んっ、侵入者だよ。
《【F1洞穴エリア】にて侵入者を感知しました》
《所持エリアに危害を加える可能性大と判断します》
点滅を繰り返す、赤いウインドウ。
恐る恐るマップを開いてみれば、確かに洞穴には緑色の点が2つ。
2人はずんずんと、奥へ奥へと進んで来る。
――一体、こんな場所に何しに来たの?
一応、洞穴は解放してる。
通りがかった人が雨宿りしたって良いし、ちょっと休憩するのも良いよぉ~、なんて。
……でも実は、今までに入ってきた生き物はいなかったり?むーん。
なのに、初めての来訪者が危険大って、一体どういう事かな?
――様子を見に行かなきゃ、コッソリと。
怖い。メッチャ怖い。
でも、何も分からない方が怖い。何をするのか分からない危険人物を、放置するのが怖い。
……でもあの人達が私の世界を壊すのならば、私、頑張って抵抗するよ?
久しく付けていなかった、【空気化】と【気配遮断】をセットして。
リュックに仕舞ったままだった、赤石の杖を準備。
幾つかのスキルも準備完了。
……後は良いかな、大丈夫かな?忘れ物はない?
まぁ、いいや。きっとなんとかなる!たぶん!
さて。
出入り口であるマンホールから直接洞穴へは出られない。だって、パコッと開けてる所を見られたら嫌だもん。一発アウトじゃん。
だから【テレポート】しよう?
場所は、うーん……洞穴の突き当たりで良いかな。
【テレポート】っと。
----------
「この辺のハズなんだがな……。」
「えー。本当ですか?何も無いですよー?」
フワフワとした浮遊感が一変、ズンと重力が体に掛かる。
瞳を開けば大剣を背負った大きな男性と、大きなリュックを背負う小柄な男性が、こちらへ近付いてくるのが見えた。
……うん。なんか直視されてるみたいで怖い。気配遮断のお陰で気付かれていないみたいだと理解はしてるけど、でも怖い。
そろーり、そろーりと私は側面の壁へと移動した。
「ほら、もう突き当たりですよ?何も無いじゃないですか。」
「うーむ。」
小柄な男性は突き当たりの壁をペタペタ。
唸る大剣の男性はその場をうろうろ。
……うん。これ、移動して良かったぁ。
見えないだけで存在はしてるから、接触されたら絶対にバレちゃう。
「うーん。隠し扉も無さそうですね。」
「……む?おい、ここは?」
大剣さんが立ち止まり、足をトントン鳴らして地面を示す。…………ひぇ。マンホールじゃん。そこ、出入り口のマンホールなんだよぅ。うぅ。
「どれどれー?……んん?」
地面に擬態したマンホールとその周辺をペタペタしていた小柄さんは怪訝そうな顔になる。
「お?どうした!」
「いや、なんていうか。ここから真っ直ぐ下に、円柱状の空間が続いてるんですよ。で、ある程度下に行くと、そこからドーンと空間が広くなっているんですよねぇ。かなり下の方まで広めの空間が続いてるっぽいんですけど、俺の測定距離じゃこれが限界です。」
「ふぅん。」
報告を聞く大剣さんは、腕を組み思案気な顔。
「あのぅ。思うにこれ、ダンジョンじゃないですかね?……っていうのも、円柱状の空間はここの真下にあるんですけど、そこまでの距離がここから5cmも無いくらいなんですよねぇ。」
「この部分はダンジョンの天井の一部ってか?だから崩れない、と。」
「……違いますかね?」
大剣さんの顔色を窺う小柄さんは、どうやら自信無さげ。
「ふぅむ。……掘ってみるか?」
「は?」
「掘ってみりゃ、分かるだろ。中にモンスターがウジャウジャいればそこはダンジョンだし、居なきゃただの地下空間だ。その空間まで5cmも無いと言ったよな?ダンジョンの壁とはいえ、アレを使えば掘るのは楽勝d――」
その時、洞穴内の奥から外へ、物凄い強風がビュゥゥゥーと駆け抜けた。
強風は数十秒ほど続き、その間男性2人は強風に耐える様に姿勢を低くし、地面に出ている岩を掴んでいた。
―――
―
「すごい風でしたねぇ。」
「あぁ。」
風が止むと二人は立ち上がり、乱れた着衣を整える。
「……で、本当に掘るんですか?」
「お前、冗談と本気の区別もつかないのか?掘りたいなら勝手に掘れ。俺は帰るぞ?」
「え?あ?」
「……お前。この下の空洞に魔物がウジャウジャいると思うか?いねーよ。ここは空っぽ。何の気配も無い。見事にハズレだ。って訳で、俺は帰る。」
「へぇ……。って、あれ!?本当に帰るんですか!?1ヶ月以上かけて来たのに、これでおしまい?えぇー……。って、待ってくださいよぅ。せめて、美味しいもの食べながらゆっくり帰りましょう?ね?」
「一日でも早く帰る。」
「えぇー……。」
そんな話し声は次第に遠ざかり、やがて洞穴の中は静かになった。
……みゅー。
怖い。




