゃんを笑わせたいときはこれ耳元で囁やけばいいってことだね」
千葉先輩がまた椅子に座り口元を押さえて笑い始めた。千葉先輩は今日はもう駄目かもしれない……。
「次トッキーだよ」
常盤先輩が紙を引き会長に渡した。『鎮圧』だったので引き直し、もう一度会長に紙を渡した。……まただ。
「3、2、1、ホイ!」
『和沢屋』
「わざわやわざわや
わざわざわやわや
わざわゎやわざやわ
わざわざわやわゎや」
「はい、ダメーー、噛んでる詩音ちゃんカワイイよーー」
「うるせぇ投げキッス」
「ちょっと! それあたしのこと!?」
「ふふふ」
「コハルン笑わないでよー!」
「いいから次お前だ菊池」
「はーい」
菊池先輩が紙を引き会長に渡した。今度は普通のお題をそのままやらせるようだ。
「3、2、1、ショイ!」
『キツツキ』
「キツツキキツツキ
キツキツツキツキ
キツツキキツツキ
キキツキツチュキチュキ。くそー!」
「失敗だな。お前らミス多くないか?」
「いや、普通にムズいっすよ会長。矢沢屋と和沢屋は難易度高いです」
「俺が3回目だからそろそろ最後にするか」
会長が紙を引き菊池先輩に渡した。自分もお題を確認する。……会長は言えるだろうか。
「3、2、1、いいよー」
菊池先輩が合図をして会長が振り向いた。
『矢沢屋』
「やざわややざやわ
やざやざわやわや
やざわややざわや
やざやざわやわや」
「スゴーイ、成功じゃん!」
「私言えなかったのに。会長さすがです!」
「そうだね。僕も菱川さんも言えなかったのに会長すごいです」
「いや、さすが会長ですわ。どこぞの副会長とは違いますね」
「ホントにトッキーはあたしのこと先輩だと思ってないよね……」
「いえ、先輩だとは思ってますよ。思った上で先輩扱いする必要性を感じていないだけです」
「なんだとーー!!」
またまた菊池先輩と常盤先輩がじゃれ合い始めた。
「とりあえずこれで終了だな」
「罰ゲームとかはなしですか?」
自分は1回も成功していないので一応聞いてみる。
「罰ゲームはしなくていいんじゃないか? すでに菱川が罰ゲームくらったらようなものだからな」
「そうですよ! 酷いです!」
「許してよコハルンー。帰りにコンビニでお菓子奢ってあげるからー」
「……高めのスイーツなら許します」
「う、……しょうがない、それで手を打とうじゃないか」
「今日はここまでだな。片付けは俺がやっておく。よし、解散!」
女子4人が先に帰り始めた。多分コンビニに寄って何か甘いものでも食べていくのだろう。
自分も帰ろうと思っていたら、会長に話しかけられた。
「藤澤、お前、昼飯食べに生徒会室戻ってきたとき、またノックしなかっただろ」
あ……。




