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んっ、泥沼で泳ごっ?


「マスタぁー。来てー!」


「へ?うわゎゎー!?」


私はまた、拉致られた。

今度はホタルちゃんに。



----------



「マスタぁー。デデーン、だよ!」


「……へ?あっ、うん。凄い、ね。」


青空の下、一面に広がる泥沼。

ホタルちゃんの個別エリアは案の定。

唯一扉の周辺にのみ、辛うじて芝生の生えた陸地がある。


「ねぇ!泳ご?」


……はい??



「うきゃー!」


バッシャーン。


周囲に飛び散る水飛沫……いや、泥飛沫。

幸い、私はお人形(アバター)だから汚れなかったけど。


周囲を囲む白い壁面にはポツポツと、まるで模様の様に茶色い泥の飛沫が飛んでいる。

近付いて見てみれば……おや?

表面がざらざらとした質感の石壁。そこには泥の水滴の他に、白く乾いた砂の様なものが楕円の形を保ったまま、ポツポツと付着している。――それはまるで、壁に跳ねた泥飛沫がそのまま乾いた様な。……だよね、きっと。

壁に付着し乾いた砂を、ササッと手で払ってみる。

――うん、綺麗になった。一部分だけ。

代わりに、手が汚れた。パンパン払えばあっさり落ちるけどさ。


一部分が綺麗になると、やっぱりそこだけ目立つなぁ。境界線が浮き彫りとなって、他がくすんで見える。白い壁とはいえ、色が全然違うね。



「マースタぁー!」


泥んこのホタルちゃんが泥沼から顔を出し、私を呼ぶ。

……うー。なんか楽しそう。ちょっとくらいなら、はしゃいでも良い、よね?ホタルちゃん以外、誰も居ないし。


ってワケで、まずは魔法で服装チェンジ。Tシャツとズボンという簡素で動きやすい服に。

……急だったからねー。何も準備してないんだよ。

んー、あ。腰の魔法ポーチは、一時的にアイテムインベントリにでも仕舞っときましょー。中身が落ちたりしないよう――いや、落ちないけど――念の為に。


さてっと。

たぶん準備OK。

ならば!まずはソロリと、泥沼の中に手を入れてみる。


むっ。冷たい。

ヒンヤリとした泥水。サラサラとした柔かい泥は、指の隙間から簡単にこぼれ落ちていく。

――触ってて心地良いな、この泥。

土の粒子が細かいのか、砂利の様なザラザラ感が一切ない。なんか、……片栗粉に水を入れたみたいな、そんな感じのサラサラ感。



「マスタぁー、マスタぁー!」


「うわゎゎ!?」


ジャボン、と。


泥沼内のホタルちゃんに突如腕を引かれ、バランスを崩した私は沼の中へズルッと滑り落ちた。



「キャハハワ!」


「……わー。ビックリした。」


あれ。なんか、すごい棒読みになった。

でも、それくらいビックリした。心臓跳ねたもん。



「……っていうか、なんか妙に深くない?」


地面に足、付かないんだけど。

っていうか、何で私浮けてるんだろ?泳げないのに。……ガリくて脂肪無いせいか、プールではスーって沈むんだもん。むぅ。水泳嫌い。



「イズミが、これ以上横に広げるな!って言うからー。でも、下になら広げて良いって言ったから!だから、泥んこいっぱいだよー?」


ふむ……。


念の為、私は自宅用マップを広げてみる。

上からの全体図を拡大、拡大。ホタルちゃんエリア、その地面付近を真横から映す。


……深い。かなり深い。そして、うん。微妙にアウト。

下へ下へ泥沼を拡張した結果、エリア範囲から大きくはみ出て、下階予定地の天井すらも泥沼に侵食されていた。


こんなの、下階掘った時大惨事じゃん!?

