私、何も出来ない。
森に行くようになって数日が経って。そろそろ大丈夫って判断したのか、引率係の騎士さんは付いてこなくなった頃。
知らない植物がいっぱいで、写生が楽しみ♪ワクワクな私は景色を時折SSしながら歩いてた。
しばらく歩けば、マップからピロリン♪って音が鳴る。その約30秒後。
「敵、来るよ!」
糸川さんが反応した。
現れるのはお猿さん十数匹。正確には14匹。指定、【状態異常の盛り合わせ(他人指定)】使用、発動。
前に7匹、右に2匹、左に2匹、後ろに3匹。ん、回り込まれて囲まれたみたい。
片桐柊くんが正面。八重鈴夏ちゃんが左と正面の補助。中野さんが右と正面の補助。世良愛菜ちゃんが後ろと左右の補助。
でもチョロチョロされて少し苦戦みたい?
あ。……うーむ?みんな、後ろの3匹中2匹に気付いてないのかな?
その2匹は隠れて隙を見てるっぽい。
あ。ちなみに地形は、十円ハゲみたく木があんま無い開けた場所。12匹は普通に姿を見せてるけど、2匹は森の木々に隠れてる的な。
「【光球】」
「【黒沼】、【黒雷】」
「【三連突き】」
『ティルフール。』
状態異常に掛かってもまだ、すばしっこいお猿さん。もっとエグいのにしないとダメなのかなぁ。
数分の時間が経って。
段々にお猿さん達は数を減らしてく。
最後の1匹が倒れた時。
皆がホッと、息を吐いた。
「っ、危ない!」
緊張が緩んだその瞬間に、飛び掛かってくる2匹のお猿さん。
――『いつ動くんだろ?』って横目で見ていた私に向かって。
遮られる視界と、ガンッ!という硬質な音。
少し遅れて、詠唱と爆発音。
隠れていた2匹は呆気なく倒れた。
「大丈夫ですか?高倉さん!」
地面に踞る男性。怪我したみたい?
私はボーッと、他人事の様にその光景を眺める。
止まった思考が動かない。
体が1mmも動かない。
「【治癒】」
白い光が発される。
……高倉さんは、私を庇って怪我をした?
ゆるゆると、徐々に思考が動き出す。
同時に、ゾワリと体が震えた。
私のせい、私のせい、私のせい、私のせい、私のせい、私のせい、私のせい、私のせい。
俯く私は、ギュッと縮こまる。
無意識に腕をつねってた。
いつもこう。
危ないっ!!って思うのが遅い。トロい。いつも危険は過去形になる。気付けば危険は大事になってる。私が危険であると気付いた時には既に事は起こった後で、周りは状況回復の為に動いている。咄嗟の事に対して絶望的に鈍い。
「立てますか?」
「ありがとう、助かったよ。」
治療を終えたらしい八重鈴夏ちゃんが、座る高倉さんに手を差し出した。
もう少し歳が近ければ、良い雰囲気に見えるんだろうなー、なんて。そんな余計な事を思う私は、きっと現実から目を逸らしてる。
私のせいで高倉さんは怪我をした。
私はあの2匹のお猿さんに気付いていた。気付いて放置してた。
倒せないとしても、足止めなりなんなり出来る事はあった筈で。
――私がいなければ。
私の代わりに別の人なら。
きっと上手くやったんだろうな、なんて……。
私には何も出来なくて。
人並み以下しか出来なくて。
「マキちゃんは大丈夫?怪我とか無い?」
高倉さんが優しい声音で聞いてくれる。私は顔を俯けたまま、小さくコクリと頷いた。
――何もしないでただ守られてる奴に、怪我なんてあるわけがないじゃんね。
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「早いけど、今日はもう戻ろっか。」
糸川さんの言葉に、皆が頷いた。……高倉さん以外が。
「ちょっと待った。受けた傷は浅かったし、すぐに治して貰った。僕に気を遣わなくても大丈夫だ。」
それに対し。
「怪我の大小は関係ないよ。重要なのは、怪我をした事実。無理して進んでも碌な事無いよ。安全第一で行かなきゃ。」と、糸川さん。
「ほら、『悪い事は続けて起こる』って言いますし。」と、八重鈴夏ちゃん。
「まぁ、そういう事なら……。」
高倉さんが渋々頷いて、そうして私達は来た道を戻って行った。




