私、寝付き& 寝起き悪いよー。
午後は勉強。魔物の事とか、地理とか、歴史とか。常識として刷り込まれた事に、さらに踏み込んだ知識。
専門外の人にとってはうろ覚えな部分。学校な感じ?
今回は周辺地域の魔物の簡単な分布。
『フムフムわからん』だなー。
……って思ってたら。 『ピコン!』 何か来た。
〈【状態異常耐性】が発動しました。レジストしますか?〉
ステータスを出して『状態異常』の欄を見れば、『玄人戦士常識』と。
レジストは後にして詳細を文章にしてみれば、『無茶をしない。』だとか『慎重。』だとかいう当たり前の事。後は『××や**や……excはボス出現の前触れ。』だとか、『強敵を前に「やったか?」とは、決して口にしてはいけない。』だとか。
うん、一番最後のはおかしい。
……ま、皆は常識として刷り込まれたみたいだし、私は一応内容全部読んだからゴミポイで良いかな。
その後の授業は一応ちゃんと聞いて、はい終了!
まぁメモなんて取ってないけど。
で、その後は夕御飯食べてお風呂という名の浄化魔法かけて貰って(やっぱシャワー浴びないと綺麗になった気がしないなー。)髪を三編みにキツく結び直して(キツくするのは寝てるときにほどけたら嫌だし?)寝間着に着替えて(寝間着は支給品。ちなみに日中に着ていた服も支給品。召喚された時に着てたモフモフさんはお休み中。いつかまた着たいなー。)お布団に寝転がる。
―――――
―――
―
ゴロゴロー。寝れない。
正直、私夜行性だから。
起きていようと思えば、ある程度起きてられる。徹夜はした事無いけどね。
…………。
ウィンドウ機能に【時計】追加。《半透明のウィンドウに現時刻を表示。》使用、発動。
「2時……。」
一日は32時間。元世界の3時間がこっちの4時間になるのかー。
起きるべきは遅くても8時。6時間睡眠とか、私にとっては結構辛い。
――寝ないと……駄目。
ギュって。
私は目を瞑った。
----------
朝。
また、朝特有のバタバタした空気で目が覚めた。
――嫌。起きたくない。
目を瞑る。拒絶反応。
「ケホッ、ケホッ。」 咳が出た。少し苦しい。
――起きなきゃ駄目。
……迷惑は掛けられないから。
亀さんみたいに。
ノロノロと、体を起こす。
少しほどけかけの三編みをほどいて、また綺麗にキツく結び直す。
ベッドから降り、俯き気味に洗面所へ行って顔を洗い前髪を整える。
「ケホッ、ケホッ。」 まだ少し苦しい。
朝の、太陽が完全に登りきった時間が嫌い。大っ嫌い。気怠い。
――長くは持たない。
そんな気がした。
-----------
今日もまた午前中は訓練場へ。
但し、世良愛菜ちゃんはいないから今は6人。
世良愛菜ちゃんは近くの森へ、数人の似たような能力持ちさんと一緒に魔物のテイムをしに行った。
あ、たくさんの護衛騎士さん付きで。
で、残されたこっちは準備体操の後、魔ウサギ狩り。
今日は私も参戦するのです!
檻から解き放たれた魔ウサギさん、3匹。ピョコピョコこっちに来る。
大きさは高さ1mくらい?真っ赤な目がこっちを睨む。
時を同じくして、皆は動く。
片桐柊くんが【挑発】で敵意を引き付けて、中野さんと八重鈴夏ちゃんが詠唱を始め、糸川さんがメロディを奏で始める。
「光球!!」「黒雷!!」
当たってない……。
――むぅ。
【捕縛5秒】使えそうにないじゃん。皆は魔ウサギがうろちょろするのに慣れてるから、逆にビックリさせちゃう。
……出来るとしたら移動速度落とすくらいかな?
【移動速度低下(他人指定)】《指定した人の動きを鈍くする。》
魔ウサギ3匹指定。
【移動速度低下(他人指定)】使用、発動。
ついでに。……ってか、忘れてた。開始前に掛けとけば良かった。
パーティーの5人を指定。
【eco(他人指定)】【攻撃力UP(他人指定)】使用、発動。
魔ウサギさんの動きが遅くなったからかな?
すぐに黒雷1発×3で終わった。
次。魔ウサギ3匹。
指定して、【移動速度低下(他人指定)】使用、発動。
ズガーン(←黒雷)、ドーン(←光球)、ズガーン(スカッ)ドーン、ズガーン。
ん、見事。でも光球は倒すのに2発必要……?
