んっ、刺がツンって。
B2。雨エリアや水晶エリア、月の見える丘エリア等はそのままに、農業エリアと広めの草原を追加。そこに、回収した倉庫やプレハブ料理教室等を再設置。
農業エリアなのだから!木に実るものは何でも良いじゃない!まだスペースはあるんだから!と、あれもこれも欲張ったら、多すぎて森になっちゃったんだけど……。ま、いっか。テヘペロ♪
B4には、おーちを設置。
それと秘密の地下エリアこと、サキ達スペア達のお部屋もこっちに移動してきた。
だってここは、私のプライベートスペースなの。入ってきちゃ、やだ。
特にあのアサガオは、絶対ダーメ。中に入られたら困るもーん。
だから、B4を囲う様に周囲の地中にはお塩の壁をグルリと設置しておいた。根っこ1本たりとも、侵入しちゃ嫌なのでっす!
……とまぁ、こんなもんかな?
農産物以外は全部、移動しただけだしねぇ?大改装と言いつつ、サックリ終わっちゃった。
さぁーてと、これから何しよっかなー?
「マスター。少々よろしいですか?」
B2で焼き鳥を調達してそのままフラフラ食べ歩きしていると、目の前にスッとイズミちゃんが現れた。
「なーぁに?」
「至急、上階に来ていただけませんか?ネロさん曰く、今すぐに!だそうですが。」
「ふぅん。なんだろーね?」
焼き鳥さんはパクッと食べて証拠隠滅。
奴に欲しいって言われても、絶対あげないんだもん!
さーてと。用事は何かなー??
にしても、相変わらずイズミちゃんは背筋もピシーっとしてて、健気可愛いや。
ふふ~♪
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『さっきいきなり、これがそこに降ってきたんだが。』
B1に着くなり開口一番。そう言うネロから渡された物を、私は見る。
むー??
「……タオル?」
『しかも、この世界の物じゃねーぞ?』
少し泥で汚れてはいるもののフカフカと触り心地は良く、微かに良い香りがする。
広げてみれば、端に付いたタグに名前を見つけた。
“結城早苗”と。
……なんかさ、日本っぽい名前だねぇ?
「異世界から飛んできたの?」
『いや。……鑑定したらな、この世界の住人の持ち物らしいぞ。何やら勇者とかいう奴の……。』
……“勇者”かぁ。
『なんだ?嫌そうだな。そいつの事、嫌いなのか??』
「ううん、知らない。」
っていうか覚えてない。
とはいえ勇者組は全員、【マップ】にデータベースがあるんだよねぇ。……と思って検索かけてみれば。あぁ、うん、居た。思い出した。
結城早苗。能力は“巫女”の、あのエンジョイ勢さんだ。
何かこう全体的に大雑把で、回復系なのに『唾付けときゃ治るっしょー。』って、巫女のような淑やかさ~みたいなのとは縁遠い人だったような気がする。
「……で、何ー?持ち主さんに返せば良いの?」
『あぁ、それが良いだろ。……って、そんな事出来るのか??』
「んー、たぶん?」
何か、出来る気がするー。何とかなるでしょー。
行き先はお城。もし持ち主さんの手元に届かずとも、誰かが拾って届けてくれればいいな、と。
無事、持ち主さんの所に戻りますよーに、って感じで【テレポート】
ギュッと目を瞑れば、手元にあったタオルはポンと消えていた。
『おっ?おっ?おっ?今何したんだ、お前?』
「んー?テレポート?……こう、お城までピューっと。」
『どうやってだ?』
「う?だから、こう、ギュッとしてピューっと?」
『いやいやいやいや……。』
むー?何なんだろう。
正直、感覚でやってるからこれ以上説明の仕様が無い。
『おいおい。なんだ、その理解出来ない俺を憐れむような顔は。』
えっ?あっ、むぅ。してない、してない。そこまでは思ってない。
何故か頬っぺたが、そう勝手になっちゃうだけなのぅ。ぷぅ。
「……ますた。」
その時、突如私に向かって飛び込んでくる灰色の影。
彼女はギュッと私にしがみついたかと思えば、アサガオの方をキッと振り返る。
「ますたをいじめるのは許さない。」
『だからいじめてねーつうの。』
「う!!」
抗議するみたいなコズエちゃんの『う!!』がメチャ可愛い。萌え。
『コズエ……、それにイズミも、さっきまでと態度が違いすぎねーか?お前らさっきまで、あんなお通夜みたいな空気出してたじゃねーか。』
「……うにゃ??」
「ネロさん!!」
「うー!!」
『あー、こいつらな?お前がここ数日家に閉じ籠ってる間、俺のとこ来て、暗い顔したままずーーーっと居座ってやがったんだよ。どっか行け!っつっても、動こうとしねーんだ。……全く、お陰で酒が不味いったらありゃしねぇ。』
――……みっ。
『……つーかお前もお前で、あの時、何があったか聞いても何も言わねーで逃げてくし。……あぁ、まぁアレだ。あんまこいつらに心配かけんなよ?こいつらはお前命!なんだからよ。』
……はぅあぅ。
あー、うー、えーっとさ?
――あの時からしばらく、おーちから出なかった事、出る気分になれなくて閉じ籠もった状態になってた事は認める。うん。
でもさ……。あっとさ、えっとさ。
「ねぇ。……し、心配、しちゃった?」
「……ますた?」
あぅぅ。
何て言うか、何て言うかさ。
「マスター?」
「ますた……。」
「あ、えと……用事思い出しちゃった、かも。じゃあね!」
―
―――
そんな事言って、またテレポートで逃げちゃう私はやっぱり駄目駄目で。最低で。
でも、怖いんだ。駄目なんだ。
……他者に心配される、ってのが、私は、結構、かなり、どうにも、苦手なんだ。
それはとても貴重な事で、有り難い事なんだろう、けど。……駄目なんだ。
ねぇ。
なんかもう、なんかもう……。
痛いのとか、苦しいのとか。
怖いのとか、怯えちゃうのとか。全部。
感情とか、表情とか。
そういうの、全部。全部。
――無くなっちゃえば良いのに、な。
ガラケーからスマホに機種変更後、初の投稿です。
スマホは、アプリという名の誘惑が多いですね……。