んっ、お花を咲かせるよ。
ちょっぴり長くなった。
「マスターぁ。」
「うー?」
およよ?この声はモモちゃんかな?
そう思って振り向けば、見事ビンゴ!
モモちゃんは、こちらへテテテテーと走ってくる。
「どうしたのー?」
「マスターぁ、これをどうぞですぅ。」
中に卵でも入ってるかの様に、包んだ両手を差し出してくるモモちゃん。身長の低いモモちゃんに合わせてしゃがんだ私は、言われるがままに両手を受け皿のようにして、モモちゃんの両手の下に置いた。
「ハイなのですっ。」
モモちゃんの両手がパッと離れ、コロンと私の両手に転がり落ちたのは、桃色をした小さな石。サイズが3mmくらいの、本当に小さな石。
「なぁに?これ。」
「うふふ~。マスターぁ、それを両手でこう、ギューー!ってして欲しいのですよ!」
一方の手をもう一方の手で包み、胸の前でギュー!ってするモモちゃん可愛い。
つられて、表情もキュー!ってなってるのも可愛い。
「マスターぁ?」
「あー、えっと。こんな感じ?」
右手に小石を乗せて握り、それを左手で包み込む。ぎゅう?
……あぅ。なんか、祈ってるみたいになってる。若干恥ずい。
「マスターぁ、ギューー!なのです。」
「ギュー?」
「思いをたくさん込めるのですっ。ギューギューにするのです。」
「思い?……願い事、とか?」
「ハイなのです!」
願い、事?思い。
……私、は。
――取り敢えず、笑っていたいかな。難しい事なんて考えないで、ヘラリと笑ってたい。何にも縛られたくない。囚われたくない。ヘラリと笑って誤魔化し逃げたい。……つまんない事で、苦しみたくないなぁ。
「マスターぁ。そろそろ完成したと思うです。見せて欲しいのですよ!」
「んー?」
モモちゃんにそう言われ、握っていた手を広げて見せる私。
手の上で水色の小石がコロンと転がる。――おや?色が、桃色から水色に変わってるね。ビックリ。
「そうしたら、これをこうしてこうするのですっ!」
何処からか取り出した小さな植木鉢。
モモちゃんは私の手のひらから小石を摘まみ取ると、土の入っているその鉢に小指で一つ穴を開け、小石を入れて土を被せる。
――ん?種まき???
植木鉢を手に持ったまま、モモちゃんはまた何処からか如雨露を取り出し、水をかける。水をかけ終われば、また何処かしらに如雨露を片付け、そうしてモモちゃんは両手でしっかりと鉢を持つ。
目を瞑り、両手で持った鉢に向かって、祈るように何かを呟くモモちゃん。
その身体が桃色に発光し、しばらくして鉢にも同様の光が移った。
鉢の中にも変化がある。
土の中の種がムクリと芽を出し葉を広げ、グングンと成長していく。
やがて、プクリとした小さな蕾が姿を見せたと思ったら、黄色い花がブワリと咲き乱れた。
「ふぅなのです。」
桃色の光を霧散させたモモちゃんは、私を見上げてニコーと笑う。
「マスターは『福寿草』なのです。」
「ふく……?って、え。」
私が首を傾げてる間に、植木鉢を抱えたままのモモちゃんはテテテーと向こうに走ってっちゃった。
んー?何だったんだろ。
「……ますた。」
「う?」
またもや背後から声を掛けられる。
「……乗ってい?」
振り向くより先、答えを聞く前から既に重くなる背中。
しゃがんだままだったのが仇になったぽい。
私の右に立ったコズエちゃんは、私から見て左の方向へ、横向きに凭れてくる。
「乗るならせめて、おんぶにしてくれない?」
バランス悪いし、何よりしゃがんだままだから体勢が辛い。
「……ん。」
そう言って、大人しくおぶわれてくれるコズエちゃん。案外重いんだね。
【筋力UP】してから、よっこらせっと立ち上がる。
「……ますた。」
「……んー?」
「……花を咲かせる程度の能力、だよ?」
「へぇ。…………え?何が。」
思わず納得しかけちゃったけど……、え?そもそも何の話!?
「モモさんの能力っすよね?」
おや?アカネちゃん、いつの間に?
っていうか、何?……能力??
「……えぇーと?」
「モモさんの能力は、『花を咲かせる程度の能力』なんすよ。……そういえばさっき、モモさんから藤木さんに作ってもらったらしい種を渡されたっすね。もしかしてマスターもそれっすか?」
ふぇぇ?ちょっと待って。情報が多くて処理しきれない。
えっと、えっと。
「……『藤木さん』って誰?」
私、そんな人知らないよ?
この子達、お外には出ないしなー。
知らない人が入ってきたら、さすがに私にも分かるし。
「藤木さんは藤木さんっすよ?」
「……アレ。」
首を傾げるアカネちゃんと、お庭エリアの方を指差すコズエちゃん。
……んー。示す先には、不思議機械さんかなぁ?
小麦粉入れるだけで、包装された冷凍おうどん作ってくれる不思議な機械さん。
――……あっ。
「濁点の位置が違ぁーう!」
思わず叫んでた。
でも。だって、だって!
不思議と藤木って事だよね!?
“不思議機械さん”ならぬ、“藤木機械さん”ってか!