天井から泥沼が降ってくるわ、ホタルちゃんの泥沼はたぶん枯れるし。……今気付いて良かったー。



下方面へオーバーしているホタルちゃんの泥沼。うーむ。下階天井ギリギリ上のラインまでなら許してやろう。“地下”としてプレゼントしてやるっ。

という訳で、ホタルちゃんのエリアを拡張し、残りは普通の土に戻しておく。

但し、エリアの一番下面にはこれ以上下を泥沼にされない様に干渉不可ブロックを敷き詰めておきましょー。



「マスタぁー、マスタぁー!ゲームしよー?」


「んー?どんな?」


「あのねー、これをバーってして、たくさん拾った方が勝ちなのー。」


そう言って、カゴの中を見せるホタルちゃん。

中には、カラフルなオモチャの硝子片のような物がそれなりの量入っている。

……何ていうか、小さな女の子が箱いっぱいに集めそうな、安物の宝石っぽい物、みたいな。


「じゃあ、行っくよ。それー!」


急な掛け声と共に、ザァーっと撒かれて泥沼に沈んでいく宝石達。

それらを追いかけ、ホタルちゃんは泥沼の中へ沈んでいく。


……昔、やったなぁ。お宝拾い。

泥沼なんかじゃなくて、プールだけど。


っていうか、アレ?泥沼で泳ぐの自体がおかしい気がするなぁ。潜水なんてしたら、目を開けてはいられないよな……?いや、目に砂が入るどころか、眼球に直接ドロッと付いてる状態じゃん。痛いどころじゃ無さそうよね。まぁ私、アバターだから問題ないんだけど。


とか思いつつ、私も沼底へ向かって泳ぎ出す。

泥ということもあって動きは多少はモッタリしてるけど、わりと大丈夫そうかなぁ。


【暗視】と【透視】を併用し、視界は良好。

アバターだから息継ぎの必要もない。……この状態で息継ぎとかしたらどうなるんだろ。もし『水飲んじゃった!』とかやったらヤバイよなぁ。口の中、ジャリジャリだよぅ。



そうして沼底まで沈みきった私は、落ちている宝石を一つ手に取る。

うん、オモチャだ。とっても安物っぽい。


私は黙々と、オモチャの宝石を拾っていく。

途中、両手に持ちきれなくなったから小さな袋を作り、そこへポイポイと放り込んでいった。



沼底を隅々まで見、拾いこぼしが無いのを確認してから水面へと顔を出す。


するとそこには、この部屋唯一の芝生で正座するホタルちゃんと、それを見下ろすように仁王立ちになったイズミちゃんとシノブちゃんがいた。

頭の先から足の先まで泥にまみれたホタルちゃんは、この状況になってしばらく経つのか泥の水分が抜けて砂の彫刻と化し始めている。


「主!」

「マスター!」


「……マスタぁー?」


シノブちゃん、イズミちゃんに続き、少し遅れてホタルちゃんが振り向く。

その振り向いた勢いで、砂の彫刻の一部がポロポロと剥がれ落ちた。


「えーっと。……何、してるのかな?」


「マスターが泥沼に落とされたというので、作業を放り投げて駆けつけさせていただきました。長い事沈んでいた様ですが、ご無事でしょうか?」


「……えっ、あ、うん。何事も無い……けど。」


そういや私、隅々と見て廻ったのにホタルちゃんとは一度もかち合わなかったよなー、と思い出す。

長い事、こうしていたのかねぇ?


