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んっ、ただ黙々と。


「マスターぁ。こちらへ来てくださいなのです~。」


「ふぇぇ?!」


それは唐突に。

その日、私は拉致られた。



----------



「呼ばれて来てみれば、これは一体何事ですか?」


「あ、イズミちゃん来たー!わーい。」


「コズエさんも一緒っす!」


「……んっ。」


モモちゃんに拉致られてから早数時間。

アカネちゃんと共に作業する中、とある問題を感じた私。効率UPの為、その問題を解決してくれそうなイズミちゃんを、丁度良く現れたシノブちゃんに頼んで呼んで来てもらった。一緒にコズエちゃんも来たみたい?

人手が増えるのは嬉しいな。


「マスターとアカネは、ここで一体何を?ここは、モモのエリアでは。」


「モモさんをお手伝いするお仕事っす。」


んー。そこは“お手伝い”でいいんじゃないかなぁ?相変わらず、アカネちゃんはお仕事好きだねぇ。


「見ての通り、モモちゃんはエリア内をフラワーガーデンにするみたいなんだー。で、私はその資材を用意する為に拉致られたの。アカネちゃんはそれを設置する係みたい。」


前に言った、お人形ちゃん達個々のエリア。

エリアの飾りつけは本人の好きにして良いと思うけど、【クリエイト】を目的に私自身が駆り出されるとは思わなかったなぁ。

とか言いつつ未だ私はひたすら手を動かし、モモちゃんご注文のレンガを作り続ける。――これ、いくらあっても足りないって言われちゃったからねぇ。そんな事言われたら、ガンガン作ってドーンと積み上げたくなっちゃうじゃん?



「なるほど、お疲れ様です。……しかし、当のモモは今どこへ?姿が見えませんが。」


「今は畑の収穫をしに行ってくれてるよー?」


モモちゃんは畑の収穫担当だからねぇ。

例え何かをしている途中だとしても、定期的に作業を中断して畑に行かなきゃいけない。時間にキッチリと。『これが終わってから!』は、通用しない。

……いや、私は少しくらい放っておいても良いって言ったんだよ?でも、元々畑作業を自動でしてくれるNPCとして作ったからなのかな。本人曰く、ちゃんとやらないと気持ち悪いらしいんだよねぇ。指令通りに動こうとするNPC故の性なんだろうけど。……むっ。ブラックだとか言わない!分かってるってば!

でもだって、当初はこうやって自我を持つなんて思わなかったんだもーん。NPCさんってさ、仕事が無くなって暇にさせておくなんて勿体ないから、延々と働かせたくなるじゃん?元はそういうのを考えていたからねぇ……。

でも今は、自我があって、個々に生活があって、やりたい事をしていて。

好きな作業を中断させている現状は好ましくなくて、なんかこう、目一杯好きな作業に熱中出来るようなシステムに移行したいよなぁ。と思いつつ、今は何も思い付けていない現状だったり。



「……んっ。行てくる。」


そう言って、来たばかりのコズエちゃんが畑の水やりをしに出ていってしばらく後。


「ただいまなのです~。」


畑の収穫作業を終えたらしく、入れ違いでモモちゃんが帰って来た。



「じゃあ早速始めるですよ!マスターぁ、さっき言った棒は出来てるですか?」


「えっ、あっと。どんな形状……だっけ?」


「むぅ。だから、クニュってして、ツゥー、ポンポンポンっと、シューってした棒が欲しいのです!」


うん、分からない!

――さっき言ってた“問題”ってのはコレの事。

ごめん、モモちゃん。私には理解が出来ないんだ。

という事で、予め用意しておいたスケッチブックと筆記具を、私はそっとイズミちゃんに手渡す。……通訳、どうか宜しくお願いします。

意図を察してくれたらしい、イズミちゃんはスケッチブックと鉛筆を構える。


「モモ。最初に質問します。今作ろうとしているのはガーデンアーチでしょうか?」


「はいなのです。」


ほぅほぅ。ガーデンアーチでしたか。イズミちゃん、よく分かったね?凄いなぁ。

……で、あの。ガーデンアーチってさ、庭園の入り口によくありそうな、トンネルの形をした扉のないドアの様なアレだよね??あってるよね?私、変な勘違いとかしてないよね?あゎゎ。


「ではまず、どの位の高さを考えていますか?」


「ここくらいなのです。」


モモちゃんは台に上がり、ぐぐーっと腕を伸ばす、可愛い。


「なるほど。幅はどの位でしょう?」


「ここからここまでなのです。」


「了解しました。では――」


凄い、凄い。

イズミちゃんが質問しモモちゃんが答えていく度、スケッチブックには描き込みが増えていく。

……なんか、アレみたい。

刑事ドラマでたまにある、犯人の似顔絵描いていくやつ。

描いては消し、描いては消しして。――むぅ。見てて飽きないや。



そして数分の後。


「マスター。これでお願いします。」


「んー、はいよー。」


ビックリ。完成度が、ぱない。注釈も丁寧で細工の描き込みも細かい。

凄く分かりやすいなぁ。

それを見ながら、【クリエイト】っと。


「どーぉー?」


「完璧なのです!」


「はい、じゃあアカネちゃんよろしくー。」


「了解っす!」


モモちゃんからあっさりOKも出たし、指定場所の近くに仮設置したらアカネちゃんとバトンタッチ。位置の微調整&設置はヨロシク!




「……ますた!」


「んぐ!?」


いつの間にか戻って来たらしいコズエちゃん、物理的なダイレクトアタックはやめよう?


「……ますたぁ~。」


私の膝の上に座り、ゴロニャンスリスリしてくるコズエちゃん。可愛いねぇ。

……でも君、そんな甘えん坊キャラだったっけ?



----------



「マスター、これお願いします。」


「はいはーい。」


のんびりとレンガを作っている合間に、ベンチやテーブル、ガゼボなんかも作らされた。

途中、スペースが足りないからとおねだりされ特別に部屋を広げたり、かと思えば庭の端に小さなお家が建ったり。


畑作業の為モモちゃんが抜ける事、数回。



『後はお花さんが大きくなるのを待つだけなのです~。』と言われた時、ようやく軟禁は解け、部屋からは追い出された。


っていうか、モモさんやぃ。『モモはこれからお花のお世話をするのです。』って。君、まだ作業するのかい?凄いねぇ。頑張るねぇ。



「つっかれたぁー。」


何時間、作業やってたんだろ。

身体が“お人形”じゃなかったらここまで持たなかったんじゃないかな?なんて。


「……ますた~。」


うん、君だけが癒しだったよ~。


「マスター。何か甘いものでもご用意しましょうか?」


「うんうん、してして!」


「了解です。コズエはどうしますか?」


「……んー?」


「いるいる!4()()でダラけようよー。」


わたしゃ疲れたのだぁー!がうがう!



「…………了解しました。その様に。」


綺麗に一礼して去っていくイズミちゃん。相変わらず素敵だねぇ。



「マスター。アタシもお仕事してくるっす!」


「むーん。一緒にダラけるお仕事しよーよー。」


「!!……了解っす!」


うむ。アカネちゃんもいい子いい子。





----------




後日見せてもらったフラワーガーデンは、滅茶苦茶綺麗でしたとさ。


アカネちゃん→お仕事大好き。

イズミちゃん→真面目。

せつちゃん→根は超真面目。


よく考えたら、軟禁状態で仕事をさせられてもサボるとかいう発想が無い人達でした。

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