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仮17話 ぐだぐだ

内容は大してありませんが長くなっています。携帯でご覧の方はご注意下さい。前後編に分けるほどのものでもなく、まとめてしまっています。


「では、これからアツシの説教部屋を始めます」


「ヒィッ?!」



延々と続いた死亡フラグand死に際台詞集が終わったところで。

俺は今後のためにも魔神を正座させてお説教をすることにした。

客観的に考えてもこれが繰り返されるのはマズかろう。

微妙にズレてたから俺もつきあいでツッコミ続けた恨みなんてこもってませんとも。



「まずは、というか最大の説教ポイント。……俺に干渉しすぎだコノヤロウ」


すぱこーん!


はやくも身体の一部と化している気がするハリセンを一閃。

顔には当たらないよう、いい音がでるよう角度と速度をうまく調整できている。

そのうちツッコミで天下を取れるかもしれんな、うむ。


「あうぅ、ワタシヤロウじゃアリマセン……」


「ええい、だまらっしゃい」


俺は自由に生きたいのだ。

こうも魔神が顔だしてはおちおち寝られもしやしない。

可憐でグラマーな美人との出会いもどれだけ妨げられていることか。

まだ戦闘に参加してきてないから致命的ではないものの。

LVMAXか∞のキャラが駆け出し冒険者の戦闘手伝うとか邪魔にも程がある。

昨日は不覚にもじーんと来たけど、あれは特別だ。

ツンデレではない。断じて。


「だって、ダッテェ……」


「正当な理由があるなら聞いてやる。10文字以内で説明しろ」


できるもんならやってみろ。ふふん。

鼻息荒く胸をそらした俺に返ってきた言葉は――





「――お友達トいちゃダメデスカ?」



ぐはっ。


2文字オーバーだが二度目のクリティカルヒットを喰らった。


これまた潤んだ目で、伏せた顔から見上げられたら。



「え、と、友達?そういや、そうだったな……えーと」


「ソレとも……お友達トリ消しデスカ……」


「いや、それはないから!すまんかった!」



即土下座余裕でした。

しかしこのままでは不味い。

どう納得させたものかと頭をぐるんぐるん働かせる。

創造神として力をチラつかせられたら遠慮なくいけるのだが…

女の子っぽい仕草でやられると途端に防戦一方である。

悲しい男の性であった。



「だ、だけどな?こう、べったりするのも友達とは違う気がする、んだよ」


「ちがう、デスカ?」



どもる俺。首をきょとんと傾げる魔神。

いかん、状況は極めて不利だ。衛生兵ーっ!



