1.未来
僕の名前は、しょうた。
もう少しで18歳になる。
実は僕には未来が見える。
初めて見たのは、八歳の時だった。
――――
最初は、ただの夢だと思っていた。
学校の帰り道、僕は信号で足を止めた。
その瞬間、頭の中に映像が流れ込んできたんだ。
――暴走した車が、僕の方に突っ込んでくる。
激しい音と共に僕は倒れ、真っ赤な血を流している。
……そして真っ暗になった――
僕は恐くなり、無意識に後ろへ下がっていた。
数秒後、車が猛スピードで信号無視をして、突っ込んできた。
僕は地面に座り込んだ。
「はっ……はっ……」
心臓の音がすごい。
もし、あのまま歩いていたら、僕は死んでいた。
これって……超能力!?
――――
その日から、僕は未来が見えるようになった。
なぜ見えるようになったかは分からない。
数秒後、数分後、数日先……。
成長と共に、見える間隔ものびていった。
未来は、突然頭の中に流れ込んでくる。
最初は恐かった。
でもだんだん慣れていった。
未来が分かれば、回避できる。
なんて便利な能力なんだろう。
中学生の頃には、自分の力で未来を見る事ができていた。
テストも満点。
学年トップ。
順風満帆の人生だった。
そして高校生の僕は、友達に撮られた動画をきっかけに、テレビデビューをする。
超能力の番組だ。
僕は番組内で、観客の未来を当てる事に成功した。
テレビに引っ張りだことなった。
未来が見える高校生。
霊能力、透視、異世界人。
SNSやテレビ、週刊誌、外を歩けば写真を撮られる。
僕は有名人となった。
そして、変わったのは僕だけじゃない。
父と母の態度も変わった。
もっとテレビに出なさい。
学校は行かなくていい。
父と母は、常に僕の仕事の電話を受けていた。
最初はとても褒めてくれていた。
僕はそれが嬉しかった。
でも、だんだん僕も父も母も笑わなくなった。
喧嘩が絶えない日々。
そのうち、ギャラが低い、高いなどの話もするようになった。
そこから、僕を見る目が変わった。
金づるを見る目だった。
あきらかに服装が変わった。
持っている物も変わった。
時計、バッグ、車……。
父の浮気、母の散財。
僕の事なんて知ったこっちゃない。
体調が悪くても、睡眠不足でも、ご飯を食べていなくても……。
それでも僕はよかった。
必要とされていると感じていたから。
でもある日、未来が見えた。
僕が殺される未来だった。
僕は血まみれで床に倒れていた。
犯人は父と母。
理由は保険金だった。
未来が見える僕が、気持ち悪い、恐ろしい、いつか自分の秘密が暴露される、それなら殺してしまえばいい。
多額の保険金をかけて、最後まで絞りとる。
そんな事を言っていた。
嘘だ……。
僕は未来を回避できるか試してみた。
家を出る未来。
警察に相談する未来。
テレビで暴露する未来。
全部見た。
そして全部、ダメだった。
どの未来も、最後は同じ結末になる。
このままだと死んじゃう!
なんで!
僕は何もしていない!
まだ死にたくない……。
だったら……。
――――
夜、僕は廊下に立っていた。
リビングから父と母の話声が聞こえる。
今日は怒鳴り声ではない。
内容は分かっている。
僕を殺す話し合いだ。
僕はリビングの扉を開けた。
「どうした?」
ソファに座っていた父は言った。
「まだ寝てなかったの?」
父の横に座っていた母は言った。
未来と同じ光景。
同じ夜。
でも、違うのは僕の手にある包丁だった。
「僕、まだ死にたくないんだ」
僕は父と母に近づいた。
「何をするつもりだ。やめろ!」
父は勢いよく立ち上がったせいで、ゴミ箱に引っかかり転んだ。
「やめて!」
母は真っ青な顔で立ちつくしている。
「……ごめん。今までありがとう。さようなら」
僕は涙を流しながら、手に持っていた包丁を振りかぶった。
……未来は変わった。
倒れたのは父と母だった。
僕が殺した。
殺さなきゃ殺されていたんだ。
僕は間違っていない。
僕は正しい判断をしたんだ……!
「はぁっ……はぁっ……」
僕の手は震えていた。
……その夜、僕は家を出た。
すぐにバレる。
ニュースもすぐに流れるだろう。
そして警察が動き出す。
でも、捕まらない。
僕には未来が見えるから。
今ならまだ見つからない。
駅のホームに電車が来る。
僕は目を閉じた。
――警察、パトカー、回避――
全部見える。
絶対に捕まらない!
……これからは自分のために生きる。
誰にも利用されない。
誰にも殺されない。
誰にも邪魔はさせない。
理想の世界を作るんだ。
その時だった。
「……っ……何!?」
突然、頭に別の映像が流れ込んだ。
――見たことのない人物だ。
10代の女の子?
映像の子の目と目が合う。
「あなたの過去、全部見えているよ」
その子は言った――
「っ……はぁっ……はぁっ……!」
冷や汗が湧き出る。
今の映像……もしかして……!
遠くでサイレンが鳴った。
僕は急いで電車に乗り込んだ。
未来を見る僕。
過去を見る子。
もしその子に捕まれば、僕の罪は全部暴かれる。
逃げるしかない。
未来からも、過去からも。
場合によっては殺るしかない……。




