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私、小学生じゃないんだけどなー。

別室に向かったそこで、木の板を手渡される。普通の板。カマボコが乗った板と大して変わんない。


そして促されるのは、変な機械が乗ったテーブルの方。

卵を横に倒したみたいな形。それが4つ並んでいる。卵の乗ったテーブルを挟む形で、一方に受付みたいな女性。もう一方には私より先に板を受け取った人達が座る。板を渡して何かをしていく。


私の番が来た。

椅子に座り、目の前の女性に板を手渡す。


女性は卵の蓋を開けて板を入れると、私の右手を取り板の上へ乗せる。そして蓋を閉めた。


押さえるように蓋の上へ手を置く女性。彼女は私を見つめる。

私はその視線に緊張して視線を彷徨わせ、最終的には俯いた。


ピシュ。と……間抜けでなんかこう例えようのない音が卵から鳴り、私から視線を外した女性は卵の蓋を開けた。

私は慌てて解放された手を引っ込め、差し出された板を受けとる為に手を出した。――うん、わたわたと忙しいね。


椅子から立ち上がり、私は次の列へ向かう。

列に並んで順番を待つ間に、私は板を見た。

受けとる時に、何か文字が見えていたから。


---






体力  2

魔力  3

器用さ 1


能力名 スキル作成


---


銀色の文字。

見た途端に、不思議と理解できた。

体力とかの部分は1~3の三段階評価。そんな詳しくは出てこない。


体力が2なのは、運動が大の苦手だからかな?

魔力は知らないけど、器用さ1は……心当たりが(汗)


能力の『スキル作成』。


使い方は、なんとなく分かる。

機能(システム)》を作り、【名前】を付ける。その2行程。

早速私はスキルを作る。


《他人から隠す目的で、ステータスの一部を変える。》【ステータス改変】


【ステータス改変】をセットし、私は能力名を『補助魔法』に変えた。


『スキル作成』はたぶん、結構チートじみてる。

バレちゃえばきっと、いろいろ危ないだろうなーって。

列の先、記録係の騎士さんの隣で、あのオタ豚さんがめぼしい人材を漁ってるみたいだし。


念のために板を見る。


---






体力  2

魔力  3

器用さ 1


能力名 補助魔法


セットスキル

 ステータス改変

 空き

 空き


---



ギャー><何か出てきたぁー!!

ダメダメ。これ、バレるでしょう!


《セットスキル欄を隠す》【セットスキル非公開】

作成、セット。


---






体力  2

魔力  3

器用さ 1


能力名 補助魔法


---



うん、多分OK?


ドキドキと前方を見れば、何かトラブってる?



「ねぇねぇ、お前俺と一緒に来いよ。」


オタ豚さんが、記録の終わった一人の女性に絡んでた。

あ、あの人、演劇説の派手な髪色の人……。



「俺のハーレムメンバーに加われ。」


「離して、気持ち悪い。」


女性はバッサリと言い捨てて、回されていた手を払う。



「ケッ。ケババアが。」


まんまとフラれ、オタ豚は悪態をつく。

……っていうかあの人男性はスルーしてるから、次の女性(ターゲット)って……私!?


あ、マジ無理。どうしよ。

うー。さっさと通り過ぎるっ!それしかないかな。


列が進んで、私の番になる。

騎士さんに板を手渡す。騎士さんが書いている間、オタ豚さんが騎士さんの手元を覗き込んでた。眉がピクリと上がり、私をニヤァって見る。……ヤダ。無理。ぞわわーってする><


でも、何も言わない。

騎士さんから板を返された私は、頑張って歩く。


……呼び止められない。スルー?良かったぁ。


「小学生に興味はねぇ。でもどうしてもって言うなら、俺のハーレムに加えてやらなくもない。」


……ビクッ!

安心した途端、いきなり後ろから声掛けられたんだけど。理解が早かったら、足が止まってた。

自分に向けられてるって気付くのに数秒掛かって反応が遅れたけど、逆に良かった。怖かったっ。


って、小学生って!

よく言われるけどさぁ……。むー。


私は部屋の外へ向かってひたすら歩く。

……何か後ろで、舌打ちの音が聞こえた気がした。

振り向いて、どんな顔になってるか見てみたい。でも怖くて振り向けない。

体を小さく縮めて、私は部屋を出た。


『勇者様御一行はこちら』と書かれた案内に従い、私は迷路のような廊下を進んでく。結構入り組んでいて、案内なしの自分一人じゃ、元の部屋にすら戻れる自信ない。




「ちょっと君。」


……うん?


