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マジカル☆ロワイアル  作者: だっつ
2/12

第2話

「うーん……ここは、私の部屋……?」


昼の14時過ぎを時計の針が教える中、みどりはベッドの上で目を覚ました。しばらくぼーっとしていたがあることを思い出して、慌ててパジャマを脱いでいく。


いつものように白い服に着替えて、顔を洗う。すると、タイミングを見計らったようにピンポーンとチャイムが鳴り、みどりはビクビクしながらその扉を開けた。


「えっと……あな、あなたが……?」

「こんにちはみどりちゃん……アーチャーこと、倉橋かなん……だよ?」


彼女の名前を聞いてみどりはそっと胸をなでおろす。彼女の格好をあらためて見てみたが、みどりの大きな帽子。そしてぶかぶかなコートを着ており、動きづらそうに見えた。


とりあえずとみどりはキョロキョロしながらかなんを自分の部屋まで案内する。みどりが促すと、かなんは床に座り込んだ。


「さて……何が聞きたい……の?」

「えっとその……あの……まず、フヒ……まず、この戦いってなんなんです……?」


みどりの質問に対してかなんは、しばらく考えるようなそぶりを見せた。そして、そうだねぇと前置きをした後、口を開ける。


「多分この戦いは何年も前からあると思う……よ?少なくとも今回が1回目ということはないと思う……よ?」

「何年も前から行われてる魔法少女同士の殺し合い……」

「そう。そして優勝者は商品として……願いを一つ叶えてもらえる。だからみんな、必死に戦ってる……と思うよ」


かなんはそういうがいまいちみどりはピンとこない。少なくとも今の自分には叶えたい願いというのは何一つ思いつかないのだ。


だから、変な話。かなんのことを参考にしようと思い、みどりは意を決して口を開ける。


「く、倉橋しゃんの願いは……なんなんですか……?」

「私の願い……そうだねぇ。美味しいご飯を食べたいな」


かなんの願いを聞いてみどりは少し拍子抜けする。美味しいご飯を食べたいということだけで、彼女は命をかけてるのだろうか。


しかし、彼女の顔はどこか寂しそうでみどりはその時、その言葉に嘘はないと悟った。


「他に何か聞きたいことはない……の?」


かなんが寂しそうな顔からいつものような顔に戻して、みどりに聞いてくる。みどりはえっとと口ごもりながら、なんとか言葉を繋げていく。


「なんで私を助けて……く、くれたのです……フヒ……」

「助けたのは……キミが困ってそうだったから……そこに理由なんていらない……それにほら、まだ脱落者が出るのには早すぎる……でしょ?」


恐らくはだが、それは彼女なりの優しさなのだろう。彼女はきっと、目の前でみどりじゃない人が襲われていたら守ってくれる。彼女はそれほど優しいのだ。


そんなかなんはみどりにとっては同じ境遇の、それでいて自分の恩人。そんな彼女を見て、みどりは自分の手を強く握りしめて、口を開ける。


「私、願いが決まりました……」


だから、みどりの口から出てくる言葉はある意味ーーー


「私は最後まで……い、生き残って、かなんさんに……ころ、殺されます……」


仕方ないのかもしれない。


かなんはそれを言われて、しばらく困ったような顔をして見せた。そしてみどりの頭をポンと優しく叩いて声をかける。


「みどりちゃん……いい?キミの願いはキミの願いなの……いつかきっと見つかるから……それまで、自分を曲げちゃダメ……だよ?」


かなんの言葉を聞き、みどりはわかりましたと頷くが、みどり自身はあまり納得していない様子であった。その事には、かなんも気づいていて、あえて何も言わなかった。


「……フヒ……あ、そうだ。私達とブレイカー以外の魔法少女、み、みま、みませんでした……?」

「うーん……そうだね。多分だけどランサーとガンナーの二人組にあった……よ」

「えっ、だだだ、大丈夫でした……か?」

「うん。私は戦う気はないから……ね。こそこそ逃げてきた……よ」


