私、嘘つきみたい。
――悲しんでるフリ、悲しんでるフリ。
これが、私の単純な脳ミソで出した答え。唇をギュってして俯くだけ。……だって、他には無理かな。嘘泣きなんて出来ないし。え、後はどうすれば悲しんでる風に見えるんだろ。分かんないね!
----------
「ねぇ、アンタ。」
お葬式が終わってお部屋に帰る途中。
前を歩いていた中野さんが急に振り返った。
立ち止まった中野さんにビックリして、私は咄嗟に歩みを止めて半歩下がってた。
つられたのか、糸川さんと八重鈴夏ちゃんと高倉さんと片桐柊くんが――今のグループメンバー全員が――足を止める。……バラバラだけど、目的地は皆同じ。他のグループの人達は私達を追い越して、私達だけがその場に残った。
周りに人が居なくなるのを見計らったように、中野さんは言葉を続ける。
「アンタさ。葬式の間中、ずっと笑ってなかった?」
……え?
言ってる事がよく分からない。頭が真っ白になる。……取り敢えず、すごく怖い。――先の言葉が恐ろしい。絶対嫌な事言う。何も言わなくていいのに。
「み、見間違いとかじゃなくて?」
「少なくともニコニコしている様に、私には見えた。」
不安そうな八重鈴夏ちゃんの言葉に、中野さんはキッパリと答える。
「ねぇ。アンタってこの中で一番、アイと仲良かったでしょ?一番、一緒に居る時間が長かったじゃん。」
『アイ』って、世良愛菜ちゃんの事だよね?ね!
何となく2人組になる時って、糸川さんと八重鈴夏ちゃん、高倉さんと片桐柊くん、私と世良愛菜ちゃん、中野さんが別グループで同じ様に余る“とある子”、ってなってたんだけど……その話かな?
確かに一緒にいる時間は長かったかもしれないけど!……でも別に、何かあったワケじゃないし。特に会話も無く、黙々と作業をこなすだけだったし。メンバーさん達の中では確かに、一緒にいて一番居心地は良いんだけど、何も話さなくても良いから楽♪ってだけだし!
「それなのに、なんで笑っていられるワケ?少しは悲しんであげればどうなの?って、アタシは思うワケで。」
……私、笑ってる様に見えたのかな。
確かに悲しいとは思えないでいるけど……でも、泣いてる人の前ではしゃげる程アホじゃないつもりだよ。
――――あぁ。でも、無意識に笑顔になってたのかなぁ?
『悲しくないもん。』『大丈夫だもん。』って。なんか、無意識に強がっちゃう事あるからなー。
「マキ、ちゃん?」
私を呼ぶ八重鈴夏ちゃんの声が若干震えてて……。
「あー。そういえばさ、アンタの名前って本当は『マキ』じゃなくて『アキ』なんでしょ?“まみむめも”の『ま』じゃなくて“あいうえお”の『あ』。何で未だに訂正しようとしないワケ?私達の事がそんなに信用出来ない?」
――ゾッとした。
指先が一気に冷えて、感覚が無くなる。
……バレた。バレちゃった。
別に、悪意を持って嘘ついたとかじゃない……けど。
でも、裏切ってた感じだし、嘘吐いてた風だし……。
嫌われた!絶対嫌われた!
「え?『マキ』じゃなくて『アキ』……だったの?」
「マキc――じゃなくて、アキちゃん?か。……ごめんね!私、ずっと聞き間違えてたみたいで。」
「うん、私も同じく、ずっと『マキ』だと思ってたよ、ごめんね!……でも、遠慮無く言ってくれて良かったのに!『あ』と『ま』って発音似てるからさ。あ、文字も若干似てるし。……ね!」
やっぱり、糸川さんと八重鈴夏ちゃんの二人は優しいみたい。
――あぁ、でも。
今はその優しさが、若干怖い。
相変わらず俯いたままの私だけど、少し気になってチラリと高倉さんと片桐柊くんを見てみた。
高倉さんは困った様に笑ってるけど、片桐柊くんは鋭く睨んでる……のかな。怖い。
「……そ、そろそろ、部屋に戻らない?」
重めの沈黙を破った糸川さんが言い出して、ようやく私達は部屋へ向かって歩みを再開した。
糸川さんと八重鈴夏ちゃんが一番前で、そこに中野さんと高倉さんと片桐柊くんがついていって。
私はやっぱり、一番後ろをヒッソリついていく。
歩いてる途中。
時折、チラチラと後ろを振り返る糸川さんが、何故か印象的だった。