「おい、待ちたまえ。」


前には誰もいない。

後ろから聞こえてくる声。

たぶん、後ろの人たちが話してるんだろな。


気になる。……けど、振り向くのは怖い。『何こっち見てんだよ』って、迷惑がられそう。



「君、聞こえているんだろう?」


ビクッ。


後ろから、肩を掴まれた。

小さく跳ねた私は、その場に固まる。


「話を聞きたまえ。」


掴まれた肩を引かれ、私はクルンと後ろに向けられた。


「無視するとは、良い度胸だな。」


チラリとその男性を見れば、こっちを睨んでた。怖い。

俯く私は怯えながら、男性――もとい騎士さんが去るのを待つ。



「お前、名前は何だ?」


……え?名前?


「お前のカードには、名前・年齢・性別が表示されていない。あのデブ野郎に見られたくなくて隠したのだろうが、記録はさせてもらう。」



ふぇ? 名前、年齢、性別??

そんなの表示されてないよね?


慌てて板を確認してみる。

取り出した瞬間は最初の4項目だけだったのに、すぐにジワーって文字が浮かび上がってきた。



---


名前  *****

年齢  **

性別  女


体力  2

魔力  3

器用さ 1


能力名 補助魔法


---


板の上部分、『妙な空白あるなー。』とは思ってたけど、下にも同じくらいの空白があるから『真ん中に表示してるだけかー。』って思ってた!私のだけバグってたのかなぁー?


っていうかなんか、名前と年齢が文字化けしてるんですけど。今だバグったままですけど。……あ。板、騎士さんに取り上げられちゃった。



「隠していたわけじゃなく、ただの記憶喪失、か。」


えぇ!?

私、ちゃんと覚えてるよ!


フルフルって一生懸命首振れば、騎士さんは不思議そうに首を捻る。


「記憶喪失じゃないのか?」


コクッ!


「じゃあお前の名前はなんだ?」


え?名前? ……私の名前は。



「……アキ。」


「ん、あ?」



ぅぅ。ボソボソした喋り方だから、やっぱりちゃんと聞き取ってもらえないと思う……。



「あぁ。……アキ、か。」


……え?って思って騎士さんを見れば、板見てた。え?表示されたとか?



「妙な名前だな。」


「……っ!」



あぅ……。うー!

だってそりゃ、今自分で付けた名前だもん!私が咄嗟に付けたんだから仕方ないじゃん。……むー。



「家名は無いのか?」


家名。……名字。

あわわ、忘れてた。どうしよう。何も思い付かない。

名字無いんだから、そりゃ妙って言われるかも?



「まぁ良い。家名の無いやつなんて、この世界にはごまんといる。……アキ。それで記録しておこう。」



そう言って、騎士さんは持っていた板を差し出してくる。……わ。名前の欄、アキって出てる!すごっ。

私はそれを受け取る……けど、騎士さんは手を離さない。


「で、年齢はいくつだ?」


年齢?歳……。えぇと、今いくつだっけ。

えっと、ちょっと待って。騎士さんってば見つめないで!パニくるから!

数え年が+1で満年齢はそのままだっけ?えーと?えーと?あわわ、ド忘れした。こんがらがった。やばい、ちょっと待って。



「……質問を変えよう。成人はしているか?」


え?あわわ。えっと……。



「…………こ、こっちの成人って、いくつか(ら……です、か)?」


「ん?12歳からだが?」


え。ちっさ。

ってか、それを聞くってことは、私が12歳以上か未満か見分けられないってこと!?

12歳って小6か中1?え。……私、やっぱり小学生にしか見えないのかな?



「成人して、ます……。」


「そうか。」


少し残念そうに言う騎士さん。

……え?何か問題でも?



「……まだ幼い子供に魔王退治は酷だろう?成人してないなら配慮もできたのだがな。」


首を傾げた私に、騎士さんは説明してくれた。 ふむ、なるほど……。



「まぁ、困った事があれば周りに相談しろ。」


そう言って、いつの間にか板から手を放していた騎士さんは去っていく。

私はそれを、ボーっとしたまま見送った。



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