「そう。ほら、べたり。ドロドロって、なんか違うだろ」


「ウーン」



何を言ってるのか俺にもわからん。

シルティ、助けて。

心で叫んでみたが集中できてないのか届いてる気配が無い。

うぐぐ。あの子とはいい友達だと言えるんだけどな……


「えーとだな。そう。シルティ。シルティとは俺べったりしてないだろ?」


「ソウ……デス?結構一緒にイルヨーナ……私邪魔モノにサレタヨウナ……」


魔神からずーんと黒いオーラが漂う。

いかんいかん、これはいかんぞ。

どうしたらいいんだ。さっぱり判らん。


「じゃ、邪魔ってことはねぇから。な?ただほら、その、神がずーっと一緒にいるってのはどうかと」


「ずっとジャなくテ毎日ちょこちょこっとデスヨゥ」


暖簾に腕押しぬかに釘とはこのことか。

魔神に説教という諺が今俺の辞書に新加入である。

いや違うな、抵抗がないというより俺の攻撃が全く効いてないというか。


「ぬ、ぬぬ、そ、そーゆー問題じゃなくてだ。その……これが犬や猫なら文句ないんだ」


「……犬や猫、デスカ?」


そう、シルティだって犬ならぬ狼だし。

これが猫なら毎日俺にじゃれついてても何の問題もないんだ。

寧ろご褒美です。

咄嗟に口をついて出た自分の言葉に考えさせられる。

犬猫じゃいいのにこいつじゃダメな理由……

じーっと見られているのでまたまた焦る。


「そ、そう。もしお前が犬や猫だったら遠慮なく遊んでいいんだぞ」


「ウーン………何故なんデショウ?」


わかりません。


とも言えず、必死に頭フル回転。

そろそろオーバーヒートしないだろうな。

今の俺のINTいくらだっけ。初期値も覚えてない。

そういや最初ここに来た時トレントに絡まれて酷かったな。

あれからも何度も巻き込まれてる。

ほとんどこいつが来て……



……ああ、わかった。



「……お前が、創造神だからだ」


「ふぇ?」


「神じゃなくて犬や猫、あるいは普通の人間ならこう文句も言わないだろな」


むさくるしい男が毎日絡んできたら殴り飛ばすけど。


「神サマとはお友達になれナイってことデショウカ……」


「ばーか」


ぽん、と頭に手を置いてやる。

一瞬びくりとしたがハリセンじゃないと判ってほっとしたようだ。



「…バカじゃないデスモン」


進化しそうなイントネーションはやめて欲しい。


「神でも別にいいんだけどよ。力、使いすぎだ」


「……?」


ぽかんとされた。判ってはいたけど全く無自覚か、こやつめ。ハハ。


「お前さ、なんだかんだと俺に何かしてきただろ。あれって顔みるたび殴られてるようなもんだ」


「え、エエッ?!」


「力のある創造神が多少チートもらったとはいえ一般人に悪戯だろ?猫が虫にじゃれついて殺すのと違いはねぇ」


少々オーバー気味だが言ってることは間違ってないはずだ。

やった本人にとっては遊びでも相手からみれば洒落で済まないなんて話はよくある。

からかいや悪戯、といった類のものはやる側が力加減を自覚してないと虐めでしかない。

猫の場合は闘争というか餌とる本能もあるだろうけどな。

他にうまい例がとっさに出るほど賢くもない。


「そ、ソンナァ………」


相当衝撃だったのか頭抱えている。

背を丸めて顔を覗き込むと唇は震えて、目尻には光るもの。

って、な、涙ァァァァッ?!


「い、いや!ちょっと言い過ぎたかもな!うん!」


やばい。チョーやばい。俺の人生で女の子泣かしたことなんて一度たりともない。

まずいぞまずいぞ。俺の声が怒鳴り声に近い大きさになるけど気にかける余裕はゼロ。


「でもアツシさん殺シカケタトカ」


「俺は元気!超元気!だ、だから、そこまで考えなくていいぞ、うんうん」


己の胸を左拳でゲシゲシ叩く。

断言しよう、俺の人生でダントツのベスト、いやワーストになるテンパリ具合だ。


「ウウ……」


魔神の目にも涙。じゃなくって。

ほんと、泣く5秒前という感じだ。

こういう時ラノベではどうしてたんだっけ思い出せ俺の脳味噌。

えーと、おとがいというか顎を手であげて唇……ってこれはちがーう!

後ろからそっと近づいて胸に……ってこれもちがーう!

なんでラブシーンだのエロシーンだのばかり思い浮かぶ。

俺は人生で何を学んできたんだ。

煩悩ばかりじゃないはずだ。……はず。


何十秒か何分か判らないが脳の神経が焼ききれそうな程過去を振り返った。



結果。


「と、とりあえずだ。神の力使わない分には全然構わないからな、な?」


ぎゅっ。


正面から恐る恐る抱きしめてしまいました。


いやだってアニメとかガーって思い出したけどみんな抱きしめてた気がするんだもん。

普段の俺ならヘタレて絶対できないけれど、テンパり具合が上回ったようで。

力強すぎないか、へんなとこ触らないか、いやいい匂いだ、って胸に当たる感触は…

なんかがぐるぐる回っていた。その辺りを後から考えても覚えていない。

体勢を考えると同じく正座して斜めから抱きしめたのかと思うのだが。

身体に感じる温もりが小刻みに震えていたのだけは判った。


「デモ……」


「デモもへっちゃくれもない」


「はふ………」


この時はよく覚えてないながらに、どうも頭を撫でていたようだ。

おぼろに手にしっとりとした感触が残っている。

なんとかしなきゃって気持ちだけが渦巻いていた。







それからどれくらい経っただろうか。

奇妙な沈黙がしばらく続いて。

俺は人生初シチュエーションにガチガチ。

頼まれてやるのと自分からやるのじゃ大違い。

魔神は……よく判らない。

後で話を聞く限りリラックスしていたようだ。

心地よくて時間停止かけそうになったとか。

いやそんな余裕あるならいつものノリで何か言えよ?!