そう言ってかなんは大きくあくびをする。そして、ベッドとみどりを交互に見はじめる。その行動を見たみどりはクスッと笑って立ち上がり口を開ける。


「ね、眠たいので、ですよね?ど、どうぞあまり大きくない……で、ですけど……」

「おぉ〜ありがとう。うん、じゃ、お言葉に甘えちゃおう……かな」


かなんはそう言いながらのそのそとベッドの中に入っていく。みどりはそれを見ながら、口を押さえつつあくびをする。


自分は床で寝ようかと準備していた時、かなんがこっちをじっと見ているのに気づいた。


どきりとしながら、どうして見てるのかをかなんに尋ねると、かなんは自分が寝ている横を手で軽く叩いた。


「眠いなら……一緒に寝な……い?」

「えっ!?フ、フヒ……一緒で……でですか……?」


みどりがそういうとかなんはこくりと頷いて、またベッドの上を軽く叩く。みどりはしどろもどろになりながらも、その横に入り込む。


「なん、だか……お姉ちゃんができたみたいです……」

「ん〜じゃ、私のことをお姉ちゃんって呼んでいい……よ?」

「フヒ!?!?……えっと……でも……」

「ほらほら、遠慮しないで……あ、下の名前で……ね?」

「フ……フヒ……えっと、じゃぁ……かなん、お姉ちゃん……?」

「うんうん。よろしい。じゃ、おやすみみどりちゃん」


かなんはそう言って眠りだした。規則的な寝息が聞こえてきて、みどりは思わず苦笑する。寝付きがいいのは、羨ましい。


しかし、みどりは心臓がドキドキとして眠れなかった。それもそのはず、彼女が家族以外の人と話し、そしてこう寝るのなんて久しぶりであった。


が、眠れないとしても時間が経てば自然とまぶたは降りて行き、深く眠り始める。目を覚ました時、これが夢ではないことをみどりはどこかで祈っていた。



◇◇◇◇◇


「……起きたけど……かなんさんは寝てるな……」


ゆっくりと身を起こしたみどりはキョロキョロと周りを見渡して、かなんの寝顔を見て思わず顔がほころぶ。


かなんの願いは確か、美味しいご飯を食べたいだったか。みどりはよしっと言って立ち上がり、台所に降りていく。みどりは実は料理は大得意である。美味しいと言えるような料理は作れるかはわからないが、とりあえず作りはじめる。


だが、そこでふと考える。なぜかなんは美味しい料理を食べたいと言うだけで、こんな命懸けの戦いに参加しているのか。何か、理由があるかもしれない。


しかし、みどりにはそんなことを聞く勇気はなく、いつの間にか料理が完成していた。あり合わせを調理しただけだが、それでも美味しそうに見える。


「よし、それじゃあ、かなんお姉ちゃんを呼んで……」


そう思った矢先、突然スマホがなり始めた。みどりはドキドキしながら、スマホを開くと、そこには前見たのと同じ文章で、怪物が現れたとだけ、書かれていた。


「そんな……でも放っておいたら……よし」


みどりはそう言ってアプリをタップしていく。そうしたら、スマホが白く光り始めて、その場には誰もいなくなっていた。



◇◇◇◇◇



みどりはようやく、アンダーワールドに降り立ち、ゆっくりと変身をした。あとは、怪物を倒しすぐに帰って来れば、終わる。大丈夫だと、自分に言い聞かせながら、ドアを開けた。


「よぉ。遅かったな……」

「えっ、なんで……!?」


そこにいたのはあの時出会った、魔法少女。ブレイカー。彼女が斧の上に座りながら、こちらを見ていた。


慌てながらもよく見てみると、ブレイカーの近くにおそらく怪物の亡骸であろうものが落ちてあった。


「気づいたか。これでお前をおびき寄せた……目的はアーチャーだったが、まぁ仕方ない」


ブレイカーは首を鳴らしながら、近づいてくる。セイバーはしばらく呆然としていたが、気づいたように家の中に駆け込んで行った。


(なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!!!!)


セイバーは走りながら淡々と自問自答を繰り返すが答えが出るわけもなく、自分の部屋に転がり込む。


しかし、そこにはもちろんかなんの姿はなく、ただいつもの彼女の部屋があるだけであった。


バキィッ!


