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私、勇者召喚されたみたいだけど、異世界に来たからって何かが変わるワケじゃない。  作者: たんぽぽ
第二章 ねぇ、一人でいる方が幸せだと思うけど。
46/73

ねぇ、ササッと行ってこよう?

2章最終編。


区切って引っ張って、それでストレスになったら嫌だなぁって思ったから、今回はちょっと長め。

……大丈夫だからっ!(必死)


ふと思い立った。


――モフさん、取りに行こうか。

お城、行ってこよ?



召喚された時に着てた服。

冬用部屋着のフリースだし、こっちの世界は一年を通して暖かいらしいから着る機会は無いだろうけど。

でも、わりと気に入ってたし。


それになんか。……誰か他人に捨てられたりするのは嫌、かな。って。



……もう、捨てられちゃって無いかもしれないけど。

でもだから、ササッと行ってササッと取ってこようかなって。


――まぁ、私がいなくなった後のお城の事も、若干気にならないワケじゃないし、さ?




って事で出発っー!!

【空気化】と【気配遮断】をダブルで付けて、誰にも認識されないように。


……ん。外出たら、暗かった☆

夜だったみたい。まぁ【暗視】あるし、特に問題無いけど。


森の中をテクテク歩く。

お城までの道は分かんないけど、お城の位置は分かるから大丈夫そうかな。直線で真っ直ぐに行けば良いんだし。

まぁ、スキル使って走って行けばすぐ着くだろうけどね?

でもなーんか、今は歩きたい気分なんだもーん。



----------



お城の見慣れた裏門へ来た時、既に太陽は十分高い位置にあった。

人の多い街中に入るのは嫌だったし、全然森は終わらないしで、最後には空飛んでピューって来ちゃったテヘ。


勝手知ったる裏門からお城の中に入る。……正直、正門は使った事無いんだよね、うん。裏門にも当たり前のように騎士さん2人立っているけど、スキル付けてる私に気付く事はない。


少しだけドキドキしながら、スルッと通る。

庭園の小道を進み、いつもの扉から室内に入る。見慣れた階段を上り、見慣れた廊下を通って。


辿り着いたのは、『207』と書かれた扉の前。周囲に人気(ひとけ)はない。

【マップ】で見ても、部屋の中に人は居ない。


私はソッと、扉を開ける。

鍵は掛かっていなかった。

そして中は。



――あぁ、やっぱり。


いつもそうなんだ。私が思い立った事って、大抵無駄に終わるんだよね。

今回も無駄足だった。


――部屋の中は、空っぽ。

私の物だけ無いとかじゃなくて、家具とか、全部が無かった。糸川さん達の物とかも無い。



――まぁ、そんなもんかな、って。


私のやる事はどこか的外れで、大抵上手くいかない。

そういう“運の悪さ”みたいなものは、もう私の体質なんだろうなって。


――帰ろ。

別に、無くて困るものでもないし。


ソッと扉を閉めて、上ってきた階段へ向かう。

階段を下りきったら、出入口の方向へ廊下を進む。

たまに人とすれ違ってその度に緊張するけど、スキルのお陰で誰も私に視線を向けないから、少しだけ緊張が解れる。

『誰にも見えてない』って、やっぱり良いよなーって。精神的にラク。





「おい、止まれ!侵入者。」


――ひゃっ!

急に後ろで大きな声がして、ビクッてしちゃったんだけど。大きな声、苦手なんだよぅ。うぅ……。



「止まれと言っているのが聞こえないのか?」


トラブル、……かな?

何があったんだろー?って、振り向いてみたら。



……目が合った。



「ど、どうしたんスか?副隊長。き、急に……。」


ギャー!?怖い、怖い。睨んでる怖い。ギャー!わー!わー!何、何、何!?怖い、怖い!!私の後ろに何あるの?


チラッて振り返ったら、……あれっ?誰も居ないよ?

あ、壁!?壁の絵画見てる??え、あ!絵に恨みでもあるの?燃やすの!?

あゎ!そ、それはさすがにマズイっていうか、えと、えと、あっと。



「自覚が無いのか?そこのお前だ、侵入者。他の奴を欺けたとしても、俺を欺く事は出来ないぞ。」


え、侵入者?……私、の事?

えっ、あ!侵入者じゃん!私、完全に侵入者じゃん!!ヤバい、アホだ。完全に抜け落ちてた。わー!わー!ホント、ごめんなさい。マジでごめんなさいぃ!なんか、……普通に家に帰ってくる気分――じゃなくて、……学校かな。通ってた学校に間違えて来たっていうか。……あぅぅ。

私、もう部外者だったじゃん。アホじゃん!にぃー!にぃー!