ともあれ緊張と空白の時間が過ぎてゆき。

肩にかかる重みから聞こえる定期的な呼吸に気づいたのは部屋が真っ暗になってからだった。


「すぴー………すぴー………」


「寝てるんかいコラ」


ぱこっ。


「はうっ?!」


ハリセン一閃。

……といきたいところだがこの状況では片手で頭ハタくのが精一杯。

くっ、創造神ツッコミが泣いているぜ。

てか魔神の今の声、普通のイントネーションだったな。

演技疑惑を孕みつつ状況を整理。


「おはよう、お姫様」


「え、えーっと……オハヨウゴザイマス?」


俺に体重かけたまま耳元で囁くな。

なんというかくすぐったい、恥ずかしい。

ツンデレ属性なんてないんだからねっ。

……馬鹿らしいので一人漫才はこれで止めよう。


「とりあえずだ、離れろ」


「エーッ」


両肩をもち力をこめるとブーイング。

だから耳のすぐ傍で大声だすなっての。

抗議は無視して体をひきはがす。

力いれすぎると押し倒しそうなので非常に神経を使ったのは秘密だ。

真っ暗な部屋でそんなことになったらかなーりマズいことになる。


「俺はお前の抱き枕じゃねぇ」


「あうぅ、アツシさんオニですアクマデス><」


両腕に力をこめるとあっさりひっぺがせた。

あれだけ長い間肩に頭のってたら痺れそうなもんだが特に問題もなし。

てか離れたそばから部屋明るくなるとかどういうことよ。

無駄に創造神パワー使ってる気配がするが、まあいい。

それより顔文字を会話に混ぜるな。理解できるのがコワいだろう。


「ようやく落ち着ける……」


「ワタシ、もうアツシさんナシでは生きラレないカラダニ」


「やかましい」


「あうっ」


ぺちこんと額をハタいてやる。

若干威力が弱いのはけしからん想像をしたからじゃない、決して。

問題はここからだ。


「で、だ。創造神パワーを押さえるって話、理解したか?」


「ムムム」


「何がむむむだっ」


このツッコミ一度はやってみたかったんだよな。

ってそうじゃない。ごまかされんぞー!


「うー……ソウ言われましても、ナカナカ難しいモノなんデスよぅセンセー?」


「なんだとこの不良娘。仕方ない、カラダに理解させて――ハッ」


「モウ、センセーたらエッチなんダカラ」


いかんいかん、さっきからエロネタばかり浮かんでくる。

こやつは魔神、魔神……


「……オホン。難しいなら何か策を考えるしかないだろ。じゃなきゃ面会謝絶だ」


「そんなご無体ナー?!」


言葉の使い方間違ってる気がしてならないがさておき、どうしたものか。

俺のためには関わらない方がいい。のだが、あの顔見てそう言えない俺がいる。

我ながらチキンだと思う。しかし冷酷になりきれそうもない。

かといってこの状態が続くのもなぁ。

このワガママで気まぐれで妙に寂しがり屋の創造神サマに力使わせずじゃれさせてやる方法……


「そんな方法簡単に見つかるわけがないよな」


「そうそう、見つかるわけがないデス」


ちらりと見たら頭に犬ミミが揺れていた。


「お前のことだろがっ」


「ふにゃっ」


すぱこーん。うむ、ようやくいつもの切れ味である。

まったく人の気も知らずに唐突に動物の耳だしやがって。

シルティの真似か?どうせならウサミミにしろっての。

でも性格的に猫だな、間違いなく。

……うん、猫?


「……おまえさぁ、動物の姿になれちゃったりする?」


「オマエじゃなくチェルティって呼んでクダサイ。あ、変身なんてお茶の子サイサイですヨー?」


なんて言うとぽん、と煙みたいなのが弾けてシルティそっくりに変身しやがった。

スポットライト照明のサービスつきである。

腰が抜けそうになった。驚かせるんじゃねぇ。

知ってる姿で助かった……これが虎やライオンだったら心臓止まってたかもしれん。


「それじゃシルティだろうがっ。ほらこう、にゃーんと鳴いて可愛い動物とか」


「ワガママなセンセーデスネー。シルティとオソロイがいいノニー」


ぶつぶつ言いながら再度変化。こんどは美しい毛並みの白猫になった。

もふもふ!!

