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第三話

 もう一度言うがグリフォリアは学園が集まる都市だ。若者がより多く集まり、この国で最も活気がある。

 様々な種族が集まり交流を深めるのも、そういった性質故だろう。


 ハルとロミアは街の散策は後日に回すとして、自分たちの通う学園へと一直線に向かった。

 

 ルイノ魔術学園。この都市でも有数の学校だ。多くの実力ある生徒たちが通って勉学に励む。

 この学園に通う生徒には二種類あり、赤茶色の制服を着た進学組と濃い紺色の制服を着た受験組に分かれていた。


 ハルは十八から編入してきたわけだから、制服は紺色だ。スカートのヒラヒラが少し落ち着かなくなり、もじもじしてしまう。


「うんうん、やっぱり似合う! あ、やば涎が出てきた……」


 同じ制服の上に、軽装鎧をつけたロミアが自分の涎を拭っている。


 彼女はハルとは違い、ルイノ学園の従事科に編入することになった。仕えるための心得を学ぶそうだ。

 従事科の人間は編入するときに仕える人間を決める。当然彼女が選んだのはハルだった。


「本当やめてくれ……ただでさえ浮いてんのに」


 ハルが縮こまるのは当然である。

 周りを見ればほとんどの生徒が赤茶色の制服に身を包んでいた。つまるところ、受験組はそれだけで目立つ。

 そして何より最悪なのは、すでにハルとロミアは“受験を通さずに入ってきたもの”として有名になっていた。


 フェミリス家は、優秀な魔女が育つ家系らしい。その家と連携しているこの学園は、十八になると必ず通わせることが約束されていた。

 今まで頑張ってきたものにとって、それはあまり面白くないことだろう。フェミリスと名前を聞いただけで、数名から距離を取られた。今も遠巻きにコソコソとこちらを様子見ている。


 道を尋ねようとして、「ひっ」と距離を取られて逃げられたのは、さすがのハルも効いた。顔も知らない人間に嫌われているのが、こんなにも心に来るなんて思っても見なかった。


「何言ってんの? せっかく、学園に来たんだから楽しまないと!」


 そして、ロミアはロミアでどこかこの状況を楽しんでいる節がある。

 もう冒険者にならなくてもいいから家に帰りたいと、早くも心が折れかけていた。


「情けないのだわ」


 そんなハルたちに声をかけた変わり者が一人。最初は気のせいかと思った。


「どこを見てるの? こっちなのだわ」


 声のする方を見ると、ゆるくウェーブのかかった金髪ロングヘアーの少女が立っていた。赤茶色の制服を着ていることから、進学組のようだ。

 黄色い瞳はどこか勝ち気そうにつり目がち。口をへの字に結んでいる姿は、不満げに見える。


 背丈はハルより少し高く、ロミアよりは低いくらいか。出るところは出てしまるところはしまっている。彼女が髪の毛をかき上げると、その動作に合わせて胸が揺れた。

 昔のハルなら目が奪われていたが、今の自分は「重そうだなぁ……分かる」という感想しか漏れない。


「フェミリス家の御息女が入学すると聞いて期待していたのに、本当飛んだ期待外れなのだわ……」


 その言葉を聞いて、あぁやっぱりフェミリス家って有名なんだ、もう自分の顔は出回ってるんだなって小さくため息を漏らす。

 女の体になってまだ数週間だというのに、噂が広まるのは早いもんだ。


 それと同時に母親の笑っている顔が浮かんだ。噂を広めたのは絶対彼女だと確信する。

 母親ルートからでしか、ハルの見た目がバレるリスクはないからだ。


 ありがとうクソババア。おかげで前途多難な学園生活が始まったよと、心の中でお祈り申し上げた。


「……んで、あんた誰?」


 その一言で、周りの生徒たちのざわめきが大きくなった。信じられないとでもいうような目をぶつけられる。

 あぁ、多分有名な子なんだろうなと思いつつも、知らないから仕方ないとハルは割り切った。


「……失礼、自己紹介がまだだったのだわ」


 一方の彼女は極めて冷静に咳払いをして、佇まいを直す。目尻が一回ほどピクリと動いていたが、ハルは見なかったことにした。


「グレース・ローレンブルク……と言えばわかるのだわ?」

「……知らない」


 言われ、グレースと名乗った少女は思いっきりよろける。信じられないという顔でこちらを見ていた。


「ロミア知ってる?」

「私も知らない」


 さらに二コンボ目を食らって、まるで桶が頭に落ちてきたかのように彼女はガクリと頭を落とす。

 

 周りのざわめきがより一層増す。自分でも失礼なことをしている自覚はあるのだが、知らないものは知らないのだから仕方ない。


「……お嬢様、ここは私が」


 そんなハルたちの間に入ってくるように、一人の女性が立つ。背筋を伸ばし、赤茶色の制服の上に軽装鎧をつけた格好。白い手袋を着用した銀色短髪の女性だ。

 何より目立つのは、彼女の長く尖った耳だった。エルフと呼ばれる種族と特徴が一致している。


 彼女は髪と同色の切れ長の瞳でハルを睨みつけて、指を差した。


「いくらフェミリス家といえど、ローレンブルク家を侮辱するのは許さん」


 決して侮辱したわけではない。事実を述べただけなのだが……。女性の雰囲気から、弁明の余地はなさそうだった。

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