私、色が違うみたい。
寝れない。
目をギュって瞑っても、全然無理みたい。
ドロドロしたものが心ん中で蠢いて、落ち着かない。
目を瞑り続けることが出来なくて、でも真っ暗な部屋を眺めていてもすぐに飽きる。
【マップ】使用、発動。
活動している緑の点は少ない。
今動いているいくつかの点は、見回りの騎士さんとかかな?
不規則に動く緑の点が、見ていて面白い。
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ボーッと眺めて。
少し眠たいかな、って時刻を見れば、『05:42』と。 窓の方を見れば、少し明るくなり始めているみたい。カーテンの隙間から、日の出直前の薄明かりが漏れてる。
――寝ないと!!
緑の点も半分程が動き出している。
キャンセルで【マップ】を閉じて、ギュっと目を瞑る。
――でもきっと、……アウト。
そんな確信をしながら、私は無理矢理眠りに落ちた。
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「マキちゃん、起きてー?」
……嫌、です。
「マキちゃーん。」
もっと寝る。まだ眠い。うるさい。寝かせて。
少しだけ意識が浮かぶ。
でも周りが眩しくて、毛布を引き上げた。
「マーキーちゃーんー。」
……ごめん、なさい。
布団の中でコッソリと片手で耳を塞ぐ。もう片方の耳は枕に押し付けた。
「起きないねぇ。」
……学校行く日、みたい。それに似てる。
頭痛い。お腹痛い。
起きれない。体が動かない。
学校が苦痛。ずっと休みが良い。
――いつしか周りは静かになっていて。
私はまた眠りに落ちる。
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毎日。
朝、嫌々目を覚まして。
苦痛を感じながら支度して。
ギリギリに乗った電車が、何でか心地良く感じる。
冷たい空気の中をルンルン歩いて。
そして辿り着いた場所で、学校という嫌な時間が始まる。
皆が話してる中に混じって、私は面白いお喋りの聞き手に徹する。
決して、私が話す側になることはない。
先生に、こっちに来るように呼ばれて。
嫌がって、身を引いて。
でも腕を捕まれて、連れていかれて。
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――私は目が覚めた。
……気持ち、悪い。
見ていた夢を大体覚えている。滅茶苦茶不愉快。
学校関連の夢は、私にとって悪夢でしかない。
学校の記憶はすべてトラウマ。良い事は消えて嫌な事しか思い出せない。楽しい事なんて何もない。綺麗な思い出も全部穢れた。
辛うじて動かしていた、錆び付いた歯車。
上手く、滑らかに動かせない。息を止めて踏ん張って、ようやく動く。
『みんなと同じ様に。』動きの悪い歯車を直そうと大人達は私をつつく。結果、私は歯車達の中からコロリと外れた。地面の無い奈落へ落ちていく。
錆びた歯車は簡単に折れた。
……大人なんて大嫌い。アイツら何も分かってない。何も知らない。
忙しいから、一生徒にそんな構えないって分かってるけどさ?……でも、決め付けて、押し付けて、引っ掻き回さないで欲しい。かき混ぜられて、何も分かんなくなっちゃうから!
友達だって、もういらない。あんなの、友達じゃないって悟ったから。私だけきっと、仲間外れだから。
でも違う。友達さん達は悪くない。私が無意識に壁を張って、近付けなかっただけだと思うから。私が全部悪い。自業自得。
……思うに、色が違う。
友達さんのグループの中で、私だけが違う色である事に気付いた。
今思えば、そう悟った時から笑えなくなった。その空間が苦痛になった。
友達さん達とは、気になるジャンルが異なる。
趣味が真逆。
私には、彼氏なんて興味ない。
似たような色の中に、全く違う色が一人混ざるのは苦痛。
でも、一匹狼になる度胸は、私には無い。甘ったれだもん。自分が、一人じゃ何も出来ないって知ってる。
誰かに手を引いて貰えなくちゃ歩き出せない。
誰かに手を差し伸べられるのを待っていて、でも無意識に壁を張ってるから誰も手を差し伸べてくれないまま。
いつしか置いていかれた。
でも、大人も友達さんもきっと同じ。私とは住む世界の違う人間。
――普通の世界に住む人達。
私は、普通じゃないみたいだから。
私は、オカシイみたいだから。
『あなたは普通じゃないの!』って。
ヒステリック気味に言われちゃったから……。