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んっ、自業自得なんだよ?


『おー、セツ。』


作業の休憩がてらお散歩でもしようと家から出ると、アル中アサガオことネロに呼ばれた。見れば、今日も変わらず呑んでるらしい。手元には、昨日あげた酒瓶と……うーん?


「あれ、枝豆?」


『おぅ。黄色のアホに頼んで持ってきてもらったわ。』


「ふーん。」


黄色のアホ……たぶんホタルちゃんなんだろうなーと。いやまぁ、枝豆は別に良いんだよ?良いんだけど。


「んー。」


『何だぁ?勝手に枝豆パクった事、怒ってるのか?』


「ううん。」


そうじゃない。

そうじゃなくて。

……なんか。


「ホタルちゃん、だよ?」


『あ?あの、黄色アホの事か?』


「ホタルちゃん、だよ?」


『ん?あぁ。ホタル、か。』


「うん、そう。ホタルちゃん。」


ん、よしっと!

……念の為、全員確認しておこうかな?



「ねぇ、ピンクの髪色の子、名前分かる?」


『モモ、か?当たり前だろ。』


「緑色の子は?」


『ストーカー娘。』


む?何、ストーカーって。

まぁ、良いか。


「シノブちゃん、だよ?」


『あー、ハイハイ。シノブな?シノブ。』


なんか、嫌々な雰囲気。

むーっ。


「じゃあ、灰色のポンヤリした子は?」


『枕。』


「アホぅ。」


『!?……あー。コズエ、だったか?』


「うん、そうだよー。じゃあ、水色ちゃんは?」


『鬼畜眼鏡。』


「……赤色ちゃんは?」


『仕事馬鹿。』


「…………。」


むぅ。

そういう呼び方するのは……。

何て言うか……。何て言うか……。



「処刑。」


「御意。」

「承知しました。」

「はいなのですぅ!」


……へ?

お返事、返って来ちゃった?

ってボンヤリしてる間に、どこからともなく現れたシノブちゃん、イズミちゃん、モモちゃんの3人がネロを取り囲んでいた。



「マスターがおこなのです。だったらモモも、おこなのです。マスターに意地悪言っちゃ、駄目なのですよ。」

「我が姉妹達への侮辱、許しません。」

「滅っ!」


『はっ?いや、ちょい待て、ちょい待て!よく分かんねーが悪かったって!だから3人かがりで来るのはヤメロ!つーか、モモまで参戦するな!その手に持ってるもんは何だ?マジで洒落になんねーぞ。』


モモちゃんの持ってるもの?と思って見てみれば、彼女の手元には中身の液体が七色に光る、三角フラスコ。


「安心するのですよ。これはモモ特製、とっておきの栄養剤なのですぅ。」


『いやいや、ヤメロ!マジで!』


「ふんっ。どうせお前は、この場所から逃げられない。精々苦しめ。」


ふぉう!とっても悪役っぽい!

いつの間にかネロの花元にハサミを突き付けているシノブちゃんの発言に、私のテンションはブワッと上がった。


「私も、微力ながらお手伝いいたします。」


そう言って、ツルを押さえるイズミちゃん、健気可愛い。


「はい、悪い子にはお薬なのですぅ。」


じょぼぼぼ……と三角フラスコは傾けられ、アサガオからはシュワシュワと煙が上がる。



『ぐぁぁっ……。』


「はい、じゃあみんな、解散なのです。お疲れ様です~。」


「はい、お疲れ様でした。」


「さらば。」


3人は各々散っていった。結局何だったんだろ?って感じ。

まぁ、良いか。



「じぃー。」


これ、生きてるのかな?

枯れた黄緑色に変色し、クタンと萎れたアサガオ。

でろでろに腐ってそうな感じで、直接手で触りたくはない。棒があるなら突っついてはみたいけど。なんか糸引きそう。



『……痛っつぅ。』


ひぇ……。

でろでろな沼の中から、謎の物体がムクリと体を起こした。


『……はぁ、全く。毎度毎度、遠慮なくボッコボコにしてくれやがって。』


ニョキニョキと立ち上がった1本のツルから蕾が伸び、ツンっと上を向いたかと思えばパッと青紫の花が開いた。


「……生き、てた?」


『死にかけたわ!お前のせいでな!』


そう言って、ネロは酒瓶を取り、傾ける。



「みゅーん……。」


何で、私のせい?