扉が破壊される音が聞こえ、ブレイカーが部屋の中に入ってきた。ブレイカーは斧を構え、そしてセイバーめがけて振り下ろす。


セイバーはとっさに剣を出して攻撃を受けるが、あまりの威力により床が崩れ下に落ちていく。


崩れゆく中でもブレイカーは斧を使いセイバーの顔を叩き飛ばす。グチャと鼻が潰れたような音が聞こえてセイバーはブレイカーより先に床に衝突する。


ブレイカーは床に倒れこんでるセイバーめがけて今度は叩き斬るというように斧を振りかざしてくるのを見て、セイバーは慌てて走り出す。それを見たブレイカーは斧を振るのをやめて、床に足を着き斧を横に振り払う。


その時セイバーは足を絡ませて転んでしまう。が、先ほど自分の上半身があったところあたりの風が真っ二つに斬られるのをみて、ゾッと顔を青ざめた。


「運がいいやつめ……だが、もう終わりだな。チェックメイトだ」

「い、いやだ……!!死にたくない……叶えたい願いがあるのに……!」

「そうか。夢を見るのは、自由だぞ」


ブレイカーはそう冷淡に言い、斧を振り下ろす。セイバーはもう斬られるのを待つしかないかと思った。が、もし。と考えた。


もしここで自分が死ねばもうかなんに会えなくなってしまうのではないか。そう考えてセイバーはとっさに座ったままの姿勢から思い切り後ろに手をついてそのまま後ろに蹴り上がり、飛んだ。


今度は床を斬り伏せたブレイカーに対してセイバーは意を決して剣を振り下ろす。ブレイカーは舌打ちをしながら、その攻撃を避け、セイバーの鳩尾を思い切り殴って、そのまま倒れこむセイバーの頬を殴り飛ばす。


「てこずらせやがって……が、もう終わりだろう……」


ブレイカーがそうセイバーに聞くようにつぶやく。もちろんセイバーは何も答えられず、ただぐったりとしていた。


「ごめん、なさい……お姉ちゃん……」

「謝らないで……よ」


突如、ブレイカーの後ろから声が聞こえてきた。その声と同時に、ブレイカーに向かって弓矢が無数に飛んできて、ブレイカーはそれを少し慌てながら、斧ではたきおとす。


ブレイカーは弓が飛んできた方に斧を構える。すると、狩人のような格好をした一人の少女。アーチャーが冷たくブレイカーをにらみながら、やってきた。


セイバーは顔を輝かせて立ち上がろうとするが、足が動かない。アーチャーは遠目からそこを動くなと合図を送りブレイカーと対面する。


「私の妹に手を出した罪は重い……よ」

「ふん。なんでもいいが、お前はこの私が……殺す!」


その言葉を合図にブレイカーが斧を持って駆け出していく。アーチャーは弓を放つが、ブレイカーはその弓を一本一本丁寧に叩き斬っていく。


ダンッ!ブレイカーが強く足を踏み出して一気に加速する。アーチャーはビクリと肩を跳ねさせるが、右に転がるようにしてブレイカーの突進を避ける。


ブレイカーは壁にぶつかりそうになる瞬間、斧を支えにしながら足で壁を蹴り上げていく。そして天井に足をつけアーチャーめがけて拳を突き出す。


アーチャーはもう一度弓をブレイカーに放つが、ブレイカー自分に当たる弓矢を全てもう片方の手で握り、床に投げ捨てる。そのままの勢いでアーチャーの顔に思い切り拳をぶつけた。


が、アーチャーの方も足に力を入れて、殴り飛ばされないようにし、相手に殴られた勢いを利用してお返しというようにブレイカーを殴り飛ばす。


突然のことに防御をできずもろに顎に拳を受けるブレイカー。ドンッと体を何度も床に叩きつけながら、転がっていく。

急いで立ち上がるが、アーチャーにとってはもうそこが自分の最高の『射程圏内』であった。ニヤリと笑いアーチャーは弓を無数に放つ。


ブレイカーは斧を持っていないためその攻撃の全てを弾くことはできず、腕をクロスにして致命傷だけは避けようと奮闘する。しかし、かすっていく弓矢は決して軽いものではなく、血を流し始めて顔を歪める。


弓の猛攻は止む気配はない。ブレイカーはそれを止ませるために思考を巡らせる。そして一つの答えにたどり着く。


ブレイカーは思い切り床を踏みしめ即興で床の盾を作り出した。それにより一瞬だけ弓の攻撃を免れた。ブレイカーにとってはその一瞬だけで充分すぎるほどであった。


ブレイカーは素早く斧を握りしめてアーチャーに向かって突っ込み、斧を振り下ろした。


が、アーチャーはその攻撃を軽く避けて、さらに弓を構える。ブレイカーにとっては弓の対角線上にいるということは即ちダメージを受けてしまうということとなる。そのためブレイカーはアーチャーをにらみながらも、右に少し移動した。


「計算通り……だね!」

「なっ……!?」


アーチャーがそう言うと、弓を突然上に向けて構え始める。そして、力を込めて手を離し、弓矢を飛ばした。


普通に考えれば弓は天井にあたりそこで終わる。しかし、弓矢は天井に当たることはなかった。なぜなら、ブレイカーが今いる場所は先程セイバーと一緒に落ちてきた場所。つまり『天井は破壊』されている!!