お城に無断侵入、逮捕されて打ち首ですね!なるほどですぅ!



「そこのお前。武器を床に置き、隠蔽を解け。」


ひゃい!ただいまぁー!

武器!え、武器?……つ、杖ってどこやったっけ?アレ?アバババ?あ、リュックの中だ!隅っこ入れた。……に、睨まれてて、リュックの中から取り出せる気がしなぁい!

えと、あと隠蔽?スキル外すの怖いですけど、外さない方が怖いですね!にぎゃー!にぎゃー!



「うぉ!?ホントに居たんスね、侵入者。……えぇと、可愛らしい侵入者さん……ッスね、副隊長。」


「……。」


にぎゃー!にぎゃー!こっち見んなー!怖いのだー!視線、怖いのだー!

っていうか、副隊長さんの視線そのものも怖いぃぃ!睨んでるるるるる。


「副隊長?」


「……ふむ。」


キョロキョロと周囲を見回す副隊長さん。

お、応援要請ですか!?何も抵抗しませんよぉー!!


……えっ、わわっ!何で近付いてきてるですか!?怖いです、怖いです!アバババ。


……ぴみょ!?腕掴まれた。

あ、(ぬく)いお手てですね。それと、とっても大きいです。私の二の腕、グルって一周掴めちゃってる感じ?


あゎゎゎ。痛いですすすぅ。あんまり強く引っ張らないでくださいませぇ!折れるぅー!……まぁ、乱暴に扱われるのは当然の事ですよね!!





「座れ。」


ポフって座ったのは、近くの客間みたいな部屋の、フカフカソファ。机を挟んで向かい合わせに配置されてる。怖い。

この部屋に入ったのは初めてだったり。……この辺の廊下は毎日の様に通ってたけど、でも入った事無い部屋の方が多いよなぁー、って。

ジンジンする二の腕をもにもに揉みながら、ソファのフカフカを楽しむ。


「飯はちゃんと食っているのか?」


うにに?腕にお肉が付いてないって事ですー?ぷんす。細っこいのは仕方ないのー。私、全然お肉付かないタイプなんだってばー。


「……。(コクリ)」


「そうか。」


副隊長さんは何やら棚をごそごそ。

あら。そんな所にお茶セットが!?ビックリ。

え?っていうか副隊長さん、呑気にお茶入れ始めたよ。えぇー。



「親は何してる人なんスかね?小さな子供にこんな事させて……。」


小さい言うなぁ!事実だけど。



「バカか、マーシュ。コイツは一応成人している。」


「だから副隊長、バカバカ言わないでくださいッス。俺っち、本当のバカになっちゃうッスよ……。ってこの子、成人してるんスか!?」


「本人曰く、そうらしい。」


そう言って、チラリと私を見る副隊長さん。……え、私の事を知ってる感じ?

ヤダ怖い。



「それよりマーシュ、覚えていないのか?お前の担当だっただろ、7班は。」


7班?え、あの7班!?適当グループ分けの、あの7つ目の班ですかぁ?!ひぁぁぁ。


「確かに俺っち、7班担当だったッスけど……だから今、こんな事になってる訳ッスけど……、それがなんか、この子と関係あるんスか?」


7班担当って。

えーと、ちょっと【鑑定】させてくださいませー。ついでに副隊長さんも。



---


名前  マーシュ・カイト

年齢  16

性別  男


体力  3

魔力  1

器用さ 2


能力名 剣士(Lv54)


あだ名  引率係の騎士さん、New:試験官騎士さん(ゼィゼィ騎士さん)、New:引率騎士さん(若騎士さん)、New:マーシュさんだかコマさんだか呼ばれてたような。

登録色 深緑


---


名前  ケイリート・ライン

年齢  32

性別  男


体力  3

魔力  2

器用さ 3


能力名 武士(Lv199)


あだ名  名前聞いてきた騎士さん、迷子案内の騎士さん、New:副隊長さん。

登録色 水色


---


アバババ。迷子の案内騎士さん、副隊長さんだったののの!?あの時はホント、ご迷惑おかけしましたぁ!!



「お前っ!今、何をした?」


ひゃい!?な何でしょう!


「今、何か能力を使っただろう?何をした。言え!」


なんでバレたのー!?