「……よっ、と。」


上方向に勢いをつけ、私は陸へと上がる。……沼の、このモッタリした感じは少々心地良いのだけど、私一人だけ泥沼に浸かったままってのは、やっぱりちょっぴり恥ずかしい。


でもなんかごめん。ただでさえ小さな陸が、4人もいるからとっても狭くなっちゃったわ。

沼に戻れば良いんだろうけど、私そんな意味不な行動をする勇気はありません……。うぅ。



「……あら?」


ふと、イズミちゃんが首を傾げる。

それと同じく、シノブちゃんも不思議そうな顔をしている。


「どーしたのー?」


ホタルちゃんは二人の疑問が分からず、これまた首を傾げている。

うん、私にも分からないや。


「あの……、ホタルはこの通り全身が泥だらけですが、なぜマスターは一切汚れていないのでしょうか?」


「んー?」


「わぁ!ホントだー!!すごーい!」


イズミちゃんの疑問に、ホタルちゃんが声を上げる。

……ねぇ。その『すごーい!』って何に対する『すごい』なんだろう。気付いたイズミちゃん?汚れてない私?……何となく気になる。


「んー。私は、汚れない様に加工してあるんだよ。」


アバターは汚れない。

作成する際、お人形(にくたい)にそれを付加してあるから、私は汚れない。

アバターは汚れない。

アバターは濡れない。

アバターはお腹が空かない。

アバターは睡眠を必要としない。…ext



「ホタルちゃんも、汚れない様にすれば良いんじゃない?」


……っていうか、アレ?

NPCって汚れるの?え?アバターと一緒じゃないの?ご飯はいらない。睡眠もいらない。汚れないし、濡れないハズ。

何でホタルちゃん、汚れてるんだろ。



「えへへ~。泥んこにならないと、つまんないじゃんー!」


「……ふむ、なるほど。私達には汚れ防止の防護膜がある様ですが。……それをあなたは、汚れたいが為に切っていたという事ですね?」


「イギャギャギャァァー!!!」



よほど腹に据えかねたのか。イズミちゃんはホタルちゃんの頭蓋骨を拳骨グリグリしてる。


えーと、んーと、……あの、防護膜って何。

私、ちょっとワカラナイ。

でもまぁたぶん、撥水スプレーみたいな。それか“気”を身体中に纏わせ、オーラがユラユラーとか。

そんなイメージで良いんじゃないかなー?(わりと適当)


それでねー、んーと。ホタルちゃんはお説教中みたいだし、私は泥団子でも作りましょー。

沼底に沈んでいた泥はやっぱりきめ細かくサラサラで、思わず泥団子用に採取してきちゃったのです。

あ、でも許可取るの忘れた。今聞くか。



「ねぇ、ちょっとホタルちゃん。沼の底から超良い泥持って来たんだけどさ、それで泥団子作っても良いかなー?」


「良いよー!っていうか、一緒にやるぅー!」


「駄目です。というか、今の話聞いてました?ホタル。」


「んー?」


うんうん。ホタルちゃんからはOK出たし、泥団子作ろうか。

下準備として、ある程度の泥を魔法で乾かし、乾燥したサラサラな砂……略してサラ砂を作る。

平たい入れ物を用意し、私はその中に泥を多めに入れた。


《ウィンドウ》から《作成スキル》を選択し、一覧をスクロールしていく。

長いページをこう、勢いをつけてブワーッと流していくの、なんか好き。

そうして辿り着いた下の方。【サラ砂作成】《指定した土をサラ砂にする。》ってやつを発動。入れ物の中の泥はサラ砂へと変化する。


――んー。


ふとした思い付き。私は、適当にウィンドウをポチポチ開きまくる。

そして――――


---


お人形設定(せつ)


 空腹  OFF

 睡眠  OFF

 休息  OFF

 汚れ  OFF

 老化  OFF

 濡れ  OFF

 … 


---


んっ、あった。防護膜の画面。

これをONにすれば、防護膜を切れる感じかぁ。……しないけどさ。だって便利だし。


っていうか、ウィンドウさんってばシレっと機能追加してないですか?それに《せつ》だとか、横にスクロールすると《サキ》だとかあって無駄に細かく設定出来るんですけど。

いや、うん。便利になるのはありがたいよ。……でも、でもね?

そのうち、自我とか持ちそうでなんか怖いなぁー。


なんて事を思いつつ。

ウィンドウを閉じた私はイズミちゃんとホタルちゃんのやり取りをBGMに泥団子をコロコロし始めた。

しれっと続けてきた定期投稿ですが、ここら辺でもう限界です……。

遅筆が……遅筆が……。

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