八重鈴夏ちゃん指定。
【光属性攻撃力UP(他人指定)】【魔法攻撃力UP(他人指定)】使用、発動。
次の魔ウサギ、5匹。
指定、【移動速度低下(他人指定)】使用、発動。
ズカーン、ドーン(光球一発で倒れた♪)、ズカーン、ドーン、ドーン、って最後のは雷じゃなくて黒球?
黒球じゃ倒しきれなくて、片桐柊くんの方へ飛び掛かる最後の魔ウサギは、彼が槍で仕留めた。
「私、魔力切れ。」
『疲れた。』といった雰囲気で、中野さんが戦闘体勢を崩す。
……そりゃ、あれだけガンガン打ってればすぐに魔力切れるよね?
「私はまだ平気かな。」
「私も大丈夫です!」
「僕も平気だ。」
「俺も。」
みんなの視線が私に向けられる。
「(コクコク!)」
「よし!マキちゃんも大丈夫そうだし、続けるよ!真由美が抜けたから気を引き閉めて!」
…………?
「はい!」
「オーケー。」
「よし。」
『真由美』って誰?って思ってたら、雰囲気に置いていかれた!中野さんの下の名前なのかな?たぶんそうだろね。
周りの雰囲気がピリッてして、緊張する。
抜けた中野さんが後ろからこっちを見ていて、もっと緊張する。
騎士さんが檻の扉を開ける。
魔ウサギは3匹。
指定。【移動速度低下(他人指定)】使用、発動。
「光球!」ドーン、で一匹ダウン。
でもその間に、残り二匹が片桐柊くんに飛び掛かる。
しかし難無く盾で受け流されて、魔ウサギ達は地面を転がる。
そこへ高倉さんが片方の魔ウサギに近付き、手に持ったハンマーを振り下ろした。
『ギュ!!』
ぐぇ。って感じの声で鳴く魔ウサギ。でもまだ生きてるっぽい。
そこへドーン!って。
ハンマーで潰された魔ウサギ目掛けて、光の球が落ちてきた。それで魔ウサギは息絶えたっぽい。
「うぉ、っと。」
もう一匹の魔ウサギの方。
片桐柊くんがバランス崩してた。飛び掛かられて辛うじて受け流したけど、体勢崩れた的な?
魔ウサギは少し離れた場所から、すぐにもう一度飛び掛かろうと……あ、今飛んだ。
片桐柊くんは崩れた体勢のまま受けて、だから今度は上手く受け流せなくて?ガタッと膝を着く。
そこへ高倉さんがハンマーを振り下ろす……けど、察した魔ウサギが後ろに飛んで、逃がしちゃった。
3度目の【光球】ドーン。外れ。
三人からの攻撃が弛んで、魔ウサギにとってはチャンス。
だからこっち来るのかなぁ?って思ったけど、片桐柊くんが毎戦最初に掛けている【挑発】が効いているせいで?来なかったよ。良かったぁ。
でも代わりに魔ウサギは、片膝を着けたままの片桐柊くんの方へ。
「ぐっ……。」
片膝を着いたまま、辛うじて盾での押し合いに。
魔ウサギは全体重を乗せて、盾ごと片桐柊くんを潰そうとしてる。
高倉さんも八重鈴夏ちゃんも手を出さない。……あ、片桐柊くんに当たるかもしれないのか。なーる。
しばらく押し合いが続く。
でも、段々盾が押さえ込まれてる?――と。
「ちょっと貸して!」
バッと、手に持ってた杖が取られた。……糸川さんに。
いつの間にか音楽は止んでいた。糸川さんは魔ウサギに走って近づく。そして私の杖を突き出し、振り回す。
「しっしっ!!」
追い払うように。
糸川さんは、私の杖を魔ウサギに突き出す。
ビックリした魔ウサギは杖を凝視し、そしてじわじわと後退りしていく。
「光球!!」
完全に盾から退いた魔ウサギにぶつけられた【光球】。
最後の魔ウサギはようやく倒れた。
「はぁ。なんか疲れたー。」
「大変だったな。大丈夫か?柊くん。」
「……あ、はい。……あの、ありがとうございました。」
高倉さんに心配された片桐柊くんは、糸川さんにお礼を言う。
「いいの、いいのー。私にはあれくらいしか出来ないし。あ、マキちゃんも杖ありがとね。……でもなーんか疲れちゃったし、私達も休憩しよっかー。」
みんなが頷くのを確認した糸川さんは、日陰になっているベンチの方へ歩きだし、私達もそれに着いていった。