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第2章13話 雪降の降る夜に

やっと更新出来ました


待っていて下さる読者の皆様に感謝です。


第2章 13話 雪の降る夜に



 フェニックスゲームズ本社 「レジェンド」運営事業部 開発室



 「やられたあああああああああああああああああ!」


 「うわあああああああああああ!」


 「まじいいいいいいいいいい!」


 悲鳴にも似た声がそこらじゅうで響く。


 たあにょ犬による、全体チャットを聞いたプログラマー達の心からの叫びだった。


 「レジェンド」のプレイヤーの移動及び冒険の信仰状況をモニターで確認していた高橋が、たまらず目の前の受話器を手に取る。


 「部長ですか? 高橋です! 緊急の運営会議をお願いします!!」


 

 「レジェンド」は、社運をかける巨大タイトルである。



 『サービス開始直後につまずきがあってはならない』全社員の共通した意識であった。


 『アップデートの間に合わないRPGはプレイヤー離れを引き起こす』ゲーム業界全体が当然のように判り切った事実である。


 コンテンツとしてすばらしい物であっても、カンストレベルのプレイヤー達が溢れ、そのプレイヤー達が楽しめる何かがなければ、RPGタイトルとしての死を意味した。


 「レジェンド」を更なる高みへと押し上げる会議が始まろうとしていた。


 

><><><><><><;



 

 

 小人村鍛治屋裏の工房となった広場にドラム缶を半分に切ったようなバーベキューコンロを囲む一団がいた。木工職人が作ったテーブルと椅子がその周りを囲み野外バーベキュー会場を形成する。


 コンロの金網に載せられ焼かれるバーベキュー素材は鍛治、光、雪朱雀の狩った鹿肉、牙、美和、賢治が狩った二匹のイノシシ肉、仕事の為不参加だが、海鮮素材とテーブルセットだけを差し入れして去った、たあにょ犬がしとめた砂浜クラブというカニ、ウニ坊主のドロップであるウニ、各種エビが香ばしい香りと共に食欲をそそる焼き色を見せている。


 鍛治の発案で行われたバーべキュー大会である。鍛治の二人の娘、鍛治が懇意にしている服屋の京香、もちろん素材を狩った牙、雅、美和、賢治、光、雪朱雀の顔も見えている。


 「カニうめえええええええええええええええ!」


 「焼きウニもいけるのですううううううう!」


 「鹿肉も、なかなかおいしいですYO~~~~!」多分読者の記憶の中に浮かんで来ないだろう京香だった。


 テーブルを囲むあちこちで歓声が挙がる。


 「まじうまいっす~~~~!」


 作りのしっかりとしたキャンピングテーブルの上には「レジェンド」のスポンサーとなった飲料メーカーの缶ビール、子供たち様のジュースが魔法で作られたカキ氷の山に埋まって積まれている。


 「リアルの体形を気にしないで飲食出来るのがいい!」満面の笑みをたたえながらいい感じに焼きあがった肉を口に運ぶ雪朱雀だった。


 「あ~~~~~~~!」


 思い出したように美和が叫ぶ。バックの中身をごそごそと覗き込んで、大きな紙バックを取り出した。


 「東条先生のシフォンケーキを忘れていたのです~~~~~!」


 「「「「ケ~~~~~キ~~~~~~~!」」」」


 女性達が声をそろえ、目を輝かせる!