ただし巨大サイズ。座って170cmくらいの猫はちょっとコワイ。


「ちょっと大きすぎだろ。もっと小さく、可愛らしく」


「ぶーぶー。ワタシ、シルティのお姉サンなのデスヨー?」


「ほら、そう言わずに。小さければ抱っこしてやるからさ」


自分でもこの言い方はどうかと思った。猫撫で声を冷静に振り返ると気持ち悪いな。


「オオッ。ソレは捨て難いデスネ……よーし、可愛らしくなるニャンデス」


「正しい日本語はなりますニャン、な?」


ネコ真似言葉に正しいものがあるかは知らない。

そんなやりとりの間に3度目の変化。

子猫がやや育ったくらい、小脇に抱えられるくらいのお手ごろサイズ白猫が出現した。

毛並みは非常に美しい。ネコ観察歴12年の俺が見たことのないふさふさのモフモフ感。

顔立ちも整っていてキリッとした瞳、知性のある額から相当の美人さんである。


「モフ……」


「モフ?」


「モフ……モフモフさせてくれぇぇぇぇぇ」


「ひぃぃぃぃっ?!」


思わず飛びついてしまいました、ハイ。

創造神すげぇ、ってこの時初めて心の底から尊敬した。

世界を創る猫ってのは一味違うな、うむ。


「これはたまらんぜよ……」


「は、はう、アツシさん正気に戻るのデスー!」


両手でガッチリホールド、微妙に指でくすぐりつつ背中にゆっくり頬ずり。

温もりプラス震える感触とか声が伝わってくるが高揚感に包まれた俺の心には響かず。

こんな幸せがあるとは、死んで転生ってのも捨てたもんじゃないな。

シルティも勿論可愛いが、このサイズの可愛さは一味も二味も違うのだ。


「これが桃源郷か……!」


「あ、アツシさーん?!お代官サマー、仏サマー、ちょ、チョーっと落ち着きまショウ?」


「母さんごめん、オレこの世界で理想を見つけてしまったよ…!」


「アツシサーン!はぁ、ふう、も、モウ、アツシさんが悪いンデスからネー!」


「親父、俺はここでモフモフの王になる……!」


「エーと、ここをコウ……このくらいナラ……」


ぴりっ。すっかりモフモフ発狂モードに入った俺の全身に何かピリッとしたものが伝わった。

うん、と閉じてた瞳をあけて手の中を見つめてみれば。

なんだかビリビリとした光を全身から溢れさせている創造神ネコ様が。

どこかで見たことが。ああそう、シルティが丁度こんな感じで―――


「って、や、やべっ?!」


「ピカ、はチョット不味イのデ、バリバリバリなのデスー!!」


ばりばりばりばりばりばり!!!


「ギャーーーーー」


慌てて手を離そうとした俺だったが時既に遅し。

というか察知して全力で逃げてても逃げ切れたとは思えん。

ぶっとい雷光の筋が無数に部屋を走って俺を包み込んだ。

ああ、雷属性の最高級魔法ってこんな感じか……

遠くから見れば中の骨まで透けてたんじゃないかな、きっと。

当然俺の意識は吹っ飛んで―――いかなかった。


「まったくモウ」


「あわ、あわわわわわ」


全身がビリビリである。痺れる、なんて生易しいもんじゃない。


「反省してナサイなのデス」


「あわ、あわ」


口から泡吹いてないのが嘘みたいだ。これでどうして意識保ってられるのかと問いたい。

攻撃魔法というより拷問魔法でもあるんじゃないのか……


「ま、まァ、ちょっぴり気持ちよかったとか、頬すり幸せだっタなんてことはないんダカラネ」


「あわ、あわわ」


何かツンデレぽく魔神が言ってるが痛みでそれどころじゃない。


「……はぁ。ツンデレにはツッコミが必要なのデスネェ……」


「あ、あわあわ」


「仕方ないデス。独り漫才もナンデスし、ポチッと解除してあげるノデス。決して寂しいワケじゃないんダカラネッ」


「あわ、あわ……ふおっ?」


どうやったか知らないがネコの姿で指を鳴らす音。

同時に全身の痺れというか痛みが一瞬で消え去った。

ガクガク震えてたりジンジン傷んだりするのは後遺症か。


「サテ。アツシサン……反省してマス?」


「え?お、おう、勿論反省してる!してます!」


よく判らないが土下座していた。

男が白猫に額を床にこすりつけている姿はきっとシュールだろう。

身体を動かすとビリビリして、いたひ。


「ムー。そう言えばシルティちゃんにも同じ感じで怒られてまセンでシタ?」


ぎくり。


「あー、そ、そういうこともあったかな。ふかーく反省してます、ハイ」


「じーっ」


「もうチェルティさんにあんなことはしませんって!」


「フフン、コンナ状況で名前呼んでもらっても嬉しさ半減、いや十分の一なのデス」


いかん。どうもご機嫌とろうとすると常に失敗している気がする。

女と認めたくないが女心なんて理解できないって。どうする、アツシ……!