っていうか、侵入者の分際でごめんなさぁい!素直に言いますから、睨まないでぇ!

肩を掴むのも止めてくださいぃ!骨、壊れちゃうぅ!



「……あ、あの、……ひ、人の顔と名前、……お、覚えるのが苦手で。(……あの、えっと。)」


【鑑定】って《補助魔法》的に、何て言えば良いんですかぁ!あのあの、えっとっと。



「なるほど、鑑定系か。」


え、えぇ。察しが良くて有り難いです、ハイ。



「……まぁ良いだろう。くれぐれも、逃げようなどと思うな?怪しい真似をすれば、只じゃ済まなくなる。」


がが眼力ぃぃ……。こ、こわ……ゎゎゎ。



「ふ、副隊長?一体何がどうなって……。」


は、離れてくれたっ、ようやく。

ひががが……。こ、怖かった。……いや、今も滅茶苦茶怖いんだけど。


み、みぎゃ。副隊長さん、こっち戻って来た。

……あ、お茶出来たのね。どうも。


目の前にカタリと置かれたコーヒーカップ。中身はコーヒーじゃなくてお茶なんだけどね。んーと確かこれ、見た目も味も麦茶みたいなあのお茶かな。……ふふーん。いい匂いするんだなー♪



「……アキ。」


ビクッ!


ハイ、ごめんなさいっ。

目の前に座った副隊長さんが、ジーって見てくるよぅ。うぅ。



「――この子の名だ。覚えていないのか?マーシュ。」


ひぇ?私の事を呼んだ訳じゃない感じ?

……びびビックリしたたたぁぁぁ。



「……あー。言われてみれば、そんな名前の子が居たような気はするッスけど……。顔は全く覚えて無いッスね。例の、最近居なくなったって子ッスか?」


「あぁ。」


アバババ。二人して、見詰めてこないでででぇ。

なななんかもう、帰りたい。



「……で、なんでその子がここにいるんスか?自ら逃げたんスよね?」


にぎゃー!若騎士さんの目がスッて細まったぁ!睨んでる。絶対睨んでるぅ!怖い。軽そうな人だなぁって思ってたから、何か滅茶苦茶怖いっ!



「……単刀直入に聞く。アキ、なぜ戻ってきた?」


二人して睨むなぁ!ひゃぁぁぁ!怖いぃぃよぉぉ。

えっと、えっと。



「……あ、あの。し、召喚された時に着ていた服って、もう無いです、よね。」


私の言葉に『ん?』って考えこむ副隊長さん。若騎士さんも『あれ?』って首を傾げる。


二人の視線が外れて、少しラクになる。ふぅ。

一息吐いてボーッと、悩んでる二人を見てたら、ジワジワと気付く。


……完全に聞き方間違えたぁ!


『私の私物は何処ですか?』みたいな感じで聞けば良かったのに。あんな言い方じゃ伝わらないって!テンパり過ぎぃ。真っ白だったよぉぉ。

でもかといって、言い直す勇気も無いんですぅ。

察して!お願い、察して!


ゆっくりとした沈黙。それにジワジワと心が抉れていく。……ぅぅ。

そして――。



「……あぁ。あの、白いやつか。」


「……!!(コクコク!)」


は、はいっ!あの、白いモフさんです!

つ……、伝わったぁ!副隊長さん、超有能っ。



「お前の私物は、この前亡くなった者達の私物と一緒に一纏めにしてある。後で案内しよう。」


うゎゎ、ビックリ。ありがとうございます!ありがとうございますっ!

……エヘヘ♪ヤバイ。何か凄い嬉しい。



「……それだけか?」


「……?(コテン?)」


ぽへ?


「用事はそれだけなのか?お前は、私物を持って帰る為だけにここへ来たのか?」


「……。(コクン)」


うん、そうなるかな。……ん?え?他に何かあるの?



「その持って帰った私物は、……売るのか?」


「……?(コテン?)」


ぽへぇ?何で売るの?勿体ない。わざわざ取りに来たって言うのにさー。



「あ、あの!……勇者に戻りたくて帰って来た訳でもないんスよね?」


「……!(ブンブン!)」


帰ってきたい訳、無いでしょーが!もう無理なんですー!ここは息苦しいんですぅー!頑張ってたやつは切れちゃったのでーすーぅー!


