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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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ベノスの帰還

困惑しつつもハーズメリア王都へ向かう行列と、自身の村へと戻る村人たちの様子を遥か上空から見守るギルメル。

「…信徒たちは魅了の呪術から解放されたようだな。もう心配なかろうよ」

エルトロの背に乗るベノスはその言葉にホッと胸を撫で下ろす。

そんなベノスを見てエルトロは声をかける。

「メキシオとスラドルに会ってくかい?」


ベノスは静かに笑みを浮かべ

「…いいや、やめておくよ。彼らからモナルカ達の記憶は一切消えてしまったんだろう?操られて俺を拉致しようとした時の記憶も曖昧な状態で、いま俺が現れたら余計な混乱をさせてしまう。このまま去るよ」

と答えた。


「よし、ヘキオンの村に戻るか」

ギルメルはそういうと翼を大きく広げて南へ飛翔する。エルトロも後に続く。



──人間の足なら数日かかるハーズメリア王都近辺からヘキオン村までの道のりも、ドラゴンの飛行能力であれば数十分とかからず村に戻ることができた。


村から少し離れた山中に降り立って人間態に戻ったギルメルとエルトロと共に、村の中心地へと足を運ぶベノス。


すでに村人たちもディアボリカの仕掛けた眠りの呪術からは解放されており、村の大広場には戻ってきたアフとエンリスを笑顔で取り囲む村人達たちであふれていた。


「おー、村の人達はみんな無事だったみたいじゃん」

エルトロの言葉にベノスも安堵の笑みを浮かべる。


ベノス達に真っ先に気付いたエンリスは、ベノス達に向かってウォン!とひと吠えする。


「あー!!ベノス!戻ったか!!」

気付いたアデットの声に村の人々は歓声をあげて出迎えた。


ベノスに涙を浮かべて駆け寄るアフ。

「よかったぁ…!無事に戻ってきてくれて」

感極まり思わず抱きつくアフに、ベノスも優しく抱擁し返しながら

「先生、ご心配をおかけしました」

と言葉をかけた。まるで数十年ぶりに再会した母と息子のような光景であった。


そしてギルメル達にも

「ギルメル様、エルトロ、お疲れ様でした」

と、アフは戦いからの帰還を労った。


「村の人間たちも特に異常なく目覚めたようで何よりだ」

ギルメルはハットを被り直しながら優しい表情でアフに返した。


「ああ、村のみんなに紹介します。この方たちは、はるか遠方のドラグガルドという国から来られた王族のギルメル陛下と従者のエルトロ様です。村が呪いの眠りから救われたのはこの方達のお力によるものです」

アフの紹介に一斉に膝をついて頭を下げる村の人々。


「おいおいおい、頭を上げてくれ!オレぁそんな大したモンじゃないだから」

村人達の急な平伏に驚き頭を上げさせるギルメル。


村長オーマックは平身低頭のままギルメルの足元まで擦り寄り

「村長を務めておりますオーマックと申します!斯様に高貴なご身分の方に村を救っていただけたとは、誠に恭悦至極でございます。是非とも村を上げてお礼をさせていただきたく…!」

と感謝の言葉を述べる。


「礼には及ばんよ村長殿。むしろこの困難に最も勇敢に立ち向かったのはここにいるベノスだ。こいつの活躍こそみんなで労ってやってくれ」

ベノスの肩をばんばんと叩きながらベノスの功を讃えるギルメル。


「ギルメル公、何を…俺の戦いなんてギルメル公とエルトロに比べればなんて事は」

謙遜するベノスに背中をどんと押して

「なーに言ってんだ、この勝利はお前の活躍があってこそだよ。オラ、ビシッと胸はれ!」

と豪快に笑いかけた。


ベノスを荒っぽく讃えつつ、ギルメルは周囲の村の様子を見回した。

まだブラックドラゴンの襲撃の跡が強く残り、村人たちの疲労の色も濃い。

「それにしても村長殿、今のこの村の状態じゃベノスの帰還の宴席も何もあったもんじゃないだろう。オレとエルトロも手を貸す。とりあえず腹減ってる連中に飯を、疲れた連中が安心して眠れる寝床を作ろうか」

オーマックは恐縮し、

「いやいや何をおっしゃいますか!村を救っていただいた王族の方にそのような事をさせる訳には…!」

と慌てた口ぶりで断る。

だがギルメルは

「なーに、遠慮することはない!ようやっと全ての事が片付いて晴れ晴れした気分なんだ。村の立て直しなんぞどうというこたぁない。エルトロ!アフラレイナと一緒にケガ人見て回って治してやれ。エンリスは森や川で食えそうなもの取ってこい。ベノス、焼けたものをどかすから一緒に手伝え!」

と、コートを脱ぎ腕まくりしベノスとエルトロにも指示を出す。

「承知しました!」

ベノスもマントや装備を置き、ギルメルの後に続く。


「おっと、その前に…」

ギルメルは腰の道具袋から魔法の遠話用の手鏡を取り出してアフに手渡した。

「アフラレイナ、ここに来る前に遠話鏡でドラグガルドに連絡をつけてある。折り返しイヒトから通信が来るハズだ。好きなだけ話すといい」


「ありがとうございます…!」

アフはまた溢れそうな涙を抑え鏡を大事に抱えながらギルメルに感謝を伝えた。


村長達に案内されて歩いて行くギルメルやベノス達を村人たちの輪の外から遠巻きに眺めるロンボルト、タウザール、スリッグス、そしてティアミー。


「あ、もう復旧作業再開すんのか?ベノスから色々話を聞きたかったんだけどよぉ」

と気になる事が山ほどあるスリッグスは呟いた。


「あはは、ひと段落ついたらいくらでも話す時間はあるって」

スリッグスの肩をポンと叩きながら笑うティアミー。


「それにしても、あいつが勇者を殺そうとして王都から追放された奴だなんて信じられるか?俺たち何度あいつに命を救われたかわかりゃしねぇよ」

タウザールはこれまでのことを思い返して感慨深い表情を浮かべる。


「もし村に運び込まれた時に追放者だと判明していたら、村総出で追い出していただろうし僕もそうしたと思う。あの最初のモンスター騒ぎの最中に危険をかえりみず彼自身の力で信頼を勝ち取り、村のみんなに認められたことも含めて奇跡的な巡り合わせだと思うよ」

ロンボルトも一年前の出来事を振り返り、タイミング次第ではベノスが村の一員となる機会は失われ、最悪の場合村はモンスターの襲撃で壊滅していたかもしれない可能性を思って、ここに至ったことは奇跡だとあらためて感じた。


「…さ・私たちも手伝いに行こうよ!ベノスー!おいてかないでよー!」

ティアミーの声に振り返ったベノスは、呪いも解け元気そうな彼らの姿に思わず笑顔で手をふった。


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