しょぼりんぬ。


『んあ?意味不明って顔だな?何だ、気付いてないのか。』


「みぃー?」


不穏な雰囲気に上手い相槌を考える余裕すらなくて、どうにも語彙力が無くなる。


『……お前さぁー、すげぇ愛されてんだよ。』



「み、みょん??」


えっと?えっと?

何が?何が?へ?……愛、さ、れ?



『お前が怒れば、あのチビらは怒らせた奴を駆逐しに行くし、お前が傷付けば、傷つけた奴を滅ぼしに行くだろうぜ?……実際、お前さっき怒ってただろ。そうしたら見事、チビらが駆け付けてきたって訳だ。』


愛され……?愛されてなんか……。

だってだって、私が作ったんだよ?NPCなんだよ?

そ……それに、それに。


「怒ってはないよ?」


『鈍感かよ。』


「みゅ!」


『なんだ、それ?抗議のつもりか?俺には怒っていたように見えたんだが……。』


「むー。」


私は別に、怒っていた訳じゃない。むぅ、ってなってただけ。


でも。

“怒っていた。”……外からはそういう風に見えたのかなぁ?

感情……それに伴う表情とかって、かなり難しい。制御とか出来ない。



『……つーか、あのなぁ。もし俺の目の前で、自分の仲間達が貶されたりしていたら、俺は怒るぞ?相手をボッコボコに殴るぞ?……お前は違うのか?相手に何も言わず、水に流すのか?お前、それでもそいつらの仲間なのか?』


……仲間?

お人形さん達は、“仲間”と言えるのかな。

私、仲間とかよく分からないや……。

分からないけど、でも。


「じゃあ、ネロがでろでろなのは自業自得って事?」


今、自分でそう言っていたじゃん。

仲間が貶されたなら、相手をボッコボコにするって。

貶したのはネロだよ?

ならば、ボッコボコにされるのは当然だよね?


『ま、まぁ?そうとも言うのだろう。しかし、俺は思った事をそのまま言っただけだ!それの何が悪い!俺の言葉に怒り、「処刑。」だとか言ったのはお前だ!だから俺は、お前のせいで死にかけたんだ!……どうだ、分かったか?』


……んー?むむむ。

ごめん。よく、分からないや。

むーん?


『いやお前、そんな真剣な顔で考え込むなよ。軽い冗談だぞ。……分かった、分かった。俺が悪かった。俺が全部悪かったから。な?』


んー、んー。


「……だよね?」


『「だよね?」って、おまっ!!……はぁ~。』


気が抜けた様に、ピンと立っていたハズのツルはでろでろの中にベチョリと墜落した。


『……全く。こっち来てから録な目に合ってねぇぞ。そんなに俺が嫌いか?憎いか?俺はもうちょっと優しさが欲しいぞ〜。』


「んー?」


別に、嫌いじゃないよ?

見ていて面白いなぁ、とは思ってるけど。

でもこう、何て言うか……。


「……自業自得?」


『うっせ。』


あ。今の言い方、面白い。

何て言うか、こう……とっても良い。



『あー、もういい。セツ、そこの枝豆取ってくれ。ついでにサヤから出してくれても良いぞ。』


「うん、良いよー。」


……んー、あ。

面白い事思い付いた。

サヤから豆を押し出してー。


『……あー。塩はいらないからな?』


「んー、違うよぅ。はい、どうぞ。」


『いや、ちょ、おまっ!?中身をくれよ。』


「えー?」


サヤの方を差し出す私に、ネロから文句が飛んできた。

むぅ。


『もういい。カゴごと寄越せ。』


「あー、ハイハイ。」


よっこらせ、っと。

若干重いかな。いっぱい入ってるんだろうねー。


『なぁ。その、微妙に取れない位置に置くの、止めね?』


「やだ。」


『この、悪戯娘め。』


「ニヘへ~。」


『あー、褒めてねぇからな?』


「ふふふ~。」


今日も良きツッコミです。

やっぱりネロは面白いんだなー。


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