表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/73

んっ、いつの間にかカビだらけだよ。


『なぁ。そんな所で寝てると風邪引くぞ?』


「!?」


雨エリア。

ボケーっと、寝転んでぐしょ濡れになっている時。

突然掛けられたおっさん声に、心臓が跳ねた。


……あぁ、でも。

今は、反応を返す為に感情を動かす事すら億劫だ。

テンションが上がらない。

面倒になって、私はソッと目を瞑る。


『あっ、おい!寝るな寝るな!』


うーん、喧しい。


「……あそこだけ、雨の代わりに塩でも降ればいいのに。」


思わず、ポツリと呟いていた。


『ハッ!?ちょ、やめ……ぐぁっ……。』


次の瞬間。ネロの悲鳴が、ドサドサドサ!という大きな音にかき消される。

ビックリして体を起こせば、部屋の一角に白い砂の山が出来ていた。

慌てた私がちちんぷいと砂山を消せば、重さに押し潰されたのか干からびたアサガオがグッタリと横たわっている。



「……ま、いっか。」


生え方?みたいなものが微妙にいつもと違う様な気がした。たぶん、分身か何かなんじゃないかな?って。

それならばきっと、本体はあっちに残ってる。

それに植物は動けない。

……なら良いか。放っとけば。


今朝おーちを出た時珍しく、声掛けてこないなーとは思った。

見れば一部でろでろは残りつつも辛うじて生えてる花は萎んでたから、寝てるんだと思ってた。

もしや分身を操作してた可能性??……迷惑な。

でもまぁ潰したし、まぁいっか。


それよりもさー。

……うーん、何て言うか。……こう。

むーん。



----------



秘密の地下エリア。

アキやサキが寝てる部屋。

その部屋の扉を開けた瞬間に、その声は飛んできた。


『おぅ。さっきはよくも塩漬けにしてくれたなぁ。』


ひぇっ!?

悪寒と共に、心臓が跳ねた。



『……にしても、この部屋は何だぁ?何の部屋だ?』


――駄目。ここだけは駄目っ。

何でここにいるの?

止めて。入って来ないで。



『お?何だ、この子。可愛いじゃん。』


――!?

みゅ。



『にしても一体誰だ?何で寝てるんだ?』


……止めて。出てって。入って来ないで。

この部屋から消え失せて。


『って、あ?なんだこりゃ?え?あ、ちょ、ヤメ――』


ん?

シュルシュル、スポン!って、何かが吸い込まれた様な音が聞こえた気がした。

……よく分からないけど、まぁ良いや。

室内は静かになった。


でもまぁ。

作業する気で来たんだけど、やる気失っちゃった。なーん。


――よし、おーちに帰るか。

でも、おーちの前にはネロが植わっている。今は何となく、会いたくない。

萎んでるとしても、怖い。


……ん、そうだ。

あの、いつの間にか出来ていたスキル【テレポート】を使おうっと。

作った覚えは無い。でも、心当たりはある。

いつぞやにお城に行った帰り。怖くなってピューって帰ってきた時。あの時に出来たんじゃないかなー?って。分かんないけど。

スキルが自然と出来るなんて。……不思議だねぇ?


さて、【テレポート】っと。



『うぉう!何だよ、セツ。いきなり現れやがって。』


テレポート先に指定したおーちのリビングには、床を突き抜けてアサガオがニョッキリ生えていた。


『待て待て待て待て。追い出すのは後にしてくれ。ここは話を聞くのが先だろう?』


知らない。

ポィッ、なの。

ほら、今すぐポィッ、なの。


『そんな、今すぐ追い出したそうな瞳で俺を見るな。まぁほら、とりあえず座れ。そこのソファに。な?』


む。

言われた通りにするのは、なんか嫌だ。

……でも何か話があるのならば、取り敢えず私は聞く派だったり。

ジリジリと後退る私は、部屋の角っこに着くとストンと床に座った。

あ、角っこ落ち着く。



『オイ、何でそこなんだよ。そこじゃお前の姿が見えねぇじゃねぇか。』


ん?

見えなくて良いんじゃないかな?

ネロが生えているのは窓際の部屋の角。私は入り口側の部屋の角に座っていて、ちょうどネロとは対角の位置になる。

間にはちゃぶ台とかソファとかあって、確かにお互い姿が見えない。

……でもさ、話を聞くだけなら声が聞こえる場所に居れば、それで良いんじゃないのかなー?

