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仮16話 照れ隠し

きょうのてーま。ごはんはぎょうぎよくたべましょう。



「わかるよな?」


にっこり笑いかけると勢いよく首が縦に振られた。


「は、ハイ、わかりまシタのでご容赦クダサイ……」


魔神の額はすっかり赤くなっている。

サングラスはどこかに落っことしたようだ。

ハリセン何発いれたか覚えてないがこいつなら大丈夫。

取り戻した昼飯のシチューを味わって食べているところだ。


「わかればよろしい。……で、なんでまた来たというかあれはなんだよ」


視線の先には当然ながら例の旗。

隣のテーブルに置いてみたが人避け効果でもあるのか誰もその席に座らない。

こいつが絡むと勝手に結界みたいなの張られるんだろうな。


「トクニイミハアリマセン」


これぞ棒読みという台詞が返ってきた。

音が平坦すぎて宇宙人ぽくなってるぞ。

ある意味宇宙人なんだろうけど。

食べてる為ハリセンツッコミできないのが残念である。

ええい、とっとと食べ終えて尋問してやる。



――――


――――――


―――……




と、いうわけで。

とぼける魔神と俺の攻防ついでに得た情報をまとめよう。

面白いオチもなかったので詳細は省略だ。


・あの旗はなんでもない(超棒読み)

・情報収集しないとシャットアウト、って事実もない

・でもルート分岐はあるよ

・魔法については自分で試行錯誤してね


つまりは何にもわからなかった。

収穫ゼロとは言わんが。


……俺、怒っていいよな?



「さんざんお前の相手して情報それだけか……」


ぐったり疲れた俺はテーブルに突っ伏す。

途中でポッポーが2回鳴ったし、2時間はこうしてた計算だ。

いかに暇とはいえこれは。


「フッフーン、ワタシが何でも話すと思っタラ大間違いなのデス」


言い切る顔は子供みたいだ。てかガキそのもの。

我慢できないこともないが口からでた言葉は。


「はぁ。んじゃ、俺もう寝るわ」


「……エー?」


「雨でやることないし昼寝だ昼寝」


「チョ、チョーット待ってクダサイ。何か忘れてマセン?」


「何にも。別に関係ないんだろ?じゃな」


「ヤ、ヤーなのデスヨー?!」


急にあたふたする魔神。

俺も八つ当たりしているようで少し後ろめたい。

なんだこの、妙な苛立ちは。

ささくれる棘を隠しきれずに語尾が荒くなる。


「なら旗もって帰るか、旗しまって部屋へ来るか」


「ウェ?え、エート、ハイ」


答えになってないが手を振ると旗が消えた。

俺の後ろをついてくるからには部屋へ来るようだ。

もう旗は関係ないらしい。

なんだかよく判らない展開になった。





部屋へ戻る。2人ともベッドに腰を下ろすまで沈黙が続いた。

時折振り返るとぎこちない顔が見えもして。

こいつなりに緊張してるらしい。

俺も緊張している。でも何か理由が違う気もする。

ええい。


「言っておくがやましいことはしないからな?」


「エ、えーと、デスヨネー」


これまたしおらしい。

でも視線はあっちこっち彷徨っている。

顔は床に向けたまま、口はギュッと結ばれて。

その様子に心のもやが少しだけ軽くなったように思えた。


「で、だ。俺が何をいいたいか判るか?心を読むのは無しで」


「ヤー、ソノ、うーんと、ソレはデスネ……気孔の練習トカ?」


俺自身よく判ってないなんて言えやしない。

しかしその答えは苦しい、実に苦しいぞ。


「期待してなかったがそれはどうかと思う」


「うう、スミマセン……」


またシュンとする。

罪悪感が大きくなってきた。

俺もかなりカッコ悪いよな、これ。


「い、いや、そんなに謝らなくていいって」


「デモアツシサン怒ってマスシ……」


だからそんな顔で見上げないでくれ。

俺の女免疫の低さを舐めるなと。

いや女じゃなくて魔神だけど。

周りから理想主義フェミニスト呼ばわりされる程には女性に甘い俺。

女接点ゼロだけど友人のお婆さんやお母さんへの態度が異常だとか。

そんな俺が美女(仮)から泣きそうな表情で見られているのである。

お手上げであった。


「そりゃちょっとイラッときたけどよ。もういいから……」


「ハイ」


「とりあえず、だ。なんでまたすぐ俺んところ来たんだ?」


大きな疑問だった。

昨日の夜ああいうやり取りしたばかりである。

それが今日、雨とはいえまた顔をあわせる。

何か大事な理由でもあるのならまだいい。

しかしそれもなさそう。正直、干渉しすぎだろう。

旗が気になったがあっさり消したところどうでもいいらしいし。

かなり慌てつつ出した声が自分でも怪しむ猫なで声だったのは秘密。


「エ、エートデスネ。その、ナーンと言いマスカ」


あちらも声の調子がいつにもましておかしい。

大根役者2人が素っ頓狂な演技してると表現すればいいだろうか。

もちろん演技じゃなくて素だ。


「どうせ俺をからかいにでも来たんだろ?」


理由を考えて消去法で残るのが1つ。

来ることが目的、つまり遊びにということだ。

それにしては不自然な点も見えるが…

だとしたら俺は怒っても悪くない、よな。

そう、疲れた目を向けると。


「アー、ソウイウのもアリマスケド……」


妙に濁った反応。

おかしい、図星だったらもっと露骨な反応のはず。

俺が怒ってると思って誤魔化してる?