「これが私の必殺技……レイニー・アロー!!」

「ぬぅ!!」


アーチャーがそう言うと、空から無数の弓矢が、まるで雨のように降り注ぐ。アーチャーが放ったのはたかが数本なのに、その倍、さらにその倍と言ったほどの数に、ブレイカーは慌てて防ぐ。


が、空から降る雨を人間は顔などに当たるのは防げても、腕に当たるのには防げない。その事実が弓矢に乗って襲いかかる。


「グゥァガッ!!」


ブレイカーを見えなくするほどの弓矢は、まるで嵐の中に訪れる豪雨のようであり、ブレイカーにしばらくそれが訪れた。


1分後。そこには弓矢が刺さりまるでハリネズミのようになっているブレイカーの姿があった。


「お、おわったんですか……?」

「うん、多分……ね」


アーチャーが大きく伸びをして欠伸をしながら、セイバーに近づいてきて手を差し出す。セイバーはその手を遠慮がちに握りしめて立ち上がる。


「んじゃ、帰ろうみどりちゃん。みどりちゃんのご飯おいしそうだから、食べたい……な」

「えっ、あっ、はい!」


アーチャーはそう言いながらスマホを取り出して、一度変身を解く、ここから出るには一度変身を解かなければならない。


そして、かなんにならいセイバーも変身を解こうとアプリを起動する。そして、かなんと一緒にご飯をたべれるということを想像して自然に顔が綻ぶ。


「……っ!」


すると突然、かなんがセイバーを押し倒す。ドンッと音がしてセイバーがいた場所にかなんが立つようになる。セイバーがお尻をさすりながら、何してるんですかとかなんに声をかけようと顔を上げた。


「元気……?みどりちゃん……」


かなんはそう弱々しく呟くと、どさりと膝から崩れこみ、セイバーに抱きつく。セイバーは少し笑いながら、かなんに抱きついた。


べとり。


何か手に、かなんの肌とは違うものの感触を覚えた。セイバーは何かと思いながら、自分の手をみるとそこには赤い液体がべっとりついていた。


「え、なに……これ……」

「は、ははは……ごめんねみどりちゃん。ご飯一緒に食べれそうにない……や」


セイバーが慌ててかなんを見ると彼女には弓矢が深く突き刺さっており、そしてブレイカーの姿がなかった。


セイバーが変身を解いてかなんを揺さぶる。かなんの顔からは段々と生気がなくなっていくのが見えてみどりはかなんに呼びかけを続ける。


「美味しいご飯一緒に食べるって言ったじゃないですか……!!せっかく作ったんですよ……貴方の夢を叶えようと……したんです!」

「みどりちゃん……ありがとう、嬉しいよ。でも私が食べたかった美味しいご飯は……みどりちゃんじゃ作れないんだ……ごめん……ね」

「そんな……私は変身してたのに……庇わなくても大丈夫なのに……」

「妹を守るのが姉の勤めって……ね……みどりちゃん。お願い、自分の願いを曲げないで……ね」


かなんはそう言って目を閉じる。みどりの精一杯呼びかけに対してもう答える力がなくなっており、その代わりに、みどりの呼びかけには傷口から溢れ出る血が、応えていた。


そんな中かなんはゆっくりと自分の帽子に手を伸ばして、それをみどりにかぶせた。それを見てかなんは優しく笑い、パタリと倒れる。


「あぁ……お母さん……ご飯、食べに来た……よ」


カナンは最後にそう呟き、段々と体が薄れて消えていった。かなんが消えたその場所には戦いの後のみどりの叫び声に近い泣き声があたり一面に響き渡っていた。


【メールが届きました】

「アーチャーとブレイカーが戦い、ブレイカーが勝ち、アーチャーが死にました!勝者は、負け犬に勝った己を祝い祝杯をあげましょう!」



第2話 『自分の願いを曲げないで』

お疲れ様でした。この作品のノリがわかってくれたら嬉しいです

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