「そ、即答ッスか。……そんなに嫌だったんスかね?」


へ?あゎゎゎ。

素直に本音出しまくってた。恥ずかしい……。



「……アキ。言った筈だぞ?“何かあれば周りに相談しろ。”と。」


ぽへ?言われたっけ、そんな事。

……でもなぁ。むぅ。相談って言われてもさ。

分かんないよ、分かんない。

他人は怖いし、上手く出来ないし。

――何がダメだったのか、どうすれば良かったのか。……今はまだ分からないでいる。



「……まぁ良い。話は終わりだ。早くそれを飲め。せっかくの茶が不味くなる。」


ふぇ。お茶さん?……し、視線が恐すぎて、手を出すことすら出来なかったんだよぅ。ほら、ジーって見られてると、指一本すら動かせなくなるでしょ?え、ならない?


っていうか、副隊長さんのカップは空っぽだぁ。

い、いつの間に飲んだの!?


「ふ、副隊長。お……俺っちの分は?」


「無い。」


「ばっさりッスか!?」


「バカは水で十分だ。」


「だから、バカバカ言わないで欲しいッス!それに水で十分って、それどういう意味ッスか!?」



うくく。何か面白い事してる。

視線が外れた隙にそーっと手を伸ばしたお茶さん。あー、まだ暖かい。指先がじんわりする。

……良かった。冷めて(ぬる)くなったお茶は、なーんか美味しくないと思うんだもん。コクコク。

あ、滅茶苦茶喉乾いてたっぽい。一気にスルって飲んじゃった。……恥ずかしい。

んでもって、何か凄い美味しかったんだけど。何?副隊長さんってば、お茶入れるプロなの?超絶有能騎士さんなの?



「もう一杯いるか?」


「……。(コクン)」


えっ。あ、はい。……もう一杯だけ。




「ほら。」


ど、どうも。わざわざありがとうございますっ!



「俺っちは?俺っちの分は?」


「ほれ、これでも飲め。」


「やったッス!今まで頑張った甲斐があったってもんッスね!……んー!やっぱり副隊長の入れたお茶はうまいッス!」


「バカ、それはただのお湯だ。」


!?


「…………んぐっ。……ケホッ、ケホッ。」


む、むせた。……お、お湯って(笑)ふ、不意討ち過ぎるよぉ。


「おい、大丈夫か?」


慌てた副隊長さんが背中を擦ってくれる。……わざわざありがとうございます。出来れば放っておいていただけると嬉しいです♪緊張して飲めなくなるからぁ!



「……アキ。」


ぴゃい?


あ、背中のお手てが移動した。……頭?

……あの。お手て、重いです。えっ、あっ。ナデナデしないでっ!はゎゎゎ。



「……新しい場所では、元気でやっているのか?」


ひゃい?


「……?(コテン?)」


うーん。どうなんだろう?

ストレスはほぼ無いけど。……でも“元気で”って。

『元気』なの、かな……?私。

そこが、自分じゃ分からない。



「じゃあ、……楽しいか?」


「……。(コクン)」


……うん。何だかんだ、楽しい。

他人なんか気にせずに、自由に好きな事出来るもん。

楽しいよ。



「なら良い。」


頭の重さが消える。

無くなって気付く。――乗ってたお手て、(ぬく)かったのに。むぅ。



「そろそろ行くぞ、アキ。お前の荷物を回収したら、訓練場に行く。」


ぴゃい?訓練場ー?何しに?

取り敢えず、リュックを背負って立ち上がる。


「アキ。隠蔽スキルを掛けておけ。」


ぽぇ?それは大歓迎だけど、……いいの?



「今日この城でお前の姿を見たのは、今の所俺とマーシュだけだろう。ならばこの件は、無かった事に出来る。」


ひゎゎゎ!?ひゃい!ああありがとうござざいますっ!


「マーシュ。お前も、この事は()()()口外するなよ。お前の口の軽さが一番心配だ。」


「ぜ、善処するッス。」


……あ。この人ダメかもしれない。大丈夫かなぁ?



「アキ、手を出せ。また迷子になられでもしたら困る。……今回は特に、な。」


え、あ、ハイ。ホント、あの時はすみませんでしたぁ!

どうかお願いしますっ。



「あれ?いない。何処行ったんッスか?」


「よし、行くぞ。」


はーい!


隠蔽スキルさんをダブル付けした私は副隊長さんと手を繋ぎ、キョロキョロと挙動不審の若騎士さんと共に客室を出た。


副隊長さんは良い人です。


(若騎士さんが再登場した事でようやく、アカネちゃんと口調が被ってる事に気付いた……orz)

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