 「ちゃんと生クリームもセットなのです~~~~!」


 「「「「「生くり~~~~~~~む!」」」」」牙までもが身を乗り出した。


 鍛治の娘たちに焼けた海産物を取り分けていた雅も興味深々と言った目で、美和が取り出した2ホールのシフォンケーキを見つめる。


 「男性で食べたい方いらっしゃいますか?」


 美和の問いに牙だけが手を上げる。


 目の前で綺麗に六等分される2ホールのシフォンケーキ、用意された真っ白な当陶磁器に2ピースのシフォンケーキが乗せられ、その真ん中にドームのように生クリームが添えられる。


 次々に女性たちに渡されるケーキの載ったお皿、最後に並んだ牙の分は…


 「…う? 俺のは?」


 目の前でシフォンケーキ食べる女性たちは幸せ絶頂といった笑顔、その笑顔に打ちひしがれたように牙が崩れ落ちる。


 「俺…今日…マリーちゃんのお父さんが作ったパンすら食べてない……」


 「あれ~~~~そうだっけ~~~~~?」美和が最後のピースを食べながら、気にも留めて無い様子。


 「あ~~~~~~! だったかも~~~~~~~!」


 思いだした美和が最後の一かけらを口に放り込んだ。


 「パンなら残って…なかった! おいすぃ~~~のです~~~! マリーちゃんのお父さんのパンは!」


 10リットル以上は入りそうな紙袋二つにいっぱい貰ったはずのパンがたった半日で消えていた。


 

><><><><><><


 


 工房の隅にある休憩所に黄色い光が漏れる。


 床にログイン時に起きる魔方陣がえがかれて一人の男がログインした。


 「ふ~~~ぅ」


 男は、現れてすぐだというのに盛大なため息をつき、少し疲れたような顔をしている。


 「よ~~~~! すまんな! 遅れた! 会議が長引いて」


 休憩所を出たミチが恐縮する素振りも見せずに声を掛ける。その声に誰もが驚いて振り向いた。


 「よ~~~! お疲れだな! ミチ! かけつけ一杯だ!」


 鍛治によって投げられた魔法のかき氷によって冷やされたビールを受け取ったミチ(道上)は、リングプルを引き上げいい音をさせる。ビールの炭酸がはじけるような音が工房に響き渡る。


 ミチの喉を黄金色に輝く液体が流れ落ちるのが判るくらい、喉が揺れる。


 「うっめええええええええええええええええええ!」350ミリリットル缶をいっきに飲み干したミチが叫ぶ。


 豪快な飲みっぷりに誰もが目を見開いてその姿を見つめた。


 注視される自分に気づいたミチ。


 「あ~~~! 始めましての人も多かったみたいだね…」周りを確認したミチは、少しばつの悪そうに照れ笑い。


 「フェニックスゲームズの道上です! 鍛治とは大学時代からの大親友です! たまにGMやってますが、基本的にはただの中間管理職の親父です! 気を使うのも使われるのも得意じゃないんで! 見かけたら気軽に声を掛けてください!」


 「って言う事みたいだから、盛大にいじり倒してやってくれ! もう一回かんぱ~~い!」


 鍛治の発生でいつの間にか行き渡っていたビールとジュースが、高く掲げられ、この場に居る全員の喉がゴクゴクと音を鳴らした。


 


><><><><><><



 駆けつけ3杯のビールを飲み干し少しいい調子に出来上がりつつあるミチを囲んみ、「レジェンド」談義が盛り上がっていた。


 「俺の知り合ったプレイヤーみんなして精霊と契約しやがる!」


 愚痴にも聞こえるその言葉は、反面嬉しそうでもあるのだが、運営の苦労話を聞かされた後のプレイヤーにとっては複雑な心境でもあった。


 「まあ、おかげさまで全員一丸となって、このタイトルを盛り上げようっていう雰囲気が出来てきてはいるから、皆さんのおかげっでっす!」


 「至らないところも当然あるでっしょうが、これからもよろしくお願いしまっす!」


 多少ろれつが怪しくなってきたミチが椅子に座ったまま深々と頭を下げる。


 「ミチさんって、酒よわいんですね?」


 こちらもいい具合に出来上がりつつある牙が鍛治に問いかける。


 「ま~~~~、見てのとおりだぁ!」


 いつもの豪快さに輪を掛けたような鍛治が、グビットやりながら牙の肩に自分の腕を回していく。


 「あ~~~~~~~~! 雪~~~~~~~!」鍛治の娘たちが少し離れた道路で星空に手をいっぱいに開いて叫んでいた。


 突然空から白いふわふわと浮かぶ雪の結晶が舞い降りる。

   



