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第二話 「刺してはいけません」

 かかりつけの病院の看護師さんの採血が凄く上手だった、という話題で思い出しました。



 医師は、市中病院では、あまり注射や採血を行いません。医師よりも看護師の数が圧倒的に多く、患者さんの数も多いので、主治医に注射させていたのでは時間がいくらあっても足りないから、というのが主な理由です。

 医師法では、本来、患者さんの血管に針を刺す行為は、医師がしなければならない「医療行為」だということになっています。看護師の仕事は「看護」だから、「医師の指導の下」上記の行為が許可されている、という名目です。

 医師の数が多く、患者さまの数がそれほどでもない場合や、教育機関=大学病院などでは、医師自らが採血・注射を行っています。


 が……。


 はっきり言って、下手です。看護師さんよりは。(注1)


 学生時代、血液の成分を調べる名目で、同級生同士で採血を行うことがありました。ひどい有様でした。注射針を血管に刺して血液を採取しようとするところまではいいのですが、そも、針が血管に入っていなかったり、駆血帯(くけつたい)(注2)を外す前にうっかり針を抜いて、流血させたり……(冷汗)。

 医師も看護師も、国家資格(免許)をもらうまではタダの人、ですから、他人に針を刺したり切ったりしてはいけないのです(傷害罪になります)。ですから、同意に基づく上記のような実習以外、生身の人間で「練習」を行う機会はありません。


 研修医になってから、お互いに採血をして感覚をつかみます。


 私の二年上の先輩に、先端恐怖症(注3)の方がいました。針を見た途端、みるみるうちに真っ青になって震えだし、練習にならなかったそうです。結局、臨床医を諦め、公衆衛生関係の研究の道へ進まれました。


 ――先端恐怖症なのに、どうして医師になろうと思ったんだろう? 医師なら注射しなくてよいと思っていたのかなあ? と、後輩の間で、しばらく噂になっていました。

 ご本人に責任のあることではないので、気の毒ではありますがねえ。









(注1)はっきり言って、下手です。

 医師は注射が下手、という話ではありますが、小児科医のなかには、いわゆる「神の手」を持つ方がおられます。見えない細い血管をさぐりあて、成人用よりはるかに細い針を刺します……神技です。


 たまに、とんでもなく注射の上手い看護師さんがいますが、褒めると「(看護師側の)体調にもよるんですよ」とにっこり。か、カッコイイです……。


 ちなみに、小児とならんで注射が難しいのは高齢者です。血管が硬くなっていて、針を刺すと皮膚の下で(血管が)するっと逃げるんです……。やっと針が入ったと思ったら、血管壁がもろいので、注射液が漏れだします(涙)。

 ……そして、下手な医師は、患者さんに「ちっ」と舌打ちされて、すごすごと引き下がります orz


(注2)駆血帯(くけつたい)

 採血のとき、上腕をしめてうっ血させる、あのゴムです。血管に針を刺して採血をしたら、針を抜く前に駆血帯を外さないと、うっ血した針穴から血が溢れ出て、大変なことになります……。


(注3)先端恐怖症

 恐怖症の一種。ボールペンや鉛筆、針、ハサミやカッターナイフなど……尖ったものの先端を見ると「過剰な」恐怖を感じ、精神的動揺のために日常生活に支障をきたしてしまいます。

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