「いやほんとスマンかった!この通り!」


「フーン。そんなに反省してルナラ、何か誠意っての見せてもらいマショウカー?」


「へっ?い、いやそんなこと言われてもよ……」


ああ、世の中の浮気がバレてあたふたしてた男性諸君すまない。

心底バカにして蔑んでました。

しかし怒れる女性を前にした時の立場の無さっていったら、共感せずにはいられないね。

浮気は絶対ダメだけど、女性の怒りというポジションに対しては一定の理解を得るに至ったよ…

俺はなんて世間知らずだったんだ。反省。

え、浮気ダメなのにハーレムはいいのかって?

ハーレム許容できる女性探すから問題無いんだよ。

……ロマン乙って言うなよ、泣きそうになるから。


なんて世の男性に向けてアピールしていたら魔神が人の悪そうな笑みを浮かべていた。


「フフフ、そうデスネェ。反省の証とシテ、熱い燃え滾るようなキスをデスネ」


ぶふっ。


「だ、ダメに決まってるだろう!!!」


「いやホラ、今なら舌入れても構いませんカラ」


「そういう問題じゃねぇぇぇぇぇ!!」


舌……いかん、想像したら負けである。煩悩退散煩悩退散。

般若心経でも覚えておけばよかったと最近本気で思う。


「むー、流石に無理デシタカ……ソレじゃ、ほっぺたにチューで手を打ちマショウ」


「頬か……まあ、それくらいなら……」


唇よりはいっか…?と納得しかけたところで。

って、あれ、これ本で読んだ"最初に無理難題言って本命を通し易くする"テクじゃね?

ちょ、ちょっとストッ――


「ほっぺチュー許可いただきマシター!マシター!」


「ストーップ!!なし、今のナシ!」


「ダメです、言質とったのデス!」


「いや俺まだ言い切ってないから!」


ネコの姿で飛んだり跳ねたり転がったりする魔神。

それを何故か必死で追いかけて捕まえようとする俺。

当然ネコ魔神に叶うはずも無く、俺の体力が尽きるまで鬼ごっこは続いた。


「ハァ、ハァ、ゼェ、ゼェ……わ、わかった、頬キスはアリとしよう……」


「ふふーん。ワタシの勝ちなのデス。地球に魂をひかれたアツシさんとは違うのデス」


その台詞言うなら赤猫になってこい、ちくしょう。

だがまだ負けたわけじゃない。クク。

酸素不足でハイになってるんじゃないからな。


「た、ただーし!条件、が、ある。そのネコの姿なら、だ……!」


「え、エエーッ?!」


「ぜぇ、ぜぇ。ね、ネコになってるオマエ…チェルティの頬にチュー。これが、俺の、最大限の譲歩だ!」


ふっ、と笑みを浮かべて髪をかきあげてみる。

前提条件を詰めなかったのは迂闊だったな、魔神よ。


「う、ううっ、それじゃ意味がないのデス……」


「はぁ、はぁ。事実は事実になるからいいじゃないか、うん」


がっくり肩を落とすネコ。実際は項垂れてるだけだが。

可愛いネコにキスとかご褒美です。

いや綺麗な女性でもご褒美なんだけど、中身がコレじゃね……


「ムー。ワカりマシタ。ソレで手を打チまショウ。ササ、ココニサインヲ……」


「なになに……って空きスペース多すぎる契約書にサインなんてできるか!!」


すぱこーん!


ネコ姿のくせに器用に契約書をもって差し出すんじゃないよまったく。

瞬間的にハリセンを手の内に呼び出し完璧に頭へヒットさせる俺の手。

我ながらどうしてこうなったとついつい眺めてしまった。

戦闘まったくしてないのに無駄に創造神ツッコミだけLVアップしてそう。欝だ。


「はうぅ、口約束なんテ信用デキナイのです。オ爺様の遺言ナノデス」


「忘れたら口でもなんでもキスしてやるっての」


「言質イタダキマシター!!」


お爺様どこいったオイ。




そんなこんなで、わけのわからないやりとりを繰り返すうちに疲れて夢の世界へ。

なんとかベッドに潜り込んだら魔神ネコもついてきた。面倒なので放置。

今日も何にもしなかった気がする。というか俺の晩飯……



ともあれ、こうしてまた一日異世界での夜が過ぎていくのであった。


挨拶できなかったけれどお休み、シルティ。


イチャイチャ回じゃないと思いたいですね。

なお書きだめはここで終わりです。18はほぼ書き終わってますが、19以降はそれなりに先になると思います。楽しみにしてくださっている方はごゆっくりお待ち頂ければと。週1で進められればいいのですが……。


朝方、ランキング4位にまでなっていたようです。皆様に感謝を。感想などの返信は夜までお待ちください。

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