 「お! 来たか!」ミチがやっと来たかと言わんばかりの声を挙げる。



 クリスマスに街中BGMとして使われる鈴の音が、『シャンシャンシャン…シャンシャンシャン』と鳴り響く。


 すでに陽は落ちて月明かりに照らされた雪が舞う夜空に、その音は幻想的に響き渡る。


 それぞれが、それぞれの思いを持って、舞い降りる雪を皆一応に手を伸ばして掴み取ろうという姿を見せていた。



 「みなさ~~~~~ん! こんばんわ~~~~~~!」元気はつらつな女性の声。


 雰囲気ぶちこわし~~~~~! の大声がレジェンド全マップ全チャンネルに響き渡る。


 「GMサリーで~~~~~~~っす!」


 「レジェンドへようこそいらっしゃいました! フェニックスゲームズを代表して、わたくしGMサリーが、感謝の意味も込めまして、レジェンド! オープニングイベント第一弾! 『冬将軍がやってくる!』 の司会をつとめさせていただきま~~~~っす!」


 「まずはイベント告知から! 大型連休、最後の土曜の夜には、オープニング音楽祭! 及び花火大会を開催致します! 詳しくは公式ホームページから、オープニング音楽祭の特設ページを確認していただいて、そちらから参加の申し込みをしていただくだけでオッケー!」 


 「当日には、『あの!』 有名アーティストもゲストとして参加していただく事がけっていしておりますわ! DE MO 今は、NA I SYO! 優勝者にはレジェンド公認アイドルとして、デビューの可能性も! 皆さんの参加をスタッフ一同でお待ち申し上げますわ!」  

 

 「では! 本日のオープニングイベントの『冬将軍がやってくる!』の詳細を説明して参りますわ!」


 「これから、30分後にポーリングの街中にのみ『雪だるま』の形をした『雪だるマン』

が、1時間に渡って降りつづけますわ! 小、中、大、特大! と時間が進むにつれて大きな『雪だるマン』が現れます! 一体100Gから10万Gまで! 大きさと金額は比例しませんことよ! 倒す度に、皆さんにボーナスが支給されますわ!」


 MOBを狩るだけでは、効率の良いGを稼げない仕様となっている「レジェンド」に於いて、一体100Gですら大判振る舞いといったところだった。


 「「「「「「「「10万って!」」」」」」」」」皆が大声を挙げる中、ニヤッと微笑むだけのミチ。



 「注意点が一つ! 雪だるマンは、魔法攻撃をはじきます! 特大以外は3~4回の通常攻撃で倒せますわ! 特大は見ての O TA NO SI MI !」


 「一番多く狩ったパーティーにはギルドハウス! 二番目のパーティーにはグループハウスをプレゼント! 他にも沢山のプレゼントを十番目までのパーティーに用意しておりますわ! 振るってご参加下さい!」



 「今から、イベント開始5分前まで、無料でイベント会場まで転送いたしますわ! 希望される方は、わ・た・く・し! GMサリーちゃんまで、WIS(個人通話)を送って下されば、転送いたしますわ!」


 「以上! GMサリーでした~~~~~~~!」



 レジェンドの季節は1,5ヶ月毎に変わっていく仕様になっていた。一年で2回四季を繰り返す。


 「レジェンド」恒例となる季節の変わり目イベント(後に天災級と言われる)がここに始まろうとしていた。

 





お気に入り登録並びに、評価、感想を頂き大変ありがとうございます。

作者の励みになっております。

誤字脱字等、ございましたら作者までご一報下さい。

謹んで承ります。


暑さと、自分の才能のなさに遅れがちな更新となりますが、ご了承下さい。


ますます暑くなりますが、お体に気をつけて、ますますの御健勝をお祈り致します。

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