なんか上手いですね!誰ですか、そんな名前付けたのは。
「マスター、大丈夫っすか?」
「……あー、うん。」
項垂れた私を心配してくれるアカネちゃん。……優しい。
「……そ、それでその、藤木さんが作った種が、……何?」
「持ち主によって、違う花が咲くらしいっすよ。ちなみにアタシは『ルスチュラベリー』っす。」
「……あい、あむ、『スノーレナギ』。」
「へぇ。」
お花はよく分かんないけど、持ち主によって咲く花が違うってのは不思議だねぇ。
「で、モモちゃんの能力?が……?」
「『花を咲かせる程度の能力』っす。」
んー、あれ。ちょっと待って。何か聞いた事ある感じなんだけど。
「……その呼称はたぶんダメだと思うなー。もうちょっと、別のに出来ない?」
「別の、っすか?……モモさんの能力は、花を咲かせるくらいしか出来ないらしいっすよ?」
「……じゃあ、『開花』とかは?」
「了解っす!」
<【固有名:モモ】の能力名が『開花』に変更されました。>
え。何か出た。ナニコレ?
「なんか、変なの出た。」
「今までのは『通称』っすからね。ちゃんとした名称に変更されたんじゃないっすか?」
「あ、そうなんだ?ふぅん。」
自我が芽生えた事といい能力といい、私の知らない未知な事ばかりだねぇ。
「……っていうか、みんなも『能力』持ってたんだ?」
「もちろんっすよ!ちなみに、ホタルさんの能力は『地面を泥沼に作り替える程度の能r――」
「これからは『泥沼』で。」
<【固有名:ホタル】の能力名が『泥沼』に変更されました。>
「シノブさんは『影に潜む程度のn――」
「『忍者』で。」
<【固有名:シノブ】の能力名が『忍者』に変更されました。>
「コズエさんは、『空を飛ぶ程d――」
「主人公っ!?……あ、『浮遊』で。」
<【固有名:コズエ】の能力名が『浮遊』に変更されました。>
「……ますた、ぎゅー。」
「コズエさん、嬉しそうっすね。」
「……ん♪」
「んー?」
よく分かんないけど、コズエちゃん可愛い。
「ちゃんとした能力名を付けて貰えて、コズエさんは喜んでるんすよ。」
「ほー?」
そんな事で?……ふふふ。可愛いなぁ。
……っていうか、あれ?
「……おしまい?イズミちゃんとアカネちゃんの能力は?」
「イズミさんの能力は『物知り』、アタシの能力は『力持ち』っすね。」
「“程度の能力”じゃないんだ?」
「違うっすねー。そもそも、体質が違うっすから。」
「へぇ。」
体質かー。んんー、アレかな?
コズエちゃん達は自ら自我を持ったっぽいのに対し、イズミちゃんやアカネちゃんは、最初っから目的を持たせて作り出したから……的な?
同じように作ったと思ったのになー。なーん。
左右にユラユラと。背中の重みに流されるまま、体を揺らす。
……んーで、何の話だっけ。
そうだ。お花だ、お花。
「……藤木さんの作った種を、ギュッとして持ち主の登録をしてー、それをモモちゃんが能力使って一気に咲かせたー、みたいな感じ?」
「そうっすねー。」
「ふぅん。」
なるほどー。
……って、いやいや。アレ、最初から最後まで全部が摩訶不思議だったからなっ!?モモちゃんが意図的にブワッとお花を咲かせたみたいだけど、それ何も不思議に思わなかったんだけど。むぅ。
……んっ?あー、そうだ。
「モモちゃんってたぶん、お花関連に詳しいよねー?」
「そりゃ、滅茶苦茶詳しいっすよー。」
やっぱりそうだよなー。
んーじゃあ、ずっと考えてたお花畑エリア、相談してみようかなぁ?何の花が良いとか。……ん?そもそも、全部任せちゃうのもありかなぁ?そしたらラクそうだし。
んー。こうなるといっその事、みんな個別にエリアを与えたくなってくるよね。……エリア一面が泥沼……とかなりそう。
「ねー、アカネちゃん。個別にエリア貰えたら、嬉しい?」
「エリア……っすか?」
コテンと首を傾げるアカネちゃん。
ふぅむ。興味ない感じかー?
「……!!……!!」
バンバン!ペシペシ!と、暴れる様に背中付近を叩かれる。
……どうしたんだい?コズエちゃん。そんな所で暴れないでくれるかな?
「コズエちゃんは、エリア欲しい?」
「……!!(コクコク!)」
精一杯後ろを見る様に振り向けば、コクコク!と大きく頷いているのが見えた。
「そっかぁ、欲しいかぁ。……アカネちゃん、仕事増えるけど……良い?」
エリアの拡張は基本、アカネちゃんの仕事なんだよなー。
今現在は魔力の有り余ってる私がやっても良いのだけど、悲しそうな瞳になったアカネちゃんを見るのはツラいんだなぁ。
――でもそれは、自分の仕事が減ってしまうが故でして。
「もちろんっす!頑張るっす!」
お仕事大好きなアカネちゃんは案の定、嬉しそうなお返事をしましたとさ。
――この事、お人形さん達を統括するイズミちゃんにも相談しとかなきゃなー。
花名の『ルスチュラベリー』、『スノーレナギ』は造語です。
異世界の花と言う事で。
……ちゃんと花言葉も作ったんだからねっ!




