53.報道
雨が降っていた。
僕たちは古い倉庫に隠れていた。
町の外れ。
誰も来ない場所。
れんがスマホを見ている。
顔が青い。
「どうしたの?」
れんは少し黙る。
そして僕を見る。
「……ニュース」
れんはスマホを僕に見せた。
ニュースサイトの見出しに大きく書かれている。
「研究施設事件の重要参考人」
その下に僕の写真がある。
テレビ出演のときのだ。
笑っている顔。
もう昔の僕。
記事を読む。
研究施設爆発、行方不明者。能力者研究。
そして殺人の疑い。
「もう……全国に拡散されてる」
れんが小さく言う。
SNS、ニュース、掲示板。
全部、僕の名前、僕の顔が出ている。
「早い」
「みきだと思う」
れんは言った。
過去を見る少女。
警察、証言、情報、全部、繋がった。
「コメント欄……」
ゆきは言った。
画面を見せる。
大量の書き込み。
「怖い」
「能力者だろ」
「殺人犯」
「危険」
「捕まえろ」
言葉の刃みたいだった。
「世間はもう敵だね」
れんは言った。
僕はスマホを閉じる。
未来は見えない。
この先簡単じゃない。
「どうする?」
れんは言った。
「逃げる」
それしかない。
「どこまで?」
ゆきは言った。
僕は少し考える。
でも答えはない。
「捕まるまで」
れんが笑う。
「バッドエンドじゃん」
「最初からそうだった」
沈黙が流れる。
雨の音が倉庫の屋根に響く。
そのとき遠くでパトカーの音が鳴った。
れんが立ち上がる。
「もう来た?」
「早すぎ!」
ゆきは言った。
僕は外を見る。
遠くの道路。
赤いライト、警察。
そしてその後ろ。
みきが傘もささずに立っている。
遠くから僕を見ている。
でもはっきりわかる。
「見えた」
みきは呟いた。
倉庫の入口。
数分前に僕達が入る。
全部見える。
「しょうた、ここにいる」
みきは言った。
倉庫の外を警察が包囲する。
「しょうた、囲まれた」
れんは言った。
ゆきが震える。
「どうする……」
僕はひなを見る。
静かな顔。
逃げ続ける人生。
それとも終わる人生。
僕は立ち上がる。
「出口を作る」
れんが驚く。
「どうやって?」
僕は倉庫の奥を見る。
古い窓、鉄の扉、壊れた壁。
未来は見えない。
全部、賭け。
倉庫の外は警察、みき、包囲されている。
逃亡者、殺人犯、そして僕。
物語は、終わりへ向かう。