――と思っていたら。



『……よぃせっ、と。よう!セツ。』


机やソファ等の障害物を乗り越え、アサガオの花がひょっこりと顔を覗かせた。


「…………。」


『オィオィ〜、そう睨むなよぉ〜。』


――別に、睨んではない。ただ単に、むぅ、なだけだ。



『まぁ良いか。確かに警戒するのは当然だ。まずはその辺の説明からか。』


うんうん、説明ヨロシク。


『あー。端的に言えば、()ットワークだな。』


ネットワーク?


『あー、“ネット”じゃなくて“根ット”な?』


聞き間違いかな?

私には違いがわからないや。

――と思っていたら、ネロは自身のツルを使い、根っこの“根”という字を空に描いて見せた。


ふむ、根ットワークね。

……ネット、根ット。うくく(笑)



『お前にドロドロにされて数日。酒も無く、起き上がる気力もない俺は、試しに足を伸ばしてみた訳よ。あー、根っこな?……そしたら伸びる伸びる。四方八方にグングン伸びる。だがそのうち、根っこの感覚が鋭くなったのか、不思議と近くにあるものが分かるようになってきたもんで、ならば当然、よし、チョイと覗いてみようぜと、あっちこっちに顔を出してみる訳よ。そうして辿り着いたのが、雨の降る部屋や、あの病室っぽい所だったり、今居るココだったりする訳だ。解ったか?』


うん、何となく分かった。

つまりネロも、泥沼みたいなエリア侵食系か。ふぅむ。


『……不味かったか?』


「ん?」


『勝手にあちこち見たのは、正直悪いと思っている。すまなかった。』


「ん……。」


――うー。なんか、返答に困る。

素直に謝られると、何て返せばいいか分からない。

むーん。



『あー、いや、だから……。ああ、もう!本当、俺が悪かった。悪かったから!な?だからそんな、泣きそうな顔するなよ、もう……。』


むー?

私は単に、困惑しているだけで……。

今は涙なんて、一滴も出ないと思う、よ?

表情を作るのが下手っぴな自分の頬っぺたをムニムニー。


――うん。でもまぁ、アレよね。

私のプライベートスペースに入ってくるってのは、気に食わない。

さっさと出ていくのです。

じゃなきゃ、追い出します。ポィッなのです。

ぬー。ふしゃー!




「おじさーん!ねぇ、おじさーん!」


その時。

唐突に響く声。……外、かな?


「ねぇ、おじさん。一緒に泥団子作ろー?ねーぇー!起ーきーてー!」


『……アホタルの野郎。だから俺は、おじさんじゃねぇっつーの!!……って訳でセツ、俺ちょっと行ってくr……セツ?』


「……ねぇ。ホタルちゃん、だよ?」


『えっ!あっ?』


「ホタルちゃん、だよ?」


『ホタルな、ホタル。うん、そうだな!あー、俺はこれで!じゃ!』


そう言って、ネロはシュルシュルっと床下へ引っ込んだかと思えば程良い長さで直立し、青紫の花を閉じた。

むーぅ。分身置いて逃げた。

……うん。まぁでも、『アホタル』だなんて上手いなぁ。呼ぶのは駄目だけど。



「ねぇ、おじさーん!」


『あぁ?うるせぇよ、アホタル!ちょっとは大人しくしろ!』


「うー!アホじゃないもん!ネロのバカー!ハゲー!」


外から聞こえてくる会話に、私は決める。

――うん、やっぱ処刑。

ホタルちゃんを苛めるとか許さない。

はい、【クリエイト】っと。


『いや、俺禿げてねぇし。フッサフサだぞぅぎゃあああ!?』


ふふふ~。

リビングで直立して寝ている分身アサガオに、特別お塩、バージョン2を掛けてあげたの。

外からは喜びの叫びが聞こえてきて、私は嬉しい。


『おぃ、セツ!テメェ何して、ってありゃ!?…………あー、もしもしセツさんや。そこに居るよな?聞こえてるよな?ちょいと聞きたいんだが、お前の家に置いていった分枝にアクセスできないんだ。理由を知っているか?』


――うん、知ってるよ!

溶かしたった!

お塩、バージョン2!

こう、掛かった所から侵食していってシュワーッと消すの!カビ洗剤みたいな?

後に残ったのは、床に空いた丸い穴だけ。それも埋め埋めっと。



『オイ、セツ!何か言え!聞いているんだろう?』


「おじさん、うるさい。マスタぁーは忙しいの。早くお水出ーしーてー。」


『へーへー。』



“おじさん”かぁー。

おじさん、おじさん。……うくく(笑)


うむ、さぁてと。

……やろーっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