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53/60

53.報道

 雨が降っていた。

 僕たちは古い倉庫に隠れていた。


 町の外れ。

 誰も来ない場所。


 れんがスマホを見ている。

 顔が青い。


「どうしたの?」


 れんは少し黙る。

 そして僕を見る。



「……ニュース」


 れんはスマホを僕に見せた。


 ニュースサイトの見出しに大きく書かれている。



 「研究施設事件の重要参考人」


 その下に僕の写真がある。

 テレビ出演のときのだ。

 笑っている顔。

 もう昔の僕。


 記事を読む。


 研究施設爆発、行方不明者。能力者研究。

 そして殺人の疑い。



「もう……全国に拡散されてる」


 れんが小さく言う。


 SNS、ニュース、掲示板。

 全部、僕の名前、僕の顔が出ている。



「早い」


「みきだと思う」


 れんは言った。


 過去を見る少女。

 警察、証言、情報、全部、繋がった。



「コメント欄……」


 ゆきは言った。


 画面を見せる。

 大量の書き込み。



「怖い」

「能力者だろ」

「殺人犯」

「危険」

「捕まえろ」


 言葉の刃みたいだった。



「世間はもう敵だね」


 れんは言った。


 僕はスマホを閉じる。

 未来は見えない。

 この先簡単じゃない。



「どうする?」


 れんは言った。



「逃げる」


 それしかない。



「どこまで?」


 ゆきは言った。


 僕は少し考える。

 でも答えはない。



「捕まるまで」


 れんが笑う。


「バッドエンドじゃん」


「最初からそうだった」


 沈黙が流れる。


 雨の音が倉庫の屋根に響く。

 そのとき遠くでパトカーの音が鳴った。


 れんが立ち上がる。


「もう来た?」


「早すぎ!」


 ゆきは言った。


 僕は外を見る。


 遠くの道路。

 赤いライト、警察。

 そしてその後ろ。


 みきが傘もささずに立っている。

 遠くから僕を見ている。


 でもはっきりわかる。



「見えた」


 みきは呟いた。


 倉庫の入口。

 数分前に僕達が入る。

 全部見える。



「しょうた、ここにいる」


 みきは言った。


 倉庫の外を警察が包囲する。



「しょうた、囲まれた」


 れんは言った。


 ゆきが震える。


「どうする……」


 僕はひなを見る。

 静かな顔。



 逃げ続ける人生。

 それとも終わる人生。


 僕は立ち上がる。



「出口を作る」


 れんが驚く。


「どうやって?」


 僕は倉庫の奥を見る。

 古い窓、鉄の扉、壊れた壁。


 未来は見えない。

 全部、賭け。


 倉庫の外は警察、みき、包囲されている。


 逃亡者、殺人犯、そして僕。


 物語は、終わりへ向かう。

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