…違う。確信はもてないが、何か違和感。


「けど?」


「ウゥ……言っテモ怒りマセン?」


「……善処しよう」


「ソ、ソレは困るノデス」


魔神の顔をじっと見る。

美しい金色の髪、透き通った蒼の瞳。

伏せられる睫毛は長く、やや薄くも整った眉は寄せられ困惑を表している。

すらりとした鼻筋にふっくらとした薄桜色の唇。

ほんのり赤みのさした頬が震えるのはなんとも艶かしい。

やや細面ながらも十分に小さい顔、各パーツのバランスも絶妙。

ようするにすっげぇ美人。今まで考えないようにしてきたが、改めて見ると唸らされる。


ってこいつの美人度を実況中継してどうする。

いつもと随分表情違うから思わず見入ってしまうんだよな。

ツッコミもいれずにこう観察するのは初めてだし。

日頃との差分が凄まじすぎる。

くっ、静まれ俺の煩悩……ッ!




「はぁ……わかった。もう怒らないから言ってみろよ、ほれ」



煩悩とバトルしたら怒りがすっかり抜けてしまったなんて言えやしない。

人様はわからないが俺の感情ごとの戦力比は煩悩>>>怒りらしい。

男だから仕方ないよな、うん。


「うっ……絶対に、ゼーッタイニーデスヨ?」


「ああ。神に……ってお前か。シルティとの絆に誓って怒らない」



それにしても念をいれてくるな。

こいつの性格からして余程のことなんじゃなかろうか。

正確な強さは知らないが神様達が口ごたえ1つせず宴会芸するレベル。



……やばくね?

怒りより不安が急速に膨れ上がる。



そんな俺の表情を勘違いしたのか、慌てたように手を振って漏らしたその言葉は。




「あ、エート、デスネ、その……アツシサン、泣いてマシタカラ………」








――――………えっ?








「そ、ソノ、部屋カラ出されたアト、チョーットダケ覗イタノデスケド」




部屋から……ああ、風呂はいってのぼせてその後。



「ほ、ホラ、のぼせて溺れタリしたら危険デスシー?」



必死でドライつかって……寝転んで。



「そしタラ、アツシサン裸デ眼福……じゃナクッテデスネ、ソノ」



そうしたら、地球で俺の周りにいてくれた人達のことを思い出し。



「エ、えー、アツシサン……?」


またじんわりと目頭が熱くなった。

俺は無意識に拳を握り締め―――








すぱこーん!






何故か掌に収まってたハリセンで思いっきり叩いていた。




「な、なに人の裸みてんだよ!!」


「ううぅ、怒らナイって言っタじゃナイデスカー」


「怒ってない!!」


「怒っテルじゃナイデスかァァァ」





ぺちぺちすぱぺちすぱぺちぼぎどがこーん。






それからしばらく俺による無言のアタックが続いた。

時折ありえない音も聞こえたが気にしないでおこう。

これまた理屈はわからないが魔神の頭上にピヨピヨヒヨコが舞ったところで止めてやる。



「ピヨピヨ……サンズの川が見えマス、ああ、チェルティの冒険はここで終わってしまうのデス…」


「命拾いしたな、ふぅ」



ハリセンに息を吹きかけて腰に仕舞う。

ネタを言えるくらいなら大丈夫だろ。創造神だし。

てかここぞとばかりに瀕死ネタいれようと呟くの止めろよ。

そりゃこういう状況激レアだと思うけども。

言ってるうちに顔がにへらと緩んでるの丸見えなんだよ……



やや落ち着いたところで気持ちを整理。

……しようとするが、諦めた。

自身の感情をもてあますとは、俺もまだまだ子供だな。



でも確実に言えること。

俺は怒っていなかった。

じゃあ何の感情なの、と聞かれても困るけれど。

望郷か寂寥か、それとも喜悦。

ただ俺の頬に残る一筋の痕が語るのみ。

仮に第三者がこれを見たとすれば照れ隠しと表現したに違いない。

まあいい。誰も知ることは無いのだから。









「……死にそうなヤツは20分も喋り続けないと思うぞ」


「待ってクダサイ、今一度チャンスヲ……もう、ナニもこわくナイ」



その台詞は戦う前に言わなきゃだめだと思う。



グダグダしてます。必要と判断してますが、皆様のお眼鏡に適うかどうか。


とうとう日間ランキング5位に。逆に怖くなりますね。読んでくださった方には感謝しつつ、やはり合う合わないはあると思いますので。思い出にはなりました(笑)


お気に入り登録はとうとう1000件を超えました。いつも足を運んでいただき有難うございます。

書きだめもそろそろ尽きますので、月1更新くらいに戻りそうですが。


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