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私、騙されやすいんで。

ピカピカキラキラな部屋。

その場所で、私達は彼らと二つに分かれて向かい合う。……いや、正確には囲まれているんだけどね。


こっち側には、フツーの人達。サラリーマンっぽい人とか、主婦っぽい人とか、工場で働いてそうな人とか、制服着た学生とか。


対してあっち側には、演劇っぽい衣装の人達。

ピカピカ、キラキラ。ぶっちゃけ、あっちの真ん中にいるのって王様だよね!その横には美人な女の人(妃さんかな?)で、あと周りにたくさんいるのは騎士さんかな?



フツーな人達は、辺りをキョロキョロ。


――確かにここ、どこだろうね!

私、いつの間にかここにいたんだよね。きっと、他の人達もそうなんだろうなぁ。



っていうか、マジ無理。騎士さんとかの視線が、私達に集まってる。興味有り気にジロジロ見てる。

あ、別に私だけを見てるんじゃないけどさ、こっちの方角を見ているというだけで、私にとっては地味に辛いんだよ!ってか心の準備も無しに、突然人がいっぱいの所にいるとか、心臓バクバクなんだけど!?メッチャ緊張するっ!お部屋帰りたい。


大丈夫かな。私、変じゃないかな?…あ、変かも。

チラッと周りを見渡せば、自分だけ浮いてるように思えてくる。だってこの中で私だけ、部屋着なんだもん。モフモフのフリースにネコの絵柄付きだもん。可愛いでしょ?……ウッ(泣)




ザワザワーっとする私達を前に、王様(仮)が立ち上がって言う。


「我等の召還に応じてくれた勇者達よ。どうか、魔王を倒しこの国を救ってくれたまえ。」


デデーン。


効果音付けてみました。ハイ。


「はぁ?」


声を上げたのはスーツに黒眼鏡の、いかにもエリートサラリーマン?みたいな人。


「はぁ!?」


今度は強めに、同じ言葉を繰り返す。

……あ、コレ、驚き過ぎてそれしか言えないやつじゃー?表情も、もの凄い事になってるし。うくく……。ちょっと笑えてきた。


他の所からも小さな笑い声がいくつか聞こえてくる。

あ、私は心の中だけで笑ってるんだけどね。表情変えずに耐えるのツラい。




「お前達、人一人を大勢でバカにするのは良くない。それも名も知らぬ他人だろう?尚更良くない。」


後ろの方から、なーんか見た事あるような気がする人が出てきた。


大宮(おおみや)議員……。」


誰かの声に、なるほど納得。確かにそんな名前だった気がする。

通称大見得(おおみえ)議員だっけ?なんか、一々大袈裟なんだとか?上手いな。たぶん。分かんないけど。なんで大袈裟(おおげさ)議員じゃないんだろう。分かんないけど。


「まぁ皆、混乱の最中にあるのだろう?お恥ずかしい話、私も理解が追い付いていない。事務所で事務処理をしていた筈なんだが、いつの間にか寝てしまったようだな。」


議員はガハハと盛大に笑う。


()()()()()()理』って、ダジャレかな?まぁいいや。


ふと私がチラッと王様?を見れば、デデーン。な体勢のまま困惑したように視線を泳がせてる。

私達を見、騎士達を見、隣の女性を見、そして最後に後ろに控えていた男の方を見、……あ。その人と、何か小声で相談し始めた。



「貴方の事情は良いのよ。私が聞きたいのは貴方達の事。」


そう言って議員を制し、ギランギランの金持ちっぽい女性が前へ進み出る。


「貴方達は誘拐犯かしら?どうも、そうは見えないのだけども。」


女性は王様?を指差し、告げる。


「身代金目的?それとも何か別の物?」


「貴様!王に失礼だぞ!」


……あ、やっぱ王様なのね。


王様の後ろから飛び出て来た喚く子豚が、答えを教えてくれた。


あー、違う。この大臣、きっと豚だわ。

あ、違う、違う。この豚、きっと大臣だねー。アホな間違いした。




「王よ。やはり失敗したのでは?」


大臣……じゃなくて、豚……じゃなくて、大臣が王様の前に跪き、言う。



「なーに?コレ、演劇か何か?」


派手な髪色の女性が面倒臭そうな調子でボヤき、その言葉に乗せられた一部の人間は胡散臭げに王様達のやり取りを見る。



「呼んでしまったものは仕方ない。一応測定して彼らの能力値を見ようかのう?」


そう言って王様が指示を出すと、後ろに控えていた人達が部屋を出ていく。




「さて。いきなりの事で、恐らく貴殿らは混乱しているだろう。しかし、落ち着いて聞いて欲しい。」


王様が低い声で語り出す。


「我が国は現在、魔王軍の脅威に脅かされておる。」


『ププッ』と言う笑い声が、何処かで漏れた。

しかしそれを意に介さず、王様の話は続く。


「そこで我々は悪き魔王を打ち倒すべく、古き文献を頼りに勇者召還の儀を行った。そしてその呼び掛けに応え、今ここにいるのが貴殿らだ。」


「ガハハハ。面白い夢だわい。」 と、議員。


「言い逃れする気かしら?」 と、ギランギラン女性。


「バカみたい。頭イカれてんじゃね?」 と、派手な女性。


「魔法!魔法があるのか?」 と叫ぶのは、灰色の上下ジャージを着たお相撲さん?っていうか、どっちかって言えばキモオタかな?飛び散る汗に、近くにいた人たちは距離を取る。


「おお、もちろんあるぞ……。」


答える王様も、若干引いてる?


っていうか私さ、あの人と同類に見られてないよね??ちょっと心配。

私、見ようによっては寝間着だし?ま、事実これで寝てたけどさ。

で、部屋着のような寝巻きのような格好って、今のところ私とあのオタさんだけなんじゃないかなぁ?って。……同類って見られたくないなぁ。



「王よ、準備が出来ました。」


「うむ。……詳しくは後で説明するからの、今は別室にて貴殿らの能力を測定してくれんか?」


「よ。チーレムキマシタワー!」


と浮かれる一人を除き、皆は胡散臭げな眼差しを向けながら、騎士らに促されて渋々部屋を出ていく。


え?私?

『我等の召還に応じてくれた勇者達よ。どうか、魔王を倒しこの国を救ってくれたまえ。』の時点で『へぇ。そうなんだぁ!』って、コロッと騙されてみる事にしました。

んー。こういう『異世界召喚で魔王討伐』みたいなファンタジー小説、結構読んでたし?あと私、『百万円が当たりました!こちらで手続きを……』って言われたら、疑いもせずにホイホイ付いていく自信あるからね!

だから少しワクワクしてるかなぁー?


……ハッ!

ちょ、あのオタさんと同類